『Musical Lovers-2024-』藤岡正明さん、川嵜心蘭さん対談



2024年10月26日、27日に玉川せせらぎホールにて開催!ミュージカルを愛するキャストによる、ミュージカルを愛するみなさんのためのミュージカルコンサート『Musical Lovers-2024-』。企画・演出を務める藤岡正明さん、この度開催されたディーバ出演者オーディションで選ばれた川嵜心蘭(かわさきみらん)さんにお話を伺いました。



──3年連続、3回目の『Musical Lovers』(通称、ミューラバ)開催です!おなじみのメンバーから新メンバー、“超”新メンバーまで、今年もすごいことになりそうです。

藤岡)今年もミュージカル愛があふれるコンサートをお届けします。コロナ禍に始まったミューラバ、初回はいろんな不安の中で開催しましたが、いざふたを開けてみると“笑撃”のミュージカルコンサートという称号もいただきました。2回目となる昨年は、いろいろと進化・深化しミューラバが本格的に開花した公演になりました。そして3年目となる今回は僕が信頼する仲間たちに加えて、新たな試みとしてディーバ出演者オーディションで女性キャスト1名を決定しました!

──出演者オーディションを開催しようと思ったのは。

藤岡)コロナ禍にエンターテイメントに携わる者として行き詰まりを感じ、夢や目標を失いかけたところからようやく這い上がってきた今、僕の中で生まれた「夢を繋いでいきたい」という思いが根底にありました。これからミュージカルの世界で力を発揮していく新しい才能を見出し、夢を叶えるお手伝いをする。そしてお客様にその新たな才能を紹介するプロジェクトとしてこのオーディション開催を決めました。女性としたのは、ミュージカルを志す方は圧倒的に女性が多いにもかかわらず、役を掴むチャンス、入口が少ない現状があるからです。

──たくさんの応募があったとお聞きしています。

藤岡)約200名のご応募をいただきました。そこから28名に絞って実際にお会いしました。プロアマ問わず募集したので、すでに第一線で活躍されている方、プロとしてのキャリアはこれからながら素晴らしい才能を持った方、ミュージカルを愛する仲間たちと出会えたこと、僕にとって嬉しいことでした。

──オーディションの動画も公開(YouTube〈公式〉藤岡正明 【対面審査】ダイジェスト映像)されていますが、審査員のお三方がアドバイスをされている様子も印象的ですし、俳優が審査員というのも新鮮です。



藤岡)企画に賛同してくれた同世代の仲間、伊礼彼方さん、ソニンさんが審査員を引き受けてくれました。オーディションでは、1曲歌っておしまいにはしたくなかった。参加してくれて「ありがとうございます」の気持ちとして、なにかひとつでも今後につながるものを持ち帰ってもらいたかったんです。その方の素晴らしいところ、こんなトレーニングをしたら弱点が克服できるのではないかというポイント、限られた時間でしたが我々でアドバイスをする。今、ミュージカルの現場、最前線で戦っている3人だからできる形を目指しました。

──才能豊かな応募者のみなさんの中からお一人を選ぶのは大変だったかと思います。

藤岡)メチャクチャ大変でした。圧倒的に歌が上手い方、魅力的な個性を持っている方、想像以上の高いレベルの方がこんなにもいらっしゃるのか!とビックリしました。選考は「ミュージカル界の未来を背負って立てる」「ミューラバの1コーナーという位置づけではなく、あくまでも出演者のお一人として迎えてお客様が納得する」、今回の趣旨に則って審査員3人で話し合い、満場一致で選ばれたのが、こちらの川嵜心蘭さんです。



──オーディションによる選出、おめでとうございます! まずは川嵜さんのミュージカルとの出会いは。

川嵜)もともとピアノを習っていて音楽は身近にありました。歌うことも好きで、小学生の頃から童謡など、歌のコンクールに出て賞をもらうことはありましたが、ミュージカルのことは全然知りませんでしたので、最初は歌手、アーティストになりたいと思っていました。ミュージカルとの出会いは友達と行ったカラオケです。友達が歌う『リトルマーメイド』の♪パート・オブ・ユア・ワールドを聴いて素敵な曲だと思い、自分でも歌うように。そこからミュージカルに興味を持ち、小学校6年生からミュージカル教室に通うようになりました。その時点では週1回の習い事だったのですが、高校1年生で初めて出演した歌唱王(2021年、日本テレビ)で♪パート~を歌ったときにいただいたお褒めの言葉、全国の視聴者のみなさんからの反響をきっかけに本格的にミュージカル俳優を目指すようになりました。

