東急シアターオーブにて世界初演の幕が上がったミュージカル『ケイン&アベル』。開幕レポート~開幕記念会見編~からお届けします。
作品について
ジェフリー・アーチャーのベストセラー小説「ケインとアベル」の世界で初めてのミュージカル化に集ったのは、世界有数のクリエイター陣。音楽はキャッチーでエモーショナルな楽曲で観客を魅了するフランク・ワイルドホーン、脚本・演出は『ザ・ミュージックマン』(2023年)での日本版演出も記憶に新しいダニエル・ゴールドスタイン、歌詞はネイサン・タイセン、編曲はジェイソン・ハウランド、振付は『&Juliet』『KPOP』の2作品で2023年トニー賞にノミネートされたジェニファー・ウェーバーが手掛けます。
東宝ミュージカル最新作のタイトルロール、ウィリアム・ケインには松下洸平さん、アベル・ロスノフスキには松下優也さん、W松下の競演も話題の本作。ストーリーテラーも兼ねるアベルの娘フロレンティナに咲妃みゆさん、アベルの妻ザフィアに知念里奈さん、ケインの妻ケイトに愛加あゆさんという女性キャラクターにも実力者を配し、二人の男たちの話に家族、世代という奥行きを作り出します。さらに時代を作り出す者、翻弄される者、ケインとアベルに関わる男たちもケインの親友マシューに植原卓也さん、アベルの親友ジョージに上川一哉さん、ケインの義父ヘンリー・オズボーンに今拓哉さん、父亡きあとのケインの後見人で銀行の上司でもあるアランに益岡徹さん、そしてアベルが父のように慕うようになるホテル王デイヴィス・リロイに山口祐一郎さんという、“オリジナルキャスト”の名にふさわしいキャストが揃いました。
【開幕記念会見】
──世界初演の初日から一夜明けての感想から。
ウィリアム・ケイン役:松下洸平さん
洸平さん)
まだ興奮冷めやらぬ状態です。なによりお客様がいてくださるということが安心につながり、すごく充実した初日を迎えられました。初日は思ったより緊張せず、リラックスして舞台に立てました。

アベル・ロスノフスキ役:松下優也さん
優也さん)
まずはすごくホッとしています。洸平くんと同じく、お客様が味方でいてくれている感覚があったのですごく落ち着いてできました。昨夜はぐっすり眠れました。

フロレンティナ役:咲妃みゆさん
咲妃さん)
私はお二人とは違って信じられないくらい緊張して開幕を迎えました。でもシーンが進むなかで、キャストのみなさんが熱量のバトンを受け渡しながらお話が進んでいく様子、されにそれをお客様が受け止めてくださっている空気を感じて、少し呼吸ができるようになりました。そこから少しほっとして、ともに作り上げてきたみなさんとのすべての時間が思い起こされて胸がいっぱいになりました。そしてここから始まるんだということに、ワクワクしています。

ザフィア役:知念里奈さん
知念さん)
世界初演というとすごく大きなプレッシャーを感じてしまうかと思っていましたが、私もすごくリラックスして初日を迎えました。今お話を聞きながら、多分、(洸平さんと優也さんの)お二人がそういう雰囲気を作ってくれていたからなんだなと思いました。

ケイト・ブルックス役:愛加あゆさん
愛加さん)
私も信じられないくらい緊張していました(笑)。私が演じるケイトは皆様より遅れての登場となる役なので、スタートからモニターでずっと拝見していましたが、熱量がすごくて、さらにお客様の集中力もモニター越しでも伝わってくる。みなさん、そしてお客様のパワーでいい初日を迎えられました。愛おしい作品です。

緊張していた方もいればリラックスされていた方もいる、それぞれの心持ちで臨まれた初日だったのですね

アラン・ロイド役:益岡 徹さん
益岡さん)
私は緊張といいますか。個人的なことになりますが、歌がないと聞いていたものが、稽古のかなり終盤に、みなさんに比べれば本当に短いですが歌が……。なにしろミュージカル新参者でございますので、それをどう克服するかが稽古場からの課題でした。まぁ自分では上手くいったかなと。世界初演の自覚をこれから自分のなかで感じていきたいと思っています。とにかくみんながすごいと心からそう思いました。

みなさんあんなに長い曲を…すごい!!

