2025年の話題作! ミュージカル『ケイン&アベル』にて、宿命のライバル、ウィリアム・ケインとアベル・ロスノフスキを演じる、松下洸平さん&松下優也さんの取材会が行われました。
ジェフリー・アーチャーのベストセラー小説を原作とするオリジナル・ミュージカル『ケイン&アベル』。 音楽のフランク・ワイルドホーン氏、脚本・演出のダニエル・ゴールドスタイン氏をはじめとするブロードウェイで活躍するクリエイター、スタッフとともに世界初演作品に挑む十分な熱量はもちろん、芝居に対する職人気質のこだわりを感じさせるお二人のお話。今まさに立ち上がろうとしている『ケイン&アベル』の稽古場の様子を伺いました。
──まずはいよいよ始まった『ケイン&アベル』稽古の様子からお聞かせください。洸平さん)
稽古のスピードはメチャクチャ速いです。立ち稽古が始まって1週間で、今日、1幕を通します(笑)。そのスピード感も含めて、とても刺激的な毎日です。
優也さん)
速いだろうと予想はしていましたが、それ以上のスピードでした(笑)。今は全体のミザンスをつけていく作業に必死。この一週間はがむしゃらに取り組んできました。そしてこの作品はミュージカルですが、会話劇の分量も多いので、家に帰ったら、翌日稽古するシーンの予習に追われています。
洸平さん)
でも、この時期に粗削りながら1幕を通せていることの安心感もあります。作品の全体像をとらえて、ここからみんなと深めていける。そんなとても豊かな稽古場だと感じています。
──初共演のお二人、お互いの芝居の印象はいかがですか。洸平さん)
優也くんはとにかくめちゃくちゃカッコいいです。ケインは裕福な家庭に育ったエリート、わかりやすく言うとお坊ちゃんなのに対して、アベルは身寄りのないところからのし上がっていく野性的なキャラクター。優也くんのアベルはまさにそれで、常にメラメラと燃えたぎっています。現段階でこれだけカッコいいので、ここから稽古、本番とさらにカッコよくなると思うと、これはヤバいです(笑)。
優也さん)
洸平くんは、最初の本読みからすごかった。ちょっとしたニュアンスに至るまで歌の表現が繊細で、ケインとしての心情がビシビシ伝わってくるんです。譜割のディテールまでしっかりととらえる歌の技術に驚きました。2幕にケインのすごく素敵なソロ曲があるのですが、特にそれが素晴らしかった! 純粋に勉強になります。
立ち稽古に入ってからは、まず目の前にいる相手との芝居を大切にされる方なんだなという印象。そこでの芝居を成立させ、それを大劇場でも伝わる表現にしていく。映像でも活躍されているからこそのアプローチだと思います。グランドミュージカルにもいろんな作り方があると思いますが、僕は洸平くんのお芝居を間近で見て、すごいなと思うとともに、丁寧なモノづくりをともに楽しんでいます。
──世界初演のミュージカル、稽古場での手応えは。洸平さん)
演出、振付を手掛けるのはブロードウェイで活躍されている海外スタッフの方々です。稽古場で見ていてもとても素敵なステージングなので、そこでまず1つミュージカルとしての面白さを届けられると確信しています。それと同時に、演劇としても非常に魅力的な作品だという思いも持っています。ケインとアベルの二人だけのシーンでも、「これミュージカルだけど……」と思うくらいずっと喋っているんです(笑)。
優也さん)
あのシーンだね。本当にあそこは純粋に会話劇。
洸平さん)
やっぱり会話劇だから見せられることもあると思うんです。そこがこの作品の面白いところだし、我々に課されているものでもある。ミュージカル(音楽)の素晴らしさ、演劇としての素晴らしさ、エンターテインメント、ショーとしての素晴らしさ、その3つが共存する作品。ここから一つひとつの要素をどれだけ膨らませていけるかが、『ケイン&アベル』成功の鍵になると思います。
優也さん)
洸平くんが言った通り、ここまで会話劇とショーアップされた部分がうまく混在する作品というのは結構珍しいんじゃないかな。僕自身、これまで音楽・アーティスト活動、演劇、ミュージカル、映像といった俳優としての活動などフィールドを限定することなく取り組んできました。それが繋がって、今の自分がある。洸平くんも二足の草鞋、いや三足かな(笑)、広いジャンルで大活躍されています。そんな僕らだから、この作品の表現の幅広さを魅力として届けられるのではないかと考えています。
──ご自身が演じる役について、稽古前と現在、人物像に変化はありましたか。
洸平さん)
本読みの段階では、ケインは事前にイメージしていた人物像に近かったです。そこから実際に動いて、ダニエルさんの演出を受けるなかで感じたのは、真面目、誠実一辺倒でなくチャーミングなところもあるということ。親友と一緒にいるときは、子どものようにキャッキャとはしゃぐ一面も見せます。そして意外と短気です(笑)。益岡(徹)さん演じる、銀行の上司であるアランに対して率直に自分の意見をぶつけるところにもそれが表れています。もちろん幼いころから面倒を見てケインを息子のように思うアランと、ケインも父亡きあとアランをもう一人の父のように思うという二人の関係性がベースにあるからなのですが、それを差し引いでもちょっと短気で、自分の信念を曲げない頑固さや強さのある人物だと感じます。“強さ”について、印象の変化の度合いとしては最初の段階から……2割増しくらいです(笑)。ダニエルさんのディレクションもその方向性ですし、確かにそれくらいの強い人間でないと大銀行の頭取は務まりません。すごく誠実な人物でありながら、頑固さ、強さもあるケインという役を、ここからもう2歩、3歩と深めていければと思っています。
