2014/06/03 新国立劇場『十九歳のジェイコブ』稽古場レポート(感想追記!)

【6/16】レポ後半に、ご覧になった方々の感想を追記しました

芥川賞作家・中上健次が1986年に発表した小説を、
1972年生まれの劇作家・松井周さんが戯曲化
演出を手掛けるのは大阪を拠点にダイナミックな野外劇を40年にわたり展開してきた「維新派」の松本雄吉さん。そして物語の中心にいるのは20代の役者たち。
世代を超えた才能が集結しヒリヒリするような世界を創り上げる『十九歳のジェイコブ』
衝撃の稽古場へ潜入してまいりました。



ものがたり
セックスとドラッグに溺れジャズで身体を満たす19歳の青年ジェイコブと、ヘンデルを聴きバクーニン(ロシアの無政府主義者)の言葉に浸るユキ、二人それぞれの想いと過去が、やがて破壊的な衝動を抱いて・・・・・・。


取材メモを見返すとそこには、

過激、電話、ドライ、アンバランス、性、バクーニン、家族、ガリガリガリ、
温度、兄やん、ジャズ、新国立劇場。

そんな感じです。
劇中の一部のシーンだけを拝見しただけですが、なんだか地に足がつかないようなふわふわとした足取りでの帰り道でした。

このチャレンジングな作品のキャストには映像・舞台で活躍するフレッシュな顔ぶれがそろいました!
主人公ジェイコブには石田卓也さん
遠くを見ているよな、なにも見ようとしていないような。不思議な青年。


石田卓也さん


松本さんと丁寧に創り上げられる“ジェイコブ”というキャラクター

実家が裕福な友人ユキには松下洸平さん
壊れそうで哀しい存在感。
なんだか見ていると泣きたくなるようなユキなのです。

松下洸平さん

彼らとドラッグ、セックスに興じる女子高生たちは。
ジェイコブと必死につながろうとするキャスに横田美紀さん、キャスといつも連れ立っているケイコには奥村佳恵さん。奥村さんはもうひと役、タイプの違う役も!



なんだか、初めて、しかも部分的に見た印象では、“え?何この子たちは・・・”
若干許容量オーバーだったりします。
遠い世界過ぎる・・・。
でも、そうかと思うと。



ジェイコブの “電話越しの声” 、そしてその “目” に・・・



全てを見透かされているような。

彼らの口から発せられる過激な言葉や性描写など、新国立劇場・・・だよね?!
とちょっと動揺しつつも、どこかドライで無機質な雰囲気やジェイコブはじめ表面温度低そう・・・な人々のなかに垣間見られる熱量に徐々に惹きつけられていきます。
なんでしょう、この感覚。



傾斜のついた橋のようなセットの組み合わせで変わっていく情景。
“平衡感覚” という概念がないような作品世界を象徴する景色です。
後方には中上健次さんの小説から引用された字幕も!

最近では「劇中タバコを吸う場面がございますが・・・」などという断り書きがあることも珍しくない中で、なんだかそういうことをドッカーンとぶっ飛ばしたような舞台。
そのドッカーンを助けるのが劇中の音楽。
菊地成孔さん監修の舞台を彩るジャズも必聴なのです!

ある種実験的とも言える新国立劇場の意欲作『十九歳のジェイコブ』
正直、TV電波には乗りにくい作品です。
ぜひとも劇場で受け止めましょう。




<ご覧になったみなさんのオススメコメントをご紹介>

テーマがハードかと恐る恐る観劇しましたが透明感のある出演者の演技にひきつけられました。
演劇好きには堪らない舞台転換。
たまにはこういう作品も良いですね。

最初の場面、水の音と不思議なセット。ラストは大音量のジャズの渦。
字幕や色の使い方など斬新。難解だなと思いながらも惹きこまれ、後味は悪くない。
性や破滅や死を描きながら、これは「生」の物語だと感じた。

セックスとドラッグに溺れる19歳のジェイコブと裕福だけど繊細で傷つきやすいユキ。
2人の破滅的な衝動の理由が少しずつ見えてきて・・・過激なシーンやセリフも多いけれど
若いキャストが身体はっている舞台に最後まで釘付けに。
舞台のセット、演出、そして何よりジャズがスタイリッシュに響き渡っていました。

中上健次作品の香りそのままに・・・なのにどこか現代にも通じていて不思議な世界観でした。
個人的にはユキとその姉の俳優さんがとても良かったと思います。

何となく寂しく悲しい無機質な音、初めから独特の世界観に引き込まれました。
ストーリーは何が現実で何が空想なのか・・・過去か現在か・・・早い展開に見ていて翻弄されっぱなしです。
とにかく引き付けられ、一時も目を離せませんでした。
俳優陣の内に秘めた熱意、目力に圧倒されつつ、舞台は今にも壊れそうな危うい雰囲気で、苦しくなりました。
まさに衝撃的な作品です。松下洸平さんの歌が聴けるのもうれしいです。

体当たりの演技と音楽に圧倒されました、昔のモノクロ映画を見終わった気分です。
ヘビーだけど嫌な感じじゃないですよ。

作品が20年以上前に書かれたものと思わない程、現代社会に通じる闇だと感じました。
描写はリアル感がありますが、演出が幻想的でもあるので一度観てみてほしい作品だと思います。

難しいところが多く、ラストまで色々考えさせられる作品でした。
出演している役者さんが、それぞれ輝いていて、皆さん演技が素敵です。
驚かされる点も多いのですが、舞台でしか表現ができないだろうと思われる部分もあり、
観てよかったと思いました。

いつの時代も、若者は、羨ましい程、刹那的。
ジャズにドラッグにセックスに。
その疾走感が、冴えわたる菊地成孔氏監修のジャズと、自由自在のセットの組み換えで表現されるのが驚きでした。
そして、水の滴る効果音が、とても印象的でした。


【公演情報】
『十九歳のジェイコブ』@新国立劇場 小劇場
2014年6月11日(水)~29日(日)

<スタッフ>
原作:中上健次
脚本:松井 周
演出:松本雄吉
音楽監修:菊地成孔

<出演>
石田卓也/松下洸平/横田美紀/奥村佳恵/有薗芳記/石田圭祐
西牟田恵/中野英樹/チョウヨンホ/酒井和哉/山口惠子/新部聖子

<あらすじ>
セックスとドラッグに溺れジャズで身体を満たす19歳の青年ジェイコブと、
ヘンデルを聴きバクーニン(ロシアの無政府主義者)の言葉に浸るユキ。
家を、家族を憎むユキの「計画」を聞きながら、
断ち切ることが出来ずにいる自分の過去と現実がいつしか混ざりあってゆく。
自らの出生のカギを握る叔父・高木直一郎を訪ねるジェイコブ。
その時、彼の内側でなにかが弾ける...。

公演HPはこちらから


おけぴ取材班:chiaki(文・撮影)監修:おけぴ管理人

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