16世紀のイギリス──のちの“エリザベス1世”の若き日を描いたミュージカル『レイディ・ベス』。
脚本・歌詞:ミヒャエル・クンツェ×音楽・編曲:シルヴェスター・リーヴァイ×演出・訳詞・修辞:小池修一郎、ヒット作を生み出すゴールデントリオが結集し、壮麗な音楽と重厚なドラマを鮮やかに描き出す人気作です。2014年の帝国劇場での世界初演、2017年に再演で高い人気を誇る本作が、8年ぶりに装いも新たに、ブラッシュアップされて上演されることでも話題です。
王家の血をめぐる思惑に翻弄されながらも、自らの意志で未来を切り開いていく成長譚で、若き日のエリザベス1世「ベス」役に挑むお二人、奥田いろはさんと小南満佑子さんにお話を伺いました。

小南満佑子さん、奥田いろはさん
<主演決定の喜びと重責>──まずは、本作『レイディ・ベス』の主演に決まったときのお気持ちからお聞かせください。
奥田いろはさん)
決まった瞬間は、嬉しさよりも“初めて味わう大きなプレッシャー”を感じました。どうしても演じたいと思った役ですし、オーディションにも覚悟をもって臨んでいたのですが、いざ「自分がベスを演じる」と決まると、喜びより先に「頑張らなきゃ」という思いが湧いてきました。
──「オーディションを受けたい」という気持ちはどこから生まれたのでしょう?
奥田さん)
作品を観たときに、ベスという人物の人柄に強く惹かれました。そして楽曲が本当に素晴らしくて、「この歌を歌いたい」と思ったんです。歌の練習を重ねるほど、より強く魅力を感じ、届けたい気持ちが増しました。
──小南さんはいかがですか。
小南満佑子さん)
私はデビューして10年になりますが、はじめはアンサンブルからのスタートで、まさか自分が主演、しかも「日生劇場の0番」に立てるなんて思ってもいませんでした。もちろん憧れはありましたが、先輩方が主演、座長として背負ってきた重みを間近で見てきたので、その大変さをよく知っています。だからこそ、このお役目をいただけたことを光栄に思い、これまでお世話になったみなさんへの感謝の気持ちがとても強いです。そして喜びと同時に重責も感じています。でも、任せていただいたからには覚悟を決めて最後まで精一杯務めます。
──今日、お二人は初対面だそうですね。
奥田さん)
今日初めてお目にかかるので、実は昨日、鏡に向かって挨拶の練習までしていたんです(笑)。それが、ご挨拶する瞬間が思わぬタイミングでやってきて、その時、私、楽屋でちくわを食べていたんです!モグモグしながらのご挨拶── “ちゃんとした子”だと思われたかったのに、これでは“ちくわの子”!大後悔です!
小南さん)
全然気にしないで! “ちくわの子”だなんて可愛らしすぎて(笑)、ダブルキャストとして一緒に新しいベスをつくっていくのがますます楽しみになりました。私も、ちくわを食べようかな(笑)。
<ベスという人物の魅力と、自分との“距離”>──ベスという人物を今どのように捉えていますか? ご自身に近いと感じる部分は?
奥田さん)
好奇心旺盛なところは似ているかもしれません。そして、作品の中でどんどん成長していくベスが本当に魅力的!迷いながらも前に進む強さがあり、たくましく生き抜いていく彼女の姿に、心を打たれました。観てくださる方が自然に感情移入できるようなベスになりたいです。
小南さん)
エリザベス1世は誰もが知る実在の人物ですが、この作品では“女王になる前”の彼女が描かれます。“普通の女性”としての好奇心もあれば願望もある、それがとても自然に表現されているところが、大きな魅力です。自分と似ているのは、責任感が強く、任されたら男前に腹をくくるところでしょうか──私の場合は、内心はワタワタしているんですけどね(笑)。
<オーディションでの“挑戦”>──オーディションのお話を少し具体的にお聞かせいただけますか。
奥田さん)
オーディションではベスの楽曲「秘めた想い」を歌いました。はじめは自分自身で考えて、深い声色を意識して歌い、その後、「曲の序盤は、そこまで深い声ではなく、一曲の中で成長、変化していくような表現に」とご指導をいただきました。それを自分なりに解釈して、2回目では歌い方を変えました。
──その時点で、手応えありという感触でしたか。
奥田さん)
そこまでは全然考えられなくて。私は、オーディションだと思うと本当に緊張してしまうので、ただただ、その場にいられること、ご指導いただけることがありがたいという思いで臨んでいました。
──では、合格の知らせは、さらなるご褒美ですね。
奥田さん)
合格の連絡をいただいたときは、「本当に私でいいんですか?」という驚きと喜びが入り混じっていました。
──小南さんはどんな思い、準備で臨まれましたか。
小南さん)
オーディションの合否は技術的なことだけでなく、様々な要素が合わさって決まるものだと思っています。でも、まずは、ベスの人生を理解しなければと思い、彼女に関する映画を片っ端から観たり、史実を調べたりしました。そして、オーディションでは“彼女の魂と対話する気持ちで挑む”ことが大事だと気づきました。オーディションで「秘めた想い」を歌うとき、その積み重ねが大きな助けになったと思っています。
選んでいただいたときは、エリザベス1世の生きた証を舞台で伝えるという使命を受け取ったような気持ちになりました。天国から「違うよ!」と言われないように(笑)、誇りを持って挑もうと覚悟しています。
──ご出演が発表された時の周囲の反応はいかがでしたか?小南さんはSNSでお兄様がお祝いのメッセージを発信されていましたね。
小南さん)
長年、兄(小南竜平さん)が小池(修一郎)先生の作品に携わってきたこともあり、小池先生の座組のスタッフの皆さんが、“小南の妹”として私のこともとても温かく迎えてくださいました。兄が築いてきた信頼関係を感じ、ありがたい気持ちでいっぱいになりましたね。
主演としての責任を理解してくれている家族やマネージャーさんたちは、喜ぶと同時に、私をとても励ましてくれました。座長として大きなことはできないけれど、カンパニーの皆さんと一緒に手を取り合って走っていきたいと思います。
──奥田さんはいかがでしょうか。大作ヒロインとしての経験はもちろんおありですが、今回は主演です。
奥田さん)
ファンの皆さんはすごく驚いていました。“いつか”と期待してくださっていたようなのですが、その“いつか”がこんなに早く来るなんて、という驚きがあったようで、それは私自身も同じす。私は、ミュージカルの世界ではまだまだ新参者ではありますが、自信はまだないですけど、選んでくださった方々は私を信じてくださった。その方々に誠実でありたいと思っています。
<ビジュアル撮影で感じた“役を生きる覚悟”>──ビジュアル撮影はいかがでしたか?
