ミュージカル『ボニー&クライド』@シアタークリエ
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2025年3月開幕! ミュージカル『ボニー&クライド』にてクライド・バロウ役で主演する柿澤勇人さんにお話を伺いました。
数々の名作ミュージカルを生み出したフランク・ワイルドホーンの楽曲に乗せ、1930年代に世界恐慌下のアメリカ中西部で犯罪を繰り返した実在のギャング・カップル、クライド・バロウとボニー・パーカー。その“ボニー&クライド”の疾走感あふれる物語を、瀬戸山美咲さんの上演台本・演出により、“新演出版”として上演となります。
──『ボニー&クライド』のお稽古も本格的に始まりました。映像作品やストレートプレイとミュージカル、取り組む姿勢は変えていないつもりですが、やっぱり歌うときには全然違う筋肉を使わなくてはならないですし、とくにフランク・ワイルドホーンさんの楽曲はキーがとても高いため、喉だけではなく身体全体の運動量が増えるので、筋トレしたり泳いだりして健康的に過ごしていますね(笑)。
──久しぶりにミュージカル作品に取り組んで感じることは。物語の舞台はアメリカで、それを日本語の台詞と歌詞で上演する。これをリアルに感じていただくため、稽古場でいろいろな試行錯誤をしています。
──具体的にはどのようなアプローチをされているのでしょうか。僕は、やっぱり言葉。歌詞が言葉としてどう聞こえるかをまず考えます。ソロだったら独白、掛け合いなら会話、お芝居として自分が話している言葉が自然に、ちゃんと聞こえているか、それが一番大事だと思っています。
──実際に稽古場ではカンパニー内でどのようなやり取りをされていますか。実感を持って台詞を発したいという想いから、僭越ながら僕の意見も話したりしています。
1930年のアメリカ現代劇なので、日常会話の延長がそのまま歌に繋がったら理想的ですね。簡単なことではありませんが、出来ると信じて頑張っています。
──1930年代を生きた実在の二人“ボニー&クライド”のクライドを演じることについて。この物語を今の日本で上演する意味を考えています。現代とリンクしている部分があるとすれば、みんながなにかを変えたいと思いながら生きているということ。共通してそんな閉塞感に支配された世の中だということ。それを当時打ち破ったのがクライドとボニーで、共感してくれる人はいると思うんです。とはいえ、必ずしも共感していただきたいわけではなくて、瀬戸山さんも社会派のテーマを前面に押し出すだけの作品にはしないだろうと。エンターテインメントとして、多角的な見え方のする作品になると考えています。
──二人の物語に爽快さを感じるのは、その辺りに由来するのでしょうね。ギャング=悪党、確かにそうなんだけど、この作品のボニーもクライドもすごくチャーミングで人間的魅力にあふれています。だから二人は互いに惹かれ合ったのだと思うし、周りの人はそんな二人に魅了され、熱狂した。そこをしっかりとつくっていきたいと思います。
──写真も残っていますが、ボニーのファッションは、今見てもカッコイイです。そうなんです! ボニーはワンピースやキャスケット、最先端のおしゃれをして、カメラを向けられればしっかりとポーズを決めて写る。犯罪者にもかかわらず、当時の女性たちの憧れ、象徴ともいえる存在にまでなっていったというのは、非常に稀有だと思いますね。
──義賊的な側面、そしてなによりカップルだったことが二人をより鮮烈に印象付けた。独特の美学というのは、彼らの行動にもあったのかもしれません。確かにあったと思います。女性を襲ったり、自分たちと同じ貧しさのなかで暮らす人から奪うことはせず、襲撃するのは銀行。そこにあるのは銀行に対する「この最悪な(経済的)状況はお前たちのせいだ! 俺たちの金を返せ!!」というクライドたちなりの正義。だからその行動に同調する仲間も出てきたのだと思います。おそらくクライドは1人でもなんらかの行動は起こしていたと思いますが、あれほどセンセーショナルな存在になったのは、運命としか言いようがないボニーとの出逢いがあったからだと思います。
──クライドとして、実際に相手役とお芝居をすることで見えてくるもの、演じる上での課題は。ボニーとの関係性をどう作り上げるか。日本人はあまりボディコンタクトでのコミュニケーションを取らないので、その必要性や意味合いをしっかりと考え、日本の観客のみなさんにも自然に観てもらえるよう、ディスカッションしながらつくっています。
親密なシーンなどは、演じることに慣れているはずの俳優でもどこかに力が入ったり、ぎこちなくなったりするので、稽古場でしっかりと信頼関係を作って、クライドとボニーの関係性を作りあげていきたいと思います。
また、今回は稽古場にインティマシーコーディネーターが入っていて、俳優の意向を尊重しながら演出意図をよりクリアに体現したり、心理的な安全性を保ったりしてくださっているのがとても新鮮です。
──ワイルドホーンさんの楽曲についてはいかがでしょうか。カントリー、ロック調の楽曲もあれば美しいバラードもある。「キタキタ!」と思うようなフランク特有の二人の想いを歌い上げるデュエットもありますが、登場人物が会話をしているような楽曲が多いと思います。『ジキル&ハイド』でジキルが、『デスノート』で夜神月がそれぞれ自分の内面を歌い上げるのとは少し違って、ボニーとクライドは互いの出逢いそのものが、物語のなかでとても大事だからではないでしょうか。目の前にいるボニーと歌うナンバーでは、会話、芝居的な要素がより一層大切になってくると思っています。
──今回、シアタークリエと博多座では客席数も変わります。劇場の違いというのはツアー公演ではよくあることだと思いますが、それによってお芝居の方法は変えていくのでしょうか。お芝居は変えないですが意識はしますね。
たとえば昨年上演した『ハムレット』だと埼玉(彩の国さいたま芸術劇場)は800弱、愛知(愛知県芸術劇場)は2500のキャパシティでしたが、それによって大きな芝居にするようなことはしませんでした。もちろん最後席まで届けるという意識はもちますが、これまでやってきた芝居は崩さずに届けたいと思っています。
──では最後に柿澤さんご自身について。今現在、自分の強みはどこにあると思いますか?強みか……いや、マジでないな(笑)。
(熟考)
でも……『ハムレット』をやり切ったことは強みかな。あのとき本当に“変わった”という実感がありました。演出の吉田鋼太郎さんにも「カッキー、これをやったら何年かは本当に楽になるから」と言われたんです。もちろん“楽”といっても、実際は今も毎日必死ですし、今後もなめて取り組むつもりは全くありませんが、『ハムレット』をやり遂げたときの感覚は「なんとか生き延びた」というくらいのものがありました。あの辛さ以上のものはしばらくないかなと思うと、それこそが今の僕の強みなのかもしれません。
◆お芝居のなかでの歌唱、その爆発的な表現力で観客を魅了する柿澤さん。お芝居への揺るぎない信念や誠実な向き合い方が伝わるお話とともに、ご自身の強みについて熟考される姿が印象的でした。常に予想を超えてくる柿澤さんがどんなクライド像を見せるのか、ボニーとの化学反応は……お話を伺っていてもワクワクが増すばかり! 『ボニー&クライド』は3月10日にシアタークリエで開幕です!
ヘアメイク:松田蓉子/スタイリング:千野潤也(UM)
ミュージカル『ボニー&クライド』@シアタークリエ
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ミュージカル『ボニー&クライド』製作発表レポート
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人