「80歳を超える奇跡のソプラノ歌手」リナ・ヴァスタさんインタビュー

突然ですが、音楽好きなみなさんにクイズです!!

数々の名作オペラを書いたイタリアの作曲家ヴェルディが、
「私の最高傑作」と語ったものといえば、さて何でしょうか!?
アイーダ?
リゴレット?
はたまた、レクイエムでしょうか?

じつは、音楽ではないんです!!


作曲家ヴェルディが「私の最高傑作」と呼んだ「音楽家のための憩いの家」
それは、世界でただ一つの「音楽家ための」老人ホーム。

1896年、ヴェルディが私財を投じて建設したこのホームでは、
現在も50名ほどの引退した音楽家が静かに余生を過ごしています。


「音楽家のための憩いの家」

建物内には住居のほかに、ホールや音楽練習室があります。
この施設の運営は、ヴェルディの死後50年間は彼の作った音楽の著作権料で賄われ、
現在は寄付や施設の利用料などで運営されているとか。

名優ダスティン・ホフマンが75歳にして初めてメガホンをとった映画
「カルテット! 人生のオペラハウス」や、
黒柳徹子さん主演の舞台「想い出のカルテット」は、
ヴェルディが建てたこの施設がモデルになっています。

そんな「憩いの家」で唯一、現在もソプラノ歌手として活躍しているのが
今回ご紹介するリナ・ヴァスタさんです。


リナ・ヴァスタさん

80歳を越えた今も(年齢は非公表ですが、
おそらく80歳はゆうに越えていらっしゃると思われます!!)、
コンサートで世界中を飛び回り、施設を訪れた人々のために小さな演奏会を開き、
また後進の指導にもあたっています。

【プロフィール】リナ・ヴァスタ(ソプラノ)LINA VASTA
ミラノのコンセヴァトーリオ(ヴェルディ音楽院)でディプロマを取得。16歳で歌手活動を始め、オペラ『椿姫』『ルチア』『リゴレット』などの舞台に立つ。イタリア国内の市立劇場にてリリコ・レッジェーロ・ソプラノとして活躍。第二次世界大戦中も戦火を縫いながら歌い続けるが、後に、34歳年上の指揮者パスクァリエッロ氏と知り合い結婚。夫の希望により若くして歌手活動を引退することになる。
1984年に夫と共にヴェルディ「憩いの家(養老院)」に移り住む。音楽活動やコンサートのできる環境が、リナの眠っていた歌への熱情と才能を覚醒させる。周囲は、彼女の類まれな音楽性とそれを支えるテクニックに驚いた。聴衆の歓喜と彼女の活動を支える人々と出会い、再び人前で歌い始める。現在ミラノの「憩いの家」に在住し、イタリア国内を始め海外で音楽活動を行いながら、後進の指導にもあたる。


まずはリナさんの歌声をお聴きください!!


どうです?背筋のピンと伸びたエレガントな佇まい、
そしてその小さなお体から発せられる
小鳥のさえずりのように優美で透明感のある歌声!

今年2月に来日したリナさんの歌声を拝聴しましたが、
その素晴らしいお声と、人生の長い道のりを常に音楽と共に歩んできた
一人の女性が醸し出す「確かさ」のようなものに、大きな衝撃を受けました。

6月に再来日し、東京と名古屋で演奏会を開くリナさん。
来日リサイタル公演に向けてのお話をうかがうことができましたので、
その様子をご紹介いたします!

──6月の演奏会では、リナさんの故郷であるイタリアのオペラの中からアリアを披露していただけるとのことですが、イタリアの歌曲の魅力はどんなところでしょうか?

リナ)
イタリアオペラ、特にアリアの魅力といえば、やはりヴェルディやプッチーニといった卓越した作曲家たちが創り出したメロディの美しさだと思います。それこそが、もっとも人々を感動させるものだと私は思いますね。作曲家の残したメロディの魅力を聴衆のみなさんに伝えることこそが私たちの使命です。


──歌うときに大切にしていることは? やはり、長く続けていくには技術が大切なんでしょうか?

リナ)
技術を保つということについては、私の場合は小さい頃に身に付けてしまったことなので、今でも絶対にぶれることはないんです。いちばん大切なのは、健康を損なわないこと。自分なりの生活のリズムを崩さないように、常に気をつけていますね。もちろん、暴飲暴食なんて決してしませんが…。でも私はお酒なら毎日一杯ぐらいは飲むのよ(笑)。

──歌には体力も必要ですよね。お肉なんかも召し上がったり?

