ミュージカル『民王』稽古場取材会レポート~会見には音楽チームも登場~

ミュージカル『民王』@シアタークリエ
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池井戸潤さんの人気小説を初めて舞台化する、ミュージカル『民王』。9月の開幕を目前に控えた稽古場で、会見と劇中ナンバーの歌唱披露が行われました。



会見には、武藤翔役の有澤樟太郎さん、武藤泰山役の別所哲也さんをはじめとするキャスト陣に加え、音楽・歌詞を手がける角野隼斗さん、共同音楽の浪岡真太郎さん(Penthouse)、歌詞を手がける大原拓真さん(Penthouse)も初登場。稽古を重ねる中で見えてきた作品の手応えや、父と息子の“入れ替わり”をミュージカルで描く面白さ、そして多彩な楽曲が生まれるまでを語ってくださいました。

キャストとクリエイターが一丸となって生み出す、日本発の新作オリジナルミュージカル誕生へのワクワクが高まる稽古場取材会。まずは、この日披露された3つの劇中シーンからご紹介します!


【個性豊かな楽曲で『民王』の世界が立ち上がる!】

この日は、趣の異なる3つの劇中シーンが披露されました。

最初に披露されたのは、「就活の歌」から「いまは何者でもないけれど」へと続くシーン。




「就活の歌」では、武藤翔が就職活動に奔走する姿が描かれます。扉をノックする音から始まるロックなリズムに乗せて、個性を求めるようでいて、実は画一的な振る舞いを求められる就職活動の不思議さを、無機質でコミカルな振付とともに表現。不採用が続く翔の焦りや苛立ちを、韻を踏んだ力強いナンバーで畳みかけます。政治家の父の存在が知られることで、会社側の態度が変わる──そこで見せる複雑な心境も。

思うようにいかず落ち込む翔。そこへ現れるのが、林瑠奈さん演じる大学の友人・南真衣。学生起業家として活躍する聡明な真衣ですが、翔にとってはそれだけではない特別な存在。翔を真衣が優しく励ますお芝居から、空気は一転。「いまは何者でもないけれど」へとつながります。





真衣への恋心を歌う、ピュアなラブソング。有澤さんの真っ直ぐな歌声と、思いを全身で伝えるようなパフォーマンスが目を引きます。そして林さん演じる真衣のキラキラとした聡明な存在感も印象的。二人のお芝居から歌へと感情が自然につながっていくのも、ミュージカルならではの心地よさです。

「親の七光り」ではなく、いつか一人の自分として輝きたい――。恋心を歌う中にも、まだ“何者でもない”翔が抱える葛藤や、これから何者かになろうとする青年の思いが見え隠れします。

続いては、そのタイトルもユニークな「歯医者のテーマ」!



虫歯に苦しむ翔と父・泰山が、偶然同じ歯科医院に駆け込む場面です。顔を合わせればバチバチの親子が並んで治療を受けるというだけでも可笑しいのですが、さらに楽しいのが音と言葉の遊び。「お前が/Oh my God」の音の重なりや、「支配者」と「歯医者」など、韻を踏んだ言葉が次々と飛び出します。

歌詞もシチュエーションもとことんコミカルなのに、コード進行やバンド演奏はなんともおしゃれ。その絶妙な温度感が、笑いをさらに誘います。




そして歯科医院には、上川一哉さん演じる公安の刑事・新田の姿も。騒がしい親子のそばに、しれっと居合わせる新田。その見事なまでの無表情にもぜひご注目を(笑)。


3曲目は「エリカの謳歌」。豊原江理佳さん演じる村野エリカが、中身が泰山と入れ替わった翔を連れ出し、六本木の夜を華やかに謳歌するナンバーです。



ここで現れた翔は、先ほどまで「まだ何者でもない」とピュアに歌っていた青年とはまるで違う、なんともイケイケな佇まい! そんな翔と、自信満々に周囲を惹きつけていくエリカが、互いに挑発し合うように歌い踊ります。





面白さと格好良さが共存する、ショーアップされた華やかなナンバー。豊原さんの説得力ある歌声に、有澤さんもがっつりと渡り合い、二人の歌声がぶつかり合うほどに歌唱の熱も上がっていきます。

そして、なぜ翔がこれほど変わっているのか――。本作の大きな鍵となる“入れ替わり”が、歌や芝居、身体表現によってどんな面白さを生み出すのか。それを存分に感じさせるシーンとなりました。


