【演劇、ミュージカルに夢中でいたい】藤岡正明さん「M's Musical Memories」インタビュー~ミュージカルデビュー20周年を迎えて~

今年、ミュージカルデビュー20周年を迎える藤岡正明さん。5月10日、11日に開催する「M's Musical Memories」や“俳優・藤岡正明”についてたっぷりとお話を伺いました。



──はじめに「M's Musical Memories」をご紹介いただけますか。

ミュージカルデビュー20周年を迎え、この機会にみなさんと一緒に“この20年”を振り返りたいと思い企画したのが「M's Musical Memories」。近年開催しているミュージカルコンサート「M's Musical Museum」をアレンジしたタイトルで、出演日順に、田代万里生さん、東山義久さん、伊礼彼方さん、中河内雅貴さんをゲストにお招きし、歌とトークで“ミュージカル俳優・藤岡正明”の20年の歩みを振り返っていきます。


──ゲストの顔ぶれからもあの作品、この作品と思い出が蘇ります。深いお話は当日のお楽しみとして、みなさんとの出会いや俳優としての活動を一足お先に振り返りましょう。2005年にミュージカル『レ・ミゼラブル』マリウス役で鮮烈なデビューを飾りました。

そこで出会ったのが東山義久さん。すみません、ここからは親しみを込めていつもの呼び名で呼ばせてもらいます。よっくん(東山さん)は僕のミュージカルデビューから知っている人ですので、当然、当時の話も出るでしょうね(笑)。『宝塚ボーイズ』では2010年、2018年で共演したり、近年もコンサート等でご一緒したり、公私共に仲良くさせていただいてます。

続く万里生とは、2009年のミュージカル『ブラッド・ブラザーズ』で共演、この作品も僕にとって大きな転機になった作品です。2010年の再演、そして2018年のシアタークリエ10周年記念コンサート『TENTH』でもこの作品の楽曲を2人で歌わせてもらいました。ミッキーとエディとしての関係性が僕たちの繋がりにも影響していて、万里生はあっきー(中川晃教さん)のことは「あっきーさん」、彼方のことも「彼方くん」って呼ぶんですけど、僕のことは「マサ」なんですよね。みんな万里生より“ちょっと年上の俳優”なのに(笑)。なんだかそれも秘かに嬉しいんです。

──クラシックとポップス、タイプの違う“歌ウマ”俳優の共演、歌もお芝居もハマっていました。続いては伊礼彼方さんです。

彼方とは付き合いは長いのですが、本当に共演は少なくて(笑)。2012年に、小西遼生くんを加えた同い年の3人で「ACTORS VOICE」というライブをしたり、『We are ウォンテッド!~俺たちを捕まえろ!~』というシアトリカルコンサートで共演することはあっても、ミュージカルでは2016年の『グランドホテル』くらいかな。元々親しかったのですが、コロナ禍くらいからこれからミュージカル界が、演劇界がどうなっていくかというところでいろいろと話すことが増えました。昨年の「Musical Lovers」でディーバの出演者オーディションでもその趣旨に賛同し審査員を快く引き受けてくれた同志です。ミュージカルへの愛情、思いをともに語っていければと思います。

最後、万里生も出ていた2012年の『ボニー&クライド』で保安官テッドをWキャストで演じたのがガウチ(中河内さん)。彼とはその後、『ジャージー・ボーイズ』トミー・デヴィート役、『ビリー・エリオット~リトル・ダンサー~』トニー役など本当にWキャストが多いので、トークでもWキャストあるあるがたくさん飛び出すんじゃないかな。共演は2014年の『ザ・ビューティフルゲーム』や彼方も出ていた『We are ウォンテッド!』のゲストもありましたが、2023年の『Rodgers/Hart(ロジャース/ハート)』での共演で仲が深まりました。今更って感じですよね(笑)。ガウチとは、『ビリー・エリオット』や『ボニー&クライド』の楽曲がいいかな。



そんな風に、4公演それぞれ“この組み合わせでしか聞けない話”になると思います。また司会で山野靖博くんが入ってくれます。出会いは『ジャージー・ボーイズ』、初演から作品を支えてきた功労者の一人、大切な仲間の山野くん。今年の公演ではNew Generation Teamのニックとしても出演されます。僕はそれがとても嬉しくて! イベントでもMCだけでなく歌でも協力してもらおうと思っています。