リナ)
どちらかといえば魚のほうがいいですね。シチリア島の出身なので、子どもの頃から魚が大好きなんです。

──第一線で活躍していた若い時代と、再びステージに立つようになった今、変わったところや変わらないところはありますか。

リナ)
テクニックについてはまったく変わっていませんし、さらに言えばよくなったと思います。ステージで歌っていなかったとはいっても、練習は常にやっていましたからね。

──お年を重ねて、さらに技術的に進歩する…素晴らしいことですね! ステージに立っていなかった時代に出産や子育てをご経験されたと思いますが、それらを経験して技術以外の部分で何か変化はありましたか?

リナ)
感情的な部分でも大きく変わりましたよ。
子どもができることによって生活様式が大きくかわりますし、いろいろ考えなければならないことも増えます。すると、そうしたことを一つひとつ、オペラに結び付けて考えられるようになるんです。


──なるほど。オペラもまた「人生の物語」ですよね。

リナ)
ええ。それによって、自分の可能性がさらに広がっていったと思います。
若い頃は、ヴェルディの作品、プッチーニの作品、ベッリーニの作品…もちろん技術的にはしっかり歌っていたのですが、どうしても「深み」が出てこない。でも、子どもができて、自分が年齢を重ねていくにしたがって、作者が何を意図してそれを書いたのかを理解して表現できるようになったのです。
ステージで歌わずとも、そういう人生経験を積むことによって「成熟」していったのだと私は思っています。

──私たちの「おけぴネット」では、演劇や音楽など「生の舞台」の素晴らしさを伝えていきたいと思っているんです。「生の演奏」と、ラジオやCDといった「録音」の違いについて、リナさんのお考えを教えてください。

リナ)
生の演奏では、録音、録画されたものとはまったく違う「熱」を感じることができます。
演奏者と同じ空間の中で、彼らの呼吸を感じることができる。それはやはり生の演奏に限りますよね。
だから私は、コンサートにぜひ来ていただきたいんです。

──演奏する側にとっても「生の舞台」はやっぱり違うものなのでしょうか?

リナ)
たとえばテレビカメラに向かって歌うときは、自分が伝える相手が目の前にいないので、自分がやってきたことをただ出すだけです。でも、たくさんのお客さんの前で歌うと、お客さんの表情が見える。
彼らがどんな顔をして聴いているのかを直に見て、さらに楽しんでいただくためにはどうすべきかを考えながら歌えるのです。それによって、芸術がまた一歩深まっていくと思います。


──最後に、公演を楽しみにされている方々にメッセージをお願いします。

リナ)
とにかく、来てくださった方のために最善を尽くします。私の歌が、みなさんの豊かな感情を揺り動かすきっかけになればうれしいです。
私はお客さんがたくさんいればいるほどアドレナリンが出るタイプなんです。音楽が好きな方と一緒に時間を過ごせることが幸せです。
あらゆる芸術の中で、声楽は特に、心に直接響くものだと思います。ラファエロの絵画やミケランジェロの作品ももちろん素晴らしいのですが、プッチーニやベッリーニのオペラを観たときの感動というのは私にとって本当に深いもので、そういう気持ちをお客さんにも伝えていきたいと思っています。

──日本のリナさんと同世代の方にもぜひ聴いていただきたいですね。

リナ)
ええ、日頃あまり音楽に接していない方にもぜひ来ていただきたいと思います。
私が歌うことによって、何らかのエネルギーを持って帰っていただきたい。音楽を聴いて幸せを感じる、そういう感覚を届けられたらと思いますね。

──ありがとうございました。6月にお会いするのを楽しみにしています!

リナ)
私も待っています。ありがとう。


奇跡の歌声 リナ・ヴァスタ 〜ヴェルディ 音楽家の家から生まれた感動!〜
2014年6月8日(日)14:00開演
東京オペラシティ コンサートホール

<出演(予定)>
リナ・ヴァスタ(ソプラノ)
上江隼人(バリトン)
笛田博昭(テノール)
ヴィンチェンツォ・パスクァリエッロ(ピアノ)

<曲目(予定)>
ヴェルディ:「運命の力」より「天使の中の聖処女」/「椿姫」より「さよなら、過ぎ去った日々よ」
プッチーニ:「修道女のアンジェリカ」より
イタリア歌曲 ほか

公式サイトはこちらから


おけぴ取材班:hase(文)おけぴ管理人(写真) 監修:おけぴ管理人

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