井上ひさしが小説で遺した「わが友フロイス」。
同じフロイスを題材に、今最も注目されている劇作家・長田育恵が
書き下ろした完全オリジナル作品
『フロイス-その死、書き残さず-』は戦国時代の日本で活躍した宣教師ルイス・フロイスを題材にした、劇作家・長田育恵さん書き下ろしの“こまつ座の完全新作”。
劇に人間のどうしようもない愚かさや愛おしさを書き込むこと。それは先生が教えてくださった、私の作劇の根幹です──長田さんコメントより【「わが友フロイス」について】
「わが友フロイス」は1983年に井上ひさしがNHKラジオドラマとして書いたラジオのための書簡形式の台本です。ポルトガルに生まれたカトリック・イエズス会の宣教師ルイス・フロイスは、1563年、日本におけるキリスト教布教の命を受け長崎にやってきました。そのころの日本は内乱の続く、世にいう戦国時代。フロイスは持ち前の文才と語学的才能、豊富な記憶力を武器に、あの織田信長にも対面し布教の許可状をもらうなど宣教活動に努めます。また布教するにあたっての日本の出来事を熱心に本国、またイエスズ会本部に報告します。その功績を買われ、後に、現在も当時の日本を知る資料となっている『日本史』を執筆しました。信長の死後、秀吉によるキリシタン弾圧が始まった直後、「二十六聖人殉教事件」を最後の報告とし、長崎の教会で没します。このラジオドラマは、フロイスが、早くは両親に、またイエスズ会入会以降は、宣教活動先からいまでいうところの上司や同僚へ宛てた報告書と、それぞれの書簡を受け取った人々から届く返信から成っております。
そのフロイスを題材に、劇作家・長田育恵さんにオリジナル作品として書き下ろしていただき、こまつ座の完全新作としてお届けするのが本作。長田育恵さんは劇団てがみ座を主宰、数々の傑作戯曲を生み出し、また、てがみ座公演ばかりではなく、他劇団へ書き下ろした戯曲も数多くあります。
また、新しい戯曲に、日本演劇界のトップランナーでありこまつ座にはなくてはならない演出家でもある栗山民也さんがどのような命を吹き込んでくださるか、ご期待ください。また出演者には、こまつ座初参加となる風間俊介さんらを迎え、こまつ座の新たな挑戦が始まります。
ここからはスタッフ、キャストコメントをご紹介いたします。
長田育恵さん(作家)私は劇作家協会の戯曲セミナー研修課で井上ひさしさんの最後の個人研修生でした。
本作は、先生が書かれた「わが友フロイス」と、同じフロイスを題材にオリジナルで作劇した舞台です。幼少期からキリスト教と密接な関わりを持って過ごされた先生と、今現在、戦争のやまない世界を見渡す私のアプローチは少々異なっているかもしれません。
宣教師フロイスは戦国時代の日本を肉眼で見ていた記述者でもあります。本作には「物語」さえあれば命を捨てていける日本人の宿痾や、宗教上の使命と人への愛着の矛盾に苦しむ彼の葛藤を描きました。それから──劇に人間のどうしようもない愚かさや愛おしさを書き込むこと。それは先生が教えてくださった、私の作劇の根幹です。
栗山民也さん(演出家)稽古の合間、井上ひさしさんと雑談をしていた時、宣教師の書簡をもとに書かれた小説『わが友、フロイス』の話になって「これ、芝居になるよね」と、すかさず即興で拵えたストーリーを熱く語っていたことを覚えている。その記憶が今回の出発点になった気がする。この題材なら長田育恵さんがいいと強引にお願いし、彼女独自の視点から見た戦国時代の新たなドラマが生まれた。
今、その台本を前に、神とはなにか。なぜ人は絶望に襲われた時、自ら宗教に向かうのか。絶えることのない人間同士の争いに、神への祈りは有効か。神のため、人は自らの命を捧げることが出来るのか、などいろいろな問いがぐるぐると巡る。そしてその時代の狂気が、さまざまな現代の問題として見えてくる。
稽古で、早くみんなの声を聞きたい。
