新国立劇場初!3ジャンル横断のファミリー向け企画
『夏のこども劇場セット』。
おとなもこどももワクワクするよう素敵な企画に携わるみなさんの言葉はまるで
魔法のように気持ちを高めます。
企画についてのお話を中心にお届けした
レポ前編に続いて、後編では前編でお届けしきれなかった意気込みと
こどものころの舞台劇場体験の思い出をご紹介。
まさに十人十色のコメントから導き出されるのは
「こどもにこそホンモノ!」の大切さ。
夏の思い出にも、新しい扉にもなる
『夏のこども劇場』への期待が高まりました。
左より)ダンス「サーカス」川瀬浩介さん(音楽)、ひびのこづえさん(美術・衣裳)、森山開次さん
バレエ「シンデレラ」長田佳世さん、小野絢子さん、米沢 唯さん、細田千晶さん
演劇「かがみのかなたはたなかのなかに」より 長塚圭史さん、首藤康之さん、近藤良平さん
公演順にコメントをご紹介いたします。
★ダンス公演『サーカス』★
森山開次さん(演出・振付・アートディレクション・出演)、ひびのこづえさん(美術・衣裳)、川瀬浩介さん(音楽)
森山開次さん --こどもの頃の舞台・劇場体験僕がダンスを始めたのは大人になってからです。
こどものころはダンスどころか盆踊りの輪にも入れないようなこどもでした(笑)。
舞台との接点も無く、学校の芸術観賞会では…すみません、一番後ろで眠っていました。
今回、『サーカス』を見に来てくれたこどもたちを寝かせないように頑張ろうと思います。
小さい頃、もっと前にさかのぼると
幼稚園の学芸会で『赤ずきんちゃん』のオオカミ役をやりました。
赤ずきんちゃんが僕の好きな子で、ガオーッと脅かせませんでした。その頃の僕はちょっとぽっちゃりしていて、色白で赤面症…コミュニケーションを取るのが下手で。でも、なぜか僕がオオカミで…、もう一人の男の子は目のパッチリした王子様っぽい子で嫉妬しながらやっていました。それが初めての舞台の思い出かな(笑)。
それが今になってこうやってみなさまの前で、舞台の上で踊っているという不思議さを感じます。今回、舞台に立った時は、
客席に少年時代の自分も置いておきながらやりたいなと思います。
森山さんの正直な思い出披露にシンデレラたちも思わず笑顔に
ひびのこづえさんコメント中に一節口ずさんでくださるサービスも♪
--公演への意気込み森山さん、川瀬くんとは「LIVE BONE」という作品を作り続けており、そこには大人からこどもまで楽しんでもらいたいという私たちの願いが込められております。今回の企画を聞きつけ、「やりたい!」とお願いして、やらせていただくことになりました。
意気込み過ぎて開次さんにいっぱい迷惑をかけそうな気がしています(笑)。
--こどもの頃の舞台・劇場体験私のこどものころは通知表に「こどもらしくない」、「大人びていてかわいげがない」ということを毎回書かれていました。ですので、今、「にほんごであそぼう」とかこども向けの番組をやっていますが、
決してこどもにかわいいものを見せようとかそういう気持ちは一切ありません(笑)。「こどもだって怖いものも見たいしカッコいいものも見たい!私たちが見たいものを見たいんじゃないか」、その気持ちだけでモノづくりをしています。
私がこどもころにみたこども向けの舞台って内容は全然覚えていないんですよね。ただ、テーマソングは覚えていて、今でも口ずさむくらいなんですよ(笑)。
