『エリザベート』『レディ・ベス』のミヒャエル・クンツェ(脚本・歌詞)とシルヴェスター・リーヴァイ(音楽・編曲)、小池修一郎(訳詞・演出)のゴールデントリオによるあの大人気ミュージカル『モーツァルト!』が帰ってきます!
世界初演より15年、天才音楽家モーツァルトの35年の生涯を描いた衝撃のミュージカル。
タイトルロールはこの公演でヴォルフガング役卒業となる井上芳雄さんと前回公演から同役を務める山崎育三郎さんのダブルキャスト。ミュージカル『モーツァルト!』製作発表の様子をレポートいたします。
会見に先立ち、ウィーンから届いたリーヴァイさんの愛情いっぱいのメッセージ、また、病気療養中でこの日ご欠席された市村正親さんからも「パパの帰りを待っていてください」とヴォルフガングの父レオポルト役らしいメッセージのご披露がありました。作品の、カンパニーのお父さんからの言葉に会場の空気が温かくなったところでいよいよ豪華キャストの登場です!
みなさんのコメントを演出の小池修一郎さんの期待の言葉を交えながらご紹介いたします。
【ヴォルフガング役:井上芳雄さん】小池さん)
2002年の初演から、5回目のヴォルフガング役。ことさら前回公演から今回に至る間に俳優として大きな成長を遂げた井上芳雄さん。これまでは想像して演じていたモーツァルトの晩年を、ほぼ同じ年齢となったことで自分の生き様と重ね実感を持って演じてくれることでしょう。30代の大人の俳優としての表現に期待します。井上芳雄さん
井上さん)
今回でヴォルフガング役を卒業させていただきます。
モーツァルトが亡くなった35歳を自分の中の区切りとして、自分が35歳になるまでヴォルフガング役を演じることができたら幸せだなと思っておりました。こうしてそれが実現し幸せです。
先日ウィーンへ行き、モーツァルトの足跡をあらためて辿ってきました。また、新しいキャストの方も加わり、市村さんも前回以上に元気になって帰ってきてくださると信じていますので、最後ではありますが軽やかに、新しい気持ちで『モーツァルト!』を作っていければと思っております。「歌って動いて・・・体力的にもきついので若者に譲っていこうかな(笑)」と冗談も交えながらファイナルヴォルフガングへの意気込みを語られた井上さん。ご本人の口から
“卒業”の言葉を聞き、ついついこちらがセンチメンタルに陥りそうになるところで飛び出した
“軽やかに”との言葉。ファイナルにして新しい井上ヴォルフガング、みなさんその目にその心に焼き付けましょう。
【ヴォルフガング役:山崎育三郎さん】小池さん)
山崎育三郎さんは前回、ヴォルフガング役を無我夢中、体当たりで演じてくださいました。今回は少し落ち着いて、青春の真っ只中にいる彼ならではのビビットな感性でもう一度このヴォルフガングの生き方に向き合って演じてくれると期待しています。
井上君の青春も終わったわけじゃないと思いますけど(笑)。「青春。はい、終わりました!」
山崎さん)
ファイナルまであと7年ある、山崎育三郎です(笑)井上さん)
別に、35歳で辞める決まりはないんだよ!小池さん)
そうそう、初演の時、市村さんが「あと10歳若ければ、この役は自分がりたかった」としきりに仰っていて、その時50歳を過ぎてらっしゃいましたので、35歳を過ぎても・・・(笑)次々にマイクを手に話し出すお二人に思わず・・・
「ここ僕のコーナーなんですけど・・・(笑)」
はい!気を取り直して!
山崎育三郎さん
山崎さん)
前回は帝国劇場初主演、“帝劇のセンターに立つ”ということで、稽古場から不安と緊張の毎日で…記憶がないくらい本当にがむしゃらでした。あれから4年、いろいろな経験をさせて頂きました。28歳の今の自分ができる全てを出し切りたいと思います。また、僕も今年初めてウィーンへ行き、モーツァルトの家や散歩した公園をめぐる中で、自分の中に新たに生まれたものがあります。4年前とは違う自分が見せられると思います。頼もしい言葉です!先日のインタビューでもヴォルフガング役への並々ならぬ情熱をお話されていた山崎さん。確かな技術と若き情熱でまた新しい姿を見せてくれるだろうという期待が大きく膨らみました。
【ヴォルフガングの姉ナンネール役:花總まりさん】小池さん)
ヴォルフガングの子ども時代は子役(アマデ)が演じるのですが、(姉の)ナンネールは本人がやるという・・・(笑)、推定年齢10歳からラストシーンでは40歳くらいかな。サイドストーリーとしての姉の一生をしっかりと見せてくれると期待しています推定年齢10歳には・・・思わず
こちらも気を取り直して!
