劇場(KAATホール内特設会場)に足を踏み入れた瞬間からシーズンタイトル「某 なにがし」の始まりを感じる──『リア王の悲劇』観劇体験。
現代の神奈川から3~5世紀のブリテンへ、俳優、照明、セット、小道具、音楽、それぞれのプロフェッショナルの仕事が観客を物語の世界に導きます。そこで生きる人間たち、リア王と三人の娘、家臣グロスター伯爵と二人の子どもたちの関係はもちろん、ゴネリルとリーガンという二人の強い姉、嫡子エドガーと私生児エドマンド、コーディーリアとエドガー、トムと道化、二人の姉とエドマンドの交わり……たくさんの視点を与える本作。そしてそのドラマのすべての源である木場勝己さんのリア王の存在感! 翻訳は河合祥一郎さん、演出は藤田俊太郎さんです。観劇されたおけぴ会員のみなさまからの感想を舞台写真(撮影:宮川舞子)とともに紹介いたします。
◆キャスト一人一人が無駄なく美しく舞台に立っている印象でした。セットは演者が動かす演出でしたが、シンプルでわかりやすいリア王でした。リア王役の木場さんの喜怒哀楽がとても切なく可笑しくもあり、やっぱり素敵な俳優さんだなと思いました。
◆藤田さん演出×木場さんのリア王は絶対面白いだろうと思い観劇しました。
木場さんの存在感、佇まい、哀愁、さすがでした。威厳がありながらもチャーミングでもあるのが木場さんのリア王の魅力だなと思いました。演出は現代的な印象を受けました。とても面白かったのでおすすめです。
◆この「リア王」は一言で言えば楽しめる悲劇。どの場面にも可笑しさが散りばめられていて最後まで見入ってしまいます。
タイトルロールの木場勝己さんはリア王適齢期です。どのシーンも完璧で素晴らしい。
二人の姉娘、水夏希さん、森尾舞さんはゴージャスで迫力満点。末娘コーディーリアの原田真絢さんもそれに負けていない。役者陣全員素晴らしかったのですが、とにかく女性陣が目立っていました。オススメです。
◆土井ケイトさんのエドガーと章平さんのエドマンドの桎梏や、初めは仲が良かった水さんのゴネリルと森尾さんのリーガンの姉妹の関係の変質が、凄く見応えがありました!また、道化の原田真絢さんの歌声、ひと声で客席の空気がガラッと変わって、圧巻の一言でした!ケント伯爵の石母田さん、初めて拝見しましたが、お芝居がすごく好きでした!
◆姉ふたり(ゴネリルとリーガン)が現代的かつリアルな女性であり、彼女たちに少なからぬ共感を覚える自分がいて驚きました。
グロスター伯の長子エドガーが女性設定であることも新鮮で、しかも全く違和感がなく、演じられた土井ケイトさんから目が離せませんでした。
コーディーリアの力強さ、慈愛に満ちた道化の振る舞いなど、これまでに見たどの「リア王」とも違った斬新な世界観の舞台でした。素晴らしかったです。
◆老い、と言うことを考えさせられるリア王でした。その傲慢さゆえに狂気の道をゆくのがリア王、というイメージがありましたが傲慢なのは勿論ありつつ老いによる判断力の低下、とか何だか悲しさみたいなものを感じました。それにしてもお姉様のお2人、水夏希さんも森尾舞さんは迫力があってとても良かったです。
美女の悪巧みって強いですよね。大好きです!
◆木場さんのリア王のリアリティは勿論のこと、原田真絢さんの道化が歌とともに物語を回していく場面や、悪役の姉たち(水さん森尾さん)、章平さんの上手さ、伊原さん石母田さん二反田さんの正義、姉として設定されたエドガー土井さんの中性的な魅力、シェイクスピア初心者の私にもわかりやすく楽しめました!
藤田さんらしい高さを生かした演出や、嵐の場面の迫力なども魅力的でした。
◆言葉、セリフを受け取りやすい舞台でした。シェイクスピアのセリフは時として言葉に増長な装飾が施されていると感じることもありますがリア王の悲劇はすんなり耳に入ってくると言うかとても聞き取りやすかったです。
特に道化と哀れなトム、原田さんと土井ケイトさんが良かったと思いました。
翻訳、演出、役者とカンパニー全体の力を感じました。
◆今までにもリア王は観劇したことがありますが、今回の台詞演出ともに現代的でストーリーにぐいぐい引き付けられました。時々笑いの起きる一言があったり飽きるとか眠くなるなんてことは全然ありませんでした。
わかりやすいセリフ場面展開などのおかげでリア王を深く理解できた気がします。
役者の皆さんの力量もすばらしく今までの私にとって敬遠しがちな古典ですが観劇して本当に良かったと思います。
◆道化とコーディーリアを同じ俳優さんが演じるバージョンを初めて見ましたが、どちらもリアにとって気付きを与える存在として機能してることがよく分かって「リア王」という作品の構造も明瞭に理解できた気がしました。
◆無料のかなり内容の充実した当日パンフが配布されたのは嬉しかったです。
◆登場人物それぞれのキャラクターがよく描かれており、また体現されてるキャストの皆様も素晴らしかったです。人間の業とは…業がもたらす結末とは…人間の最後は何が残るのだろうと考えました。
演出:藤田俊太郎さんコメント
『リア王の悲劇』開幕に寄せて。数年にわたる準備期間、そしておよそ二ヶ月の稽古期間、一歩一歩着実に、充実のリハーサルを重ねてきました。キャスト、プランナー、スタッフ、関係者一同、誠実に取り組みました。カンパニーの総力を合わせ、作品のテーマを追い求めました。融和や希望、未来へ向けた真実の言葉、多様性の時代に相応しい新しいシェイクスピア劇の誕生です。演劇を愛する方にも初めて舞台をご覧になる方にも、この作品を観劇していただけたらと思っております。是非、劇場に足を運んでいただき、豊かな気持ちで大いに笑って、大いに泣いていただけたら。
KAAT神奈川芸術劇場ホール内特設会場にて、心を込め、親愛なる観客の皆様をお待ちしております。
リア王:木場勝己さんコメント
9月16日、『リア王の悲劇』初日の幕が開きました。
私にとっては61年間の念願が叶ってリア王役をやらせていただくことになりました。
10月3日まで公演は続きます。75歳を目前にしての大暴れ、是非ご覧ください!
グロスター伯爵:伊原剛志さんコメント
充分に稽古する時間がありましたので、やっと初日が開けて、やっとお客様に観ていただける喜びがあります。稽古場で最初に通し稽古をした時に自分自身が面白さを感じたので、お客様にもその面白さを体験して頂きたいです。是非劇場でお待ちしております。
あらすじ
老いにより国王として退位を決意したリアは、国を3つに分け、3人の娘のうち自分を最も愛するものに財産を多く分けようとする。きれいごとを並べる姉たちとは違って三女のコーディーリアは正直な思いを述べるが、リアは激怒し、コーディーリアを勘当する。そして、姉たちは誰よりも父を愛すると言っていたにもかかわらず、リアを嵐の荒野へと追い出してしまう。裏切りの失意にリアは嵐を彷徨い、狂乱の果てに自身と向き合う――。
コメント・舞台写真提供:KAAT神奈川芸術劇場
感想:おけぴ会員の皆様 編集:chiaki 監修:おけぴ管理人