歌唱曲については、ゲストとの思い出の曲、そこに僕がやってきたほかの作品や役でお客様が聞きたいと思ってくださっているだろうなという楽曲を織り交ぜて毎回6~7曲、さらに4回の公演のセットリストは1曲も被らないように……なんて考えていたら、結構な曲数になっています。また、当日はアミューズメント感をアップさせるために、会場に僕の等身大パネルを設置します! 渾身のポーズでお待ちしていますので、ぜひ一緒に写真を撮ってお楽しみください。


──ここからは“俳優・藤岡正明”について伺います。歌手として活動されてきた藤岡さんが、“俳優”を自認したのは。



2005年にミュージカルデビューしてから3年間は、『レ・ミゼラブル』(レミゼ)しか出ていないんです。その後、2008年に『ミス・サイゴン』(サイゴン)に出演したのですが、どちらもソングスルーなので基本的に台詞はありませんでした。僕が初めて台詞をしゃべったのが2009年の『この森で、天使はバスを降りた』。錚々たる俳優に囲まれ、心折れまくった日々でした。なにもできない、どうしていいかもわからない、とにかく言われたことをしっかりとやっていくので精一杯で完全に委縮していました。“レミゼ”や“サイゴン”ではもっと伸び伸びできていたのに、台詞になったとたんこれかと。すごく大変だった思い出です。

その次に出演したのが『ブラッド・ブラザーズ』、そこで初めてお芝居って楽しいなと思うことができました。誤解して欲しくないのは、これまでの演出家のやり方が悪かったということではなく、あくまでも自分の俳優としてのスキル、余裕がなかったということです。
少しずつ経験を重ねたタイミングで、俳優に「どんどん芝居のアイデアを持ち込んでください」と言ってくれる演出家グレン・ウォルフォードと出会えたことは大きかったですね。

「面白いことをやってみて」と言われいろんなアイデアを試してみると、グレンは大笑いし手を叩いて喜んでくれるんです。僕は「いい感じなんだ」と思うのですが、ノートの時間になると「マサ、あれはやりすぎ」とバッサリなんです。さっきのリアクションはなんだったんだって(笑)。でも自由に試せることが嬉しくて。そうやってお芝居に目覚めるきっかけをくれた師匠がグレンです。

その頃に、「役者だなんて口が裂けても言えないですよ」という自身のスタンスに恥ずかしさを感じるようになりました。もちろん芝居の勉強をしてこなかった自分が急に役者だということがおこがましいという思いからの言葉でしたが、こうして作品を届けている人間として、「役者じゃない」というのは失礼だなと。


──続いて音楽座ミュージカルの『泣かないで』にご出演されました。これもまた新たな挑戦となる作品だったと思います。

僕の地元、町田にゆかりのある劇団。みんなで稽古をして、終わると炊き出しがあるなど劇団の稽古や公演はまさに“同じ釜の飯を食べる”経験で、とても新鮮でした。内容的には、遠藤周作さんの『わたしが・棄てた・女』を原作とする、戦後間もない東京を舞台にした社会派の作品です。僕が演じた吉岡とハンセン病と診断された女性ミツの物語。それまでの作品と違い、舞台をご覧になるお客さんの中に当時を生きていた方もいるだろうし、身近に当事者がいるということもある。そこへの責任、演じる重みを強く感じました。原作を繰り返し読み、台詞の裏側にあるものを探求したり、当時の社会におけるハンセン病がどのようなものだったのかを学んだり、役に自分自身が近づける作業を地道に行いました。パフォーマンスに関しては、劇団員のみなさんのダンスが素晴らしすぎて……この猛者たちの中でどうしたらいいんだという思いでいっぱいでした。


──こうして一歩ずつ俳優としてステップアップしてきて、いよいよ初めてのストレートプレイ『宝塚BOYS』です。



ここでもう一度「自分はこんなにできないやつなんだ」ということを突き付けられた、これもまた忘れられない作品です。演出家の鈴木裕美さんの徹底指導を受け、本当にコテンパンでしたよ(笑)。でもすごく面白かった。裕美さんとは、ここからずっと仲良くしていただいています。この出会いも大きかったですね。

