歌舞伎版「ルパン三世」第2弾、『流白浪燦星 碧翠の麗城』製作発表レポート


中村米吉さん 片岡愛之助さん

今年、アニメ放送開始から55周年を迎える人気漫画家モンキー・パンチの原作による「ルパン三世」シリーズ。半世紀以上に亘って多くの人々を魅了し続ける個性豊かなキャラクターたちや彼らの物語、さらにキャッチーなテーマソングや、独特の口調が自然と思い浮かびます。

その”ルパン”が新橋演舞場にて新作歌舞伎『流白浪燦星(ルパン三世)』として上演され、大きな話題を呼んだのは2023年12月のこと。ルパンたちの活躍を歌舞伎の技法や演出を盛り込んで大胆に描き出し、大人気を博しました。2025年9月には京都・南座で再演され、初演からパワーアップした舞台に、客席は大いに盛り上がりました。そして千穐楽に発表されたのが、この第2弾上演!

2026年3月の東京・新橋演舞場を皮切りに、4月に名古屋・御園座、9月に京都・南 座、そして2027年2月には福岡・博多座と、全国4大都市をまわるロングラン公演となる、歌舞伎版「ルパン三世」第2弾『流白浪燦星 碧翠の麗城(へきすいのれいじょう)』の製作発表が行われました。

前回に続き主演・流白浪燦星を勤め、今回はさらに石川五ェ門役も演じる片岡愛之助さん、本作のヒロイン・瀬織姫(せおりひめ)の中村米吉さん、そして脚本・演出の戸部和久さんが登壇した会見の模様をレポートいたします。


【第2弾は“ヒロイン物”】



脚本・演出:戸部和久さん

戸部さん)
前回は、ルパンと五ェ門という男と男のドラマを描いた作品──歌舞伎の石川五右衛門(石川五ェ門)と、アニメのルパン三世。この二人の盗賊が歌舞伎の世界で有名な“南禅寺の三門”で出会い、ひとつの物語として立ち上がっていく、というものでした。

その上で、第2弾として構想したのが“ヒロイン物”。歌舞伎にも、「ルパン三世」の漫画やアニメ、「アルセーヌ・ルパンシリーズ」にも、さまざまなヒロイン像があります。それらを重ね合わせることで、ルパンとヒロインの物語が描けるのではと考えました。

今回は、愛之助さんの進化したルパン三世と、米吉さん演じる瀬織姫、その二人の関係性がどう立ち上がっていくのかを、楽しんでいただきたいと思っています


【進化するルパン、二役への挑戦】



流白浪燦星(ルパン三世)/石川五ェ門:片岡愛之助さん

愛之助さん)
第1弾のときは、手探りのまま稽古に入って、みんなで知恵を出し合いながら作った作品です。皆さんが喜んでくださって、こうして第2弾、4都市ロングランができることになりました。本当にありがたいです。

実は、まだ台本は完成していません(笑)。でも途中まで読ませていただいて、“これは面白くなる”という手応えは感じています。前回は水を使った演出に反響がありましたが、今回は水は使いません。その代わり──宙乗りをやらせていただきます。そして場面で言うと、船を使ってのだんまり、いわゆる追っかけっこをやりたいなと思っております。

また、今回は、流白浪燦星(ルパン三世)と石川五ェ門の二役を勤めさせていただきます。二役ということで、“欲張りだ”と思われるかもしれませんが(笑)、今回は、活躍はしますが、五ェ門の出番としては前作ほど多くないんです。それなら二役どうですか、というところからの発想でした。

──二役ということで生まれる見せ場もあるかと、期待が膨らみます。

愛之助さん)
二役ですので歌舞伎の一つの醍醐味である早替りはあると思いますし、一緒にいる場面があるかどうか……おそらく、あると思います。ルパンは“いつものルパン”として、五ェ門はできるだけ五ェ門らしく。白塗りはしませんが、無口で芯が通っている、少し大人の五ェ門になると思います

戸部さん)
スチール撮影を終えていますが、第1弾初演の(尾上)松也さん、再演の(尾上)右近さんとはまた違った、大人の色気漂う五ェ門となっております。また、ルパンのキャラクターの中で、刀を持った立ち廻りをできるのも五ェ門だけでございますので、たくさん“つまらぬもの”を斬っていただきたいと思っております。


