世田谷パブリックシアターにて上演中の
ミュージカル『ブラック メリーポピンズ』、1920年代のドイツを舞台にした
心理スリラーミュージカル日本版初演公演をご紹介いたします!
あるお屋敷の4人の養子たちとその家庭教師が・・・
心理スリラーミュージカル?!これいかに?そんな思いで劇場へ足を運びましたが、真実が少しずつ明かされるたびに押し寄せるゾクゾク感。そして結末へ向かっての疾走感!
感情に寄り添うようで、時に無機質、心理を巧みに操るような音楽とステージングで休憩なしの2時間あまりがあっという間です。
エンターテインメント性に翻弄される気持ちよさを味わう観劇中と作品の構成の見事さになるほどな~と唸る帰り道。そして、分かった上でもう一度見たくなる、ある種の
中毒性をも持ち合わせる作品です。
-ものがたり-(公演HPより)
1920年代、著名な心理学者グラチェン・シュワルツ博士の屋敷で火事が起こった。この火事によって、屋敷及び博士の遺体さえも燃え尽きた。この事件は大きなニュースとなったが、何より人々の興味を引いたのは、シュワルツ邸の家庭教師メリー・シュミットが、業火の中自らは火傷を負いながらも、博士の4人の養子達、ハンス、ヘルマン、ヨナス、アンナを劇的に救出したということだった。
しかし、メリーは失踪。
残された子供達は、事件の衝撃かその晩の事を何も憶えておらず、火災の原因はわからずまま闇に葬られた。ところが次第に、メリーのアリバイが疑われる証言が出始め、彼女は容疑者として追われることとなる。
それから 12年。
いつしか事件は忘れ去られ、4人の子供達はそれぞれ違う家庭の養子となり新しい人生を送っていた。しかしそんなある日、 彼らに、グラチェン博士の手帳が届く。
そこには事件の真相が・・・。
博士の4人の養子たちにはこちらの魅力的かつ適材適所なみなさんが!
アンナ(音月桂さん)、ヨナス(良知真次さん)、ヘルマン(上山竜司さん)、ハンス(小西遼生さん)
真実を追い求めるハンス役は小西遼生さん。ハンスの中にある前に進もうとするエネルギーと消せない影のような負のエネルギーのせめぎあいが胸を打ちます。とにもかくにも長男なのです!
熱いヘルマンには上山竜司さん。ハンスが知性派お兄ちゃんとすると、ヘルマンは肉体派お兄ちゃん!優しさと深い愛情が上山さんの力強い歌声に乗せられて心に届くような人間味あふれるヘルマンです。
紅一点アンナには音月桂さん。元宝塚歌劇団雪組トップスター、退団後初の舞台出演です!
子ども時代と12年後のアンナのキャラクターの変貌が切ないながら大きな見どころ。
やんちゃな男子たちと・・・アンナのやりとりは音月さんならでは!
そして
愛すべきヨナスには良知真次さん。“純真無垢”なヨナスは、12年後は神経不安症を患っている。そのキャラクター造形がお見事!ものがたりのカギを握るともいえる役を高い完成度で創り上げています!
12年隔てた2つの“時”を行ったり来たりで物語がつづられるのですが、“ちょっと難しそう、わかるかしら?”と思われたみなさまへ朗報!!
心配ご無用でございます!照明や回り盆、そしてなにより俳優さんの演じ分けで、シリアスな緊張感MAXから無邪気なじゃれ合いに瞬時に時に緩やかに、緩急もつけつつ切り替わるのです。
舞台ってすごい!
そして、彼らの
家庭教師メリーを演じるのは一路真輝さん。
子どもたちを救いだし、疑惑の中で姿を消した謎に満ちたメリーと子供たちの記憶の中の母の温かさをもったメリー。一路さんの存在感が物語全体を黒いベールのように包みます。
そしてこの作品のもうひとつの特徴、独特の計算され尽くした危うい動きは
小野寺修二さんによるもの。
ミュージカルって総合芸術だなと思わせる動きにもご注目ください。
ここで、この作品の成り立ちをご紹介します。
2012年、韓国ソウル・大学路(テハンノ)。
1979年生まれの一人の女性、若きクリエイター
ソ・ユンミさんによって『ブラック メリーポピンズ』は生み出されました(脚本・演出・音楽)。
俳優のキム・スロさんによるプロデュース公演、その名もキム・スロプロジェクト第3弾として小劇場公演としては異例の大ヒット!初演以来、
今年で第3演目を迎える人気作となったのです!
ソウルでの上演は・・・6月10日~8月31日!!というわけで、行ってまいりましたソウル・大学路!!
大学路・アートウォンシアター1館にて上演中
地下鉄 4号線の恵化(ヘファ)駅2番出口から5分ほどのところにある
大学路・アートウォンシアターで現在『ブラック メリーポピンズ』は上演されています。
客席は400席弱、日本公演よりだいぶ密な空気を共有できる空間です。
演出や物語の枝葉の部分など、率直な感想は・・・日本版と全然違う!!日本→韓国と観て、また日本版で確かめた~い!!そんな欲求がふつふつと湧いております。
スタイリッシュでエンターテインメント性が高い日本版と、
目線の動きや息づかいまで伝わるような緊張感とよりスピーディーな展開のオリジナル版、それぞれの
劇場規模に合った魅力の見比べも面白いですよ。
東京での公演は7月20日まで!当日券も発売されるのでまだまだ間に合いますよ♪韓国公演の様子はこちらで。カーテンコール(撮影可能)の写真をどうぞ。
日本版のステージ
日本公演舞台写真撮影:難波亮
おけぴ取材班:chiaki(文・一部写真撮影) 監修;おけぴ管理人