『サーカス』では、ぜひ川瀬くんにそういうテーマソングを作ってもらいたいなと心から願っております」
マイクと共に大きな期待が手渡された瞬間です♪
これはちょっとプレッシャーか?!(笑)
川瀬浩介さん --公演への意気込み開次さん、こづえさんとともに行っている「LIVE BONE」はこのような図式で成り立っております。こづえさんが歌いだした瞬間に、プレッシャーの予感が…。
こうしてやってきた活動の一歩進んだところにあるのが『サーカス』になります。今はプレッシャーが空回りしている感もありますが、
初日には、みなさんに喜んでもらい、帰りには口ずさんでもらえるようなメロディを、記憶を作れるように精進しているところです。
--こどもの頃の舞台・劇場体験僕の少年時代は
完全な野球少年でした。その中で、母は舞台やコンサートに連れて行ってくれ、特に印象的だったのはイギリスのロックバンド
Queenの来日公演です。
ロックコンサートってとにかくスケールの大きさが大好きで、無駄にデカイ音量、無駄に明るい照明、無駄なアクション、内容は具体的には覚えていないのですが、
お客さんが楽しんでいる様子だけは覚えているんですよね。
その頃は音楽をやるとは思っていませんでしたが、今は期せずして作り手の立場におります。大好物のプレッシャーを糧に防御のための脂肪を蓄え、いい成果を残したいと思います(笑)。
★『かがみのかなたはたなかのなかに』★
長塚圭史さん(作・演出・出演)、首藤康之さん(出演)、近藤良平さん(振付・出演)
長塚圭史さん --こどもの頃の舞台・劇場体験僕は演劇を見る機会の多かった少年でしたが、なかでも強烈に覚えているのは
別役実さんの「雰囲気のある死体」です。「怖いなー」と思いました。こどもがああいうものを見てもやっぱり反応するんですよね。かわいらしいこども劇を見ても何も思わなかったのが、
「見ちゃいけないものを見た!」感覚があり、一番ワクワクしたのを覚えています。
ひびのさんが言うように、僕もそういう風に
目線を下げ過ぎずに作っていくのが大事で、その上で遊び心満載で作れたらいいんじゃないかと思います。
変に“こどもこども”というわけではなく、“見ていけないものを見た時の興奮”そこからこどもの中に眠っているものを引き出せたらなと思います。
近藤良平さん --公演への意気込みこのセット企画、いいですね。
3公演セットで6800円(小学生)ですよ!これは素晴らしいですね。あと、こうやって一緒に(各公演)集まると横の繋がりができていいことだと思います。
お互いに応援したくなる気持ちが、今、湧いてきました。お得感をアピールする近藤さん、いやいや、本当にお得なんです!
こどもの企画なのか大人の企画なのか僕もよくわかっていないんですけど(笑)、
こどもじみたことをやりたいとは思っていないんですよ。自分たちのやりたいことを素直に舞台にぶつけることだと思います。
で、
前回は思いのほか、本当にセリフが多かったのでそれだけは阻止したいと思います。本当に、具合悪くなっちゃうよね。
--こどもの頃の舞台・劇場体験近藤良平さん)
こどものころは南米にいたので
サッカー少年でした。
日本に帰って来て
ドリフターズを見たときのショックは大きかったですね。
本当の舞台を見たわけじゃなくてテレビを見ていたんですけど、8時から。8時から始まってきっかり1時間で終わって、また来週も見られるというあのライブ感!