【ヒロイン・瀬織姫をどう描くか】



瀬織姫(せおりひめ):中村米吉さん

米吉さん)
SNSなどで、私が茶髪のボブヘアで出てくるのではないか、という声も見かけましたが(笑)、ちゃんと歌舞伎のお姫様です。

新作のヒロインというのは、これまで女形として学んできたことが試される場。古典で培ってきた“歌舞伎のお姫様の基礎”を大切にしながら、この作品ならではのヒロイン像を立ち上げていきたいと思っております。「ルパン三世」は子供のころからアニメやゲームで親しんできた作品。今回参加できることを嬉しく思います。愛之助のお兄さんの胸を借り、戸部さんの脚本の力を信じ、非常にウエイトが重いこのお役を精一杯勤め、皆様に楽しんでいただければと思っております。

──米吉さんはどのようなヒロイン像を思い描いていますか。

米吉さん)
「ルパン三世」には峰不二子というキャラクターがおりますが、物語のカギを握るヒロイン──本作で言うと、この瀬織姫とルパンが狙うお宝に関わりがあるというのも定番。ルパンといわゆる恋愛関係に発展するわけではありませんが、ルパンが姫の清らかさや心の美しさに惹かれて、力を貸したくなるような“お姫様とナイト”のような心の惹かれ合い、関係性が描けたらいいなと思っています。




どうも歌舞伎の女形というのは、立役さんの膝につくと色っぽくなっていけない。色気があり過ぎるとルパン三世とヒロインのバランスがあんまり良くない。撮影では、そんなことを感じました。


──米吉さんのご挨拶にもあったように、本作は「ヒロイン物」ということで、劇場版の『ルパン三世 カリオストロの城』を思い浮かべる方もいらっしゃると思います。その辺りも含め、「ヒロイン物」への制作意図を教えてください。

戸部さん)
「ルパン三世」「ヒロイン物」と聞くと、『カリオストロの城』を思い浮かべる方が多いと思いというのも承知しておりますが、本作は特定の作品や物語を描くものではありません。
歌舞伎では、有名な“三姫”や“桜姫”など、様々なお姫様像が描かれてきました。こうした役柄が今も支持され続けているのは、どこかに現代の私たちにも響く普遍性があるからだと思います。

新作歌舞伎を作るにあたり、歌舞伎界を代表する若手である米吉さんをお迎えするからには、古典歌舞伎のお姫様の中に、ルパン作品に登場する多様なヒロイン像を重ね合わせ、その“芯の強さ”を大切にした、現代のお客様にも共感していただける新しいお姫様像を生み出したいと思っています。


──米吉さんは、本作におけるお姫様像、その位置づけについて、どう考えていますか。

米吉さん)
若いうちは先輩方に教えていただき、様々な役柄の引き出しを埋めていくことが求められます。娘なら、傾城なら、お姫様なら──その「お姫様なら」という土台の上に、キャラクターの魅力を乗せていくことが非常に重要だと思っております。

こうして二人でポスターを撮らせていただき、「ヒロイン物」と言われている以上、私が演じる役というものが魅力的に見えなければ、お客様には楽しんでいただけないというのが大前提。極端な話、隣にいる男性が“ルパン”でなくても、歌舞伎として成立する物語になったら、それが一番素晴らしいと思っています。その上で「ルパン三世」のキャラクターが加わることで、さらに魅力が増すのではないか。

しっかりと気を引き締め、素敵な、新しいお姫様像を立ち上げる。逆に、これがうまくいけば、歌舞伎のお姫様の新たな1ページになる。そこまでを理想として持って思っております。本作について最初に戸部さんとお話した時にも、そのようなお話をいたしました。


【歌舞伎の約束事の中で描く「ルパン三世」】


──第1弾の手応えを踏まえ、第2弾に臨む思いをお聞かせいただけますか。



愛之助さん)
多くの原作ファンの方が観に来てくださり、「楽しめました」というお声をいただいたことにほっとしている部分もありました。
今は、映画「国宝」が大変な人気で、むしろ古典歌舞伎に注目が集まる中で、新しい作品をしようという(笑)──ただ、ご覧いただいたらわかる通り、中身はほぼ歌舞伎。歌舞伎の約束事の中で進んでいく「ルパン三世」ということをしっかり踏まえた第2弾も、きっと皆様に楽しんでいただけると思っております。

──そして「ルパン三世」は半世紀以上にわたって人気の作品です。改めてその作品の面白さをどう感じていますか。

愛之助さん)
「ルパン三世」はそれぞれ個性が際立ったキャラクターがばかりであることが魅力。そして役者の方も、個性際立っておりますので(笑)、そういう意味でも存分にお楽しみいただけると思っております。

米吉さん)
子供の頃に見ていたイメージでは、日頃触れることの多かった努力・友情・勝利というような価値観とはまた違う──つまり不二子は裏切る、次元も途中でもうやめたといなくなる、など非常にドライな人間関係に「大人の空気」のようなものを感じた覚えがあります。それも魅力の一つ。今回の作品でも、きっとルパン一味は一枚岩ではなく、様々な活躍をしてくれることでしょう。そこで私もヒロインとして振り回されるのを楽しみにしております。

