シリーズ累計1300万部突破(2025年1月現在)の大人気小説シリーズが、待望のミュージカル化! ミュージカル『十二国記 ‐月の影 影の海‐』製作発表会見が行われました。
小野不由美さんの大河ファンタジー小説『十二国記』が、ついに2025年12月、世界初の舞台化を迎えます。1991年刊行の『魔性の子』から始まり、翌年の『月の影 影の海』でシリーズ化。以来30年以上にわたり、世代を超えて愛され続けてきた日本ファンタジーの金字塔です。
舞台は、現実世界と異界が交錯する壮大な物語。主人公・中嶋陽子は、異界に導かれ運命を変えていく女子高生。本作では、陽子の「現実世界」と「異界」での姿を、二人の女優が演じ分けます。二人の陽子が紡ぐ、幻想と現実を越えた旅路に期待が高まる本作。
製作発表会見に登壇したのは、演出の山田和也さん、異界の陽子(ヨウコ)を演じる柚香光さん、現実世界の陽子を演じる加藤梨里香さん。さらに、ヨウコが旅の途中で出会うねずみの姿をした半獣・楽俊(らくしゅん)役をWキャストで務める太田基裕さん、牧島輝さん、陽子の高校に現れ、彼女を連れ去る景麒(けいき)役の相葉裕樹さんです。
会見の前に、原作書影オマージュビジュアルのお披露目がありました。

小野不由美『月の影 影の海〔上〕 十二国記』(新潮文庫)書影

原作書影オマージュビジュアル
柚香光さん)
このように大きなパネルにしていただき、光栄に思います。ヨウコが異界の広大な海に漂い、不安と戸惑いを抱えている表情。その奥に、「必ず生きて故郷へ帰る」という強い意志と執着を込めて撮影に臨みました。このビジュアルを前にし、改めて「十二国記」の世界に導かれるような気持ちになります。
加藤梨里香さん)
本当にかっこいいビジュアルです。このポーズ、実はとても難しいんです。ぜひ皆さんもご自宅で試してみていただきたいのですが、角度や指先のニュアンスまで再現されていて、感動しました。
──柚香さんは2024年に宝塚を退団後、本作にて東宝ミュージカル初主演を飾ります。グランドミュージカルで座長を務めるにあたり、どのようなお気持ちですか。
柚香さん)
本当に光栄であると同時に、正直申し上げますと、プレッシャーも感じており、身の引き締まる思いです。原作ファンの皆様にも、初めてご覧になる方にも、心から楽しんでいただける舞台を目指して、今、情熱を燃やしております。
──山田さんに伺います。現段階で明かせる範囲で、演出プランについて教えてください。ちなみに原作ファンの関心が特に高いのが、ねずみの姿をした楽俊をどう表現するのかという点です。
山田和也さん)
原作をご存じの方は、あのファンタジー性の高い世界を舞台上でどうビジュアル化するのか、その難しさをよくご理解いただいていると思います。舞台は映像やアニメーションとは異なり、生身の人間が毎日演じる場です。だからこそ、舞台ならではの特性を最大限に活かす必要があります。
舞台では、何もない空間でも「ここが〇〇です」と言えば、観客の想像力がその場所を立ち上げてくれます。大がかりな装置に頼らずとも、陽子という等身大の高校生がたどる過酷な運命に、観客が自然と感情移入できるようなミュージカルにしたいと考えています。
楽俊については、半獣という不思議な存在です。ねずみの姿をしている彼をどう表現するかは、太田さんと牧島さんがたっぷり語ってくださる予定ですので、ぜひ楽しみにしていてください。