3曲を通して印象的だったのは、言葉と音楽の結びつき。随所に韻を踏んだ言葉がちりばめられていますが、言葉遊びが先に立つことなく、ごく自然に音楽の流れに溶け込んでいます。リズムに弾みをつけ、気持ちを高揚させながら、それぞれの場面で描きたいことをくっきりと印象づけていく。そして、その言葉と音楽を生きた芝居として届けるキャストの力もあってこそ。日本語で生まれたオリジナルミュージカルならではの心地よさも感じられました。


【“入れ替わり”を二人で創る、有澤樟太郎さん&別所哲也さん】

続く会見では、開幕を目前に控えた稽古の手応えや、それぞれの役作りについて語られました。



新作オリジナルミュージカルということで、苦労も覚悟していたという有澤さん。ところが稽古は「びっくりするくらい順調です!」。楽曲、脚本の面白さはもちろん、熱量とスキルを兼ね備えたキャスト陣、そして常にポジティブな演出の永井誠さんのエネルギーにも助けられながら、「毎日いい稽古をさせてもらっています」と充実した様子を見せます。

とはいえ、やはり一筋縄ではいかないのが、本作の肝となる“入れ替わり”。

「ここ2週間、泰山しかやっていないということもあって、そこから翔に戻ると『どうやっていたかな』って(笑)。そんなときは別所さんからヒントをいただいています。これはほかの作品では味わえない体験です」と、本作ならではの稽古や役作りを楽しんでいる様子が、その表情からも伝わります。



別所さんもまた、「まず現場が明るい。本当に笑いが絶えません。そして稽古もあっという間に一幕、二幕と進んでいます」と稽古場の様子を紹介。

そして別所さんも、若き翔を演じるうえで意識しているのは、「ギラギラ系ではない“キラキラ”をどう出すか」。有澤さんと互いの役から受け取るものを生かしながら、二人で“入れ替わり”を創り上げているとのこと。

また、楽曲の魅力についても、歌唱披露された「歯医者のテーマ」の「お前が/Oh my God」の音の重なりを挙げ、「心憎いことを音楽チームが考えてくださって」と、その巧みな仕掛けに感嘆。さらに「クラシカルな要素、ジャジーなもの、J-POP……リズムも世界観も、音楽チームの皆さんが今持っているすべてを、この作品の中に注ぎ込んでくださったんだなと、熱い思いが伝わってくる楽曲ばかりです。だからこそ、音楽の素晴らしさを、演技に乗せて皆さんに届けたい」と力を込めます。



別所さんの「心憎いことを…」のコメントに



では、そんな多彩な楽曲はどのように生まれたのか。この日初めて会見に登場した音楽チームの皆さんからも、創作の舞台裏が明かされました。


【初登場の音楽チームが語る、『民王』の音楽】

この日の会見には、音楽を手がける角野隼斗さん、共同音楽の浪岡真太郎さん、歌詞を手がける大原拓真さんも初登場。3人は、Penthouseでもともに活動する間柄です。



本作ならではの大きな仕掛けとなるのが、泰山と翔の“入れ替わり”。角野さんは「それをどうやったら音楽で表現できるか、いろいろ考えました」と振り返ります。また、楽曲制作時に誰が歌うのかが決まった状態で作曲できたことはプラスに働き、「皆さんが歌われる姿を想像しながら作ることができたのはよかった」と明かしました。

そして、歌唱披露でも感じられた楽曲の多彩さについては、制作チームから「いろんなジャンルが混ざって大丈夫」と言われたことをポジティブに捉えたそう。「この方はこのジャンルかな、と。全体でどんな雰囲気というのはあまりないかもしれない。むしろ一人ひとり、キャラクターに合う曲になっている」と語ります。



本作で初めてミュージカル楽曲の作曲に挑んだ浪岡さんは、場面に合わせて曲を書く経験もこれまであまりなかったことから、当初は不安もあったといいます。ところが、「書き始めたら全然書けちゃって(笑)」と笑顔。今回の経験が、今後の自身の創作にも生きてくるのではないかと、新たな手応えを感じている様子です。



普段から浪岡さんの楽曲に歌詞をつけることは多いという大原さんですが、今回は物語の中で伝えるべきことがある中で、メロディーに日本語を自然にはめていくという、ミュージカルならではの難しさも。「どうパズルしていくかというところは、かなり苦労した」と振り返ります。時には「『痛いです』みたいな、本当にこんなことを歌ってもらっていいのかな、という言葉」をはめ込むこともあったそう。

そんな作り手たちの想像をさらに広げたのが、俳優たちの力でした。

この日、実際に3つのシーンを目の当たりにした浪岡さんは、「この大人数でパッと熱を入れてやってもらえると、こんなに曲が化けるのか」と感動。大原さんも「俳優の皆さんのエネルギーが乗っかると、こんなふうに化けるんだ」と、自分たちが作ったものをさらに押し上げてもらっている感覚があったと語ります。



