「新国立劇場 2026/2027 演劇ラインアップ発表会」速報レポート

2026年9月より、上村聡史さんが新たに芸術監督として就任する新国立劇場の演劇(現在は、芸術参与)。注目の、上村芸術監督1stシーズンのラインアップ発表会が行われました。上村さんらしさが色濃く反映されたラインアップ、所信表明、新たな試みなど、ワクワクする時間でした。



上村聡史さん

芸術監督就任について、夢にも思わなかったと語る上村さん。新国立劇場での創作について、「20年前に演出助手で参加したのが初めてで、10年ほど前から演出を任されるようになった」と振り返ります。続けて「20年近く、この劇場で創作活動をさせていただくとともに、歴代芸術監督の仕事を近くで拝見してきました。諸先輩たちが成し遂げてきた、お客様に感動を届けるという娯楽としての使命に加えて、感動以上のサプライズを届けるというところに、私自身の視点をプログラムに反映していくことで、国立の劇場としての役割を果たしていきたい」と語ります。


在任中の大きな指針として掲げたのは『物語の更新(アップデート)』。



「時代と呼吸しながら演劇は変化、発展を遂げてきました。そして今、転換の時期にあるという意味において、演劇がさらに前進する必然性があると言っても過言ではない。総合芸術である演劇は、脚本以上に表現者が発する声や、表現そのものが物語性を持ちます。こういった時代の変化の中で表現そのものが、もう一つ前進するというのかな。演劇のさらなる前進、言うなれば、表現も含めた『物語の更新(アップデート)』を目指していきたいと考えています」

『物語の更新(アップデート)』の基盤となるのが、以下の4つの視点。

1.現代的、国際的、批評的
2.クロスオーバー、他ジャンル(音楽・ダンス・文芸・漫画・映像など)とのつながり
3.新しい才能との出会い
4.消費で終わらないパフォーマンス


どれも興味深いものばかりですが、それらが組み込まれたラインアップをご紹介してまいります。

11月、1年目のシーズンの開幕を飾るのは、ミハイル・ブルガーコフ原作『巨匠とマルガリータ』(翻案:エドワード・ケンプ、翻訳:小田島創志、演出:上村聡史)を上村さんご自身の演出で。「原稿は燃えない」という名台詞から語られる、権力に立ち向かう芸術のあるべき姿、社会の善悪といったテーマを中劇場で、スペクタクルをもって描く。上村さんは2024年の『白衛軍 The White Guard』に続いてのブルガーコフ作品の演出となります。出演者は成河さん、花乃まりあさん、松島庄汰さん、菅原永二さん、大鷹明良さん、篠井英介さん ほか。




『巨匠とマルガリータ』出演者
成河 花乃まりあ 松島庄汰 菅原永二
明星真由美 小松利昌 富山えり子 内田健介 山本圭祐 山森大輔
柴 一平 釆澤靖起 近藤 隼 猪俣三四郎 篠原初実 笹原翔太
大鷹明良 篠井英介


続く12月は「クロスオーバー」を目指す作品『ミノタウロスの皿』(脚色・振付・演出:スズキ拓朗)。藤子・F・不二雄の短編漫画をもとに、ダンスカンパニーのCHAiroiPLINを主宰するスズキ拓朗さんの演出で“命を食する”ことを問う。こちらは4歳以上の未就学児からお楽しみいただけます。

2027年3月~6月には、「現代的、国際的、批評的」をテーマに掲げた4作品──ドイツの現代作家マリウス・フォン・マイエンブルクの『ナハトラント~ずっと夜の国~』(3月、翻訳:長田紫乃、演出:柳沼昭徳)、イスラム系テロ組織によるアメリカ人銀行家の誘拐に端を発する分断を描くクライムサスペンス、アヤド・アクタル作『見えざる手』(4月、翻訳:浦辺千鶴、演出:上村聡史)、女性たちの生き様をユーモアと力強いタッチで描くリン・ノッテージのピュリッツァー賞受賞作品『Ruined 奪われて』(5月、翻訳:小田島則子、演出:五戸真理枝)、「生の選択、死の選択」の問題に切り込む力作、山田佳奈さん書下ろしの新作『抱擁』(作・演出:山田佳奈)が並びます。



『エンジェルス・イン・アメリカ』2023年公演より(撮影:宮川舞子)



『エンジェルス・イン・アメリカ』2023年公演より(撮影:宮川舞子)



『エンジェルス・イン・アメリカ』2023年公演より(撮影:宮川舞子)



『エンジェルス・イン・アメリカ』2023年公演より(撮影:宮川舞子)


7月は、2023年にフルオーディション企画として上演された『エンジェルス・イン・アメリカ』(作:トニー・クシュナー、翻訳:小田島創志、演出:上村聡史、出演:浅野雅博、岩永達也、長村航希、坂本慶介、水夏希、山西惇、ほか)を再構築して上演。こちらは「消費で終わらないパフォーマンス」の第一歩として、「グリーン・リバイバル・ラボ」の第一弾となります。過去上演された『レオポルト・シュタット』『白衛軍』(ともに美術:乘峯雅寛)の舞台美術を一部使用し、舞台形状も変化するとのこと。また本作の舞台形状と舞台美術をそのまま使用する形で、2030年までの毎シーズン「グリーン・リバイバル・ラボ」の取り組みは続きます。一過性で終わらせない芸術への取り組みです。また、『見えざる手』においても、2025年12月に上演した『スリー・キングダムス Three Kingdoms』の素材が利用されます。


こうしてラインアップは出揃いましたが、ほかにも「新しい才能との出会い」として集団創作による新作と題し、五戸真理枝さんが演出を担う形で「劇作コンペ、出演者フルオーディション」を通して劇作家、演出家、俳優が“劇団的”な距離で、時間をかけて創作するプロジェクトも発表されました。2026年春にプロジェクトの詳細発表、劇作家の募集を開始し、2027年春ごろから創作スタート、2028年4月の上演を予定。

そして、チケット代というのはいくつかの演目で劇場に足を運びやすい価格帯のチケット料金を提供する「Theatre Day」を試験的に導入することが発表されました。詳細は現在検討段階ということですが、若い世代、初めて劇場に足を運ぶ観客などにアプローチするための試みです。「○年後、○十年後、将来の演劇文化を見据えたとき、やはり観劇料金は避けては通れない問題。現場における作り手たちの負担がないように、サービスとクリエーションの理想的な着地点を見定めていきたい」と上村さんは思いを語りました。

1シーズン7作品、4年の任期の28作品で形作られる「上村芸術監督期の新国立劇場」。どんな姿が立ち上がるのか、どんな価値観との出会い、観劇体験が待っているのか──今後への期待が高まるラインアップ発表会となりました。



画像をクリックすると、劇場HP「2026/2027シーズン 演劇 ラインアップ」へ!

おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人

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