優也さん)
アベルはポーランドからの移民。命からがらアメリカにたどり着き、ここからのし上がっていこうと強い野望と希望を抱いている男です。演じていて思うのは、非常に喜怒哀楽の激しいキャラクターだということ。彼の周りで起こるドラマティックな出来事がそうさせるというのもありますが、気持ちのアップダウンが激しい!誰かの台詞に対するリアクションひとつをとっても、ちゃんと心を動かして激しさのある人物にしていければと考えています。
※次のお写真の後はとあるシーンに触れます。まっさらな気持ちでのご観劇をという方はご観劇後に!──決して交わることのないようなケインとアベルの人生、レストランの客と給仕としてはじめて交わる瞬間はどんなシーンになりそうですか。洸平さん)
レストランでね、あのシーンはどうしようかなと思っていて(笑)。
優也さん)
わかる! アベルはレストランのウェイターで、そこにお客さんとしてケインがやってくるのですが、まず、僕は結構忙しいんです。こちらに水、あちらにタバコ、次はシャンパン……その忙しさのなかで、実はお客さんの話もしっかり聞いている。以前出演した『黒執事』を彷彿とさせる忙しさと、完璧な仕事ぶり(笑)。そこでのケインとのファーストコンタクトをどう見せるかは、僕もまだとらえきれていないというのが正直なところ。
洸平さん)
ケインとしても、アベルはあくまでも給仕の一人という認識だし、特別な出来事が起こるわけではないから大げさな芝居にはならないと思いつつ、物語のなかではそれが宿命の二人の出会い。当然、お客さまにとっては「ついに二人が!」となるだろうから、あまりさらっと芝居してもという思いもあって(笑)。そのリアリティとドラマ性のバランスを、僕も探っています。
優也さん)
互いを認識する、その後に繋がる大切なシーンでもあるから。ポイントとなるのはアベルの腕輪だけど、それを何気なく、且つ、印象的にというのがね。
洸平さん)
演出的にもどう見せていくのかも楽しみにしているところです。ちなみに稽古で使っている腕輪は本番用?
優也さん)
いや、まだ仮の腕輪。本番用は別のものになるだろうけど、大劇場でやるからといって、腕輪を巨大化させるわけにもいかないし(笑)。
洸平さん)
確かに(笑)!
そういえば、この間、アベルの子ども時代を演じる子役さんが、お父さんに腕輪をつけてもらったあと、もぞもぞしていて、すぐに外そうとしていたんだよね(笑)。
優也さん)
アベルが腕輪をしていないと、そこで話が終わってしまいます(笑)。
洸平さん)
その子役さんも腕輪の意味を理解したらちゃんとつけていられるんだろうけど(笑)。そんなことが起こるのも稽古序盤のいい思い出だね。
お客さまも二人の出会いがどう舞台上で表現されるのか、楽しみにしていてください。僕らは運命の出会いはもちろん、それに続く二人のドラマがしっかりと伝わるようにここからの稽古も頑張ります!
それぞれのアイデアや経験を持ち寄ってひとつのシーンを創り上げていく──“世界初演”という言葉の華やかさの裏にある地道な作業を心底楽しんでいるお二人のやりとり。日米のクリエイター、スタッフ、キャストが集結して立ち上げるミュージカル『ケイン&アベル』の初日は2025年1月22日です!開幕が楽しみです。
ストーリー
物語は、フロレンティナ(咲妃みゆ)の回想で始まる──。
20世紀初頭──ボストンの名家ケイン家に生まれ、銀行家の父の跡継ぎとして祝福された人生を歩むウィリアム・ケイン(松下洸平)。幼くしてタイタニック号の事故で父親を亡くしてしまうも、父のような銀行家になるべく学業に専念し、名門ハーバード大学に入学。卒業後はケイン・アンド・キャボット銀行に取締役として入行する。
ウィリアムが生まれた同じ日にポーランドの山奥でヴワデク(のちの、アベル・ロスノフスキ)(松下優也)は生まれ、貧困と劣悪な環境で育ち、やがて戦争によるロシア軍の侵略により孤児となる。度重なる苦難を乗り越えて、アメリカへ渡り、アベル・ロスノフスキと名乗るようになる。その後、アベルはウェイターとして働く中で、持前の頭の良さと忍耐力を発揮。のちに、ホテル王、デイヴィス・リロイ(山口祐一郎)に認められ、ホテル経営に携わるようになる。同じ移民仲間のザフィア(知念里奈)と結婚する。
しかし、そんな矢先、ニューヨークが大恐慌に襲われる。株の暴落によりデイヴィス・リロイが非業の死を遂げる。
アベルはリロイのホテルへの融資を断ったウィリアムに復讐することを決意。2人は対立を深めていく。。
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人