森見登美彦×松村武シリーズの第2弾、
京都・糺ノ森に住む狸の一家の物語
『有頂天家族』が開幕いたしました。
独特の森見ワールドが舞台演劇に・・・前作、青春音楽活劇『詭弁・走れメロス』に続いて
脚本・演出を担当された松村武さんの手で摩訶不思議な世界がついに姿を現しました。
こう来たか!の連続、ドキドキの公演の様子をご紹介いたします。
有頂~天家族っ♪
笑顔いっぱいで歌い踊り疾走する愛すべきキャラクターたちが今も目に浮かぶ、
これは楽しんだもの勝ちです。
まさに
“おもしろきことは よきことなり” !
千年の都・京都の町を舞台に、人に化けた狸と天狗、
そして人間が三つ巴に入り乱れての奇想天外のファンタジックな物語。
その主人公は糺ノ森に住む狸の名門・下鴨家の三男・矢三郎(武田航平さん)。
矢三郎:武田航平さん
世の中を俯瞰してお気楽に暮らしている矢三郎を魅力いっぱいに演じる武田さん。
森見作品の味、独特の言葉遣い、セリフ回しで物語をけん引する矢三郎はほぼ出ずっぱり!
歌って踊って化けまくります・笑。
阿呆の血を継いだといいつつも、ニュータイプのヒーロー像ともいえる
“ただ者ではない感” を感じさせます!
矢三郎同様?!偉大な父・総一郎の血を受け継いだ割に・・・な下鴨家の
ほかの兄弟たちもご紹介。
左より)三男:武田航平さん、母:樹里咲穂さん、末弟:藤原薫さん、長男:渡辺大輔さん
生真面目なのだけれど土壇場に弱い長男・矢一郎に渡辺大輔さん。
実直なキャラクターに渡辺さんの立ち姿の凛々しさやどっしりとした台詞がぴったり!
あまりにピッタリゆえに、そこが絶妙な笑いに繋がります。
強い歌声も化け方も、どこをとっても骨太な矢一郎が末弟の矢四郎にかけた
優しい言葉が忘れられません。
素敵なお兄ちゃんです!
人間でなく蛙に化けたまま井戸暮らしを続ける次男・矢二郎は奥田努さん。
写真下)矢二郎:奥田努さん
奥田さん、いい味出しています!この
蛙の芝居がかなりツボでした。
次兄よなぜ蛙に?!そのあたりも興味津々ですよね。
そして蛙からのーーーー“アレ”もお楽しみに。
化けてもついしっぽを出してしまう末弟・矢四郎には藤原薫さん。
写真左より2番目)矢四郎:藤原薫さん
弟キャラの決定版!カワイイ矢四郎ですが、特技をいかんなく発揮する場面もございます。
初舞台の藤原さんの初々しさも相まって
愛されキャラの末弟になっていますよ!
4兄弟を温かく見守る母を演じるのは樹里咲穂さん。
樹里咲穂さん!!
何とこの母は
大の宝塚好き!歌やダンスに宝塚男役時代をほうふつとさせるようなカッコいい場面も
ご用意されていますので、これは必見です。
長くしなやかな手足をいかしたキレキレダンスにうっとりでございました。
そんな下鴨家とかかわる面々も期待通り “濃い” のです。
↓こちらは落ちぶれてしまった天狗の赤玉先生の世話を焼く矢三郎。
矢三郎:新垣里沙さん、赤玉先生:久保酎吉さん
矢三郎?!
はい、矢三郎なんです。
新垣さんは矢三郎のかつての許嫁・海星と女に化けたときの矢三郎の
2役を演じるんです。
“姿は化けたままで言動は素の矢三郎” という場面の新垣さんの
振り切れた芝居が
気持ちいい!そこがはっきりくっきり表現されるので、
混乱することもなくキレイに化かされ気分(笑)を味わえますよ。
“姿は化けたままで言動は素の矢三郎” こちらは別バージョン!
目に見える姿は新垣さん、心の声を武田さんが表現という面白演出です。
(どういうこと?という方は、ぜひ劇場で!)
そして天狗の赤玉先生がいろいろともっていくんですよね!
久保さんが創り上げるナイスキャラ、
飄々としていて、わがままなんだけど憎めないご隠居さんなんです。
赤玉先生が恋い焦がれる女性(人間!)・弁天を演じるのは佐藤美貴さん。
赤玉先生:久保酎吉さん、弁天:佐藤美貴さん
つかみどころがないんだけどなんだか惹かれちゃう!
そんな
ミステリアスで小悪魔ちゃんな弁天にドキドキです。
何とも不気味なのが七福神の名を呼び合う “金曜倶楽部” という
人間たちの秘密結社?!もちろん、弁天もその一員。
毎年暮れには狸鍋を食すというから、狸たちは戦々恐々です。
こちらの二人はもうひとつの狸の名家・夷川家の兄弟、金閣・銀閣
金閣:成清正紀さん、銀閣:小手伸也さん
舞台後半の狸の頭領 “偽右衛門” の座をめぐる選挙では
下鴨家vs.夷川家の攻防が物語の軸に!
その過程で次々に明かされる真実が歌やダンスも織り交ぜながら
疾走感いっぱいで描かれます。
おもしろファンタジーの中にとってもリアルな家族愛も感じられる
優しさもあわせもつ作品です。
人と狸の化かしあい、そこに天狗も加わっての京都の町を舞台にした三つ巴の攻防・・・
小説やアニメをご覧になった方は「いったいどうやって?!」と思われるでしょう。
奇想天外摩訶不思議な世界を目の前に立ち上げるのは
演劇ならではの手法と客席の
想像力です。
思いっきりいろんなものが見えちゃっているんですけどね(笑)、
でも物語の中でそれが繰り広げられると、それも一興。
これ、
演劇的お約束ということで思いっきり楽しんじゃいましょう。
小手伸也さん、小林至さん、成清正紀さんは本役のほかにも八面六臂の活躍!
おけぴ取材班:chiaki 写真提供:アトリエ・ダンカン 監修:おけぴ管理人