──そして、この春から、故郷の静岡県浜松市を離れ洗足学園音楽大学ミュージカルコースで学ばれているのですね。

川嵜)学校ではタップやバレエ、ダンスの授業や歌の個人レッスン、お芝居など幅広く学んでいます。

藤岡)昆夏美さんや唯月ふうかさんといった洗足出身で活躍している先輩もたくさんいますよね。演じてみたい役も。

川嵜)先輩方が演じられていた『レ・ミゼラブル』のエポニーヌ役や、『モーツァルト!』のコンスタンツェ役です。ソニンさんのコンスタンツェを映像で拝見していたので、オーディションでお会いしたときはドキドキしました。

──夢が膨らみますね! 今回のオーディションには迷いなく応募してみようと思われたのですか。



川嵜)最初にオーディション情報を見つけてくれたのは母です。自分でも調べて、自分の個性を活かせる場所、このオーディションなら一人の表現者としての私をいろんな方に観ていただけるチャンスだと思って応募しました。

──ソニンさんにドキドキというお話もありましたが、いざオーディション会場へ入った際はどのような心境でしたか。

川嵜)部屋に入った瞬間、“本人がいる!”と思いました(笑)。オーディションやコンクールに出たことはありましたが、審査員として目の前に俳優の方がいらっしゃるのは初めてで呼吸が浅くなって、酸素が薄い……みたいな感覚でした。緊張のあまり、歌い出し、いきなり歌詞を間違えてしまいました。

──♪私が生きてこなかった人生(ミュージカル『天使にラブ・ソングを~シスター・アクト~』より)を歌われたのは。

藤岡)これは僕のリクエストです。応募時の歌唱映像(自由曲)を見て、次にその人のどんな歌声を聴きたいかという観点から♪私だけに(『エリザベート』より)、♪私が生きてこなかった人生、♪オン・マイ・オウン(『レ・ミゼラブル』より)の3曲から僕が選び、歌ってもらいました。川嵜さんが送ってくれたのが♪オン・マイ・オウン。あの曲はレガートな曲調なので、ポップスも聴いてみたいと思い♪私が~をリクエストしました。8分の6拍子でゆっくり歌っているととり残されてしまう、感情も少しずつ前に走っていかないといけない、リズム感と感情と表現力が問われる、テクニック的に非常に難しい曲です。ほかにも、カラオケバトルに出場されたときの映像をYouTubeで拝見していたので、ポップスも歌えるだろうと思っていましたが、実際に聴いてみたいと。

──オーディションでは川嵜さんにはどのようなアドバイスを?



藤岡)とくに(笑)。もちろんまだまだ未知数なところもありますが、今の時点でとくに言うことはなくて。川嵜さんの素晴らしいところは、余計なことをなにもしなかったところ。極論を言うと、ただそこに立つことがすべてのお芝居のスタート。そこからふと手が動くことで、視線が移ることでなにかを表現する。それがあった上で、歌や言葉にしっかりと感情が乗っていた。それが彼方くんのコメント「歌の説得力」に繋がったのだと思います。僕らに想像する余白を残してくれた。それがお客さんの前に立ったときもとても重要で、受け手の楽しさってそこにあるように思うんです。それは僕自身が常日頃から気を付けていることでもあり、それをすでにできていることがすごい。

川嵜)自分がコンクールで歌っている動画を見返したとき、動き過ぎるとそちらに気を取られて、言葉が伝わってこないと感じることがありました。どう動くかをあまり決めずに、自然に振る舞うことは大切にしています。

藤岡)ここまで自分を客観視できる力。とてつもない将来性を感じさせる逸材を見出してミュージカル界に送り出せることは自慢! ソニンさん、伊礼さんとともに、後々までずっと言い続けると思います(笑)。

──YouTube動画では藤岡さんから「頭のいいシンガー」という評もありました。

藤岡)あの日のパフォーマンスは緊張から声も震えていただろうし、川嵜さんのベストかというとまたちょっと違うかと思います。それでもいろんなテクニックをバランスよく使って上手いところにもっていくんですよ。

──上手いところ?