改めて、僕自身、こうしてその都度、俳優として取り組むべき課題、成長させてもらえる作品に出会わせてもらえたことはとても運が良かった、ありがたかったと思っています。駆け出しの5年の濃密な経験によって、演劇の奥深さに魅了され、そこから自分で作・演出などにも挑戦していく基盤ができました。


──これからについてはどう考えていらっしゃいますか。

ひとりの俳優として自分自身を磨き続けたい。20代、30代とは身体も変わってくるので日常生活も改めて、良い歳の重ね方をしたいと思っています。そして藤岡を使いたいな、藤岡なら安心だなと思ってもらえる俳優でいたいと思います。

もうひとつ、ミュージカル界、演劇界に身を置く一人として、育ててもらった恩を返すというか、これからの世代に恩送りをしていきたいと思っています。でもそこで難しいのが、距離感。こちらが良かれと思ってしたアドバイスが、相手を委縮させてしまうこともある。それが行き過ぎるとハラスメントになる。これまでは仲間のノリで言ってしまう、そこを割とおろそかにしがちでした。年齢や立場の変化によって、そして時代に合わせて、自分自身をアップデートしていかなければと思っています。


──藤岡さんにとって「演じる」とは。



「演じる」と言っても、「演技すること」と「芝居を作ること」は同じようで違うと思っています。「芝居を作る」のは、自分が作品の歯車のひとつになって戯曲を具現化していく作業。「演技」はそこで俳優が成すべき行為。そういう意味で、俳優の仕事は「芝居を作る」ということだろうなと。

そこで大事になるのは、作品の中で変化し成長する役なのか、ずっと変わらない役なのか、だれかの成長の邪魔をする役なのか、“役の役割”を考えること。そして相手から受け取ったしゃべる動機をどのように次につなげていくのかが、どうパスを出すかも考えなくてはなりません。そうやって芝居はいろんなピースがあって、それがかみ合うことでようやく動きだす。その役割を果たすという意味での歯車です。それと同時に、演じる役に人間的な面白みが詰まっているといいですよね。それを稽古で試して、演出家や共演者と共に足し算、引き算をしていく。それが芝居作りだと思っています。

そうやって作られた虚構の中の真実。演劇は嘘なんだけど、そこに俳優が真実を投影できればお客さんに何かが伝わり、何かが残る。お客さんの中に残ったものは嘘ではなく真実。そこを目指していきたいです。


──20周年を迎えて思うことは。



一番は、20年前からという方もいれば、途中からという方もいると思いますが、この20年の間、僕を応援してくださったすべての方に感謝しています。ファンの方はもちろん、制作スタッフのみなさん、関係者のみなさんに支えられて今もこうして俳優の仕事ができています。僕たちの仕事は、自分がやりたいと思うだけではできません。誰かがやろうと声をかけてくれたり、誰かが見たいと思いチケットを購入してくれたり。それがあって初めて成立すると実感しています。それにしっかりと応えていきたいと思います。

そして仲間の存在にも感謝しています。この20年で出会ったたくさんの演劇小僧たちと「あの芝居いいよね、この俳優さんいいよね」とこれからもずっと熱く語り合っていたい。あ、小僧だけじゃないですね。『宝塚BOYS』以来お世話になっている裕美さんは永遠の演劇娘。僕が自分の演劇ユニットを立ち上げたのも裕美さんが背中を押してくれたのがきっかけです。本番を見に来てくださって、お酒を飲みながら感想を嬉しそうに話してくれたんです。その時、この人は本当に演劇を愛しているんだな、素敵だなと思いました。僕も、そんな風に仲間と共に、ずっと演劇に、ミュージカルに夢中でいたいと思っています。


──素敵なお話をありがとうございました!改めまして20周年、おめでとうございます。そしてここからの20年の活動も楽しみにしております。
【公演情報】
「M's Musical Memories」
2025年5月10日、11日@J-SQUARE SHINAGAWA
東京都港区港南2-5-12 JOYSOUND 品川港南口店2F
https://xme.co.jp/jsquare

出演:藤岡正明
SPECIAL GUEST
5月10日(土)13:30 田代万里生 18:00 東山義久
5月11日(日)13:30 伊礼彼方 18:00 中河内雅貴
MC:山野靖博
演奏:久田菜美

https://masaaki-fujioka.com/contents/898038

おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人

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