──ルパン像をどこまで原作に近づけるか。



愛之助さん)
初演の会見では、「ものまねの方のように寄せきれるかはわからない」とお話ししていたと思います。実際、最初に取り組んだときは、どこまで近づけていけるのか、少し恥ずかしさもありながら手探りで作っていきました。
それでも、自分なりに近づけていけたらと、毎日楽屋で「ルパン三世」を流し、山田康雄さんや栗田貫一さんの声を聞きながらイメージを膨らませて舞台に出るようにしていました。

ルパンのキャラクター自体は変わりませんが、今は五ェ門というキャラクターを改めて研究しています。無口で無愛想だけれど、一本芯が通っている。関係性で言えば、不二子ちゃんのことは何度裏切られても好きでいるルパンに、呆れるほかの二人がいる。そのバランスも大事にしたいですね。前回同様、お稽古場に入ってから初めて見えてくることも多いと思いますので、稽古初日をとても楽しみにしています。

──歌舞伎と「ルパン三世」の世界の融合について、米吉さんは。



米吉さん)
歌舞伎のお姫様との類似性という意味で、桜姫はお姫様でありながらも、ならず者とそういう関係になって物語が進む、泥棒とお姫様というところで共通点もございますし、意思を持ち、自らの使命のためにという意味であれば三姫に近いと思います。本作にも、そんな歌舞伎の名作のパロディのような、ちょっと匂わせるような場面が入ります。それによって従来より歌舞伎をご覧になっている歌舞伎ファンの方々に「あの作品のあの場面だな」といった発見を楽しんでいただきつつ、ルパンファンの方には、そこで古典作品に触れていただく──双方のファンの方の行き来ができる作品にしたい。ただ、私は、それにとらわれずに、素晴らしい作品になるように努力するだけだと思っております。

──最後に、作品への思いと観客へのメッセージを愛之助さんよりお願いします。

愛之助さん)
この初めて歌舞伎をご覧になる方にも、普段から歌舞伎をご覧になっている方にも楽しんでいただけます。
本当に歌舞伎がブームになっておりますので、日本だけでなく、世界にも発信していきたい。まだ観たことのない歌舞伎のルパンというものを、まずは観ていただければ。我々、一丸となって頑張りますので、ぜひお運びくださいませ。



冒頭「台本に難航している」と漏らす戸部さんに──米吉さんは思わず

その後のコメントで、お二人から「ここまでに思いはしっかりと共有されている」ことが明かされ、最後に愛之助さんから「ストーリーに関しましても、構成はしっかりできておりますので、安心してください」と。それは会見でのお話からも、ひしひしと伝わってまいりました!そして、取材を終えて思うのは「これ、絶対好きなやつ!」というワクワク。まずは3月の新橋演舞場での開幕が待ち遠しい!

【あらすじ】
時は封建時代。諏訪の太守、春宮家の息女・瀬織姫(せおりひめ)は鎌倉初瀬寺で静かな日々を送っていたが、父の死によって、お家存続のため執権の弾正と無理やり結婚させられることになる。そこへ、寺にがっぽり貯め込まれた金を盗みにルパン(流白浪燦星)がやってきて、二人は出会う。自由を夢見ていた深窓の姫に、ルパンという風が吹いたとき、幻の古城に秘められたお宝を巡る冒険が始まる。ルパンと姫、淡く通ってゆく二人の思いは、それぞれの定めの狭間で揺れ動く。
 ルパンと姫、次元、石川五ェ門、不二子が大敵の弾正と宝を争い、銭形がそれを追う。歌舞伎とルパンの“ヒロイン物語”が今、幕を明ける。

【公演情報】
『流白浪燦星 碧翠の麗城』
2026年3月5日(木)~3月27日(金)@ 東京・新橋演舞場
2026年4月3日(金)~4月26日(日) @名古屋・御園座
2026年9月2日(水)~9月26日(土) @京都・南座
2027年2月6日(土)~2月26日(金) @福岡・博多座

<スタッフ>
モンキー・パンチ 原作(「ルパン三世」より) 戸部和久 脚本・演出

<配役>
流白浪燦星/石川五ェ門:片岡 愛之助
瀬織姫:中村 米吉
峰不二子:市川 笑也
次元大介:市川 笑三郎
七藍屋雅吉 実は 守矢正之助:市川 猿弥
銭形刑部:市川 中車
瀧津弾正久永:中村 錦之助(新橋演舞場・御園座) 坂東彌十郎(南座・博多座)

公演HP:https://www.kabuki-bito.jp/theaters/shinbashi/play/953/

おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人

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