ミュージカル『ラブ・ネバー・ダイ』製作発表レポート


パリ・オペラ座を舞台にした大ヒットミュージカル『オペラ座の怪人』、その美しくドラマティックな音楽を生み出した作曲家のアンドリュー・ロイド=ウェバーが、その後日譚として立ち上げたのがミュージカル『ラブ・ネバー・ダイ』。

2010年にロンドンで初演され、その後、フラッシュアップしてオーストラリアにて上演。日本では2014年に、1988年の『オペラ座の怪人』初演と同じ日生劇場にて初演されました。2019年の再演に続いて、来る2025年1月に同劇場にて3度目の幕が上がります。

オペラ座からファントムが姿を消してから10年、闇に潜みながら生きてきたファントムが、再びクリスティーヌの前に姿を現し──ミステリアスな物語、衝撃の展開、豪華キャストによる歌と芝居の競演、息をのむようなゴージャスなセット、そしてもちろんロイド=ウェバーの圧倒的な音楽が観客の心を掴み、チケットのソールドアウトを記録してきた『ラブ・ネバー・ダイ』。続投キャストに加えて、強力な新キャストが加わる2025年の公演に向けた製作発表が行われました。たっぷり4曲の歌唱披露、会見の模様をレポートいたします。

登壇されたのはファントム役の市村正親さん、石丸幹二さん、橋本さとしさん、クリスティーヌ役の平原綾香さん、笹本玲奈さん、真彩希帆さん、ラウル・シャニュイ子爵役の加藤和樹さん、メグ・ジリー役の星風まどかさん、小南満佑子さん、マダム・ジリー役の春野寿美礼さん。(ラウル役Wキャストの田代万里生さん、マダム・ジリー役Wキャストの香寿たつきさんはスケジュールの都合で欠席)。


【歌唱披露】

1曲目はファントムが歌う♪君の歌をもう一度。ファントムがオペラ座から姿を消して10年、彼はニューヨークのコニーアイランドにあるファンタズマ(見世物小屋)の影の経営者として財を成すも、クリスティーヌへの思いを募らせていた。そんなファントムがクリスティーヌへの愛、満たされぬ思いを歌う、幕開きのビッグナンバーです。市村正親さん、石丸幹二さん、ファントム役続投キャストのお二人が歌い繋ぎます。(指揮は音楽監督兼歌唱指導の山口琇也さんとピアノ伴奏は間野亮子さん)



市村正親さん


1988年の『オペラ座の怪人』初演でもファントムを演じ、本作でも初演から同役を務める市村さん。孤独、情熱、一気にファントムの心の世界へ導きます。



石丸幹二さん


ファントムの狂おしいほどの愛を歌い上げる石丸幹二さん。燃え上がるような情熱、気持ちの高まりに圧倒されます。石丸さんは再演に続いて2度目のファントムです。


2曲目は、ファンタズマで久しぶりに再会したクリスティーヌ、ラウル、メグ・ジリー、マダム・ジリーが歌う♪懐かしい友よ。ファンタズマのスターとなったメグ・ジリー、母のマダム・ジリー、今や“伝説のソプラニスト”、結婚し息子をもうけながらもその結婚生活には不協和音が響くクリスティーヌとラウル、それぞれの心情が絡み合う様子が音楽で見事に表現されたドラマ性の高い1曲。クリスティーヌ役:真彩希帆さん、ラウル・シャニュイ子爵役:加藤和樹さん、メグ・ジリー役:星風まどかさん、小南満佑子さん、マダム・ジリー役:春野寿美礼さんによる歌唱です。



小南満佑子さん、星風まどかさん、真彩希帆さん、加藤和樹さん、春野寿美礼さん



Wメグ・ジリー


オペラ座時代からの親友、クリスティーヌとメグは再会の喜びを分かち合うものの、クリスティーヌがファンタズマの舞台で歌うことを知ったメグの心中は穏やかではなく……。



一方、オペラ座のバレエ教師だったマダム・ジリーとラウルは、そこに漂うファントムの企みを探り合う。




4人の心情が複雑に絡み合う(この日はWメグなので5人の歌唱)、喜びやそれと裏腹な心情を表すロイド=ウェバーらしいナンバー。陽から陰まで幅広い表現が必要な、これがミュージカルの力だと感じさせる演劇的なパフォーマンスでした。


3曲目は、こちらも10年ぶりにラウルと再会したファントムが、ラウルにクリスティーヌを巡るある賭けを持ち掛けるナンバー♪負ければ地獄です。ファントム役は橋本さとしさん、ラウル役は加藤和樹さんという新キャスト同士の対決、歌声はもちろん、芝居の緊張感もヒリヒリする!



