【大賞は『大地の子』 上演関係者一同】第51回菊田一夫演劇賞授賞式レポート



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第51回菊田一夫演劇賞授賞式が行われました。

菊田一夫氏の業績を顕彰し、大衆演劇の発展に貢献した芸術家を表彰する菊田一夫演劇賞。今年は『大地の子』の上演関係者一同が菊田一夫演劇大賞を受賞したほか、石川禅さん、佐藤隆紀さん、上白石萌音さん、松尾スズキさんが菊田一夫演劇賞を受賞。さらに岡田敬二さんが菊田一夫演劇賞特別賞に選ばれました。華やかな授賞式では、受賞者たちがそれぞれの歩みを振り返りながら、喜びや感謝、演劇への思いを語りました。


【演劇大賞『大地の子』 上演関係者一同】




<選考理由>


山崎豊子さんのロングセラー小説を初舞台化。原作に新たな光を当てたマキノノゾミさんの脚本、栗山民也さんのシャープで緻密な演出、出演者の井上芳雄さん、奈緒さん、上白石萌歌さん、山西惇さん、益岡徹さんといった方々の魂のこもった演技を得て、静かな感動と大きな余韻が広がりました。まさに「いま、見るべき」舞台となりました──選考委員、満場一致で決定した大賞です。

(なお、各受賞者の選考理由は、選考委員の萩尾瞳さんが読み上げました)



栗山民也さん(演出):
受賞の報告があったとき「上演関係者一同」ということに一番心を動かされました。私たち演劇に携わっている人たちは一人では何もできない──これは当たり前だけど、一番大事なことです。

上演が決まってから初日の幕が開くまでの約2年半。私たちをずっと支えてくれたのは、原作の山崎さんの「歴史的事実を、そのまま私が描く。それも、私の血で」という強い一文です。4巻の原作本をいつも心の、あるいは身体の中に入れて、情熱をもつ俳優たちとこの作品を作ってきました。犠牲者となった人々の魂を救うのは、今、生きている私たちの責任と意思。見ようとしない人間には、何も見えない。聞こうとしない人間には、何も聞こえない。今、この地球に起きていることに、私たちは目を閉ざしてはいけない。

本作の稽古、本番を通して、劇場について考えました。公演に携わるすべての人、そして、「劇場」に集った観客とのそのときだけの時間──これが演劇の時間。『大地の子』は、劇場に宿した大切な作品です。
この度の受賞に心から感謝しています。ありがとうございました。

ここで、主人公・陸一心役の井上芳雄さんからのメッセージを栗山さんが代読。製作発表のときと逆ですね!



井上芳雄さん(代読):
井上は現在、札幌で公演中のため、今日の授賞式には、残念ながら参加できないのですが、なぜか挨拶を井上が書き、栗山さんが代読という形になってしまいこれまで経験したことのないプレッシャーを感じています(笑)。

この作品が素晴らしい評価をいただけたことが、何よりの喜びです。しかも関わったすべての人に対しての大賞ということに喜びもひとしおです。ある日の終演後に、栗山さんが「今年の一番が出たな」とおっしゃったのですが、その言葉どおりになりましたね、栗山さん。今、栗山さんがどんな表情なのか、見られないのが返す返す残念です。



「えっ?(笑)」

井上芳雄さん(代読):
私が初めて栗山さんの演出を受けたとき、「演劇はどんな時代の物語でも、今とつながっている」と言われたことが忘れられません。今回の『大地の子』の上演もまさにそうだったと思います。残念ながら、「遠い昔の悲劇」という意味合いではなく、「この先の未来で、二度と同じ過ちを繰り返すわけにはいかない」という切実な思いを持っての公演でした。それは、私たち、スタッフ・キャストだけでなく、客席のお客様、劇場に集った多くの人が同じだったと思います。

自分の人生を自分で選ぶこともできず、声を上げる言葉すら持ち得なかった人々の声をすくい上げるのが演劇の持つ大切な役目だと信じています。それを進めていく勇気を、この度の受賞でいただきました。山崎豊子先生が紡いでくださったこの物語を、演劇としても伝え続けていけますように。

