2022年に日生劇場で初演された、日本発のオリジナルミュージカル『四月は君の嘘』が、新たなキャストを迎え、昭和女子大学人見記念講堂にて再び幕を開けました。
講談社・月刊少年マガジンにて連載され、講談社漫画賞少年部門受賞を受賞、さらにTVアニメ化や実写映画化を経て、世界中で高い人気を誇る新川直司氏による同名コミックを原作とする本作。
物語は、音楽に心を閉ざした天才ピアニストと、自由奔放なヴァイオリニストの出会いを軸に展開。青春ラブストーリーという枠にとどまらず、音楽に導かれた若き音楽家たちが、大切な人との出会いと別れを通してその才能を開花させていく姿が描かれる。情感豊かな作品です。
♪僕にピアノが聞こえないなら、♪Perfect、♪映画みたいに、♪The Beautiful Game、♪君がわからない、♪月の光、♪時間よ、止まれ ……挙げればきりがないほどの名曲が並ぶ本作。作曲は、『ジキル&ハイド』『デスノート THE MUSICAL』などで知られるフランク・ワイルドホーン氏が担当。ポップソングライターとしての感性を活かしたキャッチーで瑞々しい楽曲や、音楽コンクールでしのぎを削る若者たちの力強い楽曲が、登場人物たちの心情を鮮やかに彩ります。
そして、今回の東京公演の劇場は、昭和女子大学人見記念講堂。学生たちが青春を謳歌する学び舎に建つホールでの上演です。キャストはオールオーディションによって選出されたフレッシュな顔ぶれが揃いました。
岡宮来夢さん、 加藤梨里香さん、希水しおさん、吉原雅斗さん回のGPをレポートいたします。(それぞれ東島 京さん、宮本佳林さん、山本咲希さん、島 太星さんとのWキャストとなります)
かつて“ヒューマンメトロノーム”と呼ばれた元天才少年ピアニスト・有馬公生には岡宮来夢さん。ピアノ指導者でもあった母の死をきっかけに、演奏中にピアノの音が聴こえなくなってしまった公生。椿や渡という友の存在を大切にしながらも、誰かの陰に隠れるように淡々と学生生活を送る彼のモノクロの世界が、かをりとの出会いによって色づいていく過程を丁寧に演じます。
キラキラとしたかをりを見つめて歌う、♪映画みたいに は、“友人A”、主役になれない自分を受け入れつつも、“それだけでないなにか”を内包する、公生の複雑で繊細な心情を、歌唱とお芝居の両面から立ち上げます。
圧倒的な個性を持つヴァイオリニスト・宮園かをりは加藤梨里香さん。天真爛漫、ときに奔放な振る舞いで公生を戸惑わせながらも、自己表現を極めた演奏と笑顔で公生を巻き込んでいく。そんなかをりには大きな秘密があり……。公生を再び音楽の世界へと連れ戻そうとする強気なかをりが、ふと見せる“別の表情”が印象的です。♪Perfect から、加藤さんののびやかな歌声が劇場に響き、その響きが観客の記憶となる。公生にとってのかをりの存在がそうであったように。
また、物語の外枠としての公生とかをりの語りは、ともに少し大人びたトーンで淡い青春時代と二人の成長を伺わせます。岡宮さん、加藤さんの、言葉と心を届ける確かな表現力が光ります!
公生の幼馴染で、ソフトボール部の主砲・澤部 椿を演じるのは希水しおさん。公生を弟のように案じる椿のなかに生まれる変化。遠くからそっと公生を見守る椿の心の内を、希水さんは明るさと切なさの絶妙なバランスで表現します。公生だけでなく、かをりや試合後の渡、チームメイトへ向けられる優しいまなざし。その優しさゆえに、自分を抑えてしまう姿がまた切ないのです。
公生・椿とは幼いころからの友人で、サッカー部の部長・渡亮太を演じるのは吉原雅斗さん。登場するなり「はい、クラスの人気者!」と思わせる説得力。社交性に富む渡は、ともすれば“チャラい”と映ることもありますが、強いリーダーシップとサッカーへの情熱を持ち、友情にも厚い。中身がぎっしり詰まった“イイ奴”という表現がぴったりの人物です。
椿のクラスメイトかをりが、渡に好意を寄せていることをきっかけに、公生はかをりと出会います。「なんだこの子は!?」という強烈な出会いのエピソードも、青春ラブストーリーの醍醐味!
正確無比な演奏を目指していた自分とは違い、自由に、そして喜びに満ちて音楽を奏でるかをりの演奏を目の当たりにし、公生の心は動きます。
二人でカフェにやってきた公生とかをり。それぞれに相手の心理や行動への「どういうこと?」を吐露する♪君がわからない はポップでかわいらしい楽曲。心の声を音楽や照明などの舞台効果に乗せて表現するのは、ミュージカルならではの魅力です。ラブコメエッセンスを感じさせるこのシーン、ただ、そこで明らかになる公生の心の傷……決して一色ではないドラマ性こそが、本作の魅力です。

♪The Beautiful Game

♪One Note
(井川絵見:飯塚萌木さん、相座武士:内海大輔さん)
学生たちの青春群像でもある本作。部活の試合や音楽コンクールへ向かう真剣なまなざしと躍動が、鮮やかに描かれます。スポーツと芸術、ジャンルは異なっても、そこにあるのは青春の輝き。
ちょっと強引な働きかけで、かをりのコンクール二次予選で伴奏者としてピアノを弾くことになった公生。そこで、あることが起こり──。
ここからは、ぜひ、劇場でご覧ください!

かをりの父:原 慎一郎さん、母:鈴木結加里さん
登場人物の内面に迫るドラマを立ち上げるのは、初演に続いて演出を担う上田一豪さん。演出に応えるように、俳優たちは多面的なキャラクターの心を繊細に演じます。それはアンサンブルの一人ひとりにまで浸透していて、誰もが愛おしく、キラキラと輝いています。個が立つことで物語に奥行と躍動感が生まれ、その世界で公生・かをり・椿・渡がそれぞれの人生を懸命に生きる。
みんなが魅力的だからこそ、観劇後には「誰により共感したか」なんて会話も盛り上がりそうです。
新たな世代の息吹をまとい、再び奏でられるミュージカル『四月は君の嘘』。音楽とともに紡がれる青春のきらめきと痛みが、さわやかな余韻を残します。
東京公演は~9月5日(金)まで 昭和女子大学 人見記念講堂にて上演。その後、愛知、大阪、富山、神奈川にて公演です。
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人