2025年4~5月、日生劇場を皮切りに、愛知・大阪・福岡にて上演されるミュージカル『ウェイトレス』。大盛況だった2021年の初演に続き、待望の再演です!
舞台となるのはアメリカ南部の田舎町。そこにある、とびきりのパイを売ると評判のダイナーで働くウェイトレスのジェナと仲間たちが直面する女性の人生の岐路、妊娠・出産・離婚・自立・養育……現代社会に生きる個性豊かで、悩める女性たちが織りなすミュージカル・コメディ!
美味しいパイの作り手で、夫のモラハラに悩まされる主人公のジェナを演じる高畑充希さん、ジェナと出会い、互いに既婚者ながら惹かれ合う産婦人科医ポマターの森崎ウィンさん、ウェイトレス仲間で引っ込み思案で恋にも臆病なドーンのソニンさん、病気の夫を看病しながら仕事を続ける姉御肌のベッキーのLiLiCoさんご登壇の製作発表会見が行われました。初演から続投の高畑さん、LiLiCoさん、新キャストの森崎さん、ソニンさん、4人ともに作品を語る熱量はたっぷり、かつ、笑いが絶えないクロストークからも、チームワーク抜群な様子が伝わる会見の模様をレポートいたします。
──会見冒頭、ご結婚された高畑さんに司会者からのお祝いの言葉が。ジェナ役:高畑充希さん
高畑さん)
ありがとうございます。まだ自分事じゃない感じでちょっとフワフワしています(笑)。でも、先日、FNS歌謡祭に出演したときに、ジェナ役の指輪が本人の指輪かとニュースに出ていて……そういうことになるんだと思ったり(笑)。結婚して臨むジェナという役では、また違う感覚も得られるのかなと期待しています。新婚最初の仕事が、お医者さんとダブル不倫する話というも面白い流れだなと思っています(笑)。
ポマター医師役:森崎ウィンさん(新キャスト)
森崎さん)
初演を観劇しましたが、男性である僕が観ても持ち帰るものがたくさんある作品でした。この大好きな作品の一部となれることを楽しみにしております。宮野真守さんが演じたこの役を引き継げることを光栄に思います。しかも結婚された充希ちゃんのダブル不倫の相手を演じるというのはちょっと面白くなりそう(笑)。
ドーン役:ソニンさん(新キャスト)
ソニンさん)
ブロードウェイで観た時から、日本版上演を願っていたくらいの作品の大ファンです。あの世界に入れる喜びでいっぱいです。ドーンは内気で、ちょっと冴えないオタク気質の役。最近なかったタイプ、外交的でない役を楽しみにしています。
ベッキー役:LiLiCoさん
LiLiCoさん)
この作品の初演、50歳でミュージカルデビューをしました。あまりに興奮して、始動前に怪我をしてしまい膝に埋め込まれた釘とワイヤーと痛みともに初演を務めました。今回は、それも抜け、1キロぐらい身軽になっているはずです(笑)。ベッキーらしく、堂々と、そしてみんなをまとめていけたらと思います。
──ブロードウェイとウェストエンドをはしごして観劇された高畑さんが感じる本作の魅力は。高畑さん)
最初は圧倒的な楽曲の魅力を感じました。全編キャッチーなポップスで、一度観ただけで口ずさみながら劇場を後にできる楽曲ばかりです。そんな楽曲に乗せて、女性が生きていくなかでいろんなことに巻き込まれながら自分を発見していくストーリーが描かれます。パイ作りの天才ジェナが、人生のいろんなつらいこと、悲しみや悩みもすべて混ぜ込んでおいしいパイにしていく。特別じゃない人たちの特別な物語だというところがグサッと刺さり、何度も観たくなりました。
──高畑さんから楽曲の素晴らしさが魅力というお話がありましたが、みなさんはお気に入りの楽曲やシーン、思い入れがあれば教えてください。LiLiCoさん)
ベッキーの「I Didn't Plan It/偶然よ」というソロ曲は、ずっとジェナを見つめて、あなたも同じ失敗をしているでしょと、ちょっと自分をも正すような切なくも強い歌です。そのときのジェナの表情が本当に素敵すぎて、毎回、歌詞を忘れそうになります。
森崎さん)
ポマター医師とジェナが歌う「Bad Idea」。二人でハモるのですが、それがいわゆる3度、5度というきれいなものというよりは、二人の気持ちが先行して、同じ歌詞でそれぞれの思いを吐露したことで出てくる旋律が奏でる美しさと危うさのある楽曲です。稽古でキャラクターを作りながら、この楽曲をどう表現していくのかが楽しみです。
ソニンさん)
私はジェナの2幕のソロ曲「She Used to Be Mine」。彼女が背負っているもの、命や環境、立場、現実がごちゃ混ぜになっている状態で歌う楽曲。あの曲にジェナのすべてが詰まっているので、思い出しただけでも泣きそうになります。
高畑さん)
私も、今、もらい泣きしそうになっています(笑)。
──新キャストに訊く、本作の魅力!僕、めちゃくちゃ熱く語っていますよね。
それだけ大好きなんです!
