昨年11-12月「SPAC秋のシーズン 2025-2026」にて初演された上田久美子演出の『ハムレット』が、6-7月静岡芸術劇場にて再演!原作の言葉や物語が持つ力強さはそのままに、人間中心主義への痛烈なアンチテーゼを可視化する斬新な演出として話題を集めた『ハムレット』公演をご紹介いたします。
シェイクスピア戯曲の壮大なコスモスに立ち返る──
活発な議論を呼んだ脱人間中心主義的アプローチ王である父を叔父に殺され、母と王位も奪われ猜疑心に囚われたデンマークの王子・ハムレットの復讐劇として知られ、400年以上に渡って世界各地で上演されているシェイクスピアの不朽の名作『ハムレット』。
SPAC初演出で 『ハムレット』を手掛けるにあたり、上田はシェイクスピア戯曲が、人間世界のドラマだけではなく、本来は自然も含めた大きな宇宙(コスモス)を描いていることに着目し、物語をハムレットの亡き恋人・オフィーリアや墓掘りなど物語の周縁に追いやられてきた存在の視点から大胆に描き直しました。
悲劇の中で唯一生き残ったホレイシオが語ろうとする「正当な」ハムレットの物語を、死んでバラバラに分解された“オフィーリアたち”が乗っ取り、語り直す劇中劇の構造を取ることで、一見難解に感じるコンセプトを軽やかに観客へ提示します。振付家でダンサーの川村美紀子のムーブメント指導のもと、俳優が『ハムレット』の登場人物と、 “オフィーリアたち”=人間以外の生命体を行き来して演じることで、<人間だけではない>世界が舞台上に広がります。この上田の試みは、数多くの『ハムレット』を観てきた観客の中でも大きな議論を巻き起こしました。
観劇経験を問わず楽しめる巧妙な仕掛け このような挑戦をする一方で、大衆性と芸術性の架け橋となり「初めて観る人も楽しめる」ことにこだわる上田は、SPACが長年実施する中高生鑑賞事業を念頭に、 『ハムレット』を知らない人、演劇を初めて観る人でも楽しめる作品に創り上げました。ホレイシオが冒頭で 『ハムレット』の一般的なあらすじを結末まで語ることで、とかく難しいと思われがちな古典戯曲特有の心理的ハードルを下げ、またセリフには上田自身によるくだけた現代語やラップを織り交ぜるなど、実験的なアプローチと間口の広さを両立させる工夫が随所に施されています。舞台空間を埋め尽くす巨大なビニールの舞台美術はシンプルな素材ながらも様々に姿を変え、その美しく効果的な使用にも多くの観客が息をのみました。
あらすじ
デンマークの宮殿で起きた復讐の悲劇の中、生き残ったホレイシオは、親友ハムレットの「俺のことを語り伝えてくれ」という遺言を遂たすべく今日も人々の前に立つ。しかし、死んだはずのオフィーリアを自称するモノたち(!?)が乱入し、勝手にハムレットを語り始める。「正当な語り部」を自負するホレイシオは、物語を正そうと試みるが…
この記事は公演主催者の情報提供によりおけぴネットが作成しました