太田さん「ネズミになるために食べ物を変えてみたり(笑)、日々トレーニングしています」
牧島さん「この役に決まってからは、街で見かけるネズミが少し愛おしく見えるようになりました(笑)」
柚香さん)
私もちょっと拝見しましたが、楽俊のしっぽの動きが大好きです。
山田さん)
秘密にしようというわけではなく、私たちは、当たり前のことを当たり前に積み重ねていくだけです。
──柚香さんと加藤さんにお伺いします。この原作の面白さはどこにあると思いますか。どんな気持ちで陽子を演じたいと思っていますか。
柚香さん)
一人の読者として感じたのは、「あなたはどうなんですか」──自身の生き方を問いかけられるような作品だということです。問題に直面したときの乗り越え方や、自分の欠点との向き合い方を、常に問われているような感覚です。すごい作品に出会わせていただいたと思っています。
中嶋陽子は、女子高生として年齢相応の葛藤や迷いを抱えています。彼女が異国に飛ばされ、試練にどう立ち向かっていくのか。その姿勢を尊敬するとともに、私自身も多くのことを教えていただいているような気がします。
加藤さん)
自分の人生を考えさせられる作品です。旅の中で変化し、自分らしさや自分の人生を見つけていくところが、陽子の魅力だと思います。ミュージカルでも、その部分を大切に表現していきたいです。
私は日本にいるときの陽子を演じますが、異界での旅の途中にも、ヨウコとの“心の対話”というかたちで登場します。そこでは、陽子が「家に帰りたい」という思いを強く持ち続けることを大事にしたいと思います。
──現段階でお好きなシーンなどがあれば教えてください。
相葉裕樹さん)
陽子と契りを交わすシーンです。景麒の「――許す、とおっしゃい」という言葉に対して、陽子がひと言「許す……」と。その瞬間から、「十二国記」が動き出すような、印象深い場面です。
牧島輝さん)
僕は、特定のシーンというよりも、聞き慣れない言葉が次々に登場することで、作品世界に深く没入していく感覚が好きです。その没入感を、お客様にもぜひ味わっていただきたいと思っています。
太田基裕さん)
僕も同感です。情景描写、文字から立ち上がる匂いや空気感が独特で、演じ甲斐がありそうだと感じています。漆黒の闇の描写が多く、読み進めるうちに自分が追い込まれていくような感覚になるのですが、それが次第に心地よくなっていく瞬間があるんです。そんな闇をたゆたうような心地よさに、不思議な魅力を感じています。
加藤さん)
楽俊の言葉や考え方がとても好きです。一度離れ離れになった後の再会のシーンが、特に心に残っています。

加藤さんのコメントに強く同意し、作品の魅力を語る言葉にもどんどん熱を帯びる柚香さん。思わず「私、なにを言っているんでしょう」とセルフツッコミという一幕も。
柚香さん)
私も加藤さんと同じです。楽俊との再会のシーンは、もう……! 彼の姿を見た瞬間の陽子の思いを想像すると、読んでいて心がキュッとなって、いろんな感情がこみ上げてきました。
山田さん)
ファンタジー、架空の世界を描きながら、リアルというのが、この作品の一番の魅力なのではないかと思っています。読者も、何もわからない主人公とともに、一つ一つその世界のことを知っていく。その過程で、不安になったり、没入していったり。そうやって最後までたどり着く、それが素敵なところだと思っています。舞台でも、そうなるように努めます。
──「ここに注目!」というポイントや、演出プランへの受け止めについて教えてください。
山田さん)
演出プランの中には、“モップ”と呼ばれているものがあります。詳細はまだ明かせませんが、ぜひご注目いただきたい仕掛けです。
牧島さん)
この壮大な世界を楽しむには、お客様の想像力もとても大切だと思っています。一緒にこの世界を旅し、作品を作っていきましょう。照明や音楽をはじめ、素晴らしいスタッフワークにもぜひご期待ください。
太田さん)
だからこそ僕らも、お客様の想像力を刺激するような表現を追求していきたいと思っています。そのためにも、自分の中で『十二国記』の世界観をしっかりと膨らませながら、精一杯取り組んでいきます。
柚香さん)
山田さんから“モップ”のお話がありましたが、私も最初はまったく想像がつきませんでした。実際に拝見すると、モップによって空間の感じ方が目まぐるしく変化するんです。その効果には、ぜひご注目いただきたいと思います。
また、迫力ある映像や音楽も魅力ですし、個人的には殺陣のシーンも楽しみにしていただきたいです。宝塚で培ってきた殺陣の技術を活かし、異形の獣たちと戦います。
加藤さん)
柚香さんとのデュエット、一人の人物の心の中の対話としてのデュエットは、他の作品ではあまり見られない表現だと思います。陽子が苦難に立ち向かう場面でも、音楽が非常に効果的に使われていて、ミュージカルならではの魅力が詰まっています。ぜひ楽しみにしていてください。
相葉さん)
皆さんがおっしゃっていた“モップ”についてですが、「あら、まぁ!こんなことになるんだ!」という驚きがありました。正直、こういう使い方は生まれて初めて見ました。モップが生み出す幻想的な世界を、ぜひ劇場で体感していただきたいです。今はまだ「なんのこと?」と思われるかもしれませんが(笑)、本番をご覧いただければ、きっと「これか!」と納得していただけるはずです。ちなみに、舞台上で一番長く登場しているのがモップです。舞台美術、音楽、衣裳、照明、そして僕たちの演技や歌唱が重なり合って、この作品が観客の皆様に届くと思うと、今からとてもワクワクしています。
──ツアー公演に向けて。
柚香さん)
劇場が変わると、同じ作品であっても空気の凝縮の仕方、客席との距離感などの違いによって雰囲気が異なるということがございます。いろんな劇場で、その土地のお客様とお目にかかり、一緒に作品を作り上げることを楽しみにしています。
──“世界初演”への意気込みをお聞かせください。
柚香さん)
まず、世界初演に携われることを大変光栄に思っています。何よりも原作への敬意を持ち、そこに描かれた中嶋陽子という人物がどんな存在なのかを、ひたすら追求してまいります。
そして台本と山田さんのご指導のもと、作品に誠実に向き合い、原作ファンの皆様にも「舞台化されてよかった」「観に来てよかった」と心から思っていただけるよう努めます。そしてその先に、「もっと観たい」「もっと続いてほしい」と感じていただけるような公演にしたいと思っています。
加藤さん)
世界初演ということで、すでにさまざまな演出プランが検証され、準備も着々と進められています。大変なことも多いと思いますが、この作品に携わる皆様の“作品への愛の力”を信じて、その力をお借りしながら、カンパニーの皆さんとともに演劇を創り上げていく過程を、心から楽しみたいと思っています。