森崎さん)
地名や名前、パイを作るというのも日本ではあまりなじみがないかもしれないけれど、それでもすごく共感できる作品。一人の女性の葛藤、危うい崖の縁を歩いて踏み外しそうになることって、人生にはたくさんありますよね。そんな人生のドラマが3時間に凝縮されているところが魅力。それと同時に、楽曲が素晴らしいのでオープニングからみんなの目が輝く! その2つがかみ合った理想的なミュージカルです。
ソニンさん)
登場人物も身近で、こういう友達いるなとか、自分もこういう悩みあるなとか、ジャンプしなくても共感できるストーリー。そういう自分たちに近い物語だというのが魅力だと思います。そして、後ろに並んでいるパイ、劇中にも登場するものですが、観劇後にはパイ屋さんに寄りたくなる作品です!
LiLiCoさん)
きっとパイを食べたくなる!
──実際に卵を割ったり、小麦粉を入れたり、パイを練ったりしながら歌う場面の難しさや面白さは。高畑さん)
歌ってみて、演じてみてわかったことは作業でリズムが生まれるということです。
生地をこねる動きが歌のリズムと合うように振付されているので、不思議なくらい作業に助けられるんです。それは意外でしたし、嬉しいことでした。
大変なのは、小麦粉を吸い込むとむせる(笑)。空調の状態で、小麦粉が(自分のほうに)帰ってきて歌えなくなることがあって。うまく攻略していけたらと思っています。コツは……遠くへ飛ばすことと、いつも吸い込んでしまうところで息を止めるとか(笑)
──今日の会見も、先日のFNS歌謡祭のパフォーマンスでも、すでに高畑さん、ソニンさん、LiLiCoさんのチームワークの良さを感じます。お互いの印象をお聞かせください。高畑さん)
FNS歌謡祭で初めて3人で声を重ねました。それを聞いたとき、「なんか、イイ感じじゃん!」と思いました(笑)。みんなちょっとずつ声質も違って、それもいいなと思いました。本番に向けて、もっといいハーモニーになっていく気がしています。
ソニンちゃんは、たくさんの舞台を観ていますし、ソニンちゃんが演じた役を引き継ぐことが多いので、私は勝手に後ろを追いかけているような感覚があります。強い女性の役が多いですが、実際にはハッピーで、柔らかく温かい人。共演は初めてなのでめっちゃ楽しみです。
ソニンさん)
私も楽しみ!
高畑さん)
LiLiCoさんは歩く太陽みたいな人です!どこにいるかすぐにわかる(笑)。
LiLiCoさん)
“too loud”だから?
※初演時、海外スタッフに歌声が“too loud”(声が大きい)と言われていたというLiLiCoさん高畑さん)
そうじゃなくて(笑)。でも、とても繊細なところもある方で、ふと不安そうだったり寂しそうだったりすると寄り添ってあげたいと思わせる人。そこをみんな好きになっちゃうんです。
LiLiCoさん)
バレたかー!(笑)
私からしたら、お二人ともミュージカルの大スター。
充希ちゃんは、初演でお稽古場での居方、稽古の仕方、すべてこうやるんだと見せてくれましたし、ソニンちゃんは先日の歌唱披露でも素敵な歌声で、どんなドーンになるのかすごく楽しみ。
ソニンさん)
充希ちゃんは、私のミュージカルデビューの作品(『スウィーニー・トッド』、2007年)を観に来てくれて、ちょうどその頃、充希ちゃんもミュージカルを始める(『ピーター・パン』、2007年)ということで、“ミュージカルの仲間”として出会いました。その後、『ウェイトレス』初演の前に、バラエティ番組でご一緒して連絡先を交換したんです。覚えてる?
高畑さん)
覚えてます! その後に『ミス・サイゴン』が控えていて、キムの先輩のソニンちゃんと「不安です、頑張ります」みたいなやり取りをしましたね。
ソニンさん)
そして『ウェイトレス』の初演を観たよ!というやり取りもして。そこからこうしてこの作品で初共演。出会ってから15年以上経って、また二人の道が交わるというのが嬉しいです。今風に言うと……エモいです(笑)。
高畑さん)
エモいです(笑)!
ソニンさん)
キャラクターはもうちょっとおとなしい感じの方かと思ったら、結構、ノリに付き合ってくれそうな感じで(笑)。
高畑さん)
全然おとなしくないと思います。行っちゃえ!イェイ!みたいな(笑)。関西人なんでね!
