Theatre Polyphonic 第7回公演 ミュージカル『翼の創世記』稽古場レポート

ミュージカル『翼の創世記』@ブルースクエア四谷
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演出家の石丸さち子さんが企画・脚本・演出・プロデュースを手掛けるTheatre Polyphonicの第7回公演ミュージカル『翼の創世記』まもなく開幕! 新作オリジナルですので、もちろん世界初演です。作曲・音楽監督・演奏はこれまでにも石丸さんと数々の名作を生み出している森大輔さん。

物語の登場人物は世界初の動力有人飛行を成し遂げたライト兄弟、兄のウィルバー(ウィル)、弟のオーヴィル(オーヴ)、そして妹キャサリン(ケイティ)の3人です。それぞれの生き様が奏でる栄光と苦悩のドラマに笑い、泣き、胸を熱くする!
『翼の創世記』をまさに創り上げる稽古場にお邪魔してまいりました。

石丸さんの作品が観客の心を動かす、その魅力の理由がわかる稽古の様子をレポートいたします。



DION 百名ヒロキ 山﨑玲奈 森大輔 門田奈菜 福室莉音
上川一哉 鈴木勝吾 石丸さち子 上口耕平 工藤広夢(敬称略)

3人ミュージカルと言っても稽古場は賑やかです。今回の公演は、4人のウィル、3人のオーヴ、3人のケイティによる5チーム体制。稽古場に入ると、総勢9名(鈴木勝吾さんはウィルとオーヴの2役)のキャストが稽古開始前から声と身体のウォーミングアップや自主練に励んでいる様子が目に飛び込んできます。

キャスト(敬称略)
ウィルバー・ライト役:上川一哉 上口耕平 鈴木勝吾 百名ヒロキ
オーヴィル・ライト役:鈴木勝吾 工藤広夢 DION
キャサリン・ライト役:門田奈菜 福室莉音 山﨑玲奈


いよいよ稽古スタート! この日の稽古前半はキャストを入れ替えながら、いくつかの場面の確認をする抜き稽古が行われました。


【研究してください】

まずは1892年、ウィル25歳、オーヴ21歳、二人とも“自転車に夢中”という場面です。ちなみに本作ではウィル役は11歳から、オーヴ役は7歳、ケイティ役は6歳から演じます。

成績優秀でスポーツ万能、順風満帆だった人生で大きくつまずいてしまった兄、兄の背中を追い続けてきた弟、一度止まった兄弟の時間が再び動き出す疾走感あふれる場面。自転車で町を駆け抜ける二人の姿が、ハンドルを模した小道具を使って表現されます。二人の関係性という意味では、その後もずっと続く、弟の兄への憧れ、それをしっかりと受け止める兄が印象付けられます。

ここで石丸さんが大切にされていたもののひとつは、弟の「さすが兄さん」という台詞に込められた“喜び”“憧れ”の大きさ。アクセントの置きどころで喜びの増幅度が微妙に変わる。その増幅されたエネルギーこそが、二人が再び動き出す動力になるような、芝居の力学を感じます。そしてそれに続く兄の「そうかな」というリアクション。そこはクスッと微笑ましい場面になりそうです。どうやら兄弟の組み合わせによって少しずつ雰囲気が変わりそうなので、その違いも楽しみですね。

また、同じ台詞でも会話のトーンで発するか、金言・格言的にかっちり言うかでもその印象は大きく変わります。どちらでいくか、方向性の確認もした上で石丸さんがひと言「研究してください」。この言葉は、この後も何度も聞かれました。決して答えを与えるのではなく、求めるものを受け渡しあとは兄弟で、チームで研究して自分たちの芝居を見つけて欲しい。そんな思いが込められた言葉です。


【試行錯誤から生まれるもの】

続いては、ファーストフライト、初めての動力飛行実験。飛行実験ではもちろん失敗してしまうこともあります。ここでは風にあおられ墜落してしまうという場面の動きを作っていきます。小さな劇場の限られた空間で墜落をどう描くのか、どう表現するのか、その全貌は本番を見てのお楽しみですが、俳優の肉体をフルに使って緊張感と臨場感がしっかりと生み出されています。

