King Gnuの井口理さんが、メジャーデビュー後初となる舞台出演に選んだのは、英国発の傑作コメディ『キャッシュ・オン・デリバリー』。2023年に映画初主演を果たし、俳優としても注目を集める井口さんが、満を持して舞台初主演に挑みます!
物語の舞台はロンドン郊外。職を失った主人公エリック・スワン(井口理さん)は、架空の間借り人を次々と作り上げ、社会保障手当を不正受給するという奇想天外な計画を、妻にも内緒で実行中。ある雨の朝、罪悪感に苛まれたエリックが嘘を清算しようとした矢先、社会保障省の調査員が訪問し、間借り人たちとの面会を求めてくる。実在する間借り人ノーマン・バセット(矢本悠馬さん)を巻き込みながら、嘘に嘘を重ねるエリックは、次第に窮地に立たされ──。
エリックのバディとなるノーマン役には、『ゴールデンカムイ』や大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』などで幅広い演技力を見せる実力派・矢本悠馬さん。コメディからシリアスまで自在に演じる矢本さんと井口さんの掛け合いにも、大きな注目が集まります。
そんな、この冬の話題作『キャッシュ・オン・デリバリー』の製作発表会見をレポートいたします。ご登壇者は、井口理さん、矢本悠馬さんをはじめとする個性的なキャストの皆様と、演出を手掛ける小貫流星さんです。
【お互いの10年を確かめ合う】
──学生時代に、『キャッシュ・オン・デリバリー』を上演したのはキャパ100名程度のスタジオだったと伺っています。そのときの思い出は。(小貫さんが演出&主演のエリック役、井口さんがノーマン役を演じた)
井口理さん)
大学生の時だったので、10年ほど前になりますが、かなり手作り感がある舞台でした。舞台セットが薄っすいベニヤ板で、ドアを開け閉めするたびに壁ごとバイ~ンと揺れていたことが懐かしい思い出です。今回は、プロの方がやってくださるのできっと大丈夫だろうと(笑)。
──10年越しで、今度はTHEATER MILANO-Zaでの上演となります。このプロジェクトへ踏み出そうと思ったのは。
井口さん)
僕が演劇というジャンルに踏み込んだきっかけが、小貫くんでした。当時も、たくさんのことを教わったので、自分のなかではその恩返しという意味合いも大きいです。それに加えて、また一緒にやれたら面白だろうという気持ちも。同じ演目に、10年経って、再び取り組むので、同じことしてはいけないというのは当たり前。その間に、お互いがなにを吸収し、それによってなにをどう表現していくのか──答え合わせじゃないですが、そうやって互いの10年を確かめていくのが楽しみです。
小貫流星さん)
学生時代に、井口さんに声をかけたのは、やっぱり当時から輝くスター性を感じていたからかもしれません。あのときは、井口さんは、今回、矢本さんが演じるノーマン・バセットを演じましたが、今回はエリック。それがすごく楽しみです。互いの10年の経験を詰め込んで、魅力的な作品にしたいと思います。
【新たな視点に期待】
──矢本さんが本作出演を決めた理由は、また、この舞台に期待していることは。
矢本悠馬さん)
1つ目は、日ごろ、演じる仕事をしていると、ご一緒するのは基本的に“役者”。人による違いもありますが、感覚的には役者同士だと似ていると感じることが多い。でも井口さんは、やっぱり本業はアーティストなので、一緒に仕事をすることで自分では気づけない視点を持っているだろうし、それによって自分も仕事をするうえで新しいものの見方ができるのではないかということ。2つ目は、アーティストとして確かな成功を収めている大スターの井口さんが新しいことに挑戦するというのは、生半可な気持ちではない。そういう絶対に外せないという緊張感のあるなかで一緒に仕事ができることも、楽しみにしています。
井口さん:(コメントが)素敵すぎますよね。
【キャラクター紹介と戯曲の魅力】
──皆さんのどころと、戯曲の魅力についてお聞かせください。