花總まりさん
花總さん)
『モーツァルト!』は初参加になります。素晴らしい作品にナンネール役で参加できることを嬉しく思っております。難しい役だと思いますが、一生懸命頑張ります。どうぞよろしくお願い致します。【ヴォルフガングの妻 コンスタンツェ役:平野綾さん】
小池さん)『レディ・ベス』でもご一緒している平野さんはご存じの通り大変優れた歌唱力を持った女優さんです。また、エリザベス1世のような役からテレビなどで見せるおとぼけキャラまで、キャラクターが実に幅広い。エゴが強いけれど情も深いコンスタンツェをどう演じてくれるのか、とても楽しみです。
平野綾さん
平野さん)
『レディ・ベス』に続き、リーヴァイさん&クンツェさんの作品に出演できとても嬉しいです。去年のちょうど今頃『レディ・ベス』のオーディションがあり、その時の課題曲がコンスタンツェの『ダンスはやめられない』だったとこが思い出されます。実はその時すでにコンスタンツェ役を演じることが決まっていましたので1年越しで、やっとこの役を演じられることがとても楽しみです。私なりの役作りができたらいいなと思っております。【ヴォルフガングの妻 コンスタンツェ役:ソニンさん】
小池さん)今回初めてご一緒するソニンさんはニューヨーク留学もされた大変実績・実力のある方です。ぜひ本場のミュージカルの味わいも加えていただきたいなと思います。
ソニンさん
ソニンさん)
『モーツァルト!』は日本で何度も上演され、愛されている作品なのでそこに参加できることを光栄に思っております。そして、個人的にモーツァルトが作った曲が大好きでよく聴いているので、彼の人生の一部である妻の役を担うことになり、嬉しく思っています。初参加ですのでとても緊張、恐縮していますが、新しい風をビュッと吹かせられるように頑張ります。【ヴァルトシュテッテン男爵夫人:香寿たつきさん】
小池さん)香寿さんは4回目のご出演。『シェルブールの雨傘』の初演を拝見した時、香寿さんが演じる(ヒロインの)お母さんが大変魅力的でした。このお母さんが、娘の再婚相手と結婚してもいいのではと思ったくらいです(笑)。今回も、艶っぽい香寿さんの男爵夫人を楽しみにしています。
香寿たつきさん
香寿さん)
初めてこの役を演じたのは9年前になりますが、そこから歳を重ね、その分重みのある男爵夫人を演じられたらなと思います。私の中で一つの役をこんなに長い間演じることも初めてですが、それでもこれほど歌う前に緊張する作品はありません。【ヴァルトシュテッテン男爵夫人役:春野寿美礼さん】
小池さん)新しく加わられた春野さんはノーブルな雰囲気が魅力の一つです。役に必要な知性と品格を上手く表現してくれるのではと思っています。今日聴かせてくれるという歌も楽しみです。
春野寿美礼さん
春野さん)
『星から降る金』という歌は今まで幾度となく耳にした曲です。聴く度に心地よさを覚えていましたが、実際に自分が歌うとなると、とてもエネルギーのいる歌だなと実感しております。ミュージカル出演も久々にもなりますので、キャスト・スタッフのみなさまのお力をお借りしながら一生懸命務めて参ります。【コロレド大司教役:山口祐一郎さん】
小池さん)ウィーンミュージカルはこの方がいたからこそ日本に定着しました。“ミュージカルの守護神”山口祐一郎さんです。またこうして山口さんの『音楽の魔術』が聴けるというのは、ミュージカルに携わっていてよかった思う瞬間のひとつです。
山口祐一郎さん
山口さん)
お稽古場と舞台上で新しい風を受けて、自分もちょっと新しくなりたいとこっそり思っています(笑)。また、何年も演じているので役に重みが増すというお話がありましたが、私にはそれが一番難しいんじゃないかと。
それから青春・・・真っ只中の方、ぼつぼつ終わりかけている方、とうの昔にそういうのは終わってしまったという方も(笑)、みなさん劇場に来て、このモーツァルトの夢のようなひとときを過ごしましょう。チャーミングな守護神♪
【質疑コーナー】この作品が復帰公演となる市村さんについて・・・
井上さん)
『モーツァルト!』では親子の間柄を演じさせていただいています。それはとても特別です。“父と息子の関係”は作品のひとつのテーマでもありますし、どこか常に市村さんのことを“演劇界のお父さん”と思っているふしがあります。市村さんもまた僕たちのことをそういういう目で見てくれています。今日お父さんがいないのはとても不安ですが、稽古場での再会の時を、楽しみにしています。
山崎さん)
初共演作は『ラ・カージュ・オ・フォール』、市村さんは僕の“お母さん”でした(笑)。『モーツァルト!』ではお父さん役をやって頂いたので、市村さんには“両親”ともやっていただいたことになります。食事に連れていっていただいたり、舞台袖で励ましやアドバイスを頂いたりと普段から親子のような関係を築けています。また市村さんのお芝居からたくさん勉強させていただくのを楽しみにしています。他のキャストのみなさん、初共演の方からも長いお付き合いの方からも市村さんの復帰を待つ言葉の数々が聞かれました。
最後を締めるのはやはりこの方!
