『ミス・サイゴン』が僕を呼んでいる!2014年5月ロンドンで開幕した
世界最新演出版『ミス・サイゴン』がこの夏、帝国劇場に!
開幕を前に行われた公開稽古の様子をレポートいたします。
初演から22年目を迎える日本の『ミス・サイゴン』カンパニーの特徴を尋ねられると、やはりまずはこの方の存在ということになるのでしょう。
“ミスター・サイゴン”こと市村正親さんです。
冒頭の言葉は5月のロンドン公演初日で24年ぶりに再会したエンジニア役オリジナルキャストのジョナサンとの会話でその市村さんから飛び出したひと言。
ジョナサン「22年経ってもエンジニアをやっている君は化け物か?!」
市村さん「そうじゃないんだ。サイゴンが僕を呼んでいるんだ」さすがのコメントです!そして我々はそれをすぐに実感するのです。
というわけで、この日の公開リハーサルも市村さんの
「さあさあ乗った乗った舞台へ、ウェルカム トゥ ドリームランド」からスタートです!
さあ始まると思ったその前に、取材陣のもとへ駆け寄りひと言。
「あのみなさん、くれぐれも踊り子には手を触れないように!!」取材陣の笑いを誘います
そして!!!
「ウェルカム トゥ ドリームランド」 ♪火がついたサイゴン~♪我が心の夢この瞬間弾けるエネルギー!!
混沌と刹那、なぜにこんなに熱いのか・・・サイゴンの街を象徴するオープニングナンバーです。
ひとりぼっちで田舎から出てきたキムがエンジニアと出会い、彼が経営する売春クラブ・ドリームランドで働く最初の日。このシーンの中での出会いからドラマが展開します。
エンジニア:市村正親さん、キム:知念里奈さん、クリス:上野哲也さん、ジョン:岡幸二郎さん、ジジ:池谷祐子さん アンサンブル
「17歳で初めて~」キムを見つめるクリス
ジョンにすり寄るエンジニアのしたたかさ
この日 “ミス・サイゴン” に選ばれたジジ(写真左)の思いが胸を締め付けます
ドリームランドで売春婦として働くことになったキム・・・
舞台上のあちらこちらで駆け引きが行われている。
いったいどこを見ればいいのか戸惑ってしまうほど、さまざまな立場の人が出会い、その
思惑が錯綜するドラマティックな場面です。より濃厚になった男女の絡みから、なんとしてでも現状を抜け出したいジジたちの切実さと兵士たちのやけっぱち感が強く伝わります。
そのドリームランドを仕切る男エンジニアは市村正親さん。
佇まい、目配せ、そしてセリフ回し(歌声)すべてで我々を作品世界に引きずり込む力、さらにエネルギッシュなエンジニアがそこにいました。
続いては、ドリームランドで出会ったキムとクリスが一夜を共にした後、互いのことを知るなかで惹かれあっていくロマンティックな
♪この金は君のもの~♪サン・アンド・ムーン。
キム:昆夏美さん、クリス:原田優一さん
はじめは客と売春婦という関係だったふたりだが・・・
互いに惹かれあうようになる
別世界で生きていたふたりを太陽と月に見立て、それでも出会った奇跡を歌う
♪サン・アンド・ムーン。昆さんの健気なキムと原田さんの出会いの喜びに溢れたクリスの歌声の絶妙なハーモニー!
一幕中盤のキム&クリスの名デュエット、恋に燃え上がるふたりの情熱的なナンバーをカップルを変えて。
♪世界が終わる夜のようにキム:笹本玲奈さん、クリス:上野哲也さん
希望にあふれるふたりの歌い上げが
気持ちいい!上野さんの誠実さ、笹本さんの迷いのない真っ直ぐな愛、ふたりの歌声が重なったときのエネルギーにしびれました!
ラストは1幕終盤、エンジニアのしたたかに生き延びようとするたくましさとアメリカへの憧れをギラギラと歌う
♪生き延びたけりゃ。
エンジニア:駒田一さん、アンサンブル
アンサンブルも熱い!!
ギラギラの野心に満ちたエンジニア
「憧れの国へ~」「行くにゃビザがない~」野心の中にちょっとした茶目っ気が見えるのもエンジニアの魅力
混迷の世の中を生き抜くがごとく、アンサンブルの間をぬって、またダイナミックに動かされる舞台セットをくぐり抜けて歌うスリリングで力強いシーンです。♪生き延びたけりゃの前奏が始まるだけで鳥肌が立つような、やっぱりビッグナンバーです!!
第一幕から、4つの場面が公開されましたが、この作品を象徴する言葉は “エネルギー” 。
そして多彩な音楽の魅力を改めて感じました。
これは舞台でライブで味わってこその魅力、キムとクリスの運命の恋の行く末と物語をけん引するエンジニアの夢の果て・・・この夏も熱い『ミス・サイゴン』になりそうです!!
【取材会レポ】
公開稽古の前に行われた、取材会でのコメントをご紹介いたします。
<出席者>
演出補:ダレン・ヤップさん、エンジニア役:市村正親さん、駒田一さん、キム役:笹本玲奈さん、知念里奈さん、昆夏美さん
『ミス・サイゴン』日本プロダクション 演出補
ダレン・ヤップさん「この作品は出演者のエネルギー、それぞれの人生経験に頼っているところがあります。
2014年バージョンには2人のエンジニアがいます。
市村さんは豊かな経験、駒田一さんは新しくてわくわく、おふたりの異なるエネルギーが作品を突き動かすことになると思います。
また、帝国劇場では
ヘリコプターやポエティックな
自由の女神が登場します。そして更なるサプライズ、
クリスがヘリに乗り込み飛び立っていくところなども楽しみにしてください」
市村正親さん
「新演出版、2年前もやっていますが、
ドラマを濃く出すために演出、芝居、歌詞など細かいところで変わっています。22年間やっている人間には新しい歌詞を入れるは大変ですが、それが新しいシチュエーションを生んでいるので、
新鮮な気持ちで取り組めています。
また、ロンドン公演初日を観ましたが、どこに感激したかというと、キムの悪夢やモーニング・オブ・ドラゴンでの
アンサンブルの活躍ぶりに感激しました。
でもね、よく考えてみたら
日本も負けず劣らず張り切っているんです。
ロンドンに負けないくらいのものがお見せできると確信しています」
駒田一さん
「22年前からずっと
見続けてきました。やっとエンジニア役をいただきまして、稽古の中で苦しんでもがいて役を深めている最中です」
笹本玲奈さん
「私にとって4度目の挑戦となりますが、いつ演じても
大きな試練の役です。
今も稽古に励んできますが、素晴らしいカンパニーのみなさんとともに作り上げる素晴らしい作品になる予感がしています」
知念里奈さん
「キムをやらせてもらうようになって
10年が経ちました。
市村さんに比べたらまだまだですが、17歳の役なので、今回は本当に
思いを込めて大切に演じられたらいいなと思っています」
昆夏美さん
「今回初めての参加となりますが、『ミス・サイゴン』はずっと見ていた作品です。
稽古場に入って作品に触れて、素晴らしい作品であることを痛感しています。
稽古に励んで、
自分なりのキムを作っていきたいと思います」
稽古場で日々切磋琢磨しているキムのお三方
おけぴ取材班:chiaki(文・撮影) 監修:おけぴ管理人