2025年4月、再々演の幕が上がるミュージカル『フランケンシュタイン』。人類の“生命創造”への飽くなき探求”と“愛と友情”をテーマにした大人気作の製作発表会見が行われました。ご登壇者は、潤色・演出の板垣恭一さん、ビクター・フランケンシュタイン/ジャック役の中川晃教さん、小林亮太さん(Wキャスト)、アンリ・デュプレ/怪物役の加藤和樹さん、島太星さん(Wキャスト)です。
古典の名作「フランケンシュタイン」を大胆なストーリー解釈と流麗かつメロディアス、そして壮大な音楽でミュージカル化した『フランケンシュタイン』。韓国で生まれた本作は、2017年に日本で初演され、メインキャスト全員が一人二役を演じるというトリッキーな演劇的作劇に加え、壮大でスピード感溢れる衝撃の物語に観客を熱狂の渦に巻き込みました。2020年の再演に続いて、待望の再々演となります!
ビクター・フランケンシュタイン:生命創造の研究に没頭する若き天才科学者
ジャック:人間同士を格闘させるギャンブル闘技場を営む悪党
アンリ・デュプレ:非業の最期を遂げるビクターの親友
怪物:ビクターによって生み出された名もなき創造物
ストーリー
君と一緒に夢を見られるなら、死んでも後悔しない
美しき友情はやがて、哀しき復讐へと変わる
19世紀ヨーロッパ。科学者ビクター・フランケンシュタインが戦場でアンリ・デュプレの命を救ったことで、二人は固い友情で結ばれた。“生命創造”に挑むビクターに感銘を受けたアンリは研究を手伝うが、殺人事件に巻き込まれたビクターを救うため、無実の罪で命を落としてしまう。ビクターはアンリを生き返らせようと、アンリの亡き骸に自らの研究の成果を注ぎ込む。しかし誕生したのは、アンリの記憶を失った“怪物”だった。そして“怪物”は自らのおぞましい姿を恨み、ビクターに復讐を誓うのだった…。
まずは歌唱披露から。名曲ぞろいの本作から、3曲が披露されました。
新キャストの
ビクター:小林亮太さん&アンリ:島太星さん による「ただ一つの未来」~生命創造の神秘を解き明かそうと意気込むビクター・フランケンシュタインに対して、神の領域に踏み込むことを諫めるアンリ・デュプレのデュエットナンバー~
ビクター:小林亮太さん アンリ:島太星さん
続いて
怪物:加藤和樹さんによる「俺は怪物」~ビクターによって生まれ出され、人は自分を怪物と呼ぶが、いったい自分は何なのか。絶望と希望が混在しながらもがき苦しむ姿が展開するナンバー~
怪物:加藤和樹さん
最後は、
ビクター:中川晃教さんによる「偉大な生命創造の歴史が始まる」~天才科学者ビクター・フランケンシュタインが生命創造の神秘を解き明かす。友を救うため、世界を救うために神の領域に挑戦するナンバー~
ビクター:中川晃教さん
楽曲を聴いた瞬間にスイッチONです! 早くも身も心も『フランケンシュタイン』モードに!! それにしてもいずれもエネルギーを要するビッグナンバーですね。このエネルギーを浴びる日が待ち遠しいです。そして、どの楽曲もピアノ前奏を聴くだけで、情景や感情が蘇るという音楽の力も感じる取材班なのでした。(ピアノ演奏:八木淳太さん)
【会見】
潤色・演出:板垣恭一さん
板垣さん)
新しいキャストも迎え、演出家としてはもう一歩新しい『フランケンシュタイン』を生み出したいと思っています。誰よりも、僕が再々演を楽しみにしています。
中川晃教さん)
再々演が決まったと聞いたとき「ああ、またあの日々が始まるのか」と思いました。“体当たりで挑む”、僕にとって『フランケンシュタイン』はそんな作品、役どころです。
小林亮太さん)
製作発表の場に立ち、ようやくスタートラインに立たせていただいたような気がしています。全身全霊で挑んでいきたいと思います。
加藤和樹さん)
僕は本当にこの作品が大好きです。板垣さんよりも、誰よりも、この再々演を楽しみにしているのは僕だと自負しています(笑)。新たに加わったキャストとともに、どのような『フランケンシュタイン』が生み出されていくのか、出演する俳優としても、いちファンとしても楽しみです。
島太星さん)
出演が決まってから、僕の生きる動機が『フランケンシュタイン』なんです。自分の生命をかけて臨ませていただきたい作品でございます。
──本作が、誕生した韓国でも熱狂的な支持を得た理由はどのあたりにあるか。日本で上演するにあたり大切にしたところ、再々演でのアプローチについて。板垣さん)
