ミュージカル『101ダルメシアンズ』@日生劇場
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ワンちゃんたちが繰り広げる心温まる大冒険!大切な誰かを守る勇気と家族の絆を、英国クリエイティブチーム監修のパペットとともに描くミュージカル『101 ダルメシアンズ』が、日本初演を迎えます。物語を大いにかき回すのは、ファッション界を牽引する“世紀の悪女”クルエラ・ド・ヴィル。新妻聖子さんとのWキャストでこの強烈な役に挑む蘭寿とむさんに、役づくりのスタート地点で見えているクルエラ像、訳詞・翻訳・演出を手掛ける石丸さち子さんとの創作、パペットとの未知なる共演について聞きました。
【ビジュアル撮影で、クルエラの人物像を体感】
──いよいよ作品が動き始めました。先日解禁されたクルエラのビジュアルも、かなりインパクトがありました。
インパクト、ありますよね(笑)。アイメイクをしていただいた時点で、「もう、思う存分やっちゃってください」という感じでした(笑)。さらに白と黒のカツラを被り、シャープな肩のラインが印象的な、ゴージャスなお衣裳を身に着けることで、「本物を知る女は私しかいない」というクルエラの自負を、少し疑似体験できました。
──鏡に映ったご自身の姿をご覧になったときはいかがでしたか。
自然にポーズをとっていました。顔や手の角度なども、「こんな感じかな」となりきれました(笑)。誰もが憧れる美の先端をいく人としての佇まいというか──お稽古前にファッショニスタ、クルエラの雰囲気を体感できたのはよかったと思います。
【クルエラにとっては、すべてが正しい】
──もともと『101 ダルメシアンズ』やクルエラ役には、どのような印象をお持ちでしたか。
絵本やアニメーションの影響で、まず浮かんだのはワンちゃんたちのかわいい大冒険というイメージでした。展開もわかりやすく、肩肘張らずに楽しめる物語だということも広く愛される理由だと感じています。
そして自分がクルエラを演じることになって、いろいろな方にお会いするたびに「あのクルエラをやるんだよね」と言われるんです。皆さんにとって、“あの”と言われるほど「ザ・悪」というイメージのある人物なんだなと、周囲のリアクションからも感じました。それほどまでの強烈なキャラクターを演じられることをありがたく思っています。
──実際に台本や譜面、楽曲に触れて、ミュージカルだからこその面白さはどう感じていますか。
歌のパートだけではなく、物語自体にも音楽が流れていることが非常に効果的。歌稽古でも、音楽の中でセリフ、お芝居が進んでいくことで、場面がより立体的に立ち上がるようなところがあると実感しました。
その音楽も、おしゃれでポップな楽曲、重厚な楽曲、ビッグナンバーなど、とても多彩です。そこに石丸さんが、意味合いや表現はもちろん、音符への言葉のはめ方まで、すべてにおいて綿密に考え抜かれた歌詞をつけてくださっています。
──石丸さんが演出だけでなく、訳詞・翻訳も手掛けていることは大きいですね。
「英語ではこう、日本語に訳すとこうなるけれど、より伝わりやすいのはこちらの言葉だよね、よりキャッチーなのはこちらだよね」と石丸さんは丁寧に説明してくださいます。そして、何を残したいのか、何を一番伝えたいのかを考えながら、歌稽古でも「少し変えて、こちらで歌ってみて」と試していらっしゃるので、そのこだわりは尽きることがありません。
──そうして一から作り上げていくのも日本初演ならではです。
一から作り上げていくのは大変ではありますが、固まっていない分、やり甲斐があります。いかようにでも作れる部分と、絶対に外したくない部分を見定め、お稽古で作っていきたい。また、今回はクルエラ役が新妻聖子さんとのダブルキャストです。石丸さんも、二人それぞれの良さが生きるように──「まったく違うほうが楽しいよね」という方向で進めています。歌稽古では、新妻さんの素晴らしい歌声にも感動、私自身も新妻さんのクルエラが楽しみです。
──今の段階で、クルエラをどのような人物だと捉えていますか。
悪女ではあるのですが、自分の美学をはっきりと持ち、「自分が正しい」という揺るぎないものがある。はたから見れば間違った正義でも、彼女は自分が一番で、自分が正しいと思っている。そして、唯一無二の、誰も持っていない一点物を身にまとっていたいという欲望がとても強く、そこへ向かう執着というか、エネルギーは逆にすごいなと思います。そこまでのエネルギーって、なかなか持てないですよね。ある種の狂気に近いものを感じます。
おそらく彼女は最後まで、「私の美の基準にまだみんなが追いついていない。時代が追いついていない。でも私は正しい。いつかそういう時代が来る」と思いながら去っていくのではないかと。そこまでクルエラとして生き切れたらいいなと、今の段階では考えています。
【去り際の後ろ姿が違って見えるように】
──台本では、クルエラの過去が詳しく語られてはいません。登場した時点ですでに完成形というか(笑)。
そうですね。ただ、妹のリンダについての台詞や歌詞には、クルエラの幼少期を想像させる描写もあります。演じるうえでは、それをヒントに彼女がどのように生きてきたのかを、もう少し具体的なところまで石丸さんと相談しながら作っていきたいと思っています。それを舞台上ではっきりと印象づけたり、説明したりするということではないのですが。
──演じる人の中にそれがあることで、生身の人間が演じるクルエラならではの奥行きが生まれそうです。