本日は本当にありがとうございました。そして、私の拙い文章を代読してくださった栗山さん、ありがとうございます。井上芳雄。


ここでさらに栗山さんが、「今日は『大地の子』を支えてくださった2人の素敵な女優さんがいらっしゃっています」と、奈緒さんと上白石萌歌さんを招き入れます。



奈緒さん:
『大地の子』の日々を生きた後、地図を見ました。今や、手のひらサイズ、スマートフォンで見られる世界ですが、地図上からは知り得ない一人ひとりの人生があることに気づかされました。その人々の人生を誰かに伝えることができる「装置」が演劇です。大切な気づきに感謝しています。そして、『大地の子』でご一緒した皆さんのことが、心から大好きです。愛しています。またこのような素晴らしい演劇に携われるように、1人の人間として、俳優として、日々、丁寧に精進してまいります。



上白石萌歌さん:
上演していたのは、今年の3月。あの大地を踏みしめていたときの血のたぎるような時間と、栗山さんのお言葉を宝物のように大切に心の中にしまっています。『大地の子』は怒りや反骨など様々なテーマを内包しますが、一番は人と人との心の話だと思いながらお芝居をしていました。
役者にできることはただ一つ、想像すること。自分が見たものや、体験したものでなくても、学び続け、想像し、お芝居で人に渡していくのが役者の使命だと思っています。これからも演劇という泥臭くて、とても美しい営みに憧れを抱き、祈りを込めて役者として想像し続けていきたいと思います。


【演劇賞 石川 禅】

『ダンス オブ ヴァンパイア』 のアブロンシウス教授役、『ジェイミー』 のヒューゴ/ロコ・シャネル役、『サムシング・ロッテン!』 のノストラダムス役、『レイディ・ベス』 のロジャー・アスカム役の演技に対して。




<選考理由>



『ダンス オブ ヴァンパイア』提供:東宝演劇部



『ジェイミー』提供:ホリプロ



『サムシング・ロッテン!』



『レイディ・ベス』提供:東宝演劇部

石川禅さんのことは、1992年の『ミス・サイゴン』オーディションのころから、私、よく覚えています。以後、日本のミュージカル界に欠かせない活躍をずっと続けていらっしゃいます。
受賞対象になった作品、たとえば『ダンス オブ ヴァンパイア』では、ほんわかした教授、『ジェイミー』では誇り高いドラァグクイーン、『レイディ・ベス』では威厳のある先生と、本当に幅の広い演技ができる稀有な俳優さんです。遅すぎたかもと思うぐらいのタイミングでの受賞でございます。



石川禅さん:
(深く息を吸って)身に余るご褒美をいただきました。本当にありがとうございます。ただ、これは決して私一人でいただいた賞ではありません。受賞対象となった作品の演出家の皆さま、関係者の皆さま、そして私を長年にわたり辛抱強く応援してくださったお客様のお力添えがあっての受賞です。心より感謝申し上げます。

実は新人時代、「君の前世は奈良時代の伐木作業員だ」と言われたことがあります。山奥で木と語りながら暮らし、人との交流はほとんどなかった人生だったそうです。
その方は続けて、「だから現世では、人とたくさん出会い、交流する仕事をすることになる。それが役者という仕事、これは天命だから頑張れ」と話してくださいました。そして、「一生役者は続けられるが、大きな賞とは縁がないかもしれない」とも。

その言葉を信じて歩んできましたので、今回の受賞の知らせには本当に驚きました。この先、役者を続けていけるのかと(笑)。今月で62歳になりますが、これから先、何冊の台本と出会い、いくつの歌を歌えるのか分かりません。それでも天命を全うするべく、これからもたくさんの人と出会い、役者という仕事を続けていきたいと思います。
本当にありがとうございました。


【演劇賞 佐藤 隆紀】

『ジキル&ハイド』 のヘンリー・ジキル/エドワード・ハイド役、『エリザベート』 のフランツ・ヨーゼフ役の演技に対して



<選考理由>



『ジキル&ハイド』提供:東宝演劇部



『エリザベート』提供:東宝演劇部

佐藤隆紀さんは、ミュージカルデビュー直後から幾度も演じてきたフランツ・ヨーゼフ役を自家薬籠中のものとし、伸びやかな歌声と気品ある佇まいを見せました。一方、今シーズン初めて挑んだ『ジキル&ハイド』では、善と悪という対極的な人格を鮮やかに演じ分け新たな魅力を発揮いたしました。これからの活躍がますます楽しみな方です。