ミュージカル『カムフロムアウェイ』ではガンダーの町長、『ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル』では支配人のジドラーとチャーミングで味わい深い役が続く橋本さん。次はガラリと雰囲気を変えてファントムに挑戦です。




対する加藤さんもこの表情。ラウルのファントムとはまた違う屈折した愛や葛藤をどう表現されるのかするかがますます楽しみになる加藤さんの歌唱披露、演技でした。

最後はクリスティーヌが歌い上げるタイトル曲♪愛は死なず。こちらは新クリスティーヌの笹本玲奈さんと初演から務める平原綾香さんによる歌唱。






心情を丁寧に積み重ねる笹本さんの歌唱に心を寄せ、歌い継ぐ平原さんの圧巻の歌唱に心を持っていかれる、お二人の歌声が会場を包み込みます。ファントムの歌う♪君の歌をもう一度で幕を開け、多様な音楽で物語を紡ぎ、クリスティーヌの歌う♪愛は死なずで幕を閉じる本作、劇中でこの曲を聴く瞬間がすでに待ち遠しくなります。


【ご挨拶】


市村正親さん)
ファントムという役と出会ったのは39歳のとき。その後『オペラ座の怪人』から10年後を描く作品があると聞き、運命的な何かを感じていました。お話をいただいたときはファントム俳優としてはやるしかないと!こんなに幸せなことはありません。


石丸幹二さん)
劇団四季時代に初代ファントムを演じた市村さん、僕はその後、ラウルでデビューしました。市村さんと同じようにこの作品に運命を感じています。2度目のファントム、このチャンスを活かして、より磨きをかけてお届けしたいと思います。先日、物語の舞台となるコニーアイランドへ行ってきました。前に行ったときは少しさびれていたのですが、今はきれいになっていて、ファントムがいた頃はこうだったのだろうと思いながら過ごしました。そこで乗った、上でゴンドラが揺れるスウィング観覧車で体感した恐怖をファントム役に活かせるかな(笑)。


橋本さとしさん)
この役で、この歳までご縁のなかった新人賞を総なめにしたいと思います(笑)。初演で市村さんのファントムを観たのですが、幕開きのファントムの背中のカッコよさに完全に持っていかれました。そのときから俳優の誰もがそうであるように僕の中では憧れの役でしたが、まさか演じられる日が来るとは思っていませんでした。そのときの自分に言ってやりたい「お前、やってるで」と(笑)。あの日に観た市村さんの背中を稽古場から追いかけられること、同世代でありながらなかなか共演する機会のなかった石丸さんと念願かなってご一緒できることを楽しみにしています。同じ役なので舞台上での絡みは一切ありませんが(笑)。


平原綾香さん)
私は『ラブ・ネバー・ダイ』でミュージカルデビューしました。今年で10周年、ミュージカルの舞台に立つ上での大事なことを教えてくれた大切な作品です。また作品を通してクリスティーヌの痛み、ファントムの痛みに触れ、なんて素晴らしい作品に出演させていただいたのだろうという感謝の気持ちを抱きました。市村さんをはじめみなさんにも優しく、たくさんのことを教えていただけたからミュージカルを続けてこられました。そこから2019年の再演、そして2025年と、私も運命を感じる作品です。


笹本玲奈さん)
2014年の初演にはメグ・ジリー役で出演していました。今回、クリスティーヌ役としてここにいられることを本当に幸せに思います。身も心もクリスティーヌと一体となり、素晴らしい作品をお届けできるように頑張ります。
私がこれまで演じてきた役はどちらかというと芯が強く、自分の意思で行動する強い女性が多かったので、それとは違うクリスティーヌというキャラクターをどう理解していくか、自分の中に落とし込んでいくか。そこが今回の課題だと思っています。私なりに答えを見つけていきたいと思っています。


真彩希帆さん)
楽曲を繰り返し聴き、初演から観ていた作品に出演できることを嬉しく思います。
心が洗われる美しい音楽にあふれる『ラブ・ネバー・ダイ』には、さきほど披露した重唱のように、この音とこの音が重なるとこうなるんだ!という楽曲もたくさんあります。それをダブル、トリプルキャスト、様々な組み合わせでお届けするので、人による声帯の違い、持ち味の違いでどう変わるのか、ワクワクすると同時にしっかりと務めなくてはと緊張しています。


加藤和樹さん)
今回はじめて参加させていただきます。素晴らしいファントム、クリスティーヌ、ほか素敵なキャストの皆様とこの作品を作り上げられることを嬉しく思います。ダブルキャストの田代万里生さんと一緒に素敵なラウルを作っていきたいと思います。モーリー・イェストンの『ファントム』でファントム役を演じましたので、自分の中にその時のファントム像は残っています。でも、それを一度忘れて、素晴らしいお三方のファントムと対峙しながら本作のラウル役を突き詰めていきたい。ラウルのクリスティーヌへの愛、ちょっとだらしないところもありますが、ただのひどい男ではなく、愛のある愛されるラウルを作り上げたいと思います。


