1920年代、狂騒の時代のニューヨークを舞台に主人公ミリーと愛すべき仲間たちが織りなすコミカルでロマンティックな物語──ミュージカル『モダン・ミリー』が帰ってきました! 初日を前に行われた会見&公開ゲネプロの様子をレポートいたします。
原作は1967年公開、ジュリー・アンドリュース主演のミュージカル映画『モダン・ミリー』。楽曲をほぼ一新しく製作されたブロードウェイ版は上質なミュージカルとなり、2002年にトニー賞作品賞や主演女優賞などを受賞し大ヒットを記録。
日本では2020年の公演は残念ながら中止となるも、22年に復活上演、音楽、ダンス、お芝居と三拍子そろったミュージカルの魅力が余すところなく届けられ、連日お客様の大きな拍手と笑い声に包まれました。
そして、2024年7月、一部新キャストを迎えて2024年版のミュージカル『モダン・ミリー』が幕を開けました!
演出・翻訳の小林香さんは「ブロードウェイ版が上演されたのが2002年、前回の私たちの上演が2022年ですので、すでに20年の年月が流れていました。そのときも、翻訳段階から人種に関わる表現など時代の変化に合わせた言葉のチョイスには気を配りました。さらに2年が経ち、今回はブローウェイのチームが2024年にふさわしいものにするべく、この度の日本での上演に合わせて、主にミセス・ミアーズというキャラクターを全く新しい設定に書き直してくださいました。そこが変わることによって全体も大きく影響を受け、その結果、どのような方がご覧になっても気持ちよく楽しんでいただける作品になりました」と新しさについてコメント!

ミリー・ディルモント:朝夏まなとさん
目標に向かって一直線! エネルギーとバイタリティ溢れるミリーを演じるのはもちろん朝夏まなとさん。“玉の輿狙い”と聞くと、ちょっと眉をひそめてしまいそうになりますが、突き進むミリーを嫌味なく、応援したくなるキャラクターとして見せるのは朝夏さんのもつ太陽のような明るさ故か。完璧じゃない主人公が大都会ニューヨークでの出会い、経験を通して成長していく姿をコミカルに、たくましく、最高にロマンティックに届けます。

ミセス・ミアーズ:一路真輝さん
まるで新作の初日を迎えるような心持ちだと話すのは一路真輝さん。ミリーが滞在する女優志願者向けのホテルの女主人ミセス・ミアーズを「運もない、才能もない、売れないコーラスガールが夢を捨てきれずに、女優復帰を虎視眈々と狙うキャラクター。とても重要な役どころですので、しっかりと務めたいと思います」と語ります。小林さんのお話にもアップデートの肝となるお役、誰も見たことのないミセス・ミアーズを一路さんが立ち上げます!
ミセス・ミアーズ、彼女もまた女優になる夢を見てニューヨークへやってきた一人だったのかも知れません。美しさと圧倒的なおどろおどろしさ(!)の中にもとぼけた魅力が滲む、一路さんだからこそのミセス・ミアーズをお見逃しなく! ソロナンバーでの空間掌握力は必見必聴!

マジー・ヴァン・ホスミア:土居裕子さん
新キャストの土居裕子さんが演じるのは世界的歌手でミリーの理解者となるマジー・ヴァン・ホスミア。土居さんは意外にも……「キャリアは長いのですが、このようなバリバリのブロードウェイ・ミュージカルは3作品目です(笑)。大役を演じられることはとても光栄ですが、今は心臓が飛び出るくらい緊張しています」と仰いつつも、マジーとして舞台上に現れると大物スターの貫禄とチャーミングさがあふれます!
人生の先輩としてミリーをやさしく見守るマジーが語る「人生において本当に大切なもの」……この出会いがミリーの運命を大きく変えることに。成功者のマジーもかつてはひとりの夢を見る少女だった。諭すように語る声、華やかなステージでの歌声、さらにマジー大活躍!な場面もあり土居さんの魅力を堪能!

