歌、タップ、ピアノが交差する、一日限りのスペシャルライブ「HEROES Another version vol.3『TRIANGLE』」が8月22日、KIWA TENNOZにて開催されました。

大貫祐一郎さん 彩吹真央さん RONxIIさん
出演は、彩吹真央さん、タップダンサーのRONxIIさん、ピアニストの大貫祐一郎さん。昨年開催された「HEROES~at Home Live~」で、約2週間の公演をともにする中で生まれた今回の企画。互いをよく知る3人だからこそ、「3人なら、こんなこともできるのでは」「こんな姿を見てみたい」とアイデアを持ち寄り、それぞれが新たなことにも挑戦。そんなサプライズと遊び心に満ちたステージとなりました。
幕開けは、RONxIIさんの軽快なタップから。心地よく刻まれるリズムに、大貫さんのピアノが加わり、「雨に唄えば」のセッションがスタートします。さらに彩吹さんの歌声が重なると、歌、タップ、ピアノ、3つの個性が鮮やかにハーモニーを奏でます。これぞ『TRIANGLE』!最後は、3人揃ってポーズを決め、これから何が飛び出すのかと期待が膨らむオープニングに!
続く大貫さんのピアノソロ、「アラベスク」(ドビュッシー)が会場を涼やかな空気に一変させると、彩吹さんとRONxIIさんによる「マスカレード」(レオン・ラッセル)へ。ドラマティックな彩吹さんの歌声と、RONxIIさんが刻むリズム。ここではあえてピアノを入れず、歌とタップだけで楽曲の世界を描き出していきます。
昨年のライブで彩吹さんの歌声を聴き、改めてその魅力を感じたというRONxIIさん。その独特の声の響きを実演も交えて表現しながら、今回のコラボレーションを提案した経緯を明かしました。大貫さんも彩吹さんを「倍音を持っている歌い手」と評し、その歌声の魅力を熱く語ります。続けて「ほかの楽器がないからこそ、かえって頭の中にさまざまな音が鳴り始めるような、“引き算”の美学」とコラボレーションの面白さを解説。
一転、弾むようなピアノで始まったのは、佐野元春さん&雪村いづみさんの「トーキョー・シック」。ビッグバンド編成のオリジナルを大貫さんがアレンジし、彩吹さんとRONxIIさんがデュエット。大貫さんの華やかなピアノソロも加わって、会場はたちまちダンスホールのような高揚感に包まれていきます。
さらに、ステージに鉄板と呼び鈴が登場。演奏されたのは、ルロイ・アンダーソンの「タイプライター」です。タイプライターを打つ音をタップで表現し、“チーン”というおなじみの音には呼び鈴を。RONxIIさんの華麗で小気味よい足さばきと大貫さんのピアノがぴたりと重なり、どこかコミカルで楽しい! ですが、それを軽々と見せてしまうのはお二人の高い技術の証。RONxIIさんの「こんなに楽しいんだけど、僕らは目が血走ってますよね(笑)」との言葉には客席から笑いが起こりました。
続いては、今度は観客の目が血走る番……ではなく(笑)、客席も手拍子で演奏に参加する楽しいひと幕「人生のメリーゴーランド」(「ハウルの動く城」より)を挟み、ミシェル・ルグランの「シェルブールの雨傘」ではしっとりとした世界へ。大貫さんのピアノに乗せ、彩吹さんが語りかけるように歌い始めます。繰り返される旋律とともに感情も少しずつ高まり、やがて伸ばした手の先に想い人の姿が見えるような── 一編のドラマが立ち上がります。歌によって物語を届ける彩吹さんの本領が存分に発揮された一曲となりました。
そして「東京ブギウギ」(服部良一)ではピアノとタップが躍動。低音まで響かせる大貫さんのピアノとRONxIIさんの足音が、ステージいっぱいにブギのリズムを生み出していきます。
かと思えば、おもむろに始まったのは、はっぴいえんどの「風をあつめて」。驚いたことに、歌い出したのは大貫さんです。そこへRONxIIさんの歌声が重なり、思いがけない男性デュオが誕生! 飾り気のないお二人の歌声と楽曲がよく似合い、彩吹さんはカホンでさりげなく参加。3人の肩の力がふっと抜けたような、微笑ましく心地よい時間が流れました。
歌にタップ、さらにピアノやギターも奏でるというRONxIIさん。その多才ぶりに話が及ぶと、「音楽が好きなんです」とひと言。ジャンルや役割の境界を軽やかに越えていくこの日のステージを象徴するような言葉にも聞こえます。
そして、ここからさらにワクワクの展開が待っていました。
大貫さんのピアノによる「Cheek to Cheek」(「TOP HAT」より)、彩吹さんはタップシューズを履いて登場! RONxIIさんと彩吹さんによるタップの競演、そしてデュエットダンスが繰り広げられると、客席からは「ブラボー!」の声も飛びます。
タップの経験はあるものの、ステージで披露するのは久しぶりだったという彩吹さん。練習回数は決して多くなかったそうですが、RONxIIさんのアドバイスを受けると、みるみるうちに感覚を取り戻していったそう。「音が鳴り始めると楽しさが増していく」――彩吹さんが語るタップの魅力も、お二人の弾むようなパフォーマンスからしっかりと伝わってきます。スペシャリストがすぐそばにいるからこそ踏み出せる、新たな挑戦です!
ライブ終盤を飾ったのは「私は風」(カルメン・マキ&OZ)。彩吹さんからのリクエストを受け、大貫さんがピアノ一本のために編曲を手掛けました。バンドサウンドの迫力をピアノで描き、そこへ彩吹さんの歌声、RONxIIさんのタップが重なっていきます。歌、ピアノ、タップ――それぞれの“本業”が真正面からぶつかり合いながら、一つの物語を紡ぎ出す。まるでミュージカルの一場面を見ているかのような、ドラマティックで贅沢な一曲となりました。
アンコールは、大貫さんの提案によるポルトガルの民族歌謡「仲間たちのファド」(Alain Oulman)。「明るさと切なさ、その両方を持ち合わせる彩吹さんの歌声の振り幅を生かしたい」と選ばれたとのこと。途中では先ほど練習した観客による手拍子も再登場。ステージと客席が一緒になって、この日限りの音楽を作り上げました。
歌う人、踊る人、奏でる人――そんな役割にとどまらず、それぞれのフィールドを重ね合わせ、刺激を受け合いながら、新しい表現にも挑んだ3人。
準備を重ねて迎える本番は、始まってしまえば儚い。だからこそ挑戦には心地よい緊張があり、「久しぶりに緊張したし、燃えた!」という言葉も飛び出しました。
そして、そこに加わる「観る人」も、とっても楽しい&気持ちいい!
昨年の「HEROES」で交わされた「あんなことも、こんなこともできる」という夢が、こうしてひとつの形になった『TRIANGLE』。3人だからできること、仲間と一緒だからできることは、まだまだありそうです。
「HEROES」の可能性は、さらに広がっていきます。
写真提供:グランアーツ
おけぴ取材班:chiaki(取材・文)監修:おけぴ管理人