他はなにも見ていないです、サッカーの試合しか見ていないです。よろしくお願いします。
首藤康之さん --公演への意気込みこうして
演劇部門に僕がいるんですね(笑)。
前回と全く同じキャスト、スタッフで創作できることを楽しみにしています。
前回はなにしろ
アウェイ感がバリバリで、セリフには苦労しました(笑)。
今回は…(動きがいっぱいと聞き)ちょっとホッとしています。※
レポ前編の長塚さんのコメントをご参照ください
--こどもの頃の舞台・劇場体験初めての劇場体験は9歳のとき、
森繁久彌さんの「屋根の上のヴァイオリン弾き」というミュージカルを観ました。
九州の大分出身なんですけど、なかなか舞台公演はなくて。それがちょうど僕の誕生日に公演があり、母がチケットをプレゼントしてくれました。チケットを誕生日まで大事に持っていて、それをホワイエで切ってもらって客席に入って、
緞帳が上がったら舞台の上は別世界!すごく衝撃的でした。
その瞬間
「僕は一生この劇場空間で生きていきたい」と思いました。
「屋根の上のヴァイオリン弾き」は、こどもらしい作品でなくユダヤのちょっと暗い作品ですが、それでもずっとそのフォトが脳裏に焼き付いていて、そして今、この仕事をやっていることに繋がっています。
見に来てくれたこどもたちにとって、パフォーマンスだけでなく、
新国立劇場の空間の素晴らしさも含めたすべてが思い出になり、何かに目覚め、将来舞台活動に繋がっていってくれればいいと思います。
★こどものためのバレエ劇場『シンデレラ』★
シンデレラ役の4人のバレリーナ小野絢子さん、米沢唯さん、長田佳世さん、細田千晶さん
小野絢子さん --こどもの頃の舞台・劇場体験4歳年上の姉がバレエをやっていたことから、私にとって舞台は身近な存在でした。
物心ついた時からバレエや人形劇やお芝居へ連れて行ってもらいました。
いつも客席で見ているのに、登場人物になって舞台にいるような感覚を味わっていて、それから
一週間くらい真似をしたり、踊ってみたりしているこどもでした。
これまでにも「こどもバレエ」公演を行っていますが、こどもは私たちにとって怖い観客でもあります。つまらないと寝てしまったり騒いでしまったりするので(笑)。
その半面、面白いと会場はすごく温かく、力をもらえます。
彼らが劇場を後にするときには踊って帰るぐらいの舞台をお届けしたいと思います。
米沢 唯さん --こどもの頃の舞台・劇場体験私は小さい頃から両親に連れられて、いろいろな劇場や赤テントの芝居に連れて行ってもらいました。その時に見たものの中で、ずっと覚えているのは
マルセル・マルソーのパントマイムです。
舞台上には一人しかいないのに、いろんなものが見えることが不思議でした。女の人と愛を語らったり、花が咲いたり、悲しんだり、それが不思議でした。私もそうやって覚えていただけるような舞台を作りたいと思っています。
長田佳世さん --こどもの頃の舞台・劇場体験「くるみ割り人形」をみたのがきっかけでバレエを始めました。
公演の終演後に「私もバレリーナになる!あんな風な舞台に立ちたい!衣裳着てみたい!」と母にバレエ習わせてとお願いしたのを覚えています。そうして今バレエをお届けする立場になりました。
この夏、一人でも多くのこどもたちがバレエや芸術、様々なものに触れて何か一つでも感じてもらえればうれしいです。
細田千晶さん --こどもの頃の舞台・劇場体験こどものころは、両親が舞台をたくさん見せてくれる機会をくれ、それを毎回楽しみにしていたのを覚えています。結果こういった仕事に就いたのは、
小さなころの体験が少なからず影響していると思います。ほかにも絵画教室やクラシック音楽鑑賞などもこどものころの経験がもとになり今でも大好きなことがあります。
こどもたちが異なるジャンのものをたくさん見て、感性や個性を磨いて将来の可能性を広げる、その手助けができればと思います。
最後にこの日は登壇されなかった『かがみのかなたはたなかのなかに』ご出演の松たか子さんについて。長塚圭史さん)お子さんが生まれてすぐ、大変な時期だよと言ったんですけど、でもやりたいと言ってくれた
彼女の心意気がうれしいです。
前回、松さんが稽古に参加されなかった日に
僕ら男3人だけで稽古した時は、さみしいさみしい。松さんがいないと稽古が全然前に進まないんですよね。松さんがいないと何をやってむなしくなったりして(笑)。
なんか
彼女がいるから僕らも輝けるみたいな、また一緒に芝居を作るのを僕も非常に楽しみにしています。
出演者フォトセッションから一枚…実はお一人足りないんです。
みなさんの視線の先には近藤良平カメラマンが!!
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文) 監修:おけぴ管理人