この世に100の悲しみがあっても
101個目の幸せを書き足せばいいオリジナル・ミュージカル『SONG WRITERS』、再々演の幕が上がる!
2013年秋、日本を代表する作詞家・森 雪之丞さんと俳優であり演出家の岸谷五朗さんの手で誕生したミュージカル『SONG WRITERS』。多才なキャストの歌・ダンス・芝居とコメディセンスが相まって、観客を大いに沸かせたこの作品は2015年夏に早くも再演。その後、長らくその復活が待ち望まれていましたが、約10年の時を経て、ついに復活!
ブロードウェイでの自作のミュージカルの上演を夢見る自信過剰な作詞家エディと気弱な作曲家ピーターの幼馴染コンビの奮闘を描く本作。女優の卵マリーやお調子者の音楽ディレクターのニックとの恋と友情、そこにギャングの攻防が絡んで──次第に錯綜していく現実とエディの物語の世界。コメディ、サスペンス、ラブ……そして成長譚!見どころ聴きどころ盛りだくさんなミュージカル『SONG WRITERS』の公開ゲネプロ、囲み取材模様をレポートいたします。
【囲み取材】
──いよいよ明日、再々演の初日を迎えます。脚本・歌詞・音楽プロデュース:森 雪之丞さん
森雪之丞さん)
47年間ソングライターをやっている森雪之丞です。
岸谷五朗さん)
本物だ!
森さん)
ただミュージカルに目覚めたのは今世紀に入ってからなので、ちょうど20年。訳詞や作詞の仕事をしているうちに、自分で物語を書いた方が、歌がある芝居の流れがとても作りやすいだろうということで、日本オリジナル・ミュージカルを作ってみようと思ったのが2013年。その後、2015年に再演、そして9年経って再々演を迎えます。こうして再演されることで、日本でオリジナル・ミュージカルを作っているみなさんにも勇気を与えることができる。クリエイターの方も、制作の方も、そしてもちろんキャストの方も勇気をもってこれからも日本のオリジナルに挑んでいただきたいと思います。
演出:岸谷五朗さん
岸谷さん)
10年以上前に創った作品が、こうしてまた明日初日を迎える。ご褒美をいただいたような気持ちです。僕自身、初日が楽しみです。こういうのもなかなかないことで、初日前は不安の方が大きいんです。でもこの素晴らしきキャストたちがめちゃくちゃ面白く、そんな役者の力で命をもった雪之丞さんが書いたキャラクターたちが劇中で本当にキュートに輝いています。明日が待ち遠しいです。
屋良朝幸さん
屋良朝幸さん)
役者陣も初日をずっと待ちわびていました。でも正直言うと、稽古が楽し過ぎて稽古期間が終わって欲しくないと思ってしまいました。こんなことははじめてです。
10年前は自分も必死でしたが、歳を重ね、余裕とまではいかずとも、雪之丞さんが書いた本に稽古場で五朗さんとああでもないこうでもないと向き合っていた時間がむちゃくちゃ楽しくて。あと一ヶ月はそれで楽しめたんじゃないか……ぐらいなものが詰まっている作品です。ここからみなさんの前で公演を重ねることで、さらにブラッシュアップしていけると思います。それが舞台の醍醐味。千穐楽まで、僕たちがどう変わっていくのかも観ていただきたいと思います。
中川晃教さん🎂
中川晃教さん)
2013年の初演を今も思い返しながら、一瞬一瞬が愛おしい、そんな日々を過ごしています。舞台というのは、こんなにも愛おしいものなんだと再度教わっているような気持ちにさせてくれるのがこの作品。携わるみなさんの大きな愛が詰まっています。
初演の公演中に僕は30歳から31歳になりました。そして実は、11月5日、今日が42歳の誕生日なんです。この役、この作品を通して、自分の歩みを振り返り、今に感謝できる。それも『SONG WRITERS』からの贈り物だと思っています。すべての思いを込めた愛おしい舞台になっています。42歳の抱負は──元気、健康第一です!
実咲凜音さん
実咲凜音さん)
私も、初日を前に不安なこともありますが、ワクワクのほうが断然大きいです。
今回はじめて参加しますが、マリーは舞台上を駆け回っていてとってもハード。それを身にしみて感じていますが、楽しい共演者のみなさんと一緒に1か月走り抜けるのが楽しみです。こちらのお三方(屋良さん、中川さん、武田さん)がワイワイしていると、いい意味でなんだか小学校かな?みたいな(笑)。
お三方)
褒められてますね(笑)!
