2024年3月7日に日生劇場にて開幕するミュージカル『カム フロム アウェイ』(CFA)の稽古場取材会が行われました。12名の豪華キャストが100名近い登場人物を演じる、100分間ノンストップのミュージカル。そこで描かれるのは9.11の同時多発テロ事件の勃発で行き場を失くした飛行機の乗客乗員と、彼らが降り立ったカナダのニューファンドランド島にあるガンダーの町の人々の奇跡のような5日間。
製作発表に続いて稽古場の模様をレポートいたします!
「CFAは、作家が実際にニューファンドランド島を訪れ取材をする中で集めた様々なストーリーをもとに創作された、実話をベースにした作品です」、そう語るのはブロードウェイ初演から本作に携わる演出補のダニエル・ゴールドスタインさん。続けて「ミュージカル界のスーパースターたちと、アンサンブルミュージカルでご一緒できることを嬉しく思います。それもこの作品の素晴らしさがあるからこそ。100分ノンストップで上演される作品で、俳優はいくつもの役演じながらこのストーリーを物語ります。俳優にはお客様と実際に繋がって語りかけてくださいと伝えていますので、もし彼らと目が合ってもびっくりしないでください」

演出補のダニエル・ゴールドスタインさん
“Welcome to The Rock ザ・ロックへようこそ”
場面披露の前に──ダニエルさんから舞台となるガンダーの町の紹介がありました。
「ニューファンドランド島はカナダの東部にある小さな島。そこにあるガンダー空港は、長い間、航空機の大西洋航路の給油拠点として有名でした、つまり“小さい町の大きな空港”。その後、(技術の向上によって)ガンダーで給油することもなくなったのですが、2001年9月11日、突如、行き場を失くした飛行機の着陸スポットとして着目された。こうしてこの物語が始まります。まずはオープニングナンバー“Welcome to The Rock ザ・ロックへようこそ”をお楽しみください」
この一曲の中でいくつもの人生、生活が語られます。日常が一変した朝、その後の島民の行動を想像させるニューファンドランドに生きる人の誇りとたくましさを感じます。

日常が失われたあの日のことをガンダーの町の人々が語り始めます
口火を切るのは町長クロードを演じる橋本さとしさん

アネット(濱田めぐみさん)と在郷軍人会の会長のビューラ(柚希礼音さん)

巡査のオズ(吉原光夫さん)とガンダー地区の動物愛護協会の会長ボニー(シルビア・グラブさん)

地元テレビ局の新人レポータージャニス(咲妃みゆさん)

それぞれの証言が間髪入れず語られるだけでなく、キャストが一丸となって迫りくる瞬間も。
それぞれ色の違う声を持つ個のエネルギーが集約され、さらに歌声はクレッシェンド! 圧倒されます。「このショーへウェルカム」、物語の始まりへの高揚感も!
“Screech In ラム酒を飲め”
「スクリーチ・インというのはニューファンドランド産のアルコール度数もかなり高いラム酒です。ニューファンドランドの島民は地元の人ではない人たちをカム フロム アウェイ(遠くから来た人、CFA)と呼びます。CFAが名誉市民になるためのセレモニーがこの“スクリーチ・イン”です。私も体験しましたが、それは何段階かに分かれていて、どれもかなりふざけています(笑)。硬いパンを食べ、缶詰のソーセージも食べました、そして魚とキスして、スクリーチ・インを飲まなくてはならない。劇中では、9000人ほどの人口の町に7000人のCFAがやってきてから数日たったある夜、地元の人々はバーで“スクリーチ・イン”をやろうじゃないかという話になります。セレモニーというよりパーティーのようなこのシーンには俳優に交じってミュージシャンも登場します」(ダニエルさん)

このシーンで関係性が展開するお二人
「瞳子さん(安蘭さん)と禅さんが演じるテキサス出身のダイアンとロンドン出身のニック、二人はいい感じの関係になりかけています」(ダニエルさん)

もうひと組、こちらの二人は……
「健治さんが演じるケビンT、万里生さんが演じるケビンJ、彼らはLAから来たカップル。この二人はニューファンドランドで異なる経験をしています。ケビンTはこの土地に対して好感を持っていて、ケビンJはこの事態に恐れ居心地の悪さを感じています」(ダニエルさん)

ケビンTはノリノリでスクリーチ・インに参加

ダイアンとニックも参加!

ラム酒を飲んだ4人はこの表情

ケビンJはケビンTになにやら耳打ちを……

演出補:ダニエル・ゴールドスタインさん

振付補のジェーン・バンティングさん

みなさんのコメントにもあるように本当に笑いの絶えない稽古場です
各シーンが終わると演出補のダニエルさんと振付補のジェーン・バンティングさんによるノート。方向性はすごくいい! 素晴らしい! というお褒めの言葉の後に、何点か微調整、確認作業が行われました。視線を落とさないように、決めどころの確認、そして動きの意図──例えば、崖をのぞき込んだようなところから視線を上げる──の確認です。それによって緊張と緩和が生まれよりエッジの効いたシーンに。
こうして歌や芝居、さらには椅子やテーブルを動かす転換まで、全員参加の2つのシーンが公開されました。予想を超える事態に見舞われた朝を語る緊迫感、その数日後のバーでの楽観的ともいえる宴、それぞれに不安や衝撃は感じていても悲壮感はあまりなく彼らなりの歓待をする。さらには一色だけではない人の心、このように少し拝見しただけで感じるドラマの繊細さ。もちろんそれだけでなく、テンポよく語り手がリレーされていく展開の心地よさ、畳みかけるような歌声、足を踏み鳴らす力強さなど見ていてワクワクする俳優たちの歌や芝居、踊りも堪能!
後編では、キャストコメントをご紹介いたします。
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人