ミュージカル『ブラッド・ブラザーズ』渡邉蒼さん×島太星さんインタビュー


ミュージカル『ブラッド・ブラザーズ』@シアタークリエ
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ミュージカル『ブラッド・ブラザーズ』は、英国・リヴァプールを舞台に、生まれてすぐに別々の家庭で育てられた双子の兄弟、ミッキーとエディの数奇な運命を描く名作です。階級の違いによって異なる人生を歩みながらも、互いに強く惹かれ合い、親友として絆を深めていくふたり。しかし、成長するにつれ、その関係はやがて抗えない現実と向き合うことになります。友情、格差、そして運命──人間の根源に触れるテーマを、豊かな音楽とともに描き出す本作は、世界各国で上演を重ね、日本でも長く愛されてきました。



渡邉蒼さん、島太星さん

ミッキー役の渡邉蒼さんとエディ役の島太星さんは、稽古を重ねる中で互いの内面に共鳴する感覚を見出していると語ります。役としてだけでなく、1人の人間として向き合うことで立ち上がる双子の関係性。蒼さんと島さんの “あおしま”ペアが描き出す新たな『ブラッド・ブラザーズ』の核心に迫ります。ミッキー役、エディ役は、それぞれ小林亮太さん、山田健登さんとのWキャスト(こちらは“こばやま”ペア)となります


【ふたりで作り上げていくミッキーとエディ】

──お稽古を重ねる中で感じる手応えからお聞かせください。

島さん)
日々、稽古を楽しんでいて、小さな挫折もありながら一歩ずつ進んでいる感じです。小さな挫折をして、発見して、たどり着く──その積み重ね。うまくいかなくて悲しいなと思うこともあるけど、最終的にはちゃんと目標へたどり着けているので、自分の中では「いい予兆がきているな」と思います。

渡邉さん)
「小さな挫折」、すごくわかります。ミッキーはこれまで演じたことのないタイプのキャラクターなこともあり、彼の魅力を僕がまだ体現しきれていない気がして。でも、この役は自分ひとりでは成立しない役。ミッキーとエディとして太星くんと話すことで、悩みが解消し、一段階上がれる瞬間がある。ふたりで作り上げていく役なんだと感じています。

──ふたりで作り上げていくミッキーとエディ、素敵ですね。

島さん)
実は昨日も、稽古が終わってから「このシーンだけもう一度稽古したいんだけど」と蒼くんにお願いしたんです。自分の中で、芝居がうまくはまりそうなのに、はまりきれなかった。いわゆる不完全燃焼。でも、あと一歩のところまで来ている気もして。蒼くんは快く付き合ってくれて、ふたりでもう一度やってみたら、新たな光が見えて、一歩進めたと感じました。そうやって本当に親身に向き合ってくれるので、とても助けられています。

渡邉さん)
こちらこそです。最近特に、「もう1回やってみよう」ということが増えていて、それが確実にいい結果につながっている。ミッキーもエディもひとりで悶々と考えるより、“合わせてなんぼ”の役なんだと感じています。


【心が傷つくほどのリアル】



──お互いのお芝居から、受け取るものも大きいということでしょうか。

島さん)
昨日の自主稽古の話で言うと、ミッキーにキツイ言葉を投げかけられる決別シーンだったたんです。そこでは「もう消えてくれ」って言われるんですけど、僕は、家に帰ってからもずっと傷ついていました。帰り道では、「あれ?あれは蒼くんが僕に言ったのか? いや、ミッキーだよね……」って。

渡邉さん)
絶対、絶対ミッキーです(笑)!

島さん)
ミッキーだよね。よかった(笑)。
そうなるのは蒼くんのお芝居が放つ感情の量が尋常ではないからだとわかっているけど、でもやっぱり僕は傷つきながら帰りました。逆に楽しいシーンで終わったときは、めっちゃ楽しく帰るし、ポジティブな感情もネガティブな感情も心で吸収できているなと思っています。

──日頃から役の感情を引きずるタイプですか。

島さん)
普段は割と割り切れるんです。でも今回は、役と自分の境界があいまいになるような感覚があります。すごくリアルというか。だから「消えてくれ」と言われた瞬間に、僕の心が傷つきます。あと、今、思い出しても、あまりに真に迫った「消えてくれ」だったんです。もしかしたら稽古時間を過ぎても付き合わせてしまったから「一体、なにをやらせるんだ!」って、本当に消えてほしかったのかな、なんて思うくらい(笑)。

渡邉さん)
違いますからね(笑)。あれはミッキーです。

島さん)
そのくらい蒼くんの芝居には、相手の心を動かす力があるということです。

渡邉さん)
僕のほうも、太星くんからたくさんのものをもらっています。
エディはミッキーの世界を広げてくれる存在でもあり、社会の中で自分がとても低いポジションにいることを思い知らされる存在でもあるんです。お芝居をしていると、太星くんの毛穴の1つひとつからエディ(の要素)がにじみ出ている感じ。

島さん)
毛穴から!!