古典の名作を韓国カンパニーがミュージカル化した際、もとの「人は神になれるか」というテーマに「友情」というモチーフを入れた。ビクターとアンリが友人関係だったというところから、この怪物が生み出されていくところが素晴らしいアレンジだと思います。それがお客さんの支持を得た理由だと考えます。日本版を作るにあたっても、そこがポイントとなります。ビクターとアンリがなぜ惹かれ合い、なぜアンリは自分の身を捧げてまで……という流れに関して、オリジナルカンパニーの許可を得て日本版は台本を書き足しています。再々演にあたっては、ビクターがなぜ人間を生み出すところまで思いつめたのかというとこで、さらに台詞を微調整し、演出も一部変えようと思っています。
──中川さん、加藤さんは3度目の挑戦となる今回、どのようなアプローチを考えているか。中川さん)
初演、再演と、ビクター役Wキャストだった柿澤勇人さん、アンリ役Wキャストだった小西遼生さん、そして隣にいる加藤和樹さんと4人で、どうやって役を自分たちものにしていくかを稽古場から試行錯誤してきました。舞台に立ち、お客様の反応も感じるなかで、それぞれの役としての実感がわいてきたことを覚えています。
2020年1月~2月の再演は新型コロナの感染拡大が社会を大きく変えようとするときに、大阪で大千穐楽を迎えました。あれから4年、僕自身、舞台に立つ、役を演じることへの向き合い方が変わりました。それによって先ほど、歌唱披露で1曲歌っていても、自分の中に芽生える思いが変化していることに気づきました。作品から与えられる翼を自由にはばたかせる“想像力”とともに、大地に根を張り天まで伸びる樹木のような“実感”をもって役作りに臨むことで、ビクターがなぜ生命創造に手を染めたのか、そこに悲哀のようなものが見え隠れすればと思います。
加藤さん)
思い起こせば2017年の初演に向け、韓国でこの作品を観劇しました。「これは大変な作品になる」「なんて素晴らしい、音楽、セット、お芝居なのだろう」自分の中に生まれた2つの思いを鮮明に覚えています。事実、僕にとって、初めて韓国オリジナルの楽曲に触れた作品として、中川晃教さんと初めて共演した作品として、忘れられない、大切な作品となりました。
再演から考えると5年ぶりとなる今回、まだまだ成長過程にある作品です。僕ら二人もまったく違うビクターとアンリになるだろうし、小林くんと島くんをはじめとする新しいキャストも加わります。再々演というよりも新作を作る気持ちで挑もうと思っています。
初演のときから、僕の中にはずっとアンリと怪物がいるんです。ようやくまた、彼らが表に出られることを一緒に喜びたいと思っています。
──小林さん、島さんへ、本作への出演、役が決まったと知ったときの心境について。小林さん)
本当に信じられなくて。マネージャーに間違いではないかを確認したくらい信じられませんでした(笑)。この作品で描かれる冷たさ、絶望や人が落ちていく様(さま)が僕は好きです。本作を拝見したときに感じた「ミュージカルでここまで落とされるんだ…」という思いとともに、落ちていくからこそ見えるビクターとアンリの間に芽生える光、周りの人の光に、お客さんとしてどこか救われる感覚がありました。
出演が決まって以来、ボイストレーニングがない日も毎日楽譜を鞄に入れて持ち歩いています。表紙も中身もすでにビリビリです(笑)。中川さん、加藤さんの背中を見て、必死に食らいついていきたいと思います。
興奮を隠せない島さんに、「一回、落ち着こう」と加藤さん
島さん)
出演が決まったときは、もうなんか、驚きが強すぎて震えてしまいましてですね。
その日から今日まで、本当に何が起きるかわからない。やっぱり島じゃだめだとなったらどうしようと不安を抱いていましたが、今日ここでみなさんの前に立ち、こうして写真に収めていただき、PVを見て、これで本当に本番までいけそうです。すごく楽しみで、今、鼓動が高まっております。
先輩方を見て、もっともっとやらなきゃいけないという思いもありますし、板垣さんの演出のもとお芝居ができることも嬉しいです。そのすべてを携えて生死をかけてチャレンジさせていただいてもよろしいでしょうか。
加藤さん)
生きてもらわないと困るからね。
島さん)
はい、本当にもう、頑張ります!よろしくお願いします!