ジミー・スミス:田代万里生さん
ニューヨークの街でミリーと偶然の出会いを繰り返す謎めいた男ジミー・スミスには、こちらも新キャストでシアタークリエでのミュージカル出演は11年ぶりとなる田代万里生さん。田代さんからは「まぁちゃん(朝夏さん)はじめみなさん穏やかで、稽古場から、みんながこの作品を楽しんでいると感じました。多幸感があふれていました。その楽しさをみなさんにお届けしたいと思います」と稽古の印象をお話しくださいました。
世慣れした遊び人の振る舞いと会話の切り返しのスマートさ、緩急剛柔使い分けるとはまさにこのこと! 芝居に歌唱に、ジェットコースターのような展開の物語を軽やかかつ力強く駆け抜けます。正攻法のラブコメディミュージカルをしっかりとリードする確かな技術と滲む愛らしさ、田代さんご自身もジミーという役を愛し、楽しんでいることが作品をさらに色鮮やかにします。

トレヴァー・グレイドン:廣瀬友祐さん
廣瀬さんは前回公演を振り返り「初日のオープニングでお客様が手拍子をしてくださった瞬間の高揚感を今も覚えています。またお客様と一緒に楽しめたら」と語り、おすすめのシーンは「田舎町から出てきたミリーが、衣裳を替えてモダンガールになって登場した瞬間のまぁちゃんの顔です」とマニアックな見どころを披露。これには思わず朝夏さんも「(そのシーン)すごい意識してしまいそう」と笑います。
一路さんから「実は1幕は1場面しか登場しないのですが、10場面くらい出ているような存在感!」とのコメントが飛び出した廣瀬さんのトレヴァー・グレイドン。ミリーが玉の輿を狙って就職した会社の社長らしい堂々たる佇まい、隙のない美丈夫ぶりから繰り出すあんなこんなお姿!1幕でしっかり印象付けて、2幕は怒涛の展開。その面白さ、もはや反則級(笑)。

ミス・ドロシー・ブラウン:夢咲ねねさん
新キャストでドロシーを演じる夢咲ねねさんからは「なんだか手が触れちゃった!ジミーのいたずらでくるりと回っちゃった!近づいちゃった!……それが一つひとつ胸に刺さってくるんです」と舞台袖で観ていてもにやけてしまう“ミリーとジミーのキュンキュンポイント”が語られました。
カリフォルニアからやってきた女優志望のミス・ドロシー・ブラウン。どこか夢見がちで金銭感覚がちょっと風変わり?ながら、ミリーとは意気投合し親友に。朝夏ミリーとデコボコ名コンビとなる夢咲ドロシーです。ドロシーからも“キュンキュン”をたくさん感じました! ひと言で言うと…可愛い♪

チン・ホー:大山真志さん
初参加となる稽古で大変だったことを訊かれた大山さんは「台詞がほぼ広東語というところでしょうか。でも、大変ではありましたが、稽古場でディスカッションをしたり、先生とも話したり、楽しみながらキャラクターを作り上げることができました。ミセス・ミアーズとバン・フー兄ちゃんとチン・ホーの3人での新曲が追加されています。『モダン・ミリー』をご覧になったことのある方にも新鮮に感じていただけると思っています」と笑顔いっぱいで答えます。小林さんからも大山さん仕様のチン・ホーになっているとのコメントがありましたが、確かに“ならでは”のキャラクターを確立されています。
ミセス・ミアーズのホテルで働くバン・フー(安倍康律さん)とチン・ホー(大山真志さん)兄弟の広東語の台詞には字幕がつき、ミセス・ミアーズとの身振り手振りを交えた絶妙?微妙?な会話に笑いも! また、ドロシーに一目惚れしたチン・ホーの純粋で可愛らしさ全開のお芝居にはほっこり、言葉が通じない分、豊かな表情や仕草も見どころです。
こうして振り返ると会見での朝夏さんのコメント「脚本に描かれている愛すべきキャラクターに、その方が持っていらっしゃるものも投影されてさらに魅力的な登場人物たちになっています」に深く頷けます。
また朝夏さんが「ミリーがニューヨークに来て、街を見て、そこにいるモダンボーイズ、モダンガールズと一緒に踊るオープニングが大好きです!お衣裳も新しくなっています!」とおすすめシーンで挙げたのがこちらの一枚。