星風まどかさん)
この素晴らしい作品、素敵な楽曲の数々に携われることを楽しみにしています。キャスト、スタッフの皆様からたくさんのことを学ばせていただく日々がとても楽しみです。心して演じます。


小南満佑子さん)
初演からずっと拝見していた作品、幼いころからずっと好きだったアンドリュー・ロイド=ウェバー作品に携われることに感謝をしています。メグに、精一杯、魂を注ぎたいと思います。


春野寿美礼さん)
先輩方の背中を追いかけながら、カンパニーのみなさんとともに感動をお伝えできる作品を目指し、尽力して参ります。


【クロストーク】


初演から同役を務め、今回が3度目の共演となるお二人。「3年前に父を亡くした私に、市村さんが『お父さんがいなくなって寂しいよね。おれがお父さんになってやるからな』とおっしゃってくださいました。クリスティーヌにとってファントムは憧れの人であり、父親のような存在でもある。よりリアルにファントムとクリスティーヌを演じられるのではないかと期待しちゃって…大丈夫ですか」(平原さん)「もちろん!」(市村さん)と息ぴったり。


新ファントム橋本さんから先輩への質問「仮面を着けて演技をする、視界はどんな感じなのでしょうか?」について、市村さんは「視界は全然問題ないよ」、石丸さんからは「汗は覚悟しておいたほうがいいかも」とアドバイスが!やっぱり気になりますよね。3人のファントム勢ぞろいの機会だからこそ飛び出す話題に会場もほっこりしました。


メグを演じていたときも「クリスティーヌの心情ついて、なかなか理解、共感することができなかった」と話す笹本さんに同意しつつ、「演じ終えて3か月後にすとんと(その答えが)降りてきて、涙が止まらなくなった」と自らの体験を明かし、「メグが素晴らしかった玲奈ちゃんが、どのようにクリスティーヌという役を掴んでいくのか楽しみ」と続ける平原さん。笹本さんは「初演時に平原さんの♪愛は死なずをいつも舞台袖から観ていました。あまりに素晴らしく、お金を払いたくなるくらい。今回、その役を平原さんとともに演じられるなんて」と役への思いと緊張、覚悟を語ります。お二人のやり取りを見て「こんなに胸アツなお話のあとに何をお話すればいいのか……」と恐縮半分興奮半分にコメントされている真彩さん。と言っても……真彩さんもモーリー・イェストン作曲の『ファントム』でのクリスティーヌ役の好評からも、“歌姫”の説得力は十分。三者三様のクリスティーヌが楽しみです。


──最後に市村さんよりメッセージを。


市村さん)
『ラブ・ネバー・ダイ』は本当に素晴らしい作品です。残念ながら東京でしか上演できませんが、是非この機会に全国から日生劇場にいらして我々の『ラブ・ネバー・ダイ』をご覧いただけたらありがたいと思っています。今日、ファントムとしてクリスティーヌが♪愛は死なずを歌うのを聴いていましたが、このミュージカル全編にファントムの思いが漂っていることしみじみと感じ、改めて気持ちが引き締まりました。来年1月、どうぞご期待ください。



日生劇場の空間にぴったりなミュージカル『ラブ・ネバー・ダイ』は2025年1月17日開幕です!
【公演情報】
ミュージカル『ラブ・ネバー・ダイ』
2025年1月17日~2月24日@日生劇場

作曲:アンドリュー・ロイド=ウェバー
歌詞:グレン・スレイター
脚本:アンドリュー・ロイド=ウェバー ベン・エルトン
グレン・スレイター フレデリック・フォーサイス
演出:サイモン・フィリップス
   
翻訳・訳詞:竜真知子

ファントム:市村正親/石丸幹二/橋本さとし(トリプルキャスト)
クリスティーヌ:平原綾香/笹本玲奈/真彩希帆(トリプルキャスト)
ラウル・シャニュイ子爵:田代万里生/加藤和樹(ダブルキャスト)
メグ・ジリー:星風まどか/小南満佑子(ダブルキャスト)
マダム・ジリー:香寿たつき/春野寿美礼(ダブルキャスト)


フレック:知念紗耶 スケルチ:辰巳智秋 ガングル:加藤潤一
⻘木美咲希、石川 剛、尾崎 豪、川島大典、神澤直也、木村つかさ、咲花莉帆、白山博基、菅原雲花、鈴木満梨奈、高瀬育海、髙田実那、⻑瀬可織、光由、村上すず子、安井 聡、吉田玲菜 (五十音順)
スウィング:熊野義貴、小峰里緒

※クリスティーヌの息子グスタフ役は、今後オーディションを経て決定

公演HP:https://horipro-stage.jp/stage/loveneverdies2025/

おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人

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