ギター弾き語りによる一人芝居ミュージカル『ライオン』。来日版・日本版の2バージョンによる日本初演がついに開幕!
(速報レポートに成河さんGP&マックスさん公演レポートを追記しました)来日版 ベン役/マックス・アレクサンダー・テイラー コメント
東京での『ライオン』初演に参加できることに、本当にワクワクしています!この作品に長い間取り組んできた中で、訪れる場所ごとに、その土地ならではのエネルギーや好奇心を感じてきました。日本の観客の皆さんが私たちと同じくらいこの作品を楽しんでくださること、そして日本でこの作品が長く愛されることを願っています。そして、成河さんが日本語版『ライオン』を初めて演じることも、とても楽しみにしています。彼のパフォーマンスは素晴らしく、ギターの腕前も本当に見事です!
日本版 ベン役/成河 コメント
この『ライオン』という作品をオリジナルメンバーと共に届けられる事に誇りと喜びを感じます。ご本人であるベンジャミンは500回、英国版のマックスは実に150回以上の上演を各国で重ねて来ました。そして初めての他言語上演となる今回、彼らは本当に温かく僕のことを受け入れてくれました。今はそのアーティストとしての彼らの心に応えたい、ただひたすらそんな思いです。この熱が、皆さまにとって良いものとなりますように。
【成河さんゲネプロレポート】
本作はミュージシャン ベンジャミン・ショイヤーの自伝的ミュージカル。オリジナルキャストは作者のベンジャミンさんご自身です。今回は、リバイバル版オリジナルキャストのマックスさんと、英語以外の言語では初めてとなる日本版キャストの成河さんの日英Wキャストでの上演という興味深い試みです。
会場の様子
5本のギター
会場はクラブeX、板張りの床面とキャンドルのような灯りのぬくもりを感じる『ライオン』仕様の特別な設え。そして舞台上には、ベンの相棒となる5本のギターが並んでいます。
そこに主人公ベンを演じる成河さんが登場、ベンが10歳のときから物語は始まります。
数学者の父親と数学嫌いのベン、二人を繋ぐのが音楽、ギターだった。
イベントでも披露された♪おもちゃのバンジョー、歌を聴くというより、ベンが語る身の上話に耳を傾けるような感覚です。そして父が歌う♪3匹の小さなライオン 「ライオンはなぜライオンなのか?」という問い──ベンがその答えにたどり着くまでの過程が描かれます。
少年ベンの歌声と深みのある父の歌声、そのコントラストも素敵です。観客へ言葉の投げかけなどのライブ感ももたせながら、一つひとつの出来事に対する捉え方のエッジが効いているシアトリカルな表現。成河さんの魅力がギュギュっと詰まっています。
ベンが14歳のときの出来事によって、父親との関係は大きく変化。母親や2人の弟たちとの距離も変わっていきます。父親への複雑な思い、ガールフレンドとの関係、自らの身に起こる思いがけない出来事などベンの人生が語られるのですが、その中身はぜひベンからお聴きいただくとし──
語るように歌い、歌うようにギターを弾く、ベンにとって音楽、ギターは常に隣にあったもの。「はい!ここからは歌です!」というよりは、すべてがシームレスに表現される。クラシックギターの素養はあったというものの、ここまでの高度なテクニック、ナチュラルな表現をご自身のものにするには並大抵の練習量ではなかったでしょう。でもそれすらも感じさせないほどに、滑らかに演奏する成河さん。11月下旬からは単身ロンドンへ渡り、クリエイター陣やベンジャミンさん、マックスさんらとともに作品を創り上げただけでなく、宮野つくりさんとの共同翻訳という形でも作品に関わっています。(公演パンフレットには翻訳のポイント解説も!) 作品や人と出会い交流する、自分の演奏を追い求める、クリエイションの過程そのものも糧にして日本初演を迎えたのだと思うと、75分の上演時間がより尊く思えます。
喜び!
ベンの10歳から30歳までの物語、愛と喪失、再生、家族の物語から感じるのは痛みとそれを包み込むような温かさ。ミュージカルでありながら、主人公“ベン”の弾き語りライブのようでもある“特別な”観劇体験がそこにある!
【マックスさん公演レポート】
マックスさんのお芝居を拝見するのがはじめてだったこともあり、ベン=マックスさんのような気持ちになるほど、すべてが自然。ベン役も150回を超えるというキャリアにも納得です。
幼少の頃よりギターを弾き、英国王立スコットランド音楽院出身のマックスさん。さらに作者であり、オリジナルキャストであるベンジャミンさんご本人から手ほどきを受けたというギター演奏は、見入って、聴き入ってしまうほどの腕前。無邪気さと豪快さが印象的で、アグレッシブなライブパフォーマンスで届けられるベンの人生を感じました。
またアフタートークでおっしゃっていた「この作品は、観客にとっての第一言語(の上演)でないと伝わりにくいところがあるのではないか」というニュアンスの言葉、家族だから言えること、言えないこともあり、受け入れがたい出来事をどう乗り越えていくのか、人生の機微が描かれている本作に深く携わるからこその感覚だと思います。だからこそ日本語で上演されることへの期待を感じていらっしゃるとのこと。
ただ、それでも目の前でマックスさんが心を動かし、音を奏で、言葉を発する、その“熱量”からダイレクトに受け取るものも確かにあります。息づかいも届く、密な空間でマックスさんの作り上げてきたベンを観ることができたことは素敵な経験です。
来日版、日本版の2バージョンの上演については、どちらがいい悪いということではく、やはり温度や湿度、刺さり方に違いがあります。それはもしかしたら文化的背景の違いかもしれませんし、自分と英語との距離感のせいかもしれません、もちろん成河さんとマックスさんの個性の違いもあるでしょう。ただ同時に、作品が持つ本質、葛藤や後悔、成長、愛情はシンプルで普遍的なものだということもしっかりと心に刻まれました。
マックスさんのベンが見られるのは、21日(土)15:30を残すのみ! 成河さんのベンも23日までの上演となります。品川プリンスホテル クラブeXにて。
ミュージカル『ライオン』「SING&TALK」イベントレポート
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人