佐藤隆紀さん:
ミュージカル界のシュガーくんこと佐藤隆紀です。
2015年にミュージカルデビューした頃は、「歌は歌えるけれど芝居がね」とSNSなどでも言われていました(笑)。そんな芝居の「し」の字も分からない僕でしたが、小池修一郎先生をはじめ、多くの方に支えていただきながら、『エリザベート』という作品に11年間育てていただきました。

また、『ジキル&ハイド』は、いつか演じてみたいと願っていた作品です。山田和也先生をはじめ、多くの方からいただいたアドバイスと向き合う中で、少しずつ自信を持って舞台に立てるようになりました。受賞の知らせも、本作の公演中にいただきました。報告すると先生方が自分のことのように喜んでくださったことが本当にうれしく、改めてたくさんの方に育てていただいたのだと感じています。
この賞を励みに、初心を忘れず、余計なプライドは捨てて、お客様に感動を届けるために、これからも自分自身と向き合っていきたいと思います。

私は、福島県の喜多方出身、ラーメン屋の息子でございます。このスピーチを素敵な言葉で締める術を持ち合わせておりませんので、最後はエンターテインメントを愛した菊田一夫先生の思いを胸に、感謝の気持ちを歌声に乗せてお届けし、終わろうと思います。
皆様、本日はまことに、♪ありがとうございました~~♪


【演劇賞 上白石 萌音】

『ダディ・ロング・レッグズ』 のジルーシャ・アボット役、『千と千尋の神隠し』 の千尋役の演技に対して



<選考理由>



『ダディ・ロング・レッグズ』提供:東宝演劇部



『千と千尋の神隠し』提供:東宝演劇部

上白石萌音さんの演技と歌は、本当にいつも心がこもっていて引き込まれます。『ダディ・ロング・レッグズ』では、主人公の成長を伸びやかに表情豊かに見せてくださいました。そして、持ち前の美声で、素敵な歌も披露。『千と千尋の~』千尋役は、本当に愛らしい少女。その少女がどんどん成長していく様も自然に見せてくれました。すばらしい女優さんです。



上白石萌音さん:
この度は歴史ある賞とお言葉を賜り、身に余る思いです。『千と千尋の神隠し』、そして『ダディ・ロング・レッグズ』に携わったすべての方々、お客様とのご縁が数珠つなぎのようにつながって今日があると思っています。心から感謝申し上げます。

私は幼い頃から演劇が大好きで、演劇をやるためにこの世界に入りました。その中でも『ダディ・ロング・レッグズ』のジルーシャは、いつか演じてみたいと憧れ続けてきた役です。高校生の頃から再演のたびに劇場に通い、DVDが擦り切れるほど観ていました。オリジナルキャストの井上芳雄さん、坂本真綾さんのお稽古を間近で見て学び、その後、自分がジルーシャとして稽古場に立てたことは、かけがえのない宝物です。

『千と千尋の神隠し』では海外公演にも参加しました。文化の違いによる反応の違いに驚く一方で、国境を越えても変わらない人の普遍性に触れることができました。その経験も大切な財産になっています。



上白石萌音さん:
両作品を演出されたジョン・ケアードさんは、「Playには遊ぶという意味もある。舞台ではリラックスして、ワクワクしていなさい」とよくおっしゃいます。私も演劇への憧れを大切にしながら、これからもワクワクしながら精進してまいります。
この度は本当にありがとうございました。
発声練習が済んでおりませんので、歌わずに終わりたいと思います(笑)。


【演劇賞 松尾 スズキ】

『クワイエットルームにようこそ The Musical』 の作と演出、『アンサンブルデイズ―彼らにも名前はある―』 の作と音楽の成果に対して



<選考理由>



『クワイエットルームにようこそ The Musical』(2026) 
提供:Bunkamura 撮影:細野晋司



『アンサンブルデイズ―彼らにも名前はある―』(2025、2026) 
提供:Bunkamura 撮影:細野晋司

松尾スズキさんの『クワイエットルームにようこそ 』は、ご自身の小説をもとにしたミュージカル。小説は芥川賞の候補になり、その後の映画版でも監督を務められた作品。登場人物それぞれの再生を描くドラマのミュージカル版は、宮川彬良さんの楽曲の楽しさも手伝って非常にテンポ感がある、温かさあふれる素敵なコメディになりました。『アンサンブルデイズ』は、旅立つ若者たちへのエールがストレートに伝わってくる、胸にしみる作品でございます。どちらも、松尾スズキさんの愛情が滲む舞台となりました。