弾けるオープニング!!
さらに……

ゴージャスなショーシーン

速記者、タイピストとして職を得たミリーの同僚たち
写真右)ミス・フラナリーは入江加奈子さん
職場でのシーン、タイピングとタップダンスを融合させた演出も見どころ! 朝夏さんも「2年前よりバージョンアップ! タップを踏む数が明らかに増えています。闇練しました(笑)」と明かします。
モダンボーイズ、モダンガールズ、職場の同僚、闇の酒場の客、ホテルに滞在する女優志望の女性たちなどなどミリーが出会うニューヨークに暮らす人々を演じ、街の活気を感じさせるアンサンブルのみなさんも大活躍。舞台上でも歌いまくり踊りまくっていらっしゃいますが、舞台裏でも早替えや移動などノンストップで走り続けていること間違いなし!その熱量が『モダン・ミリー』をより一層熱くします!
合衆国憲法で女性参政権が認められ、ワーキングガールとして社会へ進出、女性の生き方、取り巻く環境が大きく変化した1920年代のアメリカ。モダン(現代的)であるとはなにか、ときに迷い、失敗しながらも大騒動の果てにミリーが見つける“本当に大切なもの”……いっぱい笑って心がほっこり温かくなるミュージカル『モダン・ミリー』。ラストシーンに象徴されるように、夢見る若者を迎え入れ続けてきたニューヨークという街のエネルギーを感じるとともに、改めて2024年のモダンってなんだろう。そんなことも頭をよぎる観劇後です!
最後に、キャストのみなさんからのメッセージをご紹介します。
大山さん)
しあわせってなんだろうな。この作品にはそのヒントがあります。そして、舞台を楽しんだ後に私も頑張ろう!と思える作品。みなさん、ぜひ楽しんでください!
夢咲さん)
ハッピーで笑顔になれる、底抜けに明るい作品でもあり、心に響くものもちゃんとある。最初から最後まで、何度でも楽しんでいただけたら嬉しいです。
廣瀬さん)
お客様からのエネルギーでステージ上にいるキャストの温度も上がる作品。今回も、お客様と一体となって楽しい作品にしていけたらと思います。
田代さん)
この作品は比較的新しい作品ですが、原作が60年代のミュージカル映画ということで程よいオールド感もある“これぞブロードウェイ・ミュージカル”といった印象です。加えて個人的には“これぞ東宝ミュージカル”だとも感じています。キャストそれぞれが自然体で、役柄なのか本人なのかわからないくらいですし、ここまで肩の凝らないミュージカルもそうそうない(笑)。ご観劇後にお客様が楽しかったねと語らいながらシアタークリエの階段を上っていかれることを願って頑張ります!
土居さん)
私は、今回が初参加になりますが、ここに並んでいるみなさん、そしてここにはいない若い出演者、ボーカルトレーナーの先生、振付の先生、オーケストラのみなさん、本当に全員が、もう汗をだらだらかきながらお稽古してきました。舞台稽古になると、みんな明るくこともなげにやってのけるのですが、その裏にある一生懸命さを思うと、13,000円はお得だとすら思えます。以上です(笑)。
一路さん)
ブロードウェイ作品でありながら、このバージョンは日本が世界初演となります。どうかお見逃しなさいませんよう、ぜひ劇場に足をお運びください!
演出/翻訳:小林香さん)
2年前の初日、お客様がお腹の底からドカーンと笑ってくださる景色を見て「私、演劇をやっていて本当に良かった」と心の底から思いました。今回も馴染みのキャストが再集結、そこに新しいキャストも加わって、お客様を楽しませようという気持ち満タンで挑みます! ミュージカルの素晴らしさがギュッと詰まったこの作品を通して、人の優しさ、夢見る気持ちの素晴らしさに触れていただき、心軽やかに劇場を後にしていただけたらと思っております。お客様がいらしてようやく完成する作品です。心よりお待ち申し上げます。
朝夏さん)
ミリーはニューヨークでいろんな人に出会って成長していきます。私自身もこの素晴らしい共演者の皆様と出会い、稽古を含めると3度目のミリーに挑戦し、新たな気づき、発見をしながら新しいミリー像を作ってきました。ここからはお客様のパワーもお借りして、新『モダン・ミリー』をもっともっと成長させていきたいと思います。日頃の悩み、お客様の背中をポンと押せるような作品です。『モダン・ミリー』2024をどうぞよろしくお願いいたします。
公演は7月28日までシアタークリエにて上演。その後、新歌舞伎座(大阪)、Niterra日本特殊陶業市民会館ビレッジホール(愛知)、博多座(福岡)、昭和女子大学人見記念講堂(東京凱旋公演)と続きます。暑い夏、笑って元気になりましょう!
【STORY】
1920年代のニューヨーク。「大切なのはロマンスよりも理性!」をモットーに、モダンガールに憧れて田舎町から出てきたミリーは、下宿先で知り合ったドロシーや偶然の出会いを繰り返すジミーと仲良くなったり、玉の輿を狙って就職した会社の社長・グレイドンに猛アプローチをかけたり、世界的歌手マジーのパーティーに参加したりと新しい生活を楽しむ。そんな時、ドロシーが行方不明に!下宿先の女主人ミセス・ミアーズが、下宿にきた身寄りのない女性たちを誘拐していると知ったミリーたちは、ドロシー救出作戦を決行!果たしてミリーたちの運命は!?そして、ミリーが見つけた本当に大切なものとは――。
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人