──『フランケンシュタイン』ならでは、ほかの作品とは違うところ、魅力について。お気に入りの台詞や歌詞なども併せて教えてください。島さん:ほかの作品との違いは、そもそも台詞もなにもかも違う……
みなさん:そりゃそうだ! 違う作品だから!
島さん)
僕にとって一番違うのは、作品に対する命のかけ方が尋常ではないというところです。
お二人の映像も何回見たかわからないくらい見ましたし、韓国でも見てきました。稽古前の段階からできることとして肉体から作っていこうと、1年以上トレーニングに励み、食指導も受けながら頑張っております。
好きな台詞は、先ほど歌わせていただいた「ただ一つの未来」にある「殺すための科学じゃなく、生かすための科学」です。それがグッとくる理由は、僕が生まれる前も、今も、世界ではさまざまな紛争、戦争が起きています。この「生かすための科学」、みんながそういう気持ちであれば世界は平和だったのかもしれないと、この作品を通して思うからです。
小林さん)
この作品を見たときに感じた絶望、なんだか臓物をえぐられるような感覚が魅力だと思っています。そこに舞台の表現、演出として、冷たい氷や燃えさかる炎のような、日常では人と人とが互いに与えたり、受け取ったりできないほどのエネルギーがこの作品にはある。そういった僕ら人間が生み出すエネルギーをお客様にしっかりとお届けしたいと思います。
好きな台詞は、怪物が2幕で言う「お前たち人間こそが怪物だ」という台詞。あの時代だからではなく、現代でも、正義を貫いているつもりでも、怪物的な恐ろしい行為と紙一重だという危うさがある。現代ともリンクする言葉として響きます。役としてはそれを言われる立場ですが、僕の中で作品の核になる台詞だと思っています。
加藤さん)
ミュージカル『フランケンシュタイン』は、とても暗いです。明るいシーンはほとんどありません。でも、その暗闇の中で、光り輝くものがある作品だと思っています。
それはビクターの中にある「自分が生命の創造主になる」という希望の光だったり、その光を見て、闇に包まれたアンリの中に灯る光だったり。そういう小さな小さな光たちが各シーンに散りばめられています。
そして、1幕と2幕で違う役を演じるプリンシパルの豹変ぶりは本当にほかの作品にはない見どころです。ただアンリと怪物に関しては、違う肉体ではあるけれども首から上はアンリなので、ほかとはちょっと異なります。アンリなのか怪物なのか、その線引き、意識は僕と島くんでも変わってくると思いますし、ここで多くは語れませんが2役を作る上での面白い所だと思っています。
好きな台詞は、たくさんありすぎて選べませんが、しいて言えばアンリがビクターに向けて言う「笑ってよ」……ああ、もうすでにそのひと言だけで泣きそうです。すみません、作品への思い入れが強すぎて(笑)。
加藤さんの『フランケンシュタイン』愛の深さ、熱さに、中川さんも思わず「出る人ですよね」と(笑)
ファン目線では、もう、加藤さんの発言のすべてに共感しかない!!
中川さん)
板垣さんもおっしゃっていたように、やっぱりよくできている作品なんです。改めてこの作品を生み出した韓国カンパニーをリスペクトします。
正義や希望、使命感を持つビクターと、同じような志と同時に絶望を抱えたアンリが出会い、共鳴し合う1幕。怪物になってしまったアンリと、それを生み出したビクターとが対峙すると同時に、同じ俳優が演じるジャックとも対峙する2幕。僕は、この1幕と2幕の変化にこの作品のテーマが込められていると感じます。
ビクターを演じる俳優としては、崇高な目的のために過ちを犯してしまったビクターが鏡をのぞき込むと、そこに映るのはジャックの姿、ようやく追い求めたものに到達した瞬間に自らの姿を見てゾッとするような感覚があります。そこに同じ俳優が、あの2役を演じることの面白さがある。だからこそ僕はビクターとして崇高なものを持ち続けたいと思っています。
僕が好きな台詞は歌詞になりますが、最後の「俺は、フランケンシュタイン!」です。初演、再演のときは少し抵抗があったのですが、やっぱりすべてを背負った言葉。古典を現代に蘇らせるような不思議な、そして大きな力を持っていると感じます。
ビクターを演じるお二人はなにを語っているのか……興味!
