1983年に英国で誕生し、世界各国で上演されてきた名作ミュージカル『ブラッド・ブラザーズ』。生き別れた双子の兄弟の人生を軸に、友情や家族の絆、そして人間の運命を描く物語です。
巧みなストーリー展開と情感豊かな音楽が織りなすドラマに加え、7歳から大人までを演じる俳優たちの演技の変化も大きな見どころ。さらに今回はミッキー役・エディ役ともにWキャストで、小林亮太さん×山田健登さんペア、渡邉蒼さん×島太星さんペアという異なる魅力の2組が、それぞれ違った色の物語を立ち上げます。演出を手がけるのは、日澤雄介さんです。
開幕を前に、ミッキー&エディの4名に加え、ミッキーとエディの幼なじみリンダ役の小向なるさん、物語を導くナレーター役の東山義久さん、2人の母親、エディを引き取るミセス・ライオンズ役の瀬奈じゅんさん、ミッキーとエディの実母ミセス・ジョンストン役の安蘭けいさんらキャストが登壇し、初日前の囲み取材が行われました。
──ミッキーとエディは組み合わせ固定のダブルキャストです。同じ役同士、ペアとしてどのような絆ができましたか。 小林さん)
ペアごとに培ってきたものもありますが、僕としては、この4人で男子中学生のように楽しく、作品を良くするためにいい意味で遠慮なくいられる関係になったと感じています。
渡邉さん)
2人の友情が描かれる作品だからこそ、本気で笑い合ったり、嫉妬し合ったりすることが大切。そのリアリティが育めている気がします。
山田さん)
僕は、ペアを組む亮ちゃんを信頼しています。何が起こっても大丈夫だという感情がしっかりと芽生えています。
島さん)
僕のペアは蒼くん。最近は一緒にキャッチボールをしたりして、すごく楽しい毎日を過ごしています。その空気感をお届けできるかと思います!
──衣裳を纏ってご登壇されていますが、Wキャストの相手を見てどんなことを思いますか。小林さん)
かわいいですよ。21歳の蒼くんが演じるミッキー。多分、みんな自分をさらけ出すのはあんまり得意じゃなくて、稽古序盤は、それぞれが稽古場での居方を探るようなところがありました。蒼くんもそうだったけど、どんどん僕らに心を開いてくれて。それが彼が演じるミッキーにはすごく良い作用をしていて、超魅力的なミッキーです。
渡邉さん)
亮太くんは、最初からずっとかっこよかったんです。ミッキーって、すごくやんちゃな子で、街の人には本当にやっかいな子どもだったり、若者だったりするのに、すごく人に好かれる。そんなミッキーの魅力を100%体現されているのが亮太くん。周りの人が惹かれるミッキーに説得力がある。稽古場で、それを近くで見て感じて、ちょっとだけ真似させてもらって。亮太くんとだから、楽しい日々でした。
──山田さんと島さんはいかがですか。 山田さん)
太ちゃんは、僕が思いつかないような角度から芝居をするので、「いいな」と思う瞬間がいっぱいあるんです。なんか狙ってできることではない──いや、もしかしたら狙っているのかもしれないですけど(笑)。「天性の才能」というのが、太ちゃんのエディを見ていて一番感じたことです。
──具体的には?山田さん)
言語するのは、ちょっと難しいです……。
小林さん)
たとえば「ナイフが怖い」とすると、多くの人はナイフから逃げると思うんです。でも、なぜか彼は両手を広げて近寄っていく。どういう思考回路なのかと思うけれど、子どもだと思うと妙な説得力があるんです、それが太星くんのエディです。
山田さん)
わかりやすくありがとう(笑)。やっぱり頼もしい。
島さん)
僕は本当に健登のエディが大好きです。健登こそエディなんじゃないかって。だからすごく勉強になったと同時に、ダブルキャストの意味を考えて、僕も自分のエディの魅力をどんどん出していかなければと焦りを感じることもありました。でも、やっぱり健登っていう力強い味方が隣にいてくれたから、迷うことなく自分のエディを作り上げてこられました。
健登のエディは、何回見ても、素敵だなって思います。
──小向さんはミッキーとエディの幼馴染の役ですが、4人はどう映りますか。小向さん)
