ミュージカル『梨泰院クラス』 ついに開幕!世界中で大ヒットしたチョ・グァンジンさんの原作(韓国・カカオウェブトゥーン配信)の「梨泰院クラス」を日本・韓国・アメリカのクリエイターが集結し、世界初のミュージカル化することでも話題の本作。
特徴的なヘアスタイルでもおなじみの主人公パク・セロイ役の小瀧望さんをはじめとする若き俳優陣とベテラン俳優陣がしっかりタッグを組んで届けるミュージカル『梨泰院クラス』の開幕レポートをお届けします。
【囲み取材レポート】
──いよいよ初日を迎える現在の心境、意気込みをお聞かせください。
小瀧さん)
みんなと走り続けた2ヶ月。初演の大変さを痛感した2ヶ月でもありました。今もギリギリまで改善、変更がある中で、必死にしがみついて、追いついてという作業が続いています。キャスト、スタッフ、クリエイティブ、みんなが横一線で一丸となり戦い続けてきた成果が、いよいよみなさんのもとに届けられると思うと、高揚感を覚えます。
──昨日のゲネプロを拝見しましたが、素晴らしかったです。
小瀧さん)
ぜひ、いろんなところで「(梨泰院クラス)いいよ!」と言ってください(笑)。
和希さん)
世界初のミュージカル化。我々も試行錯誤しながらお稽古をしてきました。今日、ついにお客様にご覧いただきます。そこでどんな反応をいただけるのか、またそれによって私たちがどう成長、変化していくのか、ワクワクしています。楽しみながら、日々、(役を)生きていきたいと思っています。
saraさん)
昨日、別キャストのゲネプロを拝見しました。劇場で照明も入ることで、あの世界が舞台上に広がり、登場人物がそこに生きているということが舞台ならではの魅力になっていると、「梨泰院クラス」の一ファンとして感じました。
梅澤さん)
とにかくすごくパワーが溢れる、メッセージ性の強い作品になっています。作品のパワーに負けないように、信頼する仲間たちと最後まで走り抜けたいと思います。ミュージカルは大きな挑戦、この公演を経てオ・スアのように強く生きられるように頑張りたいです。
川口さん)
ミュージカル初挑戦です。普段はあまり緊張しないのですが、今回は現時点でドキドキしています。しっかり落ち着いて、オ・スアを最後までしっかりと演じていけるように頑張ります。
saraさんの「小瀧さんは楽曲数も多く、常に物語の中心にいて作品を担うのですが、周りがその大変さを忘れるくらい稽古場で誰よりも自然体で、フラットに真ん中に立っている。その姿を感心して見ていました」の言葉が心にしみた様子の小瀧さん。思わず「じーん」とこのポーズ!──人気作を初ミュージカル化、日本で初演することについて。
小瀧さん)
世界的ヒット作というプレッシャーはありました。でも、ドラマ化の際にパク・ソジュンさんがご自身のパク・セロイを作り上げたように、僕なりのミュージカル版のパク・セロイ像を自分のやり方で演じようと思えてから、役に向き合うのが楽になりました。
そこからは仲間、そして自分と毎日いかに向き合っていくのかだけを考えていました。
──日本、韓国、アメリカの才能が集結した創作現場について。
梅澤さん)
梨泰院は、多文化、多様性の街。まさに稽古場が梨泰院みたいでした。
saraさん)
多言語が飛び交う稽古場でしたが、言葉の壁は不思議なくらい感じませんでした。みんな自由で熱い人たちですが、『梨泰院クラス』を作るという一つのゴール、同じ方向を向いていたので、言語の違いを超越してみんなで走ってきました。
小瀧さん)
楽しく真剣にというのが僕のモットー。稽古場は神聖な場所ですが、そこに来るのは誰にとっても楽しみであってほしい。「楽しい」から生み出されるものがきっとあると思うし、そこで真剣に作品や役と向き合う現場にしたいと思いました。結果として、笑顔の溢れる稽古場でした。
和希さん)
ひとシーン毎にトライ&エラーを重ねて作ってきました。ギリギリまでどうしようかセッションを続け、それぞれが自分にできることを模索し、役割を全うしようとする稽古場でした。
川口さん)
初舞台、初ミュージカルなので、稽古に入る前もすべてが未知数でドキドキしていました。
小瀧さんが温かい雰囲気を作ってくださったのがすごくありがたかったです。そして年齢、キャリア関係なく、みんなが対等に芝居への思いや意見を交換できる稽古場でした。
──見どころは。
小瀧さん)
上演時間は休憩含め2時間50分程度ですが、舞台上で描かれるのは17、18年くらいの年月になります。物語の中での、人物の成長を感じて欲しいと思います。僕たちも頑張ります。そして本当に音楽が素晴らしく、そこにカイル(・ハナガミ)さんによる生命力、エネルギーが溢れるような振付が融合しています。オープニングから心を鷲掴みにしたいと思います。
和希さん)
歌詞にも出てきますが“梨泰院のフリーダムさ”を視覚、聴覚、そして心でもお楽しみいただける作品になっています。実際に韓国の梨泰院に来たような気持ち、空気を感じていただければと思います。
saraさん)
『梨泰院クラス』は、今を生きる私たちの話です。舞台になることで登場人物が目の前に存在し、会話し、悩み、葛藤する。お客様と一緒に同じ空間で同じ時間を過ごしながら、友情、恋愛、成長、何を信じてどう生きていくかを一緒に考えられればと思います。人生の豊かさや苦しさをリラックスして共有できる時間になったら嬉しいです。
梅澤さん)
この作品は人間臭さのオンパレード。自分の正義や信念をもって生きていますが、時に間違ったり、葛藤したり、きれいなだけじゃない生き方をしているみんながすごく愛おしく感じる瞬間があります。そんな弱さが見えたとき、きっと人は共感し、それがみなさんのエネルギーになると思っています。一人ひとりの感情に寄り添ってもらえたらいいなと思います。
川口さん)
梨泰院を舞台に、多様性や自由が色鮮やかに描かれている作品です。登場人物全員が個性豊かで、信念をもって真っ直ぐに生きています。そして音楽でも、エネルギーや迫力を届けられると思うので、ぜひ楽しんで観ていただきたいです。
──最後に小瀧さんからメッセージを!
小瀧さん)
世界初演の幕が上がります。ついにこの日が来たという思いでいっぱいですし、こうして信頼するカンパニーの仲間とスタートが切れることを本当に幸せに思います。このミュージカルは、ダイナミックで、ドラマティックで、ここにしかない良さがたくさん詰まっているので、時間があっという間に過ぎるでしょう。
ここから(千穐楽まで)長い道のりになりますが、みなさんに楽しんでいただけるように頑張りますので、応援よろしくお願いします!