そして角野さんも、わずか3つのシーンながら「感情が大忙し」と笑顔。「感動あり、笑いあり、驚きあり。全部見たらどうなっちゃうんだろう。泣きながら大笑いしているかもしれないです」と、初演への期待を膨らませていました。


【個性豊かなキャストが集結! 笑いの絶えない稽古場】

ほかのキャストの皆さんからも、それぞれの視点で稽古の手応えや役作りが語られました。



村野エリカ役の豊原さんにとって、今回の役作りは新たな挑戦。「失敗をしながら、違ったと思ったら次はこういうことをやってみよう、変なプレッシャーなく作ることができている」と、自由に試行錯誤できる稽古場に喜びを感じていると打ち明けます。役をつかむため、福田転球さんの声や仕草、癖を観察したりと、二人でコミュニケーションを重ねながら役作りを進めていることも明かしました。



南真衣役の林さんは、本作が初舞台にして初ミュージカル。不安を抱えながら稽古に参加したものの、今では周囲に助けられながら前向きに役と向き合えているといいます。真衣は政治家サイドとは異なる場所から、泰山や翔たちを見つめる人物。その特殊な立ち位置を意識しながら、脚本から読み取れる人物像を膨らませているそうです。

そんな林さんが、この現場で初めて知ったこととして挙げたのは、意外にも“年を重ねることの楽しさ”。共演者たちの感性の鋭さや生き生きとした姿に触れ、「年を重ねることが楽しみになりました」と語りました。



泰山の秘書・貝原茂平役の山崎大輝さんは、次々と巻き起こる出来事に「振り回され続ける役」。周囲の登場人物が稽古を重ねるほどに個性を増していく中、なるべく冷静でいることを心がけているそうで、「世界観のリアリティを伝える役割というか、お客さんとの橋渡しができたら」と、自身の立ち位置を語りました。



公安の刑事・新田理役の上川さんから飛び出したのは、稽古場の“笑い”についての告白。「稽古では、みんなが(笑ってはいけないところで)笑ってしまっている(笑)」。特に別所さんが、笑いをこらえきれず思わず後ろを向いてしまうこともあるそうで、「そろそろ“後ろ向くな命令”が出てほしい」と続け笑いを誘います。初日に向けては、「全員でぐっとこらえながら作品を深めていきたい」と意気込みました。



蔵本志郎役の福田転球さんは、やはり豊原さんと互いに協力しながら役作りを進めていることに触れます。そして「ぜひ劇場に足を運んでいただき、芝居を観に来ていただけたら。これが一番の幸せでございます。劇場でお待ちしています」と、まるで会見を締めるかのような見事なご挨拶! 周囲からも思わず「締めた!」の声が上がります(笑)。

一方、日本発のオリジナルミュージカルならではの魅力を語ったのが、泰山の妻・武藤綾役の一路真輝さんです。



海外ミュージカルでは、外国語の歌詞を日本語に訳してメロディーにはめていく難しさがありますが、今回は日本語の歌詞とメロディーがともに生み出されるオリジナル作品。「こんなにも一つの曲の中で、日本語の歌詞とメロディーが歌いやすいという経験は今回が初めて」と、その心地よさを語ります。

さらに「ここにいるみんな、それぞれの個性が、曲でも台詞でも生きています。誰一人欠けても成り立たないほど、カンパニー全員で力を合わせて作っている作品です」と胸を張ります!




そして城山和彦役の竹中直人さんは、「皆さん若い世代の方ばかりですから。ついていくのが大変。圧倒的高齢者ですからね(笑)」と、のっけから竹中さん節全開。「一人だけ取り残されたような気持ちになりながら」とぼやきつつも、アンサンブルキャストのピュアさや優しさに支えられていると話します。

池井戸潤さんから稽古に入る前に「あなたにはたくさん歌ってもらう」と聞き、かなり心配していたという竹中さん。実際、歌も難しく、「少しテンポを落として、と高齢者ならではのわがままを言わせてもらったり(笑)」と明かし、会場を沸かせます。




そんな竹中さんに、有澤さんが「竹中さんにしか歌えない、経験値や人間力がないと歌えない曲だと思います」と太鼓判を押します。続けて、フォトセッション中にも別所さんとのデュエット曲を口ずさんでいたことを明かし、竹中さんの言葉とは裏腹に(!?)、着々と準備が進んでいる様子。そして竹中さんも、「難しすぎて、素敵な歌なんですよ」と独特な表現で楽曲への思いをアピール。

