2025年2月15日、ティアラこうとう 大ホールにて上演される「踊れ、その身体がドラマになるまで 〜矢上恵子メモリアルガラ2025 in TOKYO〜」の稽古場取材会が行われました。白熱のリハーサル、福田圭吾さん&福岡雄大さんの囲み取材の模様をレポートいたします。
作品について
1990年代から2010年代にかけて数々の作品を生み出し、国際的にも高く評価されながら、57歳の若さでこの世を去った振付家・矢上恵子。
自身も素晴らしいダンサーであるとともに、新国立劇場バレエ団 元プリンシパルの山本隆之や現プリンシパルの福岡雄大、同バレエ団で活躍した福田圭吾・紘也兄弟など、日本トップレベルのダンサーたちを育て上げた指導者でもありました。
7回忌を迎える2025年2月、上演されるのが「踊れ、その身体がドラマになるまで〜矢上恵子メモリアルガラ2025 in TOKYO〜」。
出演は、矢上作品を身体で知り尽くす福岡雄大や福田圭吾、新国立劇場バレエ団プリンシパルの小野絢子、米沢唯、柴山紗帆、ファースト・ソリストの池田理沙子、木下嘉人など。当代の人気ダンサーたちが、矢上恵子作品に挑みます。

福田圭吾さん(芸術監督、出演)
矢上恵子先生が拠点としていた関西チームと東京チームの合同での公演となる本公演、出演者であり、芸術監督でもある福田圭吾さんの言葉を借りると“東京の精鋭たち”によるリハーサルが披露されました。
まず披露されたのは公演のラストを飾る『Toi Toi』のリハーサル。本番は総勢20名ほどのダンサーで届けられる作品、この日は福田圭吾さん、福岡雄大さん、木下嘉人さん、宇賀大将さん、井後麻友美さん、菊川萌香さんによるお稽古です。ちょうど振り入れを終えたくらいの状態とのことでしたが、リズムに乗せて次々に展開していくダンスは、観ているだけでも心拍数が上がり、息をするのも忘れてしまいそうなほど引き込まれました。
矢上恵子作品の魅力を「ひたすら観る者の魂に訴えかけるようなパワーがある」と語る福田さん、その言葉通りの作品です。

©Yoshitomo Okuda

足の角度など細かな確認を重ねていきます
福田さんが主体となり動いているときは福岡さんが客観的に見てコメントするなど連携もバッチリ

福岡雄大さん

木下嘉人さん

宇賀大将さん

井後麻友美さん

菊川萌香さん
続いては、女性ダンサーによる『Cheminer』(シュミネ)、稽古場では使用される音楽から“ボレロ”という言葉も聞こえました。後方に一列に並べられた椅子、そこに座るのは柴山紗帆さん、池田理沙子さん、五月女遥さん、川口藍さん、金城帆香さん、橋本真央さん、その前には小野絢子さん。『Cheminer』はこれまでにも何度も再演されていて、男性バージョンも存在するそうですが、今回はこのメンバーでお届け!

©Yoshitomo Okuda

©Yoshitomo Okuda
たとえば群舞とソロ、その対比が劇場でどう見えるのか──目の前で繰り広げられることが観た人それぞれの頭や心の中で像を結ぶような作品です。そして、こちらのリハーサルでは福田さんがある振付シーンで“直線的な動きの大切さ”を伝えていたことが印象的。曲線でなく直線、クラシックバレエとは異なるポイント、日頃のみなさんとはまた違うスタイルでの表現も見られます!

小野絢子さん

柴山紗帆さん

池田理沙子さん

五月女遥さん

川口藍さん

金城帆香さん

橋本真央さん
ここからは公開リハーサルに続いて行われた、矢上恵子さんの愛弟子、福田圭吾さんと福岡雄大さんの囲み取材をレポート。
──ダンサーであり、振付家としても活動されている福田さんが思う矢上恵子作品の魅力。
福田さん)
観る者に必ずなにかを訴えかけてくるパワーです。特にストーリーがあるわけではないのですが、ひとつのテーマに向けたダンスに、見終わると各々に感じるものがある、伝わるものがある作品です。
──本公演の演目について。
福田さん)
恵子先生の作品のなかでも、有名な作品が並んでいます。たとえば、僕がローザンヌで踊った『Witz』は、この作品で僕がより多くの方に認知された作品。ほかにもテイストが異なるものも入れました。それは矢上恵子作品のいろんな面を見ていただきたいと思ったからです。あとは今回出てくれる豪華なダンサーたちで、観てみたいと思って選んだ作品もあります。
構成としては、第一部は小作品を集めたものになりますが、先生に倣ってひとつの作品が終わったらレヴぇランスして次の作品というよりは、作品と作品が連続するような繋ぎを作っていきたいと思っています。
──作品に向き合う中で思い出す先生とのエピソードは。
福岡さん)
踊っていると先生からいただいた注意が脳にスパーンと入ってくるんです。通っていたスタジオの風景も思い出され切なさも感じますが、楽しかった思い出も蘇ります。踊ることで思い出せるというのはすごく楽しいです。
先生を語るうえでは、作品に対して妥協しないというのがポイント。すごく厳しい先生でした。そのご指導の結果が……こうなりました。今の僕です(笑)。
福田さん)
本当に厳しかったですね(笑)。こうして作品と向き合い、僕がほかのダンサーに伝えているときにも「全然足りひん!」と先生の怒る声が聞こえてくるような気がします。
──こうして愛弟子であるお二人が引っ張る稽古場。お互いはどんな存在ですか。
福田さん)
雄大くんのほうが圧倒的に先生の注意を覚えています。僕は年々忘れて(笑)。映像を見て思い出そうとしている僕に、「こうだったよね」とパンと言ってくる。さすがだなと思いました。いろいろとサポートしてもらって、頼りになる存在です。
福岡さん)
僕は彼が踊っているときに代わりに見る程度なので、主として指導しているのは“監督”です。
──先生の振付を伝える、指導で大切にされていることは。
福田さん)
先生の指導は本当に怖くて、ずっとピリついた空気でした。その追い込み方が得も言われぬエネルギーを生み出していたと思うのですが、そのアプローチの仕方は僕自身は無理だなと思って。
僕がダンサーとして矢上恵子作品を踊る中で解析できたことを、そのダンサーに合った言葉で伝える。ダンサーが能動的に動く、踊りたいという前向きなエネルギーを引き出せるような環境づくりに注意を払っています。
福岡さん)
僕は監督ほど気を使ってはいないのですが。バレエとは少し動き方や重心移動が違うので、そこを理解せずにいきなり踊るのは難しい。練習では、身体の使い方やコーディネーション、パとパの繋ぎをアドバイスしています。そうするとみんなプロなので、あとはそれぞれうまく自分のものにしています。
──ありがとうございました! 本番も楽しみにしています。
(ここで福田さんからひと言)
福田さん)
最近、圭吾って呼ばないよね。ずっと監督(笑)。
福岡さん)
監督だから。2月の公演が終わるまで、監督で(笑)!
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人