松尾スズキさん:
(喜びをかみしめるように)嬉しいです。
松尾スズキです。こういう由緒ある賞にはあまりふさわしくない、ふざけた名前で申し訳ないんですが(笑)、本当に嬉しいです。
30年以上芝居をやってきた、まあまあ名前が知られた演出家だと思うんですけど。本当に賞に縁がなくて。今振り返ると、ちょっとふざけすぎていたのかもしれませんね(笑)。

小劇場からスタートし、商業演劇に活動の場を広げてからも、ナンセンスやブラックユーモアといった小劇場的な感覚にとらわれておりました。それで商業演劇をねじ伏せてやろうって。ただ、今回は、思い切ってエンターテインメントに舵を切ろうと考えました。
やっぱり1万2千円のチケット代でふざけられない(笑)。高いんです。4千円のころは、思い切りふざけられたんですけど。

『クワイエットルームにようこそ』では宮川彬良さんに音楽をお願いし、ミュージカル界で活躍する俳優の皆さんに出演していただきました。テレビ的な知名度に頼らず、俳優の力を評価していただけたことが何より嬉しいです。

また、『アンサンブルデイズ』は養成所のために書き下ろした作品でした。そうした作品で賞をとるのは前代未聞なのでは。それを評価していただき、さらに音楽も対象だということです。僕は鼻歌をiPhoneに吹き込んで作曲家の方に渡し編曲していただいたということで、なんだか申し訳ないというか(笑)。
今日は出演してくれたあの女優陣が3人来ています。最後の歌、歌って終わろう!

と、ここで会場にお祝いに駆け付けていた咲妃みゆさん、昆夏美さん、笠松はなさんも巻き込み、『ニコチンパラダイス』の歌唱がスタート!
♪薬じゃ治らない人生の恐怖 乗り切る為大切なもの それはきっとエンターテイメント 全力の暇つぶし エンターテイメント♪

「エンターテインメント万歳!」の言葉で会場を沸かせました。


【特別賞 岡田 敬二】

永年のロマンチック・レビューシリーズの功績に対して。



<選考理由>



1990年月組公演『ル・ポァゾン 愛の媚薬』©宝塚歌劇



1995年花組公演『ダンディズム!』©宝塚歌劇



2025年花組公演『愛、Love Revue!』©宝塚歌劇

岡田さんはロマンチック・レビューを40年ぐらいに亘って生み出し続けてこられました。岡田さんの作品は、選曲から振付、衣裳まで、とてもエレガンスにあふれた宝塚ならではの魅力にあふれた王道レビューです。永年のご活躍により、今回の受賞となります。




岡田敬二さん:
とっても嬉しいです。私は1963年に宝塚歌代に入団し、同年6月、菊田一夫先生の『霧深きエルベのほとり』という作品の見習い助手として初めて先生とご一緒しました。その5年後、演出家となり、あこがれの東京宝塚劇場で初めて上演した『青春のプレリュード』を、当時東宝の専務理事だった菊田先生が「とっても新鮮な作品だ」と褒めてくださったということを聞いております。それが私と菊田先生のご縁です。

私は宝塚歌劇団で、主にレビュー作品を70本ほど作っております。宝塚はもともとパリやニューヨークのレビューを模範に作られました。しかし私としては、宝塚ならではの、日本オリジナルのレビュー、日本人の心中(しんちゅう)を奏でるような作品を作りたいという思いがあります。そうした思いから、近年は「ロマンチック・レビュー」というサブタイトルを掲げ、23作品を作ってまいりました。

ただ、レビュー作家というのはミュージカルドラマの演出家より評価がしにくいようです。選考委員の先生方、すみませんね(笑)。要素も多岐にわたっているので、完成度が高い作品というのは、なかなかできない。そのわけで私も長く一緒に仕事をした『エリザベート』の演出家が、「先生、菊田演劇賞を取るならドラマをやらないと」と言いたいことを言って(笑)。僕は、菊田先生には申し訳ないけれど縁がないのかなと思っていましたので、今回、本当に素晴らしい賞をいただいたことがとても嬉しいです。というのは、私に続くレビュー作家たちにも、新しい道が開けたのではないかと思うからです。
先生方、ありがとうございます。今後も若手の演出家をよろしくお願いいたします。