井口さん)
僕が演じるエリック・スワンは、2年前に自分が勤めている会社をクビになり、それをきっかけに社会保障手当を不正に受給している男。そこに小松さん演じる役人のミスター・ジェンキンズがやってきて、そこから嘘を重ね始めます。とにかく場を回す、常にだれかとなにかを話しているし、嘘をついているし……という役なので、頑張りたいと思います。
戯曲の魅力は、ずっと嘘をつき続けて、どんどん訳がわからなくなっていくのを、後半どうやって回収するのかというところです。
矢本さん)
ノーマン・バセットはエリックのついている嘘に巻き込まれていき、自分もどんどん嘘を重ねていくというキャラクター。登場から、基本的に受け身なので、コメディとして成立させるためにあまり自分のリアクションがあざとくてもだめだし、嘘っぽくなってもつまらない。
さらに、戯曲は、お客さんが飽きないような展開の連続で、そのテンポやリズムが一つ狂っても成立しないですし、翻訳コメディの難しさがお客さんにとってのストレスになってはいけない──今日の会見を前に、2日ほど前に戯曲を読み直したのですが、「こんなに難しいことをしなければならないんだ」と若干、気持ちが暗くなっています(笑)。
山崎紘菜さん)
エリックの妻、リンダ・スワンを演じます。すごくしっかりした、エリックを引っ張っていくような奥さんだと思っています。彼女は感情表現が豊かで、気持ちを素直に出していくキャラクター、それを魅力的に表現したいと思っております。戯曲について感じるのは、海外の作品特有の会話で笑わせるポイントやジョークのツボが海外仕様なところもたくさんあるので、それをいかに日本のお客さんに届けられるか、この座組で挑戦する意味もそこにあると思います。自分なりに、必死についていけたらと思っています。
妃海風さん)
私が演じるサリー・チェシントンは福祉事務所で働く女性。亡くなったはずのノーマンのご遺族の支援や葬儀の手配をする役です。戯曲の魅力は、会話のテンポ感の面白さです。それを表現するのは、キャストの人となりが影響してくると思うので、皆さんと仲良くなって、いい作品を届けたいと思っています。
まりあさん)
矢本さん演じるノーマンの婚約者、ブレンダー・ディクソンを演じます。本当にノーマンが大好きで、真っ直ぐなあまり、みんなに翻弄される役どころです。戯曲を読んで感じるのは、本当に全員が全力だということ。「一回、諦めてもいいんじゃない」と言いたくなるくらい全員が全員、全力。気だるさのある人は一人もいないんです。それがおかしくもあり、愛おしくもある。みんなをかわいいなと思える戯曲です。
脇知弘さん)
サリーに呼ばれた葬儀屋のミスター・フォーブライト、葬儀屋さんを演じるのは初めてです。僕の印象では、このお仕事をされている方はコミュニケーション能力が高い方々なんじゃないかなと思うんです。リスペクトの気持ちをもって演じたいと思っております。
戯曲については、お客さんが常にハラハラドキドキしてくれたら、それで勝ち!そんな風に思います。
明星真由美さん)
エリックたちの嘘を突き止めようとする社会保障省の調査委員長ミズ・クーパーを演じます。「この人には、絶対にバレたくない」と思う、厳しく、確固たる信念を持つ女性。周りにいらっしゃる仕事熱心な女性たちをリサーチして、お芝居に役立てたいと思います。作品の魅力は、なかなか目にすることのない攻めたコメディだということ。そして矢本さんがおっしゃったように、そもそも英語で書かれた戯曲なので、リズムや音の感じを日本語に変えるハードルなど難易度が高い。常に緊迫した状況での苦しい嘘を重ね、そこにまた最悪な偶然が追い打ちをかける──それが最後にどうなるか。この社会にはいろんな嘘がありますが、こんなエンディングっていいなと思える最後になっていますので、お楽しみに。
小松和重さん)
