紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAにて上演中のこまつ座第154回公演『父と暮せば』。 父・竹造に松角洋平さん、娘・美津江に瀬戸さおりさんという新たな父娘で、戦後80年の年に贈る切なく温かく尊い物語。
互いを思いやる心、生きることの尊さ、壮絶なあの日の記憶。井上ひさしさんが残した愛と平和のメッセージの変わらぬ力強さとともに、また新たにこの作品と出会ったような新鮮さも感じる、今年の『父と暮せば』。父と娘のやりとりに登場する“じゃこ味噌”や“かやくご飯”など思わず香りや味を想像してしまうようなシーンから、あの時代あの場所で確かに営まれていた市井の人々の暮らしのぬくもりと幸せが感じられます。そしてそれが一瞬にして失われ、時を経ても癒えることのない傷を残したのです。いついかなる場所であっても、もう二度とこんな思いをする人がいてはならない。観劇しながら、何度もそんな思いが心をよぎりました。
ここからは、おけぴ会員の皆様から寄せられた感想と舞台写真(撮影:宮川舞子)で綴る公演レポートをお届けします。
◆一寸法師、ジャンケン、最後の言葉など、とにかく松角さん演ずる父の渾身の演技に泣かされました。顔を真っ赤にして訴える姿は心に刺さりました。そしてそんな松角さんとがっぷり四つで組み合った瀬戸さんがまた素晴らしかった!繊細ながらも芯があり父を思う心がひしひし伝わってきて心震えました。
◆名作と呼ばれるだけの脚本に、二人の素晴らしい俳優の演技が加わり、これぞ演劇!という感動を覚えました。戦争の悲惨さと親子の愛情、人が人を愛することの悲しさ・素晴らしさを感じました。
◆原爆被害を語るシーンでは、目の前にありありと映像が浮かぶような語り口で、二度とこんなことが起きてほしくないと思わせる力強さがありました。見られて本当によかったです。
◆ 2人きりの役者と2時間に満たない一幕もの…しかしそこに内包され放たれるものと観客に届けられ受け取るものはとてつもなく多く大きい…何度観てもそう感じ続けて止まない作品のひとつです。
◆今回初キャストの第一印象は「身長差」でした。松角竹造さん背がお高いので、動作がダイナミック、でも中盤までは可愛い竹造でした。2人芝居なので、後半の掛け合いがストレートに心に刺さります。美津江さんの幸せを祈らずにいられないラストが美しかったです。
◆戦後80年の節目に、見逃せない作品です。若者も、自分の身に引き寄せて史実を実感することのできる名作。今回は、若いお二人が親子愛にフォーカスし演じていました。
◆演出の鵜山さんのトークショーがあり、100年先にも繋げられる作品とありました。本当に何度見ても、キャストが変わっても、こころに響きます。若い人に見てもらいたいと切に願います。えぐられる内容なのに、時に笑いもあり。1時間半があっという間です
◆重いテーマを重すぎないトーンでテンポ良く描いている脚本と、2人の俳優さん達のリアルな演技がとても良かった。方言や昭和の親子間の礼儀正しさも、何だか心に沁みた。親子が本音で向き合ってからの、前向きなラストに勇気をもらえた。
◆二人芝居ですがとても豊かな内容で充実した観劇体験でした。大河ドラマで瀬戸さおりさんに興味を持ち出掛けましたが、本当にしっかりとした受け芝居で、お二人の作る世界に引き込まれました。
◆豪快な父と凜とした娘のやり取りにとても心打たれました。戦後もずっと人々の心の中に根強く続く、その方たちでなければわからない痛み、悲しみ、葛藤に涙してしまいました。私も娘を持つ身として父親の気持ちで見入っていましたが最後は救われて本当にホッとしました。また広島弁の豪快な、時にクスッと和ませてくれるお二人のやり取りが本物の親子の様で舞台でしか味わえない素敵なお芝居でした。
◆これは、再生の物語だと思いました。傷つき辛い思いを抱え、死ねないままに、ただ生きてきた娘が、父との会話の中で、未来を考えるようになった。井上ひさしさんの本も、松角洋平さんのおとったんも最高です。私も父に会いたくなりました。
◆戦争で命を落とした者と生き残って『しまった』者、両者の苦しみや葛藤がひしひしと伝わってきました。このような悲惨なことが人間の手によって引き起こされたという罪を忘れずに引き継いでいかなければならないと改めて思いました。とても悲しく苦しい内容ですが、松角さん演じるチャーミングな父と瀬戸さん演じるまっすぐで可憐な娘のほっこりとしたやりとりにクスッとする場面も多く、あっという間の90分でした。
◆こまつ座以外でもたくさんの方々がこの親子を演じてますが、その積み重ねが、この親子の悲劇だけではない世界中の親子にある悲劇であることを明らかにしているように思います。
◆この作品は初めて観劇しましたが、松角洋平さんへの当て書き?と思えるほど。
豪快で陽気なお父さんでありながら、娘への愛情と、「原爆によるこんな辛い経験や別れは二度とあってはならない」という思いの強さが圧巻。娘役の瀬戸さおりさんも声・言葉が明瞭で美しく、敗戦から3年後の広島に生きているような存在感がありました。
◆私たちが大切にしていかなければいけない想い、後世に伝えて行かなくてはいけない想いが詰まっていました。特に最後の場面の父と娘の会話はそれぞれの思いが交錯し胸に迫ってきて、息をするのを忘れるぐらい引き込まれました。最後に終わり方が希望と未来か広がり、流石鵜山さんらしい演出だとほっこりしました。
◆広島弁で紡がれる父と娘の軽妙かつ真剣に向かいあった会話を、松角洋平さんと瀬戸さおりさんのお二人が見事に舞台上に描き出してくださってて、とても見応えがありました。二人芝居ですが、娘との恋が進展しつつある木下さんや、その他の人物像が見えてくるような井上ひさし氏の筆も見事だと感じました。記憶に残る素晴らしい観劇体験です。
<イベント情報>こまつ座「戦後"命"の三部作」──
井上ひさしさんが描きたいとしていた、ヒロシマ、ナガサキ、オキナワ。原爆から3年後のヒロシマの夏が舞台の父と娘の物語『父と暮せば』。その後、書くことが叶わなかったナガサキ(『母と暮せば』)とオキナワ(『木の上の軍隊』)は井上さんの意志を継ぎ、現こまつ座代表の井上麻矢さんの企画、メモや資料をもとに、次世代の劇作家の手で創作されました。
今年は、本作『父と暮せば』上演に続いて、映画『木の上の軍隊』が7月25日(金)より公開(6月13日に沖縄先行上映)されます。
さらに演劇から映像、すべての繋がりを大切に『父と暮せば』『木の上の軍隊』『母と暮せば』のこまつ座「戦後"命"の三部作」に触れていただけるよう、2025年7月23日(水)〜27日(日)にこまつ座のホームともいえる紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAで、「こまつ座 戦後80年イベント 井上ひさしの魂を次世代へ」 舞台映像上映会/トークショーが開催されます。(
イベント情報)
写真提供:こまつ座 撮影:宮川舞子
感想寄稿:おけぴ会員の皆様 編集:chiaki
監修:おけぴ管理人