実咲さん)
心の若さがみなぎっていて、それがこの作品にパワーを与えてくださっています。
武田真治さん
武田真治さん)
屋良さんが言った通り、僕も稽古場に通うのがこれほど楽しい作品ってあるかなと思っていました。楽しく学びも多い、充実した稽古期間でした。9年前に、この作品を再演させていただいたときに、もう自分自身はやり切ったと思っていました。でも雪之丞先生が綿密に書かれた脚本はもっともっと深掘りするべきことがあり、歳を重ねて再集結したキャストで膝を突き合わせて、圧倒的なリーダーシップの五朗さんの演出のもと素晴らしいものができました。我々、10年、歳を取りましたがパワーアップした舞台を明日から届けられるのではないかと思っています。ご期待ください。
──この作品で出会った屋良さんと中川さん、3度目の共演になりますがお互いにどんな存在?中川さん)
運命の人と出会ったなみたいな。そして同じ板の上に立つ仲間として、自分にないものを持っている方だと。
(頷く屋良さん)
──自分にはないものを持っている、具体的には?中川さん)
それは……このなににも臆さない感じです。そして舞台に立つ者としての厳しさを持っている方だとも思っています。
屋良さん)
アッキーは、ある意味、器用じゃないところがあるんです。だからこそ台本、台詞に向き合ったとき、わからなければわからないと立ち止まる。動物的な感覚なんです。僕は真逆で、わからないなりに動けてしまうので、それをすごくうらやましく感じました。
──初参加の実咲さん、稽古場の様子をお聞かせください。実咲さん)
みんな自由で個性がすごいですよね(笑)。
岸谷さん)
うん、ちょっと押さえてほしいね(笑)。
実咲さん)
みんなが真剣に演じているから楽しい、あの空間がすごくプロフェッショナルでいいなと感じていました。屋良さんがツッコミで、中川さんがボケとかですよね。
屋良さん)
舞台の表も裏もね(笑)。
実咲さん)
そう!みなさん、このままの自然体なんです。
──ちなみに稽古場での武田さんはどのようなポジションでいらっしゃったのでしょうか?武田さん:ふわっと年上(笑)
武田さん)
僕の役割は……年上。それに尽きるんでしょうね。なんとなく、ふわっと年上(笑)。この場を借りて訊きたいんだけど、稽古場では、みんなが僕を笑かしにきているように感じたんだけど。
屋良さん)
いやいやそんなことは(笑)。はじめての立ち稽古で五朗さんから「10年前とか忘れて、3人、一回好きにやって」と言われた僕らは好きにやりすぎて、「精神年齢が下がったね」という感想をいただきました。その時に真治さんが新キャストに向かって「ね、これでみんな安心したでしょう」って(笑)。みんなをリラックスさせてくれました。
中川さん)
真治さんが綿密に書かれた脚本の深いところを読み解いていき、僕らにも言葉をくださる。それによって発見がたくさんありました。あと、笑わせようというのではなく(笑)、真治さんのキャラクターとニックのキャラクターに対する愛がマックスになっている証だと思います。
──10年で変わったところは?屋良さん)
アッキーのダンス!10年前はできなかったステップができている!振付を覚えるスピードも上がったし、技術的にもパワーアップしています。ちょっと上からでごめんなさいっていう感じですが、ダンスに関してだけは許してね。すごく上手になった!