まずは兄ウィル役の4人が交代で挑戦。一人ひとり体格も身体の使い方も異なるため、ここでも石丸さんがイメージを渡して、そこからはそれぞれが自分に合う形を見つけていく作業となりますが、その過程では「ここちょっとやりにくいよね」「こうするとやりやすいよ」と密に情報交換。みんなでああだこうだと試行錯誤の末にようやく「これだ!」というものにたどり着いたとき、誰からともなく「ライト兄弟もこんな風に作っていたのかな」という言葉がこぼれ、みんなで頷いて笑い合う。

上手くいかない葛藤、形が見えてきたときの喜び、その一つひとつの感情が稽古を通して裏付けのあるものになる瞬間を目撃することができました。


【挑戦の一つひとつが作品を豊かに】

次にご紹介するのは、兄たちからの便りを待つしかないケイティが自らを奮い立たせる、「カイロスの前髪」というナンバーの場面です。大地からわき上がるようなエネルギーを感じるとてもパワフルなナンバーを三人のケイティがそれぞれの方法で表現。石丸さんが導く言葉も色とりどり、門田奈菜さんには「ゴスペルのように全身を使って、羽ばたいて!」と、山﨑玲奈さんには「ちょっと野獣のように」、福室莉音さんには「悪い感じで」と三者三様にアドバイス。すると変わるんです! そしてやっぱり最後は「研究してください」、どんな仕上がりになるのか本番が楽しみです。また、ここで感じたことは、なにか新しい表現、これまで出していなかった感情の出し方に挑戦することを重んじている稽古場だということです。石丸さんは、たとえ歌声がかすれてしまってもそこに気持ち、魂が乗っていたらその挑戦をよしとする。もちろん本番に向けて歌声をコントロールすることは必要ですが、芝居を掴むためには失敗を恐れずまずやってみる、出してみる、動いてみる。稽古場ってそういう場所なんだなと改めて感じました。ほかの場面でも、恐怖をマイムで表現する際に、元となる感情を声に出して作ることで動きが芝居になるということもとても印象的でした。この日に見た芝居は本番ではまた違うものになっているかもしれません。でも、その挑戦の一つひとつが作品を深く豊かにしていくのです。

妥協をしない石丸さんですので、違うところは違うとズバッと伝えます。でもその挑戦の意図、目指すべき方向性が間違っていなかったら、俳優の考えを尊重しともに新しい方法を模索していく。そうやって5つのチームが、コピーではなく、それぞれの翼をもって羽ばたいていく、そんな『翼の創世記』ファーストフライトになりそうです。



【作家、作曲家がそこにいるということ】

新作オリジナルミュージカル、稽古場に作・演出の石丸さん、作曲の森さんがいらっしゃることのすごさも随所で感じました。まず森さんはまるで呼吸をするように音楽を奏でる方。稽古中、芝居のディスカッションで煮詰まりそうになっても、うっすらと生BGMが流れていることで部屋の空気が滞留しそうになるのを心地よく対流させるような効果(⁉)もあります。当然、そのような副次的なものだけでなく、芝居に合わせてその場で音楽がアレンジされていくところにオリジナルの強さを感じます。作家の意図、俳優の生理を考慮し、「歌いにくかったらそこはちょっと考え直そうかな」「こうしたらどうかな」など森さんからもアイデアが投げかけられます。そしてこれだけはなんとしてもお伝えしなくては!楽曲がメチャメチャいいです!!作品公式SNS(https://x.com/polyphonic24)でも一部公開されているので、チェックしましょう!

また稽古をしながら、台詞がカットされたり復活したり、石丸さんも取捨選択の連続。こうして芝居のテンポやリズムが整えられていく、まさに創作の場。戯曲は、歴史的事実からピックアップされた出来事で叙事的に綴られ、それが俳優によって血が通う物語となるのですが、エモーショナルになりすぎず、科学者としての冷静さもにじませる絶妙の展開。その中で繰り返し(一部、少し言葉を変えて)出てくるフレーズが積み重なって、兄弟の歴史となり……あるときグッとこみ上げてくるんです!


