ミュージカル『ビートルジュース』観劇レポート

日生劇場にて開幕した2025年のミュージカル『ビートルジュース』!主演のジェシーさん(SixTONES)をはじめとする続投キャストと新たに加わったキャストが巻き起こす笑いと感動の公演をプレスコールのお写真と共にレポートいたします。

本作は、ティム·バートン監督の1988年の映画作品を原作としたミュージカル作品。2019年春にブロードウェイで初演、日本版はジェシーさん(SixTONES)の主演×福田雄一さんの演出という強力タッグで2023年に初演され、“ビートルジュース役はジェシーしかいない”と言われるほどの評判を呼びました。そして2025年、2年の時を経て、まさに待望の再演の幕が上がったのです。





【「ビートルジュース、ビートルジュース、ビートルジュース」3回唱えると──】

幕開きは葬列。母を亡くした少女リディアの<Prologue: Invisible>、演じる清水美依紗さん(山﨑玲奈さんとのWキャスト)の繊細で美しい歌声が劇場に響きます。母を失った悲しみと父が自分を見てくれない孤独を歌うリディアの成長譚でもある本作。そこに登場するのが、死後の世界の厄介者バイオエクソシストのビートルジュース!! しっとりとした雰囲気をぶち壊し、第四の壁もなんのその! 観劇のご注意もちょっと過激に織り交ぜながら始まる<The Whole “Being Dead” Thing>。“あの世” について歌い、踊りまくります。劇場の空気を掌握し、七色の声色を自在に操る、まさに“魅せる”ナンバーでエンターテイナーぶりを発揮するジェシーさん。どんなに悪態をついてもどこか憎めない。 なにかを超越した存在としてのビートルジュースがそこにいる!この時点ではまり役と言われることに納得です。



物語はとある家を舞台に繰り広げられます。そこに住む夫妻アダム(勝地涼)とバーバラ(愛加あゆ)は不慮の事故で命を落としてしまう。互いに趣味に没頭するアダムとバーバラ、愛し合っているもののなにか煮え切らないようなところもある夫婦の日常を絶妙な空気感で演じる勝地さんと愛加さん、初演からのコンビで息もピッタリです。強烈なキャラクターが次々に登場する中で、“ごく普通”で笑いを巻き起こす芝居巧者ぶりを発揮! また、そのキャラクターは死後もブレることなく、うろたえながらもなんとか我が家を守ろうと奔走する“人間味”あふれる幽霊に。

そんな二人の前に、生前は見えなかったビートルジュースが姿を現し……人を追い出すためにビートルジュースの力を借りることに。ビートルジュースによる人を怖がらせる方法のレクチャーシーン(アダムとバーバラのダメっぷり)も見どころです。




アダムら亡き後、彼らの家に引っ越してきたのはチャールズ(吉野圭吾)と娘のリディア、そして悩めるリディアのライフコーチ(……実は)のデリア(瀬奈じゅん)。登場からただならぬオーラを発するデリアを演じる瀬奈さんの“ここまでやるか!”の突き抜けた存在感と時折見せるかわいらしさのギャップが、ひと癖、ふた癖ある人物を演じさせたら右に出る者はいない吉野さん演じるチャールズのちょっと頼りない雰囲気と相まって随所で笑いを巻き起こします。本作はリディアだけでなく、チャールズの成長譚とも言えそうです。そんなカラフルな登場人物の中で、ひとり沈み込んでいるのはリディア。なんと彼女は生きているのになぜか幽霊が見える! 清水さんの強い意志を感じさせる歌声と眼差しが印象的で、その後の展開に説得力を持たせます。






プレスコールで山﨑さんのリディアも拝見しましたが、どこか達観した清水リディア、ちょっといたずら心をもった山﨑リディアとそれぞれの魅力のあるお二人。心情を切々と紡ぐバラードから力強いロングトーンまで、歌唱表現にも魅了されます。ともに小柄でキレのあるダンス、パンチの効いた歌声のリディアというのが、長身で長い手足と多彩なナンバーでダイナミックにビートルジュースを表現するジェシーさんとの対比も鮮やかです。

母との思い出の詰まった元の家に戻りたいリディア、新しい住人を追い出したいアダムとバーバラ、両者の利害は一致! アダムたちはチャールズとデリアが開くパーティーで、次々とゲストに取り憑き大騒ぎに!この<Day-O (The Banana Boat Song)>では、幽霊に操られ、次々に意に反して奇妙なダンスをする人々の姿に笑いが止まりません。