ファイティン!!
ここからはゲネプロレポートとなります。一部、ストーリーに触れます。
【ゲネプロ/フォトコールレポート】
ゲネプロ(イソ:和希そらさん、スア:梅澤美波さん回)のレポートをフォトコールの写真と共にお届けします!

パク・セロイ:小瀧望さん
強い信念と大きな目標、純朴さを持った青年セロイ。
声高になにかを叫び、派手な行動をとるというより、思いも闘志も内に秘めるタイプの「静」の主人公ながら、しっかりと真ん中にいる。小瀧さんの存在感と確かな表現力がミュージカル版のパク・セロイを作り上げます。こらえきれずに内面を吐露するときも、仲間を温かく見守るときも、不器用な愛を語るときも、その心が本当に動いているからこそ伝わる機微。歌も踊りも華やかでエンターテインメント性の高い作品世界で、一つひとつの感情を丁寧に積み上げていく芝居を見せる。その相乗効果はミュージカルの醍醐味そのもの。

パク・ソンヨル:浅野雅博さん
そんなセロイの人物像に説得力を持たせるのが、父との関係性。父のパク・ソンヨルを演じるのは浅野雅博さん。これまで数々の舞台で名演を拝見してきましたが、芝居だけでなく、歌も素晴らしい! これまで存じ上げす失礼いたしましたというのが、率直な感想です。
優しく澄んだ歌声にソンヨルの愛情の深さ、高潔さがにじみ、「この親にしてこの子あり」です。それはセロイの仇となるチャン家の親子も同じ。

<高校時代>チャン・グンウォン:秋沢健太朗さん

<高校時代>クラスメイトをいじめるグンウォンの傍若無人な振る舞いを見過ごせないセロイは、グンウォンを思わず殴ってしまう。それにより転校してきた学校を1日で退学となる。

写真右)チャン・デヒ:佐戸井けん太さん

<高校時代>グンウォンの父はセロイの父が務める会社のトップでもある。
グンウォンへの謝罪の土下座を断ったことでセロイの退学が決定的となり、同時に父も退職に追い込まれる
佐戸井けん太さん演じる大手飲食店グループの会長のチャン・デヒを父に持つ、セロイの同級生チャン・グンウォン。力で支配する親子関係、愛されたいという思いが歪み、次第に劣等感に飲み込まれるような息子グンウォンの屈折を秋沢健太朗さんが「動」の芝居、体当たりで表現。巨大な権力の権化、チャン会長を佐戸井さんが大きな圧をもって演じます。その後、グンウォンはセロイの父をひき逃げし命を奪い、そのことが許せないセロイはグンウォンに暴力をふるい刑務所へ収監されてしまいます。そして出所後、セロイは父の復讐を誓う──

オ・スア:梅澤美波さん(Wキャスト)

<高校時代>オ・スア:川口ゆりなさん(Wキャスト)
セロイの初恋の人、オ・スアは梅澤美波さんと川口ゆりなさんのWキャスト。思わせぶりな態度も許せるような魅力的な女性。大人になってからは、ビジネスでセロイとライバル関係になるのですが、それも生き抜くためのひとつの道。梅澤さんのスアは、人生を懸命に生きようとする一人だということを強く感じさせる美しさや清々しさがあります。

チョ・イソ:和希そらさん(Wキャスト)