デイヴィス・リロイ役:山口祐一郎さん
山口さん)
きっとこの作品は21世紀前半で最も素晴らしいミュージカルだったと語り継がれる、そういう初日だったと、僕は今確信しております。
──海外クリエイターとの作品作りについて。洸平さん)
言葉の壁をこえたところで繋がれたことが大きな経験となりました。
我々がものを作る上で、もちろん言葉は重要ですし、演出のダニエル(・ゴールドスタイン)さんや振付のジェニファー(・ウェーバー)さんたちが僕たちに伝えたいことを、通訳さんの助けを借りて一言一句聞き逃さないようにと心掛けていましたが、それ以上にみなさんがパッション、情熱を持って僕たちに接してくれたので、言葉以上のものも受けとることができました。とても刺激をもらった1か月半で、海外の方とまた仕事をしたいと思いました。
優也さん)
僕は言語の壁があるからこそ、なるべく齟齬がないようにいつもより密にコミュニケーションをとってきました。台詞についても、芝居をしているとノッキングしてしまうところで解釈や意図を確認すると、日本語にすると逆の伝わり方をするところなどもあり、見直すこともありました。ダニエルさんをはじめみなさんとの稽古はすごく充実していました。
──今作の見どころはずばり! 洸平さん)
とてもフレッシュなところです。長く愛され、長い歴史を背負った作品の素晴らしさもありますが、我々がやっているのは誰もやったことのないこと、見たことのないことの連続です。そのフレッシュさを、ぜひ劇場で体験していただきたいと思います。
──洸平さん、優也さん、お互いに尊敬するところは。洸平さん)
優也はずっと練習しているんです。休憩中も稽古で録音したものを聞いて研究している。こんな努力家はなかなかいません。そばにいて僕自身、勉強になりましたしたくさん刺激を受けました。頼りにしています。
優也さん)
洸平くんは、すごく周りを見る人。自分がやることがとても多いにもかかわらず、人の芝居、自分が出ていないシーンも含めしっかり見てくれているんです。そしてケインのように常に冷静。僕はどちらかというとアベルのような喜怒哀楽の激しいタイプ(笑)。新作の稽古場はどうしても切羽詰まってくる時期があるのですが、今回は洸平くんの冷静さにも助けられ、そういうことがまったくありませんでした。穏やかに臨めたのは隣に洸平くんがいたからだと思います。
山口さん)
洸平さんから優也さんがずっと勉強しているとありましたが、お稽古場では二人ともそうでした。自分のシーンの稽古では演出家と仕事をし、終わると自席で自分の仕事をする。そして自分なりにひと息ついたら、今度は二人で話し合う。ほかにしていたことは水を飲むことくらい。この舞台も素晴らしいですが、初日に至るまでの二人の稽古場での生き様もご覧いただきたかった。それくらい稽古場から二人はチャーミングでしたし、作品をぐいぐい引っ張っていました。
──お互いにどう呼び合おうとか決めたりしましたか?
優也さん:僕はこうちゃん!
洸平さん:ちょっとそんなこと言ったことがないでしょ、言われたこともないですよ!びっくりした(笑)

優也さん:洸平くんです
洸平さん:僕は優也
(こちらも優也さんに一本取られました!)
──W松下で、ライバル意識は?洸平さん)
ないです。もともとアーティストとしてもリスペクトしていましたし、ミュージカルでの活躍も知っていたので共演が決まったときから嬉しく思っていました。同じ松下でしたし、いずれどこかで交わることもあるだろうと思っていた優也と二人で、こうやって真ん中に立てることが嬉しいです。
優也さん)
僕もまったくなくて。最近はこの規模のミュージカルではWキャストも多いですが、今回は全員がシングルキャスト。全公演を乗り切るにはメンタル的なところも含めて自分が頑張ればいいということだけでなく、支え合いが必要。その意味でもライバルではなくバディ、相棒として存在したいと思っています。劇中では、お互い相棒はほかにいるんですけど。
洸平さん)
昨日の初日に感じたことですが、こちらが芝居でどれだけ仕掛けてもちゃんと反応してくれる。お互いにリスペクトの気持ち、絶対的な信頼関係があるから、舞台上ではパチパチにできるんだと思います。
──最後にメッセージを! 優也さん)
世界初演、まずは初日を迎えられたことにホッとしています。ここから僕らも健康に過ごし、千穐楽まで一人でも多くの方にこの作品を届けていきたいと思っています。一度でもいいですし、二度でも三度でもご観劇いただけたら嬉しいです。
洸平さん)
僕自身、久しぶりのミュージカルということでプレッシャーもありましたが、本当に素晴らしいスタッフ、キャストのみなさんに支えられ楽しい初日を迎えられました。この作品を通して、僕たちも次につながるいい経験ができています。そして僕らがどれだけ一生懸命作っても、ご覧になってくださるお客様がいなければ成立しません。お客様にとっても、僕らがお渡ししたエネルギーが日常生活で活きるような力強い作品です。ぜひ劇場に足をお運びください。
ミュージカル『ケイン&アベル』開幕レポート~公開ゲネプロ編~も公開いたしました!
ストーリー
物語は、フロレンティナ(咲妃みゆ)の回想で始まる──。
20世紀初頭──ボストンの名家ケイン家に生まれ、銀行家の父の跡継ぎとして祝福された人生を歩むウィリアム・ケイン(松下洸平)。幼くしてタイタニック号の事故で父親を亡くしてしまうも、父のような銀行家になるべく学業に専念し、名門ハーバード大学に入学。卒業後はケイン・アンド・キャボット銀行に取締役として入行する。
ウィリアムが生まれた同じ日にポーランドの山奥でヴワデク(のちの、アベル・ロスノフスキ)(松下優也)は生まれ、貧困と劣悪な環境で育ち、やがて戦争によるロシア軍の侵略により孤児となる。度重なる苦難を乗り越えて、アメリカへ渡り、アベル・ロスノフスキと名乗るようになる。その後、アベルはウェイターとして働く中で、持前の頭の良さと忍耐力を発揮。のちに、ホテル王、デイヴィス・リロイ(山口祐一郎)に認められ、ホテル経営に携わるようになる。同じ移民仲間のザフィア(知念里奈)と結婚する。
しかし、そんな矢先、ニューヨークが大恐慌に襲われる。株の暴落によりデイヴィス・リロイが非業の死を遂げる。
アベルはリロイのホテルへの融資を断ったウィリアムに復讐することを決意。2人は対立を深めていく。。
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人