そんな楽曲については、有澤さんも「歌詞もメロディーも最速で頭に入った」とコメント。覚えやすく、歌いやすく、感情も乗せやすかったといい、「ノッキングがあまり起こらなかった。新しい感覚です」と表現しました。すると、それまでの“難しい”という話とのギャップにツッコミが入り、有澤さんはすかさず「曲によって違うと思います!(笑)」。


【いよいよ、新作オリジナルミュージカルが誕生へ】



最後に角野さんは、初めてミュージカルの音楽を手がけた本作について、「素晴らしい作品、素晴らしいキャストの皆さんと一緒に、音楽として関われたことを大変うれしく、光栄に思います」と改めて喜びを語り、「僕自身、いち聴衆として初演を本当に、本当に楽しみにしています」と期待を寄せました。

そして有澤さんは、もともと池井戸潤さんの原作もPenthouseの音楽も好きだったそう。製作発表では本作について「勝ちを確信した」と語っただけに、「言ってしまった分、稽古も頑張らないと!」と取り組んできたといいます。

また、池井戸作品の魅力について、「働く方がカッコよく描かれるところ」と有澤さん。『民王』でも、自身が出演していない場面を見ながら、政治家も市民も、それぞれが懸命に生きる姿に心を動かされているといいます。

そして、この日の歌唱披露や会見を経て、「ついに、この新作オリジナルミュージカルが生まれるんだ!という気持ちになりました。初日の感動はすごいんだろうな」と声を弾ませ、「残された稽古時間を大事に、初日に向かっていきたい」と力を込めました。


キャストとクリエイターが一丸となって生み出すミュージカル『民王』。父と息子の“入れ替わり”という奇想天外な物語が、歌と音楽、そして俳優たちの身体を通してどんな舞台へと姿を変えるのか。いよいよ、その誕生の時が近づいています。

ミュージカル『民王』は、9月6日(日)より東京・シアタークリエにて開幕。その後、大阪、福岡でも上演されます。


ミュージカル『民王』@シアタークリエ
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おけぴ編集メモ
原稿を書きながらPenthouseを聴き始め──軽やかで洒落たサウンドに、歌唱披露で感じた『民王』の音楽の心地よさを改めて思い出しています。そんな寄り道も含めて、オリジナルミュージカル創作の温度をお届けできていたらうれしいです。

【公演情報】
ミュージカル『民王』
2026年9月6日(日)~10月6日(火)@東京・シアタークリエ
2026年10月11日(日)~13日(火)@大阪・梅田芸術劇場 シアタードラマシティ
2026年10月17日(土)~19日(月)@福岡・博多座

スタッフ
原作: 池井戸潤「民王」(文春文庫/角川文庫)
脚本 ツバキミチオ
音楽 角野隼斗
演出 永井 誠

共同音楽 浪岡真太郎(Penthouse)
歌詞 大原拓真(Penthouse)  角野隼斗
共同脚本 笠浦静花

出演
武藤 翔 有澤樟太郎 
武藤泰山 別所哲也
村野エリカ 豊原江理佳
南 真衣 林瑠奈(乃木坂46)
貝原茂平 山崎大輝
新田 理 上川一哉
蔵本 志郎 福田転球
武藤綾 一路真輝
城山和彦 竹中直人

ICHI 甲斐祐次 加賀谷奏音
川島大典 咲良 丹治聡美
趙 京來 永松 樹 原田千弘
松村桜李* 安福 毅
(五十音順)

*オンステージ・スウィング
アンサンブルとして出演を予定していた石川 剛は、体調不良のため休演させていただきます。代わって、甲斐祐次が出演いたします。

主催: 東宝/テレビ朝日
製作: 東宝

ストーリー
就任したばかりの現職総理大臣の武藤泰山と、武藤のドラ息子で大学生の翔の心と身体が、ある日突然入れ替わってしまい…!? 原因もわからないまま、やむなく泰山の変わり身となって国会に出ることになった翔。遊んでばかりの日々を送ってきた翔には、国会でおこなわれる討論や質疑応答など、到底理解できず、さらには文書に書かれた漢字すら読めず何度も誤読し、世間に大きな衝撃を与えます。一方翔の変わり身となった泰山もまた、翔が受けるはずだった就職面接を代わりに受けますが、政治家仕込みの横柄な態度で好き放題言いまくり、けんか別れに…首相と息子の入れ替わりなど夢にも思わない世間では、ただでさえ一国の代表とは言いがたい言動に対する厳しい批判が渦巻く事態に。追い打ちをかけるように泰山のまわりでは、スキャンダルが発生。泰山と翔は混乱の中、この入れ替わりの真実に近づいていく―

公式ホームページ
http://tohostage.com/tamiou/

おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人

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