1992年の日本初演から、長く愛され続けるミュージカル『ミス・サイゴン』。4年ぶりとなる再演、新キャストも迎え新たな歴史を作る第一歩、2026年10月の開幕に向けた製作発表が行われました。キャスト登壇による、8曲の歌唱披露、皆さんが意気込みを語る会見には応募総数1万人から選ばれた約200名の一般オーディエンスも参加されました。
【歌唱披露】
舞台はベトナム戦争末期のサイゴン。エンジニアの経営するキャバレーで知り合った、ベトナム人の少女キムと米兵のクリスの愛、別離……そのドラマのすべてを歌で表現する本作。オープニングから趣向を凝らした演出で、魅力的なナンバーがたっぷり8曲披露されました。
1曲目は、物語の幕開け、エンジニアが経営するドリームランドで歌われる<火がついたサイゴン>

クラブオーナーに扮した土倉有貴による掛け声で歌唱披露はスタート!「今日はちょっといつもの製作発表とは雰囲気が違います。ただ今より『ミス・サイゴン』2026年キャストが一斉に登場いたします。さあ、乗った乗ったみんな舞台へ!Welcome to……Dreamland!」

ジョン:金本泰潤、チェ・ウヒョク クリス:小林唯、甲斐翔真

ジジ:則松亜海

ジジ:藤森蓮華
2曲目は、人民委員長となったトゥイが、社会の底辺で生きるキムに結婚を迫る一連の場面で歌う<時が来た>。トゥイ役のお二人とアンサンブルの皆さんによる歌唱は圧巻の迫力です。

トゥイ:岡シモン、吉田広大
3曲目は、一夜の出会いで恋に落ちたキムとクリスが歌う<世界が終わる夜のように>
繊細さと柔らかさのある甲斐さんの歌い出し、屋比久さんのひと言ひと言を紡ぐ切実な歌声、小林さんのどこまでも伸びやかな歌唱、夢見るかわいらしさのある清水さん、芯のあるルミーナさん……それぞれの歌声が重なり合う幸福感に満ちたひととき。。

クリス:小林唯、甲斐翔真 キム:屋比久知奈、清水美依紗、ルミーナ
4曲目は、戦争の悪夢にうなされるクリスを懸命に支えようとする妻エレンの葛藤を歌う<今も信じてるわ>
戸惑いの中でも愛する、信じる力強さを歌に込めるお二人。ハーモニーも心地よい。

エレン:加藤梨里香、エリアンナ
5曲目は、社会主義国となったベトナムで、あがきながらたくましく生きるエンジニアの生きざまを歌う<生き延びたけりゃ>
上がるナンバー!駒田さんの百戦錬磨の説得力のある歌声、東山さんの軽快かつうっとりさせる歌声、桐山さんのギラギラとエネルギッシュな歌声……すでに三者三様のエンジニアの気配が漂います!
6曲目は、息子を守る、母としての深い愛情をキムが歌う<命をあげよう>
実力者のお三方、すでに完成度は高いのですが、実際にタムを前に歌うことでさらに芝居が深まり高まると思うと、本番が楽しみでなりません。
7曲目は、ジョンが、米兵とベトナム女性との間に生まれた子どもたちに救いの手を差し伸べようと呼びかける<ブイドイ>
ウヒョクさんの深く強い歌声、金本さんの誠実で優しい歌声、どちらも素敵なジョン!男性コーラスの重厚感にもしびれます。

