小川絵梨子芸術監督 最終シーズンのフルオーディション企画は、満を持して小川自らが演出!
『ゴドーを待ちながら』で知られるベケットの傑作『エンドゲーム』を上演します!
「終焉」のときを待つ二人の登場人物…、人間とは、生きることとは──
小川絵梨子芸術監督が、その就任とともに打ち出した支柱の一つ、すべての出演者をオーディションで決定するフルオーディション企画。第8弾となる今回は、いよいよ演劇芸術監督の小川絵梨子自らが演出を担当いたします。本日、オーディション詳細が発表されました。2025年3月12日より応募を開始、4月から5月にかけてオーディションを開催し、合格者には26年5月の公演にご出演いただきます。
フルオーディション企画第8弾のオーディション募集開始にあたって、小川絵梨子より応募してくださる皆様に向けたコメントが到着しました。
<小川絵梨子(新国立劇場 演劇芸術監督・演出)コメント>
2018年に始まりましたフルオーディションでの公演は、今回で8回目を迎えます。初回の『かもめ』をはじめ、『反応工程』『斬られの仙太』『イロアセル』『エンジェルス・イン・アメリカ』『東京ローズ』そして『消えていくなら朝』と、多彩な作品を上演してまいりました。そしてこのたび、サミュエル・ベケット作『エンドゲーム』を上演いたします。
このフルオーディション企画は、演劇の可能性を広げ、探究することを目的として始まりました。初めての試みであったため、どれほどの方にご関心をお寄せいただけるのか分からない中でのスタートでしたが、こうして本企画を重ねることができましたのはご参加くださった皆さまのおかげであり、本劇場にとりましてもこの出会いの積み重ねはかけがえのない財産です。これまでオーディションにご参加くださった皆さま、そして今回のフルオーディションにご興味をお持ちくださった皆さまに、心より深く感謝申し上げます。
もし本作『エンドゲーム』にご関心をお寄せいただけましたら、ぜひご応募をご検討いただけますと幸いです。皆さまとお会いできる日を心より楽しみにしております。何卒よろしくお願い申し上げます。
【作品について】『エンドゲーム』の世界は、どうやら『ゴドーを待ちながら』の時代よりもさらに荒廃が進んでおり、部屋の外に生き物の気配はまるで無く、また人間関係は一層の悪化を見せ、今まさに世界は終末を迎えようとしているように見えます。この世界の終わりの中で、登場人物たちは変わりなく繰り返される日常を生きています。この物語は、一見すると世界の終わりを描いた陰鬱な世界観ながらも、実は“終わらないためにどう生きるか”を問い直す物語でもあると考えています。ベケット作品の登場人物たちのように、時間と存在への無力感と対峙しながらも、それでもなお生きることの意味を模索し続ける姿は、普遍的な人間そのものの姿です。ベケット自身、この『エンドゲーム』を「自分の作品の中で最も嫌いじゃない作品」と評したとされています。また、私が特に心に残っているベケットの言葉に「Try again. Fail again. Fail better.」というものがあります。冷徹な現実への視点の中に人間的な温かさを宿すベケットの考え方にはどこか救いも感じます。失敗を繰り返し、終わりに近づく中にあっても「どうやって終わらせないか」「われわれはどう生きるのか」という問いを絶えず問い続ける姿勢こそが、人間の希望であることを描きたいと考えております。
【登場人物について】全部で4名です。ハムと、ハムと親子関係にある(と思われる)クロヴ、そしてハムの両親であるナッグとネルです。ハムは壮年期の終わりから中年期にかけての人物として、老いと人生の終わりが訪れつつある年齢として設定する予定です。しかし、すべての登場人物におきまして、演じられる方の実年齢が設定と一致している必要はございません。ご興味を持っていただけた役に自由にご応募いただけましたら幸いです。
この記事は公演主催者の情報提供によりおけぴネットが作成しました