アニメーションでは、いわゆる「悪いキャラクター」。それもひとつの面白さだと思います。英国版の舞台映像を拝見しても、物語の中での彼女の言動にお客様は思い切り笑っていて、“そういうキャラクター”を担っていることがわかります。日本でも、もちろんそこを楽しんでいただきたい。でも、そこにほんの少し、彼女がどう生きてきたのかが滲むと、また違う目線で見られて面白いのではないか。たぶん、それによって去り際の後ろ姿が違って見えるような──彼女には決して同調はできませんし、やってはいけないこともやっていますから、悪は悪です。でも、「そうなってしまったのにも何かあるのだろうな」というものが、背中から感じられるような役作りをしていけたらと思っています。
【パペットのワンちゃんたちとの未知の共演】

Photography of the 202425 UK Tour of 101 Dalmatians The Musical (c) Johan Persson
──そして、この作品はなんといってもワンちゃんたちが大活躍します。パペットとの共演については。
初めてのことなので、まだ想像の段階なのですが。舞台上ではワンちゃんとお芝居をする一方で、その後ろには俳優さんがいて、その方の息遣いやセリフ、歌声を聞いて反応することになる。パペットを操るみなさんは、私たちの歌稽古よりも先立って練習を重ねていらっしゃいます。きっととても新鮮な体験になると思うので、自分が稽古場や舞台上で何を感じ、どんなお芝居をすることになるのか、とても楽しみにしています。稽古場でのワンちゃんたちとの対面が楽しみです。
──先ほどからお名前は出ていますが、石丸さんの演出を受けるのも、今作が初めてですね。
石丸さんの中にはしっかりとしたビジョンがあり、どこへ向かっているのかがとてもクリアな方です。
歌稽古でも、「こう見えていますよ」「歌の間のこのセリフに、少し優しく穏やかな感じが出ているので、そこを完全に消してみてください」と、とても的確にアドバイスをくださいます。
また、石丸さんの演出作品に出演したことのある方から、「石丸さんとご一緒されるの、羨ましいな」と言われることもあります。その言葉からも、俳優に寄り添いながら、一緒に作ってくださる方なのだろうと感じています。
【「立ち姿の圧」も楽しんでいただけたら】
──子どもから大人まで、幅広い世代が楽しめる作品です。改めて蘭寿さんが感じている本作の魅力を教えてください。
お子様には、まずストーリーのわかりやすさや、ワンちゃんたちのかわいさを楽しんでいただけると思います。たくさんいるワンちゃんも、それぞれ性格が違うんです。活発な子、おっとりしている子、気の強い子もいるので、好きなワンちゃん、応援したいワンちゃんを見つけてください。一方で、おそらくクルエラは憎まれると思うのですが(笑)、そこは開き直って憎まれれば憎まれるほど大成功だと思っています。
もちろん大人の方も同じように楽しんでいただけますが、それに加えて、クルエラが抱えているものや、もう少し深い部分まで見て、思いを馳せていただけるのではないかと思います。
ご家族やお友達と観ていただけば、一緒に楽しめますし、観終わったあとも「どうだった?」とお話が弾むのではないでしょうか。
──では、蘭寿さんが演じるクルエラの“推しポイント”は? まだこれから役を立ち上げていく段階ではありますが。
立ち姿の圧でしょうか(笑)。
あとは、美への執着から生まれる強さを、しっかりと出していきたいと思っています。そして、ただ強いだけではなく、「なぜ、そこへ向かっているのか」。美へのこだわり、その強さを支える裏付けのようなものまで表現できたらいいなと、今の段階では思っています。
──クルエラは揺るぎない美意識を持つ人物です。蘭寿さんご自身の中で、揺るがないものはありますか。
私は感覚的なところが強いので、意識して「こうでなければ」「これがなければ」と思うことは、あまりないかもしれません。そこを自分の中に強く持ってしまうと、そうではないときにしんどくなってしまうので。
──では、人生の中で大切にされていることは?
これまで携わってきた作品、演じてきた役の一つひとつが大切。もっと広い意味でいえば、生きていく中での人との出会い、その時々に出会った人の心や気持ちにまっすぐ向き合うことは、昔から大切にしてきました。それはこれからも変わらず、大切にしていきたいと思っています。
──今日こうしてお話を伺って参りましたが、お話される表情からもクルエラ役を演じることにワクワクされていることが伝わってきます。蘭寿さんが演じる“世紀の悪女”、楽しみです。
私もとても楽しみなんです。ここまでの悪、クルエラの思考、行動のスケールの大きさを、自分がどこまで作り込めるか。とことんまで挑戦したいです!
スタイリング:阪本 幸恵
ヘアメイク:石川 尋美
ミュージカル『101ダルメシアンズ』@日生劇場
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おけぴ編集メモ
インタビュー中の蘭寿さんは、柔らかく朗らか。クルエラの強烈な欲望や狂気について語るときにも、時折笑いを交えながら、これから始まる役づくりへの期待を楽しそうに言葉にしていきます。一方で、撮影でカメラの前に立つと、その空気が一変。すっと伸びた立ち姿に、キリリとした眼差し。その鮮やかな切り替わりを目の当たりにすると、ご本人が挙げた「立ち姿の圧」への期待も俄然高まります。
そして、誰もが知る“世紀の悪女”ぶりを思いきり楽しませながら、その背中に何を滲ませるのか。蘭寿とむさんが生身で立ち上げるクルエラの誕生が、ますます楽しみになりました。
おけぴ取材班:chiaki(インタビュー・文)監修:おけぴ管理人