ジョン:金本泰潤、チェ・ウヒョク
8曲目は、憧れのアメリカに渡る時がついに来たと、エンジニアが夢を歌い上げる<アメリカン・ドリーム>
エンジニアの山師的なしたたかさが色気にも繋がり、オールキャストが登場するともはや祭りのような高揚感。会場を“アメドリ”の世界一色に変える見事なパフォーマンスです。
【ご挨拶】
☆は新キャスト
エンジニア役:駒田一)2014年からエンジニア役を演じ、12年目となります。いつの間にか最年長になってしまいましたが、そんなことは関係なく、今回も稽古場で苦しんで、悩んで、もがいて、大汗かいて、そして楽しんで。半分以上が新しいメンバーですが、一致団結して最後まで怪我や事故のないように務めていきたいと思います。
エンジニア役:東山義久)2020年にエンジニア役にキャスティングされましたがコロナ禍で公演は行われず、4年前の2022年に初めてエンジニアを務めました。4年経ちましたが、(駒田)一さんもお元気で(笑)。久しぶりにご一緒する方も、はじめましての方もいますが、情熱を持って、今回の2026年の『ミス・サイゴン』をこのカンパニーでお届けしたいと思っています。
エンジニア役:桐山照史☆)エンジニア役として、初めて『ミス・サイゴン』カンパニーに入らせていただきます。日本だけでなく、世界中の先輩方が作り上げてきた『ミス・サイゴン』の一員だという緊張感の中にいます。そして作品のファンの多くの方々に、2026年版も観ていただき「楽しかった、また見たいな」と思ってもらえるように。さらにはいろんなキャストの組み合わせがありますが、桐山のエンジニアを観ていただいて「よかった、これからも頑張れ」と思ってもらえるようなエンジニアに。全力で務めさせていただきます。
こういう時って、「迷惑をかけないように頑張ります」と言うのが普通だと思いますが、「迷惑かけます。すみません」と、先に謝っておきます。一さんや、東山さんに甘えながらも、桐山の100%、150%の力を出して頑張りたいと思います。よろしくお願いします。
キム役:屋比久知奈)この作品、そしてキムという役は、沖縄出身という自身のルーツも含め、とても大事な、自分のコアとして強く残っている作品です。またこうして参加できること、キムとして生きられることを嬉しく思います。そして、ルミと美依紗、2人の新しい風に刺激を受けながら、私自身もまた新たな気持ちでキムという役を生き抜きたい。心強い仲間の力をお借りしながら、精いっぱい務めさせていただきたいと思います。
キム役:清水美依紗☆)ミュージカルを学ぶためにニューヨークへ留学した時に、初めて授業で歌った課題曲が<命をあげよう>でした。その時からキムという役は、私の中でも特別な存在で、「いつか演じたい」と夢を見てきました。今、こうして皆様の前でご挨拶させていただいているのは夢のようです。劇場でお会いできることを楽しみにしております。
キム役:ルミーナ☆)10数年前の自分のSNSを見返しました。当時、何度か『ミス・サイゴン』を観ていて、「いつか自分が絶対にやりたい役」って書いてありました。今、こうしてキムとして、この場に立たせていただいていること、先輩方、そして心強い2人と一緒にできるということを光栄で幸せに思っています。全力で、大切にキムとして生きたいと思います。
クリス役:甲斐翔真☆)この歴史ある作品に参加できることを、光栄に思っております。初参加ということで、新しい風を吹かせられるように、作品を分析して、役を分析して、作者のメッセージを分析して、誰よりもこの作品を理解したいと思っています。昨年、ベトナムにも行きました。リアルに表現できたらと思います。
クリス役:小林唯☆)『ミス・サイゴン』は僕にとって憧れの作品です。今回、このようにご縁をいただけたことに感謝しています。そして、今の世界情勢を鑑みても、改めて戦争の悲惨さ、それが招く悲劇を世の中に伝えるという意味でも、今こそ上演する意味がある。僕も心して臨みたいと思います。
ジョン役:チェ・ウヒョク☆)はじめまして。韓国から来たチェ・ウヒョクです。日本語で歌うのは本当に難しいです。今も日本語の勉強を一生懸命に続けていますから、皆さんご期待ください。よろしくお願いします。
ジョン役:金本泰潤☆)2024年まで劇団四季におりました。そこから音楽活動をするためにとび出しました。ですので、今ここにいるのは嬉しさよりも、不思議が強くて(笑)。素敵な皆様とご一緒できることを楽しみにしています。平和に過ごしている僕たちが、この作品を上演するのは難しいこと。作品の中は緊急事態、有事であるということを忘れずに臨みたいと思っています。僕は日本語をサポートし、軍隊のことはウヒョクさんに教えていただきながら、初役同士、二人三脚で頑張ってまいります。