小南さん)
衣裳の生澤(美子)さんがミリ単位で調整し、愛情をこめて作ってくださったドレス。着るときには自然と背筋が伸びました。また、王冠には、彼女が背負った歴史や覚悟が宿っていて、それが現代まで響いてくるようでした。女性がリーダーとして立つということ──、そしてこの作品がもつ「女性が前を向いて、自信を持って歩いていく」というメッセージをお届けしたいと改めて強く思いました。あの王冠は、実物と間違い探しができるくらい、精密に再現されたデザインなんですよ!
小池先生は、私の地元・西宮に詳しくて「地元トーク」で私を和ませてくださいました。(笑)
先生とレスリー・キーさんが作り出す、物語に沿った世界観での撮影はとても夢のような時間でしたね。
奥田さん)
これまで着させていただいた衣裳の中でも、非常に豪華な素敵な衣裳でした!
物理的にも重いのですが、それ以上に「このドレスを着るにふさわしいベスにならなければ」という気持ちの重みを感じました。
<互いに支え合う>──今日の取材を通して、お互いをどんな存在だと感じていますか?
奥田さん)
私は頼りないところがあるんですけど、小南さんとお話しすると本当に“しっかりした素敵なお姉さん”という印象で、いっぱい頼ってしまいそうです。たくさん学ばせていただけると思っています。
小南さん)
いやいや、しっかりしているように見えるだけで、実は結構ポンコツなんですよ(笑)。
──Wキャストならではの特別な絆も生まれそうですね。
小南さん)
ダブルキャストは同じ役を一緒に作り上げる、本当に心強い存在です。私といろはちゃんでは、着眼点も感じ方も違うと思います。それが面白いし、そこから私も気づきをもらえるはず!ぜひいろいろ教えてください。
奥田さん)
こちらこそ、よろしくお願いします!
──来年の公演に向けて、今はどんな準備を進めていますか?また、楽しみなことは?
奥田さん)
今は“客観的に作品を見ること”を大事にしています。お客さん目線で、「このシーンでどう感じるか」を捉える時間です。お稽古が始まったら、中身──ベス自身の気持ちをぎっちり詰めていくことになると思います。まだ実感できていない“ベスの想い”を、これから感じていけるのが楽しみです。
小南さん)
日生劇場での2カ月のロングラン、主役としてその舞台に立ち続けるのは体力的にも大変なので、体調管理や体づくりも含めて準備しています。でも、今はなによりも素敵なキャストの皆さんと、どんな化学反応が起こるのかを楽しみにしています。そして、稽古が進む中で、ベスの気持ちが立体的になっていくのが本当に楽しみです。
──最後に、劇場へ来てくださる皆さんへメッセージを!
奥田さん)
ベスの人間性、生き方、楽曲の美しさ──初めて観たとき、私は、その全てに心を打たれました。そんなベスの物語を、私を通して届けられたら嬉しいです。ぜひ劇場で『レイディ・ベス』の世界観を全身で浴びてください。
小南さん)
初演・再演と愛され続けてきたこの作品を、再びお届けできることを嬉しく思います。花總まりさん、平野綾さんをはじめ、これまでに携わったキャスト・スタッフ、そして観客の皆様が愛し、大切に作り上げた作品を、受け継ぎ、新たなキャストで紡いでまいります。お客様には、ベスがなにを思い、なにに希望を見出して歩んできたのか──その息づかいを劇場で感じていただけたらと思います。劇場でお待ちしております。
<奥田いろは>
ヘアメイク:高橋稚奈 スタイリング:菅野 悠
<小南満佑子>
ヘアメイク:美舟(SIGNO)スタイリング:大野紗也
【ストーリー】
16 世紀イギリス。ベスは国王ヘンリー8 世の娘にも関わらず、母が反逆罪の汚名を着せられ処刑されたため、片田舎で家庭教師達と共に勉学に勤しみながらひっそりと暮らしていた。王女らしい理知と少女らしい好奇心に満ちたベスは、ある日、吟遊詩人ロビンと出会い、自身と真逆で自由に生きるロビンに反発しながらも、淡い恋心を抱き始める。しかし、つつましくも平穏だった日常は、彼女が現国王である姉のメアリーに対して反逆を企てているとの疑いを掛けられ一変する。忠義心をメアリーに信じてもらえず、彼女の側近ガーディナー司教やルナールから陥れられ、ついにはロビンとも引き離されロンドン塔に投獄されてしまう。だがメアリーの圧政に不満が溜まった民衆からは、「ベスを女王に」という声が次第に高まっていく。ベスが選ぶ道は、国のための人生か、1人の女性としての幸せか、果たして──。
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人