ソニンさん)
そうかー!
そしてLiLiCoさんはお会いする前から、いろんな方から噂を聞いていて。
LiLiCoさん)
ちょっと!どんな噂?
ソニンさん)
絶対に人柄のいい方なんだろうなって印象です。先日のFNS歌謡祭の楽屋でもずっと喋ってくれて、場を和ませてくださって、人の話を聞くのが好きな私はすごく助けられました。
LiLiCoさん)
“too loud”が役に立った(笑)
ソニンさん)
すごくバランスがいい3人だなと思っています。
──今年一年をパイに例えると? LiLiCoさん)
今年はスウェーデンでもタレントデビューをし、ずっと走り回っていたので、スウェーデンのブルーベリーとリンゴンベリーと日本の小豆やほかにも豆類をいっぱい入れたパイ! それを切らずに一気食い!それくらいパツパツに詰まった一年でした。
高畑さん)
私は逆にスッカスカパイでした(笑)。
LiLiCoさん)
ちょっとー、ウソでしょ? 絶対、ウソだよね!
高畑さん)
本当なんですよ(笑)。来年20周年を迎えますが、これまでで一番お休みをとった一年。家族との時間や猫を迎えた生活でささやかなことを感じとれた年でした。でも、スッカスカパイ(笑)。
ソニンさん)
今年は声優やミュージカルの翻訳、ヘルスコーチの資格取得とその仕事など、いろんなジャンルの新しい仕事をたくさんしました。ですので、クワトロチーズのピザのような、4種類くらいを丸々まとめたパイ!
森崎さん)
僕はミートパイ! いろんな方にお会いできた1年、“meet”パイ。
高畑さん)
うまい!これが見出しだ!
森崎さん)
いやいや、見出しにはならないですよ(笑)。最近こうやってギャグが……、なんか年をとってきたのかななんて思う自分も(笑)。
高畑さん)
というのも、私たちは10代のときに映画で共演して、それ以来なんです。だから変わっていないようだけど年をとったねって思うんです。
森崎さん)
ミートで“meet”とか言わなかったよね(笑)?
高畑さん)
言わなかったね(笑)。
──はじめてこの作品を観る方へ。高畑さん)
初演を観た方から、あれはポスター詐欺だと言われました(笑)。
ポップで明るいガールズミュージカルに見えるけれど、内容は家庭内暴力や望まない妊娠、女性の生き方、介護の問題など社会問題が盛り込まれています。というと、観たくなくなっちゃうのかな(笑)。でも、目を背けたくなるけれどみんなの隣にあるような出来事を混ぜ込んで甘く焼き上げたパイのような作品です。
観劇後は、テーマパークに行ったみたいに楽しかったという方もいれば、自分の人生を見つめ直したと言ってくれる方、あれからずっとサントラを聴いているよという方もいる。
老若男女、自分の父親世代もすごい楽しんでくれる門戸の広い作品で、ある程度、年齢を重ねた人たちにはグサグサ響くような作品になっています。
ただ、子連れだけは……、お子様はポカーンとなるシーンが結構多いと思うので(笑)。
私自身にとっては、初演に関わり、再演も参加するというのが初めての経験です。どうしてももう一度演じたいと思う作品です。なんの先入観も持たずに、劇場に体感しに来てほしいなと思います。
【作品紹介】
本作は、アメリカ映画「ウェイトレス~おいしい人生のつくりかた」(2007年)をベースとするブロードウェイミュージカル。ブロードウェイ史上初、楽曲を手掛けたサラ・バレリスをはじめ、脚本、演出、振付など主要クリエイティブのすべてを女性クリエイターが担当したことでも話題を呼び、そのキュートな世界観が女性の心をわしづかみに!
【公演情報】
ミュージカル『ウェイトレス』
2025年4月9日~30日@日生劇場
5月5日~8日@愛知・Niterra 日本特殊陶業市民会館フォレストホール
5月15日~18日@大阪・梅田芸術劇場メインホール
5月22日~29日@福岡・博多座
脚本:ジェシー・ネルソン
音楽・歌詞:サラ・バレリス
原作映画製作:エイドリアン・シェリー
オリジナルブロードウェイ振付:ロリン・ラッターロ
オリジナルブロードウェイ演出:ダイアン・パウルス
出演:高畑充希 森崎ウィン ソニン LiLiCo
水田航生 おばたのお兄さん/西村ヒロチョ 田中要次 山西惇
岩﨑巧馬 茶谷健太 堤 梨菜 寺町有美子 照井裕隆 中嶋紗希 永石千尋
中野太一(スウィング) 中原彩月(スウィング)
製作・主催:東宝/フジテレビジョン/キョードー東京
共同制作:バリー&フラン・ワイズラー
作品公式 WEB サイト https://www.tohostage.com/waitress/
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人