成河 さん、ニシサトシさん、那須佐代子さんの鼎談に続いては、『ハムレット』稽古場レポートをお届けします。
【ウォーミングアップで整う】
鼎談取材に続いて、成河さん、永井茉梨奈さん、林田航平さん、矢野昌幸さん、古川 路さん、5人の俳優と演出のニシサトシさんのお稽古も見学させてもらいました。
まずはウォーミングアップから! これがなんとも奥深い!
最初に、キャスト、スタッフ、そして取材で訪れていたおけぴスタッフも輪に招き入れられ、そこにいる全員が輪になって挨拶を交わしてスタート。すると次の瞬間、みんながその場でぴょんぴょんと跳び始めた。
(おけぴもぎこちなく跳んでみましたが、「ここからは大丈夫ですよ」と優しく告げられ輪を離れました。ほっ。)続いて、キャストが歩き始める。ある規則性を持ちながらメンバーを変えて空間を動き続ける。誰かが指示を出すわけでもなく、事前の打ち合わせがあるわけでもない。それぞれが結構なスピードで歩きながら周囲の気配を感じ取り、ポジション入れ替えながら、形を保ち続ける。
時折「あ、こうすればいいんだ」と小声で言葉を交わしながらも、基本は互いを見て、感じて、動く。その積み重ねの中から自然とコミュニケーションが生まれ、ふと全体が調和する瞬間が訪れる。
その予定調和ではない調和──その感覚がなんとも気持ちいい。
続いて始まったのは、名前を呼びながらの鬼ごっこ、そして半円を描くように立ち手拍子を打っていると、照明がゆっくり落ちていく。すると今度は、一人ひとりが好きな場所へ移動し、一枚の紙に向かって何かを書き始めた。矢野さんのペンは驚くほど止まらない。
その後は瞑想。先ほどまで集団を作っていた人々が、今度は静かに自分自身と向き合う。稽古場には静かな時間が訪れました。
次に合図があると、成河さんがギターを手に取り、音を奏でる。みんなで輪になって歌う。動から静、そして今度はやわらかなハーモニーへ!
身体を動かし、人とつながり、自分と向き合い、そして声を重ねる。それを見守るニシさん。
約45分にわたるウォーミングアップは、単なる準備運動という言葉では収まりきらない。観ているだけでも、なにかとっても整った気分! こうして心も身体もほぐれ、頭も柔らかくなったところで、いよいよ稽古が始まる。
【想像を超える創作】

ニシサトシさん(演出)
ウォーミングアップを終えると、ホワイトボードの前のテーブルにキャストが集まります。そこに書かれていたのは、シェイクスピアの英語原文による独白。キャスト一人ひとりが、その独白を自分の言葉に置き換えて発してきます。そしてニシさんが、その言葉たちをホワイトボードへ次々と書き込んでいく。「この言葉いいね」「そのリズム面白いね」という対話を交えながら、みんなで言葉を探していきます。──「台本がない」とは、こういうことか!
直訳から離れ、「つまりはそういうことが言いたいんだよね」と別の表現へ進むこともあれば、あえて直訳に戻ることもあります。時には単語の横に、発語はしないけれど込めておきたいニュアンスがカッコ書きで書き留められることも。
採用されなかった言葉も消えていくわけではない。
まるで絵画の下地のように重なり合い、最終的な言葉を支えているように見えます。塗り重ねられ、多層的なイメージを持つ言葉となる──「厚塗り」とはこのことか。
そして興味深かったのは、それぞれの俳優が選ぶ言葉に、その人らしさがにじむこと。成河さんの言葉は、成河さんが話した時に不思議なほど自然に聞こえ、それはほかの人についても同様。
誰か一人の解釈ではなく、みんなの感覚や経験が持ち寄られながら、『ハムレット』という作品が立ち上がっていく。まさに「私たちのハムレット」をつくる作業。
続いては、完成途中の独白を、今度は実際に声に出してみる。こう聞くとよく目にする光景だと思うのですが、驚きはまだ続くのです。

永井茉梨奈さん、成河さん

矢野昌幸さん、林田航平さん

林田航平さん、古川路さん、成河さん
独白──ハムレットの独白ならば、ハムレット役の俳優が語るもの。ところが、この稽古場では違います。
一つの独白を、言葉を受け渡しながら、あるいは重ねながら二人で語る。三人で語る。時には五人で語る。
入れ替わり立ち替わり発せられる独白は、これまで抱いていた『ハムレット』のイメージをふわりと飛び越えていきます。「オーソドックスではない」と聞いてはいましたが、それは奇をてらうという意味ではなく、既成概念を一度解体し、新たな形を探しているような作業です。そして、見ていてとても楽しい!
これは稽古のほんの一部ですが、それでも十分すぎるほど刺激的でした。果たして、この言葉たちがどのように積み重なり、どんな『ハムレット』が立ち上がるのか。今はただ、劇場でその答えに出会える日が楽しみでなりません!

稽古場には、関連書籍が!
※当日券情報は
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おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人