4人ともタイプが違って、それぞれが愛おしい。エディの2人は全力。稽古場は天井が低かったので、思いっ切り手や頭をぶつけて(笑)。でも何事もなかったかのようにお芝居を続けるので、頑張っているな、愛おしいなって応援したくなりました。ミッキーの2人は真面目で繊細。稽古の前後に、すごく細かく確認をしている姿を見て、本当にこの作品を大切にしていることが伝わってきて愛おしいなと。
私自身も、お芝居の相手が変わることで全然違う感覚を覚えるので、お客様にも両チームを観ていただきたいなと思います。
──東山さんのナレーターという役どころは。東山さん)
あるときは牛乳配達員、またあるときは産婦人科医、高校の先生、果たしてその実態は──というように、『ブラッド・ブラザーズ』の登場人物に寄り添い、そしてお客さんとの橋渡しをするストーリーテラー。紙芝居のおじさんみたいな感じです(笑)。
ここに登壇されている皆さんの後ろで演じたり歌ったりするのですが、登場するたびに誰かに寄り添ったり、突き放したり。どう見えるかは──、ジョンストンさんの気持ちで見てもらってもいいし、お客様がジョンストンさんを責める言葉を僕が代弁していると感じてもらってもいい。いろんな見方が生まれたらいいな、楽しいなと思っています。
──母親を演じる安蘭さんと瀬奈さんにとって、この2組の双子はどんな息子さんたちでしょう。安蘭さん)
それぞれ本当に全然違う色があるんです。でもそれを言葉にしてしまうと、なんだか種明かしをしてしまうような感じがして。具体的には言えないのですが、どう?
瀬奈さん)
振ったな(笑)!稽古が始まったばかりのころは、7歳のミッキーとエディを演じることを恥ずかしがっているようなところが見受けられて。私も、「7歳に思えるのかしら」と思っていました。それが、抱きしめると、実際には大人の男性ですが、かわいい子どものように思えるようになって。本当にかわいらしい。
安蘭さん)
そう、本当の息子みたいに。2幕になると大人になるんですが、それが不自然なくらいかわいい。
瀬奈さん)
大人になっても、私たちにとっては7歳のままなんですよね。
──長く上演され続ける作品。その魅力についてお聞かせください。小林さん)
初めて台本をいただいた日から、その鮮度がずっと失われずにいる感覚があります。描かれているのは1960年代から80年代、リヴァプールの物語ですが、僕ら俳優が自分ごととして捉えて、実感を持って演じたいと思う、とても深め甲斐のある戯曲です。
僕らも、今の時代に響くように日澤さんやみんなで模索してきました。あとはやっぱり情感豊かな音楽が紡いでくれるところも大きな魅力。2度目3度目観ると、「ここでこの音楽が鳴っていたんだ」という発見がある。そういう感覚も含めて、心を豊かにしてくれる作品だと思います。
渡邉さん)
各年代の痛みを、スピーディーに描いている作品です。7歳の頃は痛みもなく、14歳になると些細なことに思いきり悩む。それが18歳、やがて20代になっていくと、悩んでもどうしようもなくなる──。一貫して人間の痛みを描きながら、その痛みの形が次第に変わっていくところが面白い。
それが舞台にどう立ち上がるかは、上演される国、時代、俳優、演出家の価値観によって変わる。だから今回なら、間違いなく、今の、シアタークリエだけの『ブラッド・ブラザーズ』になっていると思います。それが今までも続いてきて、これからも続いていくのではないかと思います
山田さん)
上演され続けるのは、お客さんが共感できる部分があるからだと思います。それは子どもから大人になるミッキーやエディかもしれないですし、ほかの誰か、どこかの場面が「こういうことがあったな」と思える。「双子の生き別れ」と考えると、現実にあるのかなと感じますが、何かそれぞれの人生の中で重なる部分があるからこそ続いているし、多分この先も続いていくんだろうなと思います。
島さん)
主人公は誰なのかなって、思っていました。誰なんだろうって。
そう感じるくらい誰もが主役で、1人1人にスポットライトがパパッと当たって、カンパニー全員が輝いているんです。本当に魅力があちこち、そこら中に転がっているので、宝探しのように観ると面白い作品です。多分、1つの目じゃ足りないと思うので、たくさん観に来ていただきたいと思います。
──両ペアの違いについて教えていただけますか。小林さん)