山口さん)
今、みなさんがお話しされたこと、「市村さんを待っています、尊敬しています」という・・・。この仕事をやっている仲間たちの敬意、愛があふれる、とってもチャーミングな記者発表になったこと、きっとこれが市村さんのご快復のためのエネルギーになることと思います。稽古場での素敵な再会を信じております。ひと言ひと言噛みしめるようにお話ししてくださった山口さんの言葉の温かさにグッときてしまいました。温かい家族のようなカンパニーです!
続いては、みなさんお待ちかねの歌唱披露コーナー!
公式HPにて動画も公開されておりますが、こちらではお写真でご紹介。
♪ダンスは止められない(コンスタンツェ役:平野綾さん)ヴォルフガングとコンスタンツェは愛し合い結婚したものの、夫は作曲と放蕩にふける日々。夫婦関係に陰がさし、コンスタンツェはひとりパーティに出かけるようになる・・・激しくも切ないナンバーです。
♪星から降る金(ヴァルトシュテッテン男爵夫人役:春野寿美礼さん)コロレド大司教の策略により音楽の仕事に行き詰まるヴォルフガングに彼の理解者である男爵夫人がウィーンに出て広い世界を知るべきだと導くビッグナンバーです。
慈愛の中にある凛とした気品、伸びやかな歌声です!!
♪僕こそミュージック(ヴォルフガング役のお二人)素晴らしい音楽を次々に生み出すヴォルフガングの魂の悦び!!
モーツァルトを象徴するナンバーのひとつです。
僕こそ
ミュージック!
Wヴォルフガングが舞台上にというのも製作発表ならでは
最後に井上さんからご挨拶がありました。
井上さん)
『モーツァルト!』は日本でもとても愛されている作品です。もちろん天才作曲家、モーツァルトの一生の話ではありますが、一人の人間がどういう運命を背負って、それにどう対峙してきたのかという大きなテーマを扱った作品でもあります。そこが日本で愛され続ける理由でもあるのではないでしょうか。今の自分たちが作り、今のお客様に観ていただく『モーツァルト!』を、新しいメンバーと共に作り上げ、また新しい作品をお見せできると思いますので、ぜひ劇場にお越し下さい。東京と大阪で、皆様をお待ちしております!【囲み取材抜粋】--モーツァルトという人物にに共感する部分を尋ねられ
山崎さん)
“ありのままの自分を見てほしい。自分は自分でしかないんだ”という生き方にとても共感します。彼のセリフや心情に助けられる部分が沢山あり、自分と重なる部分もかなりあります。職業柄もあるのかな。
井上さん)
苦しみながらも音楽家として新しい境地を切り拓いたモーツァルト。フリーの音楽家として活躍したのは彼が初めてじゃないかとも言われていますよね。音楽を一部の偉い人だけでなく普通の人、たくさんの人に聞いて欲しいんだという提案も現在にも繋がるものがあります。また、自分の経験をそのまま音楽に投影するのではなく、あくまでも軽やかな音楽で表現する彼の姿勢、表現の仕方はそうありたいなと思います。【おまけ】
すらりとした立ち姿にうっとり♪
おけぴ取材班:おけぴ管理人(撮影)chiaki(撮影・文)