中川さん)
嬉しい。♪ソングライターズのシーンだよね。ひとつひとつ丁寧に教えていただき、みなさんの力を借りてようやくついていけるようになりました。
──ここで森さんの“心配事”が明かされます。マリー、ピーター、エディ、ニック
森さん)
心配なことあるんです。クリエイターとしては、僕がこの世にいなくなっても、代々違うキャストが演じ、受け継がれ、作品が残っていったら最高じゃないですか。だけど今回思ったのは、このキャスト以外考えられないということ。ひょっとしたらこの作品はもうこれで終わってもいいのかなって。みんながエディであり、ピーターであり、ニックであり、マリーで……もう、困ったもんですよ(笑)。
──最後に屋良さん、中川さんからメッセージを。中川さん)
こうして歳を重ねていく喜びをも味合わせてくれる、宝物のような作品、役です。登場するみんながキラキラと輝けるのも、この作品が持っている魅力のおかげ。それを今、みなさんにお届けできることを嬉しく思います。『SONG WRITERS』の魅力を体感しに、ぜひ劇場にお運びください。
屋良さん)
“盛りだくさん”という言葉がこんなに似合う作品はありません。僕ら役者もそうですが、照明さんや音響さん、スタッフさんの力もすごく大きく、みんなで作り上げていることを強く感じています。演出部のスタッフさんは金髪のかつらをかぶって登場するので、そこも秘かな見どころ!つまりみんなが登場人物!この団結力が『SONG WRITERS』の世界を作るうえで大切。2024年、最高に笑える作品、たくさん笑ってストレスを吹き飛ばしに来てください。
【公開GP】
ミュージカル愛、舞台愛、劇場愛にあふれる『SONG WRITERS』に心躍る!作曲家ピーター(中川晃教さん)と作詞家エディ(屋良朝幸さん)
舞台は1976年のニューヨーク。自信過剰な作詞家エディ・レイク(屋良朝幸さん)と気弱な作曲家ピーター・フォックス(中川晃教さん)の幼馴染コンビが夢を叶えるべくミュージカルの創作に励む日々が描かれます。仲間たちも個性豊か!
エディが偶然出会った女優の卵マリー・ローレンス(実咲凜音さん)
お調子者の音楽ディレクターのニック・クロフォード(武田真治さん)
まったくタイプが違うけれど気の合う二人、エディとピーターを自然体で演じる屋良さんと中川さん。小競り合いも微笑ましい。そこに新キャストの実咲さん演じるマリーが振り切ったお芝居で新しい風を送ります。
こちらはエディの物語の世界。登場人物はマフィアのボス、カルロ・ガンビーノ(コング桑田さん)やニューヨーク市警の刑事ジミー・グラハム(相葉裕樹さん)、カルロの手下のベンジャミン・デナーロ(蒼木陣さん)やアントニオ・バルボア(東島京さん)、クラブ歌手のパティ・グレイ(青野紗穂さん)……。
ベンジャミン(蒼木陣さん)ジミー(相葉裕樹さん)カルロ(コング桑田さん)アントニオ(東島京さん)
写真中央)パティ(青野紗穂さん)
ぐっと大人の雰囲気を醸し出す相葉さんと青野さん。その妖艶な美しさはまるで物語から飛び出してきたような……というかまさに物語から飛び出してきたジミーとパティなのです。そんな美しさからのオモシロ、容赦なくコメディセンスさく裂です。お二人のキレのあるダンスも美!
エディの執筆は次第に行き詰まり、やがて物語と現実が入り交る。現実が物語に引っ張られているのか、それとも物語が現実に引っ張られているのか、エディは自身のミュージカルの世界の中に取り残される…
錯綜⁈
屋良さんはダンスシーンの魅せ方が秀逸なのはもちろん、アクションシーンも美しい! そして会見でもあったように中川さんも軽快なステップ、華麗な舞いを披露。進化し続けるお二人なのです。そして屋良さんと中川さんが醸し出す幼馴染感は再々演にしてさらに高まり、色とりどりの衣裳に負けないくらいに個性豊かな仲間たちと織りなすドラマも鮮やか!
また本作はKO-ICHIROさん(Skoop On Somebody)、さかいゆうさん、杉本雄治さん、そして中川晃教さんと多彩な作曲家による楽曲も大きな魅力。歌って踊って泣いて笑って……本当にエネルギーに満ち、そしてその源として、作り手のみなさんのミュージカル愛、舞台愛、劇場愛が強く感じられる作品。果たしてエディとピーターにハッピーエンドは待っているのか! その結末はぜひ劇場で味わってください。
カーテンコールの光は舞台に携わるすべての人、さらには観客へも向けられたものだと思える幸せ。帰り道、「明日も頑張ろ!」と思うのでした。
ここからはあまり内容に触れずに、舞台写真をご紹介してレポートを終わろうと思います。
公演は11月6日〜28日まで日比谷 シアタークリエにて、その後、大阪 森ノ宮ピロティホール、愛知 Niterra日本特殊陶業市民会館ビレッジホールで上演です!
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人