受賞者の皆さんのコメントを聞いていると、対象となった作品や役柄の素晴らしさはもちろん、これまで積み重ねてきた歩みへの敬意と、これからへの期待が込められた受賞だったように感じます。栗山民也さんの「今、この地球に起きていることに、私たちは目を閉ざしてはいけない」という言葉、そして「演劇の時間」という言葉の重み。岡田敬二さんが、後に続くレビュー作家たちへのエールとして受賞を喜ばれた姿も心に残りました。それぞれの個性あふれるコメントやパフォーマンスから、菊田一夫氏の名を冠するこの賞が大切にしてきたものを改めて感じた授賞式でした。皆様、おめでとうございます!


また、授賞式終了後、大賞『大地の子』より奈緒さん、上白石萌歌さん、演劇賞の上白石萌音さんの囲み取材が行われました。


【奈緒さん、上白石萌歌さん囲み取材より】



『大地の子』© 2026 MEIJIZA/TOHO CO., LTD.



『大地の子』© 2026 MEIJIZA/TOHO CO., LTD.


──本作の役作りで苦労されたところ、手ごたえを感じたことは。

奈緒さん)
私は初めてストーリーテラーという役をいただきました。稽古場初日、第一声を自分が発するという瞬間に、とても緊張したことを今でも鮮明に覚えています。また、物語のなかでは井上芳雄さんと兄と妹として巡り合うという設定。井上さんとお芝居をできることが本当に心強く、芳雄さんがいるから大丈夫だと思いお芝居に飛び込んだ日々でした。この場に来られたことが、すごく幸せです。

萌歌さん)
私は、巡回医療隊の看護師として一心(イーシン)に出会い命や心を救う役どころでした。あらすじは決まっているはずなのに、毎日、「本当に一心を救えるのだろうか」と胸がバクバクしてしまう。大きな使命を担うことへの緊張感をもちながら演じました。それはみんな一緒だと思います。

芳雄さんは本当にタフな方で、運命に翻弄される大変な役を務めながら、いつお会いしても健やか。自分(の役)が手を差し伸べるはずなのに、反対に自分が芳雄さんから手を差し伸べられるような感覚でした。そうやって、芳雄さんがみんなの手を取って、引っ張って駆け抜けていくような日々でした。

──栗山さんの演出で印象に残っていることは。

奈緒さん)
本番を前にした私たちに栗山さんがおっしゃった「この作品は祈りだよ」、という言葉が私たちの大きな目標の一つになりました。私たちを導いてくださった大きなひと言です。

萌歌さん)
お稽古の初日におっしゃっていた言葉、「この作品は悲劇かもしれないけど、その悲劇を悲劇としてやってはいけない」ということ。その言葉を受け、悲しみの中にいた人たちの、凛と立つ強さ──その人たちが見ていたもの、感じていたことを、必死に想像しながらひたむきに取り組んでいこうと、初日に思ったことをすごく覚えています。


【上白石萌音さん囲み取材より】

──今回の『ダディ・ロング・レッグズ』は公演中大変なことも多かったと思います。振り返って、いかがですか。

萌音さん)
『ダディ・ロング・レッグズ』は一番好きなミュージカル。公演中も、自分が言った台詞に励まされる瞬間がありました。緊急事態での、芳雄さんの緻密な踏ん張り方や、相方として坂本真綾さんがドシッと構えて待つ姿勢、土壇場でのジョン・ケアードさんの判断の速さ、そして急遽代役を務められた佐野眞介さんの凄まじさ──多くの方のすごさを目の当たりにしました。「幕を上げるんだ、お客様に大好きなこの作品を届けるんだ!」という思いで、全員がつながった瞬間でした。

助けられた台詞は、たとえば「幸せの秘密」という歌。「幸せの秘密は、まずは風に逆らわないで身を任せること、恐れないこと、悔やまないこと。そして焦らずにじっと待つこと」、そうジルーシャが歌います。自分で歌いながら、本当にそれがブーメランのように舞台上に帰ってきて励まされるという経験をしました。


菊田一夫演劇賞選考委員会
委員長 矢部 勝
委員 萩尾 瞳
山口 宏子
小玉 祥子
林 尚之
小山内 伸
一般社団法人映画演劇文化協会


おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人

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