自分たちのことはあまりわからないので、相手ペアを。“あおしま”は──
小林さん)
なんかここで、こういう顔ができる2人なんです。
僕らは年齢も近いけど、彼らは少し離れています。でも、稽古の途中から蒼くんが敬語を取っ払って、太星くんと話をしたり、2人で稽古以外のところでもすごく話し合いを重ねていました。いろんなとこにボールを投げる2人なので、予想外のところに飛んでいくのかと思いきや、その裏には努力や思考がある。2人のミッキーとエディの素敵なお芝居を見ると、悔しいとか言うのも、もうどうでもいいくらい愛おしくなります。お客様目線で観ても、7歳も、そこから年齢が上がってきても、輝かしい青春のひとかけらがある。本当に「愛おしい」に尽きます。
山田さん)
亮ちゃんが言ってくれたことに加えて、僕は「いいデコボコ感」っていう言葉が浮かびました。もちろん年齢がちょっとだけ離れているので、それぞれの人生経験に関してはやっぱり差があるじゃないですか。でも、それが合わさったときに面白い化学反応を起こしているところが魅力だと思います。

「いいデコボコ感」
渡邉さん)
僕は、逆にこのお兄さんたちの思考量がすごくて。亮太くんの台本を開くと、書き込みすぎてほぼ「黒」なんです! それが亮太くんが健登くんと積み重ねた思考量。僕はそれ見て「やべー、もっともっと時間かけないと」って(笑)。しかもさらにすごいのが、それだけ考えているのに芝居に入ると、それがなかったかのように、一瞬にして放り出された子どもたちのように無邪気に舞台上を駆け回る。いったい、どうなっているんだろうって思うくらい。いっぱい考えて、考えた演技をするのはすごく簡単だと思う。でも、考えた上で、それを手放して7歳になるって、これはすごい技術。僕は、それをカッコいいなと思います。
島さん)
(“こばやま”ペアを)とってもいい人たちだなって思います。
僕たちとは吸っている空気そのものが違うのかなと思うくらい、もう全然違う2人。僕は芝居のことをどうこう言える立場ではありませんが、本当に尊敬しています。このペアがすごく仲が良いのはもちろん、しっかりとした力があるので、とっても安心して見られると思います。とってもよろしいと思うので、ぜひみなさんよろしくお願いいたします。

「とってもいい人たち」
──最後に、ミッキー、エディの4人からメッセージを。島さん)
この後は、こちらの亮ちゃん&健ちゃんペアのゲネプロがあります。僕たちより、ひと足早く舞台に立つので、とても緊張されていると思います。早く、気が休まるといいなと思っております。
ここから毎日毎日、同じ人間を演じますが、(毎回)お味は違うと思います。たくさん味わいに来ていただけたらなと嬉しいなと思います。
山田さん)
明日、いよいよ初日が開きます。大切に作ってきた作品を、大千穐楽まで、みんなで繋いでいけたらと思います。最後まで、よろしくお願いします。
渡邉さん)
めちゃくちゃ優しくて面白いパートナー、太星くん。僕らは、同じようなコンプレックスを抱えている気がするね、みたいな話をしました。なんかお互いに、そういうこともさらけ出し合えることが、そのままミッキーとエディの関係性に繋がっている。僕にとって、人としてとても解放される稽古期間でした。それは公演期間中もどんどん広がっていくだろうし、きっと、いい双子2組、いいカンパニーがこれから世に放たれますので、劇場に足を運んでいただけたら嬉しいです。
小林さん)
(ミッキー、エディを見て)まずこの3人がいなかったら、今の自分はないと思うくらい、いろんなものをくれて、いろんなことに気づかせてくれました。そして日澤さんをはじめ、引っ張ってくださった共演者の皆様やスタッフの皆様と必死に新しい『ブラッド・ブラザーズ』を作ってきました。3月9日から、幕が開きますが、ぜひ日比谷・シアタークリエに、そして4月10日からは大阪 サンケイホールブリーゼに足を運んでいただいて、それぞれの選択や、生きていく活力、何が皆様に届くかは、僕にはわからないところもありますが。ぜひ皆様の目で、心でこの物語を受け取っていただけたら嬉しいなと思います。
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人