【ともに高みを目指す】

クワトロ、トリプルキャストが組まれている今回の公演、同じ役でも個性もキャリアも異なる俳優さんがキャスティングされています。若手チームが歌っているときに、先輩たちがカウントをとったり自席から一緒に歌ってサポートしたり、また身体の使い方で悩むキャストがいたら上口さんや上川さんといったダンスにも長けたキャストがアドバイスをしたり。それは稽古中だけではありません。休憩中もあちらこちらでディスカッションが絶えないカンパニーです。そこに自然に石丸さんも加わったり、ハーモニーを確認していると森さんが伴奏したり、これも作品への愛の表れですね。


【通し稽古】

最後に通し稽古の様子を少々。ノンストップで2時間10分(予定)の本作、この日の通し稽古はいろんなパターンのキャストの組み合わせで演じ継いでいきます。そのため、場が変わった途端、鈴木さんが弟から兄へチェンジするというレアな瞬間も(とても鮮やかに変わる!)。もちろん大きな道筋として台本に書きこまれた3人のキャラクターがあるのですが、それぞれのキャラクターが持つ要素、ウィルは実直な研究者/落ち着き/風変り、オーヴは光る商才/お兄ちゃん大好き/客観性、ケイティは強さ/愛らしさ/おおらかさの配分が演者によってそれぞれ異なるような面白さがあります。

それぞれの印象は、ウィル:上川さんのキラッキラの瞳、上口さんの実直さ、鈴木さんの情熱、百名さんの誠実さ、オーヴ:鈴木さんの優しさ、工藤さんの素直さ、DIONさんの透明感、ケイティ:門田さんの愛らしさ、福室さんの目ヂカラ、山﨑さんの大胆さです。あくまでも個人的な、そしてこの日のお稽古でということをお含みおきくださいね!

ここからの稽古で、作品がどう深まり、どう磨き上げられるのか。30曲を超える色彩豊かなミュージカルナンバーが彩るライト兄弟の物語、ミュージカル『翼の創世記』ファーストフライトはもう間もなくスタート! カンパニーの挑戦を見届けましょう。


ものがたり

「はじまりから全て二人だった」
「何もかも二人で分けあおう」


晩年のオーヴィル・ライト(オーヴ)の回想で物語は語られます。
モノ創りが好きで、またそれに長けていたライト兄弟は「ライトサイクル商会」を開店。
兄ウィルバー(ウィル)の明晰な頭脳、弟の商才により自転車事業は好調!
そこにドイツのリリエンタールの墜落死の報せが届く、「死」と同時に「それでも彼は飛んだ」ことを強く認識するウィル。こうして兄弟の空への挑戦が始まります。
妹のキャサリン(ケイティ)の支えを得て、タイプの違う兄と弟は“安全な飛行機械”を夢見て二人三脚で研究、実験に没頭し、1903年12月17日、ついに世界初の動力有人飛行を成し遂げます。
しかし、彼らのファーストフライトから、世界は音をたてて変わっていきます。兄弟の夢の飛行機械は、第一次世界大戦で、偵察機、ひいては戦闘機として急速に発展を遂げていくのです。



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【公演情報】
Theatre Polyphonicの第7回公演
ミュージカル『翼の創世記』
2024年11月29日(金)〜12月25日(水)@BLUE SQUARE YOTSUYA

<スタッフ>
企画・脚本・作詞・演出:石丸さち子
作曲・音楽監督・演奏:森大輔

<キャスト>
ウィルバー・ライト役:上川一哉 上口耕平 鈴木勝吾 百名ヒロキ
オーヴィル・ライト役:鈴木勝吾 工藤広夢 DION
キャサリン・ライト役:門田奈菜 福室莉音 山﨑玲奈

公演HP:https://s-ishimaru.com/wings/

おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人

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