演出家・柳沼昭徳が2021年から約4年にわたり“こつこつ”向き合ってきた、
演劇的実験性の高い、三好十郎の知られざる戯曲。
新たな試みとなる「Studio公演」(公開の試演会)として、ついにお目見え!小川絵梨子演劇芸術監督が、その就任とともに打ち出した支柱の一つ、「演劇システムの実験と開拓」としてスタートした「こつこつプロジェクト」。このプロジェクトから生まれた公演として2021/2022シーズン『あーぶくたった、にいたった』、2024/2025シーズン『テーバイ』があります。
『夜の道づれ』は、2021年からスタートした第二期からの参加作品です。22年2月に行われた最終試演会後、さらに作品を深めてはどうかという協議がなされ、演出家の柳沼昭徳は、引き続き第三期メンバーの一人として、2024年にプロジェクトが再始動。今回は初めての試みである「Studio公演」として本プロジェクトの現時点の成果を皆様に公開いたします。
こつこつプロジェクトStudio公演とは…
「こつこつプロジェクト」では、1年間の創作過程の中で、節目ごとに試演を行っています。これまでクローズドで行っていたこの試演を、今回は「Studio公演」として、観客の皆様に公開いたします。
作品のさらなる発展を目指し、お客様に感想やご意見をうかがう<トークバック>
創り手だけではわからない、観客の皆さまからの視点は、作品の強度を上げるための大切な要素。観劇後、演出家や出演者から、直接お客様にご感想やご意見をうかがいます。[4/17(木)14:00公演、4/19(土)17:30公演終了後の2回開催]
チケット料金が低価格!
公開での試演会のため、全席 2,750円という低価格です。(Z席10席除く)
三好十郎によって書かれた『夜の道づれ』は1950年に文芸誌「群像」に初出、敗戦後の夜更けの甲州街道をとぼとぼと歩いている、男二人の一種のロードムービーのような戯曲。実際に夜の甲州街道で見聞きしたことをありのままに取り上げた、「いわばドキュメンタリイを志したもの」という三好の言葉通り、三好作品の中でもストーリー性は控えめで、とても演劇的実験性の高い作品です。
この作品に、約4年にわたり挑み続けているのは、京都を拠点に活躍する劇団烏丸ストロークロック主宰・柳沼昭徳。自身の創作のなかでも、「歩く」ことで人や事物と出会い、対話し、気づくことで過去を清算・懺悔するといった作品を作っていることもあり、本作に惹かれたとのこと。稽古では、実際に甲州街道を歩くフィールドワークを2回も行い、戯曲をフィジカル面でも検証。新宿を起点に徒歩移動した実距離と劇進行のタイムラインが重なる部分が多いことにも気づいたといいます。
試演会を重ねるにつれ、「発語」と「歩く」という行為が統合された俳優と、観客がまるで一緒に歩いている感覚に陥る不思議な作品へ変化をとげました。その時間と空間の関係を掘り下げ、さらなる深化を目指します。
【演出 柳沼昭徳からのメッセージ】
敗戦を境に迎えた180度異なる新たな戦後日本の夜明け。人々が戦争の痛みを抱えながら、明日どうなるともわからないながら、復興する街を生きている。三好十郎は、このころの東京の街を歩きました。そこで見聞きしたことをありのままに取り上げたドキュメンタリーとして描いたのが本作です。ここでも多くの三好作品同様「いかに生きるか」という普遍的な問いと、孤独な人間同士が連帯することの絶望と希望が、三好節というべき言葉の質量で描かれています。
しかしこの『夜の道づれ』が他の作品群のなかで異彩を放っているのは、台詞で語られる言語だけでなく、人が劇中ほとんどの時間を歩き続けている点にあります。歩くことで生じる体の変化と、連動して生じる心の変化を劇要素にすることで、身体を起点にあるカタルシスを得ようとする挑戦がなされています。 歩く目的を「出離」と三好が表現するように、社会混乱のなか、迷いや不安を断つために世俗から離れ、真理に向かうこの物語ですが、いつの世であっても、七転八倒しながらも足を踏み出し続ける人間。その生き生きとした凄みを体感していただけると幸いです。

(上段 左から)石橋徹郎、金子岳憲
(下段 左から)林田航平、峰 一作、滝沢花野
あらすじ
敗戦後の夜更けの甲州街道。作家の御橋(みはし)次郎は、家へ帰る途中、見知らぬ男、熊丸信吉と出会う。歩く道すがら、2人の目の前には、若い女や警官、復員服の男、農夫などが次々と現れる。会話しながら進むうち、なぜ熊丸がこんな夜中にここを歩いているか語られだすのだが......。
この記事は公演主催者の情報提供によりおけぴネットが作成しました