エレン役:エリアンナ☆)全世界で愛され続ける『ミス・サイゴン』に参加できることを嬉しく思っています。私自身も観劇した際は、心がたくさん揺れ動きました。そして、どんな時代にも揺るがないものは愛だと思っています。いろんな形の愛が描かれています。エレンなりの愛、国への愛、梨里香ちゃんと一緒に心を込めて、パッションを込めて届けたいと思います。
エレン役:加藤梨里香☆)大学3年生の時、ゼミで『ミス・サイゴン』について発表したことを、昨日寝る前に思い出しました。自分が何を発表したのかは覚えていないのですが、その時の資料を引っ張り出して、また1から作品と向き合っていこうと思っております。この世界情勢の中で、この作品を届けるという責任感をしっかりと持って、作品と、そしてエレンと誠実に向き合っていけたらと思っております。
トゥイ役:岡シモン☆)僕は高校生のときに初めて帝国劇場で『ミス・サイゴン』を観劇し、すぐにこの作品の虜になりました。受験勉強の合間を縫って音楽を聴いたり、音楽室で『ミス・サイゴン』の曲を大声で歌ったりしていました。今、こうして、この作品に参加させていただけること、皆さんとご一緒できることが、本当に光栄です。トゥイという役を、Wキャストの吉田広大さんとともに、深く深く追求していけたらと思います。
トゥイ役:吉田広大☆)歌唱披露のみのご参加、メッセージ代読トゥイ役を務めさせていただく吉田広大です。初めてこの作品に携わらせていただけることに、とても興奮しているとともに、偉大な作品に関われることを光栄に感じています。実直に作品と向き合い、トゥイとして、ただただ全力で生きていけたらと思います。
ジジ役:則松亜海)個人的なことですが、昨年12月に子どもを産み、新たなライフステージで初めて挑戦する舞台となります。この世界情勢の中で子を持ち、母となって向き合う『ミス・サイゴン』。また新たな、これまでと違う見方ができると思うので1から作り直すつもりで心を込めて演じたいと思います。
ジジ役:藤森蓮華☆)『ミス・サイゴン』という、世界中で愛され続ける作品の一員としてこの場に立っていることに、心の底から感謝があふれてきています。同時に、身の引き締まる思いです。この時代に、この作品を届ける意味を自分の中に宿しながら、ジジとして、誠実に、まっすぐに、そして力強く生き抜きたいと思います。
【質疑】
──エンジニア役とキム役のみなさんに伺います。ご自身の中でお好きなシーンや楽曲、見どころなどをお聞かせください。駒田)この作品は、数あるミュージカルの中でもトップクラスの音楽が魅力。戦争、情勢、人間……非常に重厚なテーマを描いていながら、全体的に少しキーが高いんです。それが効果的にバーッとくるイメージ。どのシーンも絵にもなるし、聞き心地もいい、冒頭から最後まで3時間すべて大好きです。
東山)今の時代だからこそ、2026年の『ミス・サイゴン』として重要なメッセージがあると思っています。悲惨な話でもありますが、その中でもそれぞれのキャラクターの生命讃歌が一番にあると思っています。
桐山)僕が観させていただいたときに感じた魅力は、スピード感。その中にいろんなドラマや考えさせられる部分もあるという印象を持ちました。2026年版の、このキャスト全員から出る、秘めた、力強い思いをお客様に届けたいと思っています。
屋比久)音楽の魅力が本作の強みだと思います。私自身も含め、平和な日本では、生きることが当たり前になってしまい、どこか無自覚になりがちですが。劇中での、一人一人の「一歩一歩、毎日生きるために」という人間の持つエネルギーが合わさったとき、群衆の声が持つ力が『ミス・サイゴン』の魅力。私は、毎回、歌稽古の第一声からそれを感じます。
清水)私はクリスとの結婚のシーンが一番好きです。キムにとって、一番幸せな瞬間だと思うので。作品の魅力は、初めて観たときに感じたキャラクター一人一人の強さと弱さ。弱さも力強く響くというのは不思議なことですが、それも人間らしさ。そのすべてが音楽や俳優の表情に宿っていました。お稽古では、人間臭さ、愛のために、子どものために命をあげるってどういうことなのかを深掘りしたいと思います。
ルミーナ)観劇後、お客様の心は重くなるかもしれません。決してハッピーな気持ちで外に出られる作品ではありませんが、それぞれのキャラクターが最善を尽くして、選択した人生の物語。壮大な音楽、壮大な世界観から、その人生が生々しく見えてくる。それが魅力だと思います。
──新エンジニアの桐山さんから、経験者のお二人に聞いてみたいことは?桐山)まだお会いするのは2日目ですが、先輩方に引っ張っていただいています。