渡邉さん)
そう、毛穴から。太星くんは、この台詞はこういう意味だろうという、僕の台本の読み解きを超えた、リアルなエディとして存在してくれるので、太星くんと芝居をしていると、その関係性が、理屈ではなく感覚として立ち上がってくるんです。親友として惹かれ合う感覚も、コンプレックスを刺激される感覚も、どちらも本当に自然に生まれてくるんです。
だから「お前が好きだ」という言葉だとしても、「消えてくれ」だとしても、全部本気にさせてくれるパートナーです。あくまでもミッキーとして言っているのですが(笑)。

──これまでと違ったタイプの役とおっしゃっていましたが、これまで見たことのない渡邉さんの姿が見えそうですね。

渡邉さん)
お芝居のスタイルを変えるというわけではないですが、これまでは・・・この言葉が最適かはわからないですが、理論優位のスマートな役が多かったように思います。ミッキーのような普段の感情のテンションが高い役は、僕自身、とても新鮮に感じていますし、そこから学ぶこともたくさんあると思っています。そんな新たな挑戦の場に、太星くんが一緒にいてくれることを、本当にありがたく思っています。

──おふたりのいい関係性が伝わってきます。

渡邉さん)
稽古の中では、めっちゃ喧嘩しますけど(笑)。

島さん)
やばいよね(笑)。今日は、まず、例の「消えてくれ」をやるんです。でも、今はとても楽しみです。昨日の自主稽古の手応えがあるから! ふたりの日々の積み重ねが自信につながっている、充実した毎日を過ごさせてもらえて幸せです。


【稽古場と仲間が支える創作の時間】



──製作発表でも、稽古場の温かい雰囲気が伝わってきました。

島さん)
皆さん本当に優しくて、演出の日澤(雄介)さんのおかげもあってとても居心地のいい稽古場です。安蘭けいさんと瀬奈じゅんさんは、役を離れても本当にママみたいな安心感を与えてくれますし、ほかの皆さんも普段から役と重なるようなところがあるんです。あ、サミー兄ちゃんの秋沢(健太朗)さんは全然違って優しいのですが(笑)。

──ミッキーとエディの“僕のお母さん自慢”も印象的でした。お母さんとの関係性は深まっていますか。

島さん)
エディの場合はふたりともお母さんなんですけど、事実上のお母さんって言えばいいのかな。瀬奈さんは、僕がどんな思いをぶつけても、それを全部受け取ってくれる。安心してお芝居ができます。

渡邉さん)
僕も、安蘭さんとお芝居をしていると、このママに守られて育てられたミッキーならこうするだろうなと、想像力が膨らむんです。舞台上で、本当にママと息子として会話をしている感覚があります。うちのママとは、7歳からラストまで、各年代のシーンで親子の会話があり、ママとの会話で、ミッキーがどういう状態なのかを把握することができます。

そして稽古場の明るさがクリエイティブな発想につながっていますし、Wキャストの関係性もとてもいい。“こばやま”“あおしま”、お互いが全力を尽くしたところで、競い合いにはならないというか。どうやっても同じものにはならないことが、本読みの時点でわかったので、そこは割り切れています。だから、いい意味で“盗もう”と思って互いのお芝居を見られますし、メンタル面では支えてもらえている部分もあるので、理想的な関係だと思います。

──同じ役同士で話し合うこともありますか。

島さん)
僕は、毎日たくさん話します。(山田)健登とは元々同じグループで、付き合いはもう10年ぐらい。健登も僕も、音楽活動がスタートで、そこからお芝居の世界に来たという境遇も似ているので、お芝居に対する不安も共有して支え合っています。健登がいてくれることが心強いです。隠すものは何もないので、それぞれが持っている“演技の秘密道具”を一度すべてさらけ出して、そこから一緒に作っていこうという感覚です。どれだけ手の内を明かしても、健登と僕は絶対同じエディにはならないとわかっているからこそできることなんだろうな。エディのWキャストが健登で本当によかったです。