チョ・イソ:saraさん(Wキャスト)
気持ちの強さはセロイに負けないチョ・イソは、和希そらさんとsaraさんのWキャスト。
インフルエンサーのイソは、「地球が滅びればいいのに」と口にするソシオパス(社会病質者)。高いIQを持つイソが街で出会ったセロイに興味を持ち、彼が経営する飲食店“クルバム”にやってきて──。
和希さんの少しハスキーな声が大胆な行動をとり、同時に高い知性をもつどこかミステリアスなイソによく合います。傷ついた仲間を電話で励ますシーンは、もうその歌唱に泣かされます。劇場に響き渡る歌声、お楽しみに。

イソ:saraさん、マ・ヒョニ:土井ケイトさん、グンス新原泰佑さん、チェ・スングォン:吉田広大さん
複数の階段のセットを動かし、組み合わせ、場面を変えていくところも見どころです!
クルバムで働く仲間はほかにも、セロイが工場で出会ったコックのマ・ヒョニに土井ケイトさん、刑務所で出会ったチェ・スングォンに吉田広大さん、セロイの宿敵グンウォンの弟のグンスに新原泰佑さん。みな愛すべき人物たちです。
土井さんの繊細で強いヒョニ、吉田さんの純粋そのもののスングォン、新原さんの小犬のような可愛らしさのあるグンスの変化……。見どころいっぱいです。
それぞれ事情は抱えていながらも、セロイに救われた彼ら。誰に対しても“一人の人間”として接し、信じ、共に夢を追う仲間としての関係を築くセロイに惹かれ集まった人たちです。みんなの居場所が“クルバム”。ただ、信頼や友情とは別に、イソを思うグンスの気持ちはちょっと複雑だったりもします。さらに父との関係、兄との関係、複雑さは増すばかり。また、スングォンがセロイに感化されるプロセスを描く刑務所でのシーンは、力強い楽曲と格子のセットを用いたダイナミックな演出で描かれます。
復讐のために、飲食業界で成功を目指す。そこだけ見ると、どろどろの復讐劇にように思えるかもしれません。でも、『梨泰院クラス』は、復讐心ももちながら、夢を叶えようとするセロイの信念の物語でもあり、ともに夢を追いかける仲間たちとの青春グラフィティのような瑞々しさがあります。演出は、これまでミュージカル『GIRLFRIEND』や舞台『チック』を手掛けてきた小山ゆうなさん。現代的な作品ですが、人がセットを動かしたり、支え合ったり、芝居以外でも体温を感じる演出が印象的。
さらに梨泰院の街のエネルギーを体現するかのような、カイル・ハナガミさんの振付による“魅せるダンスシーン”の華やかさ、躍動感、そして混沌。音楽のヘレン・パークさんの手掛けるカッコイイからカワイイ、沁みるまで幅広い楽曲を“聴かせる歌唱シーン”、それらを表現として身体、声、心を使って届ける俳優たちのパッション! すべてがカチッとかみ合って、とてつもないエネルギーを生み出しています。そんな盤石な『梨泰院クラス』の世界で、セロイ役の小瀧さんをはじめとするみなさんの芝居が一層の輝きを放つ。芝居の強さを生み出し、20年近い年月のドラマティックな物語を3時間内の舞台作品に落とし込んだ、脚本は坂口理子さん、歌詞・構成はイ・ヒジュンさんです。
居場所がなかったり、生き辛さを感じたり。生きるって大変だけど素敵だなと思わせてくれる、ミュージカル『梨泰院クラス』の幕が、今、上がります!
STORY(公演HPより)
高校生のパク・セロイ(小瀧 望)は、父(浅野雅博)の仕事の都合で引っ越した転入先で、クラスメイトのチャン・グンウォン(秋沢健太朗)が傍若無人にふるまいヒドイいじめを行っている様を見かける。校内の誰もが見て見ぬふりをするが、セロイは彼を許せずに思わず殴ってしまう。グンウォンは父の勤務先でもある国内最大手飲食チェーン「長家」の会長チャン・デヒ(佐戸井けん太)の長男で、揉めたセロイは転校僅か1日で退学、父も会社を辞めることに。数日後、セロイは引っ越し初日に出会って以来気になっていた1日だけの同級生のスア(梅澤美波/川口ゆりな)に道で偶然で会い、成り行きで自分の気持ちを打ち明けることになる。だが、そこに父が事故で亡くなったという知らせが入る。グンウォンが乗ったバイクに轢かれたと分かり怒りを止められないセロイは、グンウォンに暴力を振るって刑務所へ収監されてしまう。
―出所から7年後、働いて資金を貯めたセロイは梨泰院で飲食店を開いていた。
父の復讐を誓うセロイは、彼に興味を持ち追いかけてきた天才でソシオパスなイソ(和希そら/sara)、セロイによって人生を救われたヒョニ(土井ケイト)とスングォン(吉田広大)、イソに想いを寄せるグンウォンの弟グンス(新原泰佑)ら仲間たちと共に、梨泰院の街で成功を目指して駆け上がっていく──。
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人