藤岡)変な言い方になりますが、ここは地声で出しておかないとおいしくないとか(笑)、地声だとひっくり返りそうな微妙なキーはファルセットとミックスボイスで、ここは当たりにくいからちょっとしゃくろう……と考えながら歌っている。それを、あらかじめ決めてメモしてというのではなく、その場の感覚で微調整していけるという意味で頭のいいシンガーだねと言いました。そこは自覚されていますよね。



川嵜)すごいです。すべてわかってしまうことにとても驚いています(笑)。
実は、最後のロングトーンがあまり得意な音ではないのでミックスでいくか地声でいくかを直前まで迷って、最終的に部屋の音響で決めようと思っていました。歌っている途中も悩みながら、結局、地声で歌いました。地声だ!と思って。

藤岡)それがよかった!最後にメアリー・ロバートの思いが突き抜けて、解放される。そこはやっぱり地声がいい。あともうひとつ、ちゃんと自分の歌のスタミナがわかっていて、ここは押さえてスタミナを温存、ここは早めに切ってブレスをきちんととってポジションが上がっていかないようにしようと計算できるところも上手いと思う。それができている人はどれだけいるのだろうというくらいクレバーなシンガー。お客様にとっても“今の川嵜さんの歌声との出会い”はかなり貴重な体験になると思います。

──改めてオーディション全体を振り返っていかがですか。



藤岡)川嵜さんが素晴らしかったのはもちろんですが、それに拮抗するレベルの参加者の方も複数いらして、僕自身、歌を武器にミュージカル界で戦っている一人としてまだまだ負けていられないという気持ちを新たにしました。また、改めまして応募してくださったすべての方、審査員を引き受けてくれた伊礼さん、ソニンさんに心から感謝しています。

──最後に、川嵜さんの今後の目標とミューラバへの意気込みを!



川嵜)ミュージカル俳優として第一線で活躍するというのが一番にありますが、それだけでなくTPOに合わせていろんなジャンルの歌を歌ってマルチに活躍していきたいと思っています。今回、出演できることは私の中では「急だな」という感じです(笑)。これから大学でいろいろと学んで、舞台のオーディションを受けて……、そう思い描いていたのがまさかこんなに急に、憧れの存在のみなさんと一緒に舞台に立てるなんて。こんなに早くチャンスをつかめたことは嬉しいのですが、まだ信じられないというのが正直なところです。本番まで、しっかりと準備をしたいと思います。

藤岡)ほかのキャストからミューラバで歌いたい歌を募っていますが、ソニンさんからは川嵜さんとのデュエットのリクエストが届いています。その選曲からも“ソニンの本気”が感じられます(笑)。ミューラバでは6人のキャストが対等な関係でステージを作っていきたいと思います。

──藤岡さんからもミューラバ2024への意気込みをお聞かせください! spiさん、林翔太さんも初参加です。



藤岡)spiさんとの出会いは2010年の『RENT』です。近いところでは帝国劇場での『ジャージー・ボーイズ イン コンサート』、本編ではチームは分かれてしまいましたが、歌も芝居も素晴らしい、信頼している俳優です。多才な方なのでなんでもやってくれると期待しています(笑)。林翔太さんは、今年のM's Musical Museum(藤岡さんが構成・演出を手掛けるガッツリと歌を堪能するミュージカルコンサート)を経て、ついにミューラバ登場です。容赦なく(笑)、ネタにも挑戦してもらいますよ! ほかはミューラバには欠かせないソニンさんと前回に引き続きご出演の東山義久さん。そして川嵜さん! 僕の中では、様々な挑戦をしてきたミューラバも3回目となる今回がひとつの節目になると思っています。ある種、集大成になりますので、是非、ご期待ください。





【オーディション【対面審査】ダイジェスト映像その1】

【公演情報】
『Musical Lovers-2024-』
2024年10月26日(土)、27日(日)@玉川せせらぎホール

【出演者】(50音順)
 川嵜心蘭
 spi
 ソニン
 林翔太
 東山義久
 藤岡正明

【バンドメンバー】
 Syn.村井一帆
 Pf. Fuming
 Dr.赤間慎
 Ba.山崎洋
 Vn.吉久亜紀
 Gt.松井ジャーマンJr.

【企画・演出】 藤岡正明
【音楽監督】村井一帆
【舞台監督】泉智幸

【主催】enchanté

公式サイト:https://musical-lovers.bitfan.id/
X:@_MusicalLovers
Facebook:https://www.facebook.com/profile.php?id=61557609030379

おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人

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