風間俊介さん(出演)台本を受け取り、読み進めていく毎に、この作品が持つエネルギーに圧倒されました。 人々の希望、志、矜持、様々なものが織り重なり、繊細なのに力強い作品だと感じました。 私が演じますフロイスは、混沌とした世界の記録者のように思います。 この強いエネルギーをステージでどう演じ、どう受け止め、どう見守るのか。 心から楽しみなのと同時に、少々、恐れ慄いて
おります。 でも大丈夫。 栗山さんが演出してくださる。 真っ暗な海の向こうに光る灯台のように、子供の手を引く父のように、作品を正しい方向へ導いてくれる。 多角的な受け止め方が出来る作品だと思いますので、「こういう作品です」という説明は控えますが、ひとつだけお約束できるのは、観にきて下さる皆様の心を強く揺さぶる作品になると思います。
川床明日香さん(出演)「舞台」という私にとっての新たな畑をどう耕していくのか。
そのはじめの一歩を歴史あるこまつ座さんで始められることを夢のように思います。
しかしこの夢を現実にして自分のものにできるのかは私次第であり、怖さももちろんあります。
自分が生まれ育った大好きな九州でかつて生きていた人たちの物語。
当時の方々に思いをはせながら、力をもらいながら、これまでの自分とこれからの自分を信じて皆さんにしがみついていきます。
采澤靖起さん(出演)パルコ劇場の『ゲルニカ』という作品にスタッフで関わった約4年半年前。
長田さんの胸を刺す言葉を、栗山さんが見事「現実」として立ち上げていく現場を間近で見ていました。
「いつかこのお二人と俳優として仕事がしたい。」遂にその念願が叶いました。しかもこまつ座完全新作!井上さんと縁深いお二方ならではの、面白くて真面目かつ奥深い作品に胸が高鳴ります。私、昨年は厄年でしたが、こうして役が付いて本当に良かったです。
久保酎吉さん(出演)栗山さんと創る、こまつ座での初めての新作です。
長田さんの練られた、熱い言葉を通して、人とは何かという大きな命題を考えながら、稽古を積んでいく事になるのだと思います。
そして、作品を通して、書く事にこだわった井上さんの生き様のようなものまで、お客様にも感じて貰えれば、こんなに嬉しい事はありません。
とにかく、ワクワクしています。一緒にワクワクしませんか?
増子倭文江さん(出演)今、脚本を読み終えました。
いったいどんな芝居に立ち上がって行くのでしょう…。
釘付けになったセリフがあります。
「もし嘘なら、命がけで海を越えて、苦労して言葉ば覚えて、お国にも帰れんで親兄弟にも会えず、こんなとこで死ぬわけなか。嘘のために一生かけてこんなこと出来んじゃろ!」
信長や秀吉の時代に宣教師として迫害や戦いの中で生き抜いた人生を思います。
もう今から栗山さんや他の俳優さんとの稽古が楽しみで、ワクワクしています。
戸次重幸さん(出演)いつかご一緒させていただきたいと願っておりました、栗山民也さん演出の舞台。
今回お声がけを戴き、大変光栄です。
私の役所は、しがない漁師から大名に謁見できるほどの商人に成り上がる、強かで小狡い性格の男です。
理想と現実の間で、常に現実的に物事を選択するリアリストな部分が、物語の中では印象が悪く映るかもしれませんが、いざ、自らの視点に置き換えると、誰しもそう選択するであろう、してきたであろうと、共感すら覚えるはずです。
そういう人間臭さを表現することを第一に、演じ切りたいと思います。
【公演情報】
こまつ座 第153回公演『フロイス-その死、書き残さず-』
東京公演:3月8日~30日 紀伊国屋サザンシアターTAKASHIMAYA
兵庫公演 :2025年4月5日(土)@会場:兵庫県立芸術文化センター阪急中ホール
岩手公演 :2025年4月12日(土)@奥州市文化会館(Zホール)大ホール
宮城公演 :2025年4月18日(金)@仙台銀行ホール イズミティ21 大ホール
大阪公演 :2025年4月25日(金)~26日(土)@梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
【作】長田育恵 【演出】栗山民也
【出演】風間俊介 川床明日香 釆澤靖起 久保酎吉 増子倭文江 戸次重幸
この記事は公演主催者の情報提供によりおけぴネットが作成しました