こうして人々に幽霊の存在を信じさせたものの、なんとその“幽霊の存在”によって天然のホーンテッドハウスとしての価値を見込まれてしまうというまさかの展開に。思いもかけない大誤算に、ついにリディアは「ビートルジュース、ビートルジュース、ビートルジュース」と名前を3回呼んでしまい──

キャッチーな楽曲に乗せてジェットコースターのように進む物語は、ここからビートルジュースの悪巧みとリディアの母への思いがせめぎ合い、さらに奇想天外さを増していきます。

身体表現の巧みさで“人外”キャラクターを印象付け、ブラックジョーク満載の人を食ったような言動にもどこか憎めない魅力を感じさせるジェシーさんのビートルジュース。賢さと抜群の行動力で目的に向かってエンジン全開のリディア。見た目も個性も行動もまったく異なるビートルジュースとリディアですが、“ Invisible”な孤独を抱える背中合わせの存在にも見えてくるのが演劇の魔法。ただそんなメッセージ性に心を寄せようとすると、途端にググっと笑いに引っ張り戻されるのがこの作品。難しいことは考えずに『ビートルジュース』の世界に身を委ね、思いっきり翻弄されるのが最高に心地よいのです。







奇想天外なストーリーとともに、ビートルジュースが増殖したり、ポップな骸骨が現れたりという非現実世界も見どころ! ビートルジュースがたくさんの分身を従えて踊る<That Beautiful Sound>は圧巻のショーシーンとなり、ビートルジュースの要求に従いリディアが結婚を承諾すると騙す<Creepy Old Guy>はカンパニー全体での賑やかなナンバー、骸骨も個性・表情豊かです。またこのタイトル<Creepy Old Guy>、ビートルジュースを乗せるためにリディアが連呼するのですが“キモイおじさん”と訳すことで独特のリズムを生み出します。ビートルジュースもまんざらでもないユニークな動きで答え、ブラックコメディ感があふれます。

またこの方々のご紹介も忘れてはなりません! 福田作品には欠かせない可知寛子さん、高橋卓士さんをはじめとする強力アンサンブルキャストみなさんのパワーも炸裂です。とりわけ可知さんのミス・アルジェンティーナのシーンは期待を裏切らない完成度、一編の物語がそこにあるのです。

物語の舞台は館から飛び出し死後の世界“ネザーワールド”へも広がる2幕、果たしてどんな結末にたどり着くのかお楽しみに。

こうしてドラマは深まり、ユーモアは振り切れ、ダンスはキレキレ、楽曲はキャッチー、芸達者な皆様が全力で駆け抜ける! 目も耳も心も大忙しのミュージカル『ビートルジュース』は5月28日まで日生劇場にて上演、6月4日~29日は大阪・新歌舞伎座にて上演です!

Story
不慮の事故で命を落とし幽霊となったアダム(勝地涼)とバーバラ(愛加あゆ)夫婦は、死後彼らの家に引っ越してきたチャールズ(吉野圭吾)と恋人のデリア(瀬奈じゅん)、娘のリディア(清水美依紗/山﨑玲奈)を追い出すべく、死後の世界の厄介者であるバイオエクソシストのビートルジュース(ジェシー)の力を借りることに。

ビートルジュースの荒唐無稽なアドバイスを元にアダムとバーバラは住人らを脅かすものの、なぜか幽霊が見えるリディアが、亡き母への思いと両親への反抗心でアダム夫婦に協力を申し出る展開に。リディアはこの家の幽霊の存在をチャールズとデリアに伝えて家を手放すように説得するが、逆に天然のホーンテッドハウスとしての価値を見込まれてしまう。

追い詰められたリディアはビートルジュースに協力を求めるが、現世への生き返りを企むビートルジュースが暴走し···。

【公演情報】
ミュージカル『ビートルジュース』
2025年5月9日(金)~28日(水)@日生劇場
2025年6月4日(水)~29日(日)@新歌舞伎座

<スタッフ>
作詞・作曲:エディ・パーフェクト
脚本:スコット・ブラウン&アンソニー・キング
演出:福田雄一
翻訳・訳詞:福田響志

<キャスト>
ジェシー(SixTONES)
勝地涼
愛加あゆ
清水美依紗・ 山﨑玲奈(Wキャスト)
吉野圭吾
瀬奈じゅん
可知寛子 小山侑紀 高橋卓士 伯鞘麗名 横山達夫
岡本拓也 坂元宏旬 竹内真里 中嶋尚哉 堀江慎也
スウィング:植村理乃 米澤賢人

公演HP:https://www.musical-beetlejuice2025.jp/

おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人

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