──板垣さんが思う4人の魅力について。板垣さん)
アッキーは、僕の中では青白い炎を燃やす男と定義しています。絶大なる安心感とともに、どこに跳ねるかわからない意外性に魅力を感じています。また、アッキーの演技者としての魅力にハマっている僕としては、今回、ビクターの強さと弱さが見えると面白くなるだろうなと期待しています。そこをアッキーと一緒に作り直してみようかなと。
板垣さん)
和樹くんは、このイケメン具合と後輩の面倒見もいい優しいお母さんのような心が魅力。もちろん俳優としての責任感も強く、信頼しています。そこにもうひとつ、あまり表に見せないのですが、秘めている思いは非常に熱い。そういうタイプの方だと思っています。今回はその熱さに演出家としてちょっと触れたいと思いますし、それを役に取り込んだらどうなるのかを見たいと思っております。
板垣さん)
亮太くんとは初めてご一緒しますが、何度かお会いした感覚では、この方も熱い男。アッキーが青白い炎なら、亮太くんは赤い炎。あと、先ほどの絶望の話をしている様子を見ていて思ったのはすごいロマンチストだということ。亮太くんは多分、変な言い方ですが、本気で空を飛べると信じているタイプ。それはこの役にぴったり。劇場で思い切り情熱の炎を燃やしてくれることを期待しております。
板垣さん)
太星くんは、先ほどからのほのぼのとしたコメントにみなさんキュンとされていると思いますが、役に入ると豹変する憑依型の俳優です。ハマったときは「太星はどこへいった?」というくらいに人格が変わる、そういうことができる人。信頼しています。今回、大きく飛躍して欲しいですし、世の中の人に太星を見つけて欲しいと思っています。
──ここを見て欲しい!中川さん)
本当にいっぱいあるのですが。和樹さんが演じるアンリにビクターが赦しを請う、懇願する場面。言葉に言い表せない複雑な感情をぶつける芝居で、まさにアンリの胸に体当たりでぶつかるのですが、この方の体幹が素晴らしく、どんなに強く、勢いよくぶつかってもびくともしない。そこが見どころです(笑)。
加藤さん)
個人的には怪物の動きですかね。初演のときから細かく動きをつけていただきました。
生み出されたものがなんなのか、人の形をしているけれどそれとは違うなにかが生まれたということを身体で表現する。思わず目を背けたくなるような動きや、足の角度にも注目していただければと思います。
小林さん)
やはり1幕と2幕で別の役を演じるところでしょうか。しっかりと歌と芝居を融合させて、自分の中でも壁を超えたいと思います。お客様に納得してもらえる、さらには観に来てよかったと思っていただける作品にしたいと思います。
島さん)
まだ未来のことなのではっきりとはわかりませんが。今日、亮太くんと「ただ一つの未来」を歌って思ったのは、もともと作品の中でも1,2を争うくらい好きなナンバーで前奏のドゥンドゥン、ドゥドゥドゥンドゥンからドキドキするのですが、お互いの思想をぶつけ合いながらひとつになるこのナンバーがやっぱりすごいということ。さらに本番では中川さんとも一緒に歌う……
中川さん:そうだっけ?
島さん:あ、可能性の話として……
加藤さん:大丈夫、歌うから!
小林さん:笑!!
島さん)
全ナンバーに集中して欲しいのですが、この曲が流れたときは、より一層集中して欲しいと思います。
◆作品への愛、一緒に作り上げる同志としてのまとまり、そして個々の俳優が持つ多彩なカラー、再々演にしてまた新しい景色を見せてくれそうなミュージカル『フランケンシュタイン』がますます楽しみになりました。
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人