MC「太田さん、世界初演です!」
太田さん「いやいや、なぜ僕にだけそんな強くプレッシャーをかけるんですか(笑)!」
太田さん)
世界初演ということで、苦しいこともあるかもしれませんが、そんな時こそ、何があっても自分自身と向き合いながら前に進もうとする陽子の姿を思い出して、頑張っていきたいと思います。
牧島さん)
誠実に、責任を持って取り組みます。僕は演劇は“楽しいもの”だと思っているので、とにかく皆さんとの創作を楽しみたいです。世界初演だからこそ、誰かに倣うのではなく、原作へのリスペクトを持ちながら、役者側からも積極的にアイデアを出して、全員がクリエイティブに、前のめりで作品づくりに取り組めたら、より良い舞台になると信じています。
相葉さん)
本当に長く愛されている作品ですので、まずは原作ファンの方々に納得していただける舞台にすること。その中で、景麒としての説得力を持って存在することを、しっかりと肝に銘じています。牧島くんが言ったように、僕らもクリエイティブに、試行錯誤を重ねながら、『十二国記』の世界観を届けていけたらと思っています。
山田さん)
“世界初演”というのは紛れもない事実ですが、それが再演や続編へと繋がってこそ、本当の意味で“初演”の価値が生まれると思っています。今回の御園座での大千穐楽の後も続いていくような作品にしたい。キャストの皆さんも、この先30年くらいこの作品に関わるくらいの覚悟でいてください(笑)。
◆どのように「十二国記」の世界が舞台上に立ち上がるのか。そして、魅力的なキャラクターたちがどんな物語を紡ぐのか、”世界初演”がますます楽しみになる会見でした。また、新たにパペット制作:劇団プーク、パペット操演指導:柴崎喜彦さんが発表されました。
〈「十二国記」シリーズとは〉
1991 年に『魔性の子』(新潮文庫)刊行で始まったこのシリーズは、我々の棲む世界とも繋がる異界〈十二国〉を舞台とした壮大なファンタジー。そして同時に、多くの謎に満ちたミステリでもある。かの世界では、天意を受けた霊獣「麒麟」が王を選び玉座に据える。王が国を治め、麒麟はそれを輔佐する。
(株式会社新潮社HPより)
本舞台では、「十二国記」シリーズ本編の第一作『月の影 影の海』を描く。
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人