渡邉さん)
亮太くんも子どものころから芸能活動をされているので、僕が今抱えている悩みをすでに通ってきた先輩。だから、昨日も僕がふと「なんかちょっとダメなんですよね」と漏らしたら、親身になって話を聞いてくれて、「今の時期は、そういう悩みがあるよね」と共感してくれて。励ましと乗り越え方の具体的なアドバイスもくれました。お芝居についてもいろいろお話して「こんな攻め方はどうかな」と提案してくださって、本当に俳優としても人間としても、大好きなお兄ちゃんです。


【「似ている部分がある」──双子としての共鳴】



──Wキャストとの関係を築きながらも、やはりこの作品の核となるのが、“双子”として向き合うおふたりの関係です。“あおしま”コンビの魅力はどんなところにあるのでしょうか。

(突然、言葉を探すように、顔を見合わせるふたり)

島さん)
どうなんだろう。
客観的に見ると──普通の信号って、赤黄青ですよね。でも、それとは違う色で発光するかもしれません、僕たちの信号は。そんな気がするんです。

──決して予定調和ではないミッキーとエディということですね。それを生み出すのは?

島さん)
それはお芝居がどうこうではなく、僕たちが持っている「心」の色なのかなと。
蒼くんは真面目で頭がいい人。だけど蒼くんの心のなかにはもっといろんな蒼くんがいるんじゃないかなとも思うんです。そして自分にもそういうところがある。だから、発光する色が単色ではなく、いろんな色が混ざったように見える。その複雑さが、見ていて飽きないペアになるのかなとは思います。どんな色になるのかは、僕自身も楽しみにしているんです。

渡邉さん)
そうだね。雑多な雰囲気は確かにあると思います。これは優劣じゃなくて、“こばやま”ペアの放つ光は、一本の綺麗なスポットライトのように観ている者の胸を突き刺してくるような魅力がある。それに対して僕らはなんだか汗と血の匂いがするギラギラした光のような生々しさというか、ある種の“汚さ”があるような……。

島さん)
臭そう(笑)

渡邉さん)
臭そうって(笑)。でも、わかる。なんか中学生とかの独特の匂いだよね。本当の嗅覚にくるものではなく、見ているだけで香ってくるような、鬱屈したモヤモヤした心の匂いとか。

島さん)
なんだか蒼くんと話していると、「自分と同じ要素を持っている人だな」と感じる瞬間がすごくあるんです。蒼くんは、すごく気遣いしてくれますが、自分も気を遣ってばかりの学校生活、人生だったんです。だから勝手に、本当に申し訳ないけど同類っていうか。全く同じというわけではないんですけど、ピンポイントで同じだと感じるところがあるんです。その小さな接点でつながれる人って、今まで出会ってきたなかで限りなくゼロに近い。だからこそ、蒼くんと双子を演じていることが、本当に嬉しいんです。

渡邉さん)
太星くんが言ってくれていること、すごくよくわかります。僕ら自身が、コンプレックス、劣等感みたいなものを抱えながら生きてきたというか。それがミッキーとエディの正解だというわけではないけれど、僕らが、今、作り上げている双子からは、それが滲むのかもしれない。

島さん)
そう、それ!今の蒼くんの言葉が腑に落ちた。

渡邉さん)
僕も、太星くんとだからこそ生まれるものがあると感じています。


【混ざり合うしかない、これも運命】



──巡り会うべくして巡り会ったふたりなんですね。

島さん)
『フランケンシュタイン』で共演したときは、亮太くんが真っ直ぐに僕に手を差し伸べてくれたから、僕もすっとその手を取ってつながることができた。でも、僕や蒼くんみたいなタイプは、自分から踏み込めないし、相手もきっと同じように遠慮するから、互いの心のなかに入っていくのが難しい。だから、なかなかうまく結び合えないんです。

でも、そうも言っていられないんですよ、ペアなんで(笑)。混ざり合うしかない。僕は、今、それがすごく面白いんです。蒼くんに対して1人の人間として興味もあるし、だからこそ蒼くんの台詞が、僕の胸にダイレクトに響いてくるんだと思います。本当にこの機会を与えてもらえたことに感謝しかないです。