エンジニアのキャラクターは1本筋が通ったものがありますが、演じる人によってすごく変わってくる役でもある。僕はオーディションで、エンジニアという人間は細い針を刺すような鋭さを持ち、蛇のように右向いたらこういう顔、左を向いたら違う顔みたいなキャラクターだとアドバイスをもらいました。お二人の中で、ここを掴んだらやりやすいということはありますか。
東山)エンジニアのビッグナンバー<アメリカン・ドリーム>は、4分くらい舞台上に一人で立つ。前回、リハーサルで難しさを感じていたのですが、市村(正親)さんのゲネプロを観たらが素晴らしくて。思わず舞台袖に走っていき「めちゃくちゃよかったです」とお伝えしたら、「そうだろ。俺、すげーだろ」って(笑)。続けて「お前はまだ1回もやっていない、俺は900回近くやっている。だから絶対に俺の真似をしてもダメだ。お前のエンジニアを作れ」と。その言葉で、すごく気持ちが楽になったんです。「俺も選ばれたんだから、俺のエンジニアを」と思えたことが、前回、初日から千穐楽まで務める力の源泉となりました。
駒田)<アメリカン・ドリーム>は、舞台上に装置が1つもない。あの空間を自分1人で背負う重圧はすごいものがあります。13年前に、僕も市村さんに同じようなことを言われたんです。「駒が俺の真似をしても俺以上にはならないし、逆に俺は駒の真似はできない」と、やっぱりそれで気が楽になりました。
あの時代、人を傷つけてでも、嘘をついてでも、生き延びて、のし上がってアメリカへ渡る──綺麗事だけではない男。世の中をすり抜けていくたくましさをそれぞれが表現する。三者三様のエンジニアでいいのだと思います。
桐山)お二人のお話に気持ちが楽になりつつ、まだお稽古が始まってないので、自分のエンジニアがどうなるんだろうという不安も一瞬よぎりました。自分なりのエンジニア像にしたいですし、それを楽しみにしていてもらえると嬉しいです。
【囲み取材より】
囲み取材では、新エンジニアの桐山さんにこのような質問が投げかけられました。。
──桐山さんに伺います。なぜオーディションを受けようと思われたのか、オーディションではどんなことを感じたのか教えていただけますか?桐山)これまでに共演した複数の方から「『ミス・サイゴン』の空気感が照史に合うと思う」と言われ、興味を持って観劇しました。観終わったとき、「楽しかった」「面白かった」ではなく、「なんで自分はここに立てていないんだ」と強い悔しさが湧き上がったんです。そこから事務所やチームWEST.の皆さんに相談したところ、「照史の夢を応援しよう」と背中を押していただき、オーディションを受けることができました。
オーディションには、ジャケットを持ち、金のネックレスや指輪をジャカジャカつけて、エンジニアを意識した服装で臨みました。どうだったかは思い出せないくらいのスピード感で進みましたが、一つよく覚えているのは演出の方が予定時間を超えてじっくりと見てくださったこと。
今回の製作発表でも壁にぶつかりながらでしたし、これからも自分一人では乗り越えられない壁があると思います。それでも一つずつ向き合い、成長しながら自分なりのエンジニア像を作り上げていきたいです。
今日の皆さんの歌唱は──「ミュージカル、スゲー!」ってなりました(笑)。
最初にお稽古したとき、楽譜を渡されて、歌の先生が「ああして、こうして、ここは台詞っぽく」とパパッと決めて、曲によっては1回歌って終わり。それでお二人は「OK!」って帰っていって。僕はその後、レッスンしてもらいましたが「このスピード感に乗って、この船から落ちてはいけない。もっともっとスキルを上げなければならない」と思いました。
すると駒田さんや東山さん、屋比久さんといった経験者から「稽古は焦らなくても大丈夫、ゆっくりじっくり丁寧に進むから」とフォローの言葉が。桐山さんの真摯な姿勢と先輩からの温かいエール、今年の“サイゴン”も素敵なカンパニーになりそうです!
──最後に今回の座長とお呼びしてもよいかと思います、駒田さんからひと言。駒田)みんなが座長だと思っています。カンパニーの皆が1つになり、皆でゴールしたい。前回までいらした御大からも「任せたぞ」という激励をもらっています。みんなで作っていきましょう。何回観ても、組み合わせが変わることで生まれる面白さもあります。劇場にお運びいただければ幸いです。
続投キャスト、新キャストが一丸となって作り上げるミュージカル『ミス・サイゴン』。10月の開幕は、まだ少し先のことかと思っておりましたが、8曲メドレーを浴びてしまうと、心に火がつきますね。アンサンブル40名、プリンシパル16名で届ける、2026年のミュージカル『ミス・サイゴン』の開幕が楽しみです。
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人