僕が演じるミスター・ジェンキンズは社会保障省の調査員、ミズ・クーパーの部下です。社会を保障するために命をかけて働く男を演じきれたなと思います。とまあ、僕の役は置いといて(笑)。ここまで皆さんがお話されたように素晴らしいお芝居なので、私が説明するまでもなく「みんな観ればいいんじゃないかな」と思っています(笑)。
また、会見冒頭には、この日は出席がかなわなかったアンクル・ジョージ役の高木渉さん、ドクター・チャップマン役の入野自由さんからの動画コメントが披露されました。
<高木渉さんコメント>僕の演じるアンクル・ジョージは、井口さん演じるエリックの叔父です。エリックの不正受給に協力しながら、いろいろと巻き込まれていくという展開。稽古が始まり、皆さんにお会いできるのを楽しみにしています。どんな作品になるか、ワクワクしております。
──(高木さんから小貫さんへの質問)井口さんとの学生時代の思い出は? また、そのころから天才の片鱗は感じていましたか。
小貫さん)
昔から、すごくいい男でした。思い出は……小劇場で別作品を上演したとき、出演者の井口くんは同じシーンの芝居をマルっと2回繰り返していて(笑)。客席で見ていて「ずっと同じ尋問をしているな」と思ったんですよね。
井口さん)
あれは悪夢でした(笑)。
小貫さん)
天才の片鱗は、当時から歌が上手かったよね。
井口さん)
その言葉が救いです(笑)。さっきのエピソードからは、そんな片鱗はまったく感じられず……
小貫さん)
確かに。そう思うと努力家でもあるんじゃないですか。
井口さん)
ありがとうございます(笑)。
<入野自由さんコメント>今日は、製作発表に参加できず残念です。皆さんにお会いしたかったです。
私は、山崎紘菜さん演じるリンダから、夫に関する“ある秘密”を打ち明けられるドクター・チャップマンを演じます。どんな座組になるのか、どんな作品になるのか今から楽しみです。僕たちの化学反応を、ぜひ、楽しみにしていてください。
◆みなさんが楽しみにしていることはという問いに、圧倒的に多かった答えは「食」。ほかにも、気合は十分、でも気負うことなくユーモアあふれる個性的なコメントが次々に飛び出す、和気あいあいとした会見でした。
続く囲み取材で、バディ役となる井口さんと矢本さんに互いの印象とどんな関係性が築けそうかという問いが投げかけられると──
矢本さん)
井口さんは、親しみやすい方。今日お会いして、歩幅の違いをあまり感じなったというか。いいペースで歩み寄っていけそうだなと。安心というか、不安は払しょくされました。
井口さん)
僕もそう思います。安心感がありました。今日も話したり、話さなかったり。無理して話さなくても一緒に居られる関係が、すでに生まれています。矢本さんはイメージと実像が違わなくて素敵です。
俳優の先輩として井口さんへのアドバイスを求められた矢本さんが、隣にいる研究生として在籍していた大人計画の先輩でもある小松さんをちらりを見て──
矢本さん)
いやいや、隣に小松先輩がいらっしゃるので! それを差し引いても、僕も、芝居はわからないっす! いまだにわからず、ただやり続けているだけ。緊張しいで、毎回ビビっています。ですので、僕からのアドバイスはないです(笑)。
──では、小松さんからアドバイスは。
小松さん)
え、アドバイスですか? うーん。楽しんでいる人が、一番楽しく見えるので、それでいいんじゃないですかね。
井口さん)
楽しみます!
──軽やかさのなかにも、確固たる哲学を感じるやり取りです!!
演出の小貫さんと井口さんの形を変えた再タッグ、そして井口さんと矢本さんの息の合ったバディ関係、芝居巧者のキャスト陣の味のあるお芝居……笑いと緊張感が交錯する極上の舞台に期待が高まります。上演は、2025年12月に東京・THEATER MILANO-Za、2026年1月に大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA WWホールにて!
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人