──渡邉蒼さんと島太星さんのミッキーとエディ、一体どんな双子になるのだろうと思っている方も多いかと思います。

渡邉さん)
そうですね。この組み合わせに決めてくださった方がすごいなって思います。なんで僕たちを組ませたのか、僕がインタビューさせてもらいたいくらいです(笑)。

島さん)
亮太くんと健登はビジュアルを見ても、どこかにちゃんとつながりがあるように見えると思うんですけど、僕らも内面的にはすごく近いものがあるんです。自分たちも気づいていなかったつながりというか。だから今、双子を演じていることに、すごく意味を感じています。

渡邉さん)
巡り合うべくして巡り合ったミッキーとエディなのかもしれないですね。この作品を通して、その関係がどう深まっていくのか、自分自身も楽しみにしています。




「似ている部分がある」と語るふたりの言葉からは、役としてだけでなく、1人の人間として向き合うことで生まれる共鳴が感じられました。互いの存在によって引き出される感情、ぶつかり合いながら結びついていく関係性。その過程は、『ブラッド・ブラザーズ』が描く“分かちがたく結ばれたふたり”の姿と重なります。おふたりがどんなドラマを見せてくれるのか、そして同時に、「どうやっても同じものにはならない」と語る“こばやま”ペアにも興味が湧いてきます。これは、ぜひとも両ペアを観なくては!


──最後にもうひとつ。この物語のラストを始めて知ったときの気持ちをひと言で表すと? どんな感情が残りましたか。(以下、核心には触れていませんがラストシーンに触れます)

渡邉さん)
迷信という要素が物語を彩っている作品。迷信は迷信でしかないのだけど、奇妙で、深い物語だなと思いました。人間の選択の積み重ねでありながら、大きな流れの中で「戻るべきところに戻った」ようにも感じられる。あの結末はやっぱり運命なのかな。だから引いた目で見ると、間違いが正されただけだったのかもしれない。とても不思議な感覚でした。

島さん)
僕はその瞬間に、ミッキーとエディでなく、ママの気持ちになってしまいました。ミッキーがラストにママに言う台詞が本当にしんどくて。「どうしたらいいの、この気持ち」、そこで僕は終わっちゃいました。

【渡邉 蒼】ヘアメイク:大西花保(B★side)
スタイリング:小林聡一郎

【島 太星】ヘアメイク:YAHAGI RITSUKO
スタイリング:小林洋治郎


ミュージカル『ブラッド・ブラザーズ』@シアタークリエ
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【公演情報】
ミュージカル『ブラッド・ブラザーズ』
2026 年3月9日~4月2日@シアタークリエ
2026年4月10日~4月12日@大阪 サンケイホールブリーゼ

<スタッフ>
脚本・音楽・歌詞:ウィリー・ラッセル
演出:日澤雄介

<出演>
ミッキー:小林亮太/渡邉蒼(Wキャスト)
エディ:山田健登/島太星(Wキャスト)

リンダ:小向なる
サミー:秋沢健太朗

ナレーター:東山義久
ミスター・ライオンズ:戸井勝海
ミセス・ライオンズ:瀬奈じゅん
ミセス・ジョンストン:安蘭けい

菊地まさはる 白鳥光夏 菅井理久 田代明* 千葉由香莉 花咲まこと* 平山トオル
*(スウィング)

【STORY】
リヴァプールに暮らす子だくさんのジョンストン家に、双子が誕生する。
生活の困窮から、母はやむなく、片方の子を我が子に恵まれなかった裕福なミセス・ライオンズに託す。
こうして、一人はエドワード(エディ)として豊かな家庭に、もう一人はマイケル(ミッキー)として貧しい家庭に、離れ離れで育つこととなった。
やがて運命に導かれるように再会した二人は、同じ日に生まれたことを知り、固い友情を結び〈ブラッド・ブラザーズ(親友)〉を誓う。
しかし年月を重ねるにつれ、彼らの人生は環境の違いによって大きく隔てられていく。
18 歳となったミッキーは、不況により職を失い、幼なじみのリンダとの結婚生活にも翳りが差す。
一方、エディは大学生活を満喫し、将来を約束された存在となる。
血を分けた実の兄弟、ミッキーとエディ。
社会の格差と避けられぬ運命が、二人の行く末を容赦なく裁いていく。

<公式サイト>
https://www.tohostage.com/blood_brothers/

おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人

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