使っている人の言葉の
それぞれが日本語で、
その総和が日本語なのだ
──── 井上ひさし後列)山本龍二さん(会津弁)、佐藤誓さん(遠野弁)、竹内都子さん(河内弁)、森川由樹さん(米沢弁)
後藤浩明さん(英語)、田根楽子さん(江戸下町言葉)、那須佐代子さん(江戸山の手言葉)
前列)朝海ひかるさん(薩摩弁)、八嶋智人さん(長州弁)、久保酎吉さん(薩摩弁)、たかお鷹さん(京言葉)
土屋裕一さん(名古屋弁)の不在の理由は劇場で!
【寄せられた感想をご紹介いたします♪】
◆「日本語とはなんと豊かなのだろう、と実感させられる舞台でした。
地方独特の訛りや言葉、生活と結び付いた人類の叡知の結晶。と同時に、権力が言葉を狩ることの恐ろしさもひしひしと感じました。
私たちは言葉を、日本語を守っていかなくてはならないと感じました」
◆「まずは、個々の俳優さんのよどみないお国訛りに脱帽。
“八嶋清之輔”は真面目で我慢強く人のよい官吏を軽妙に好演。
会津訛りと名古屋訛りが強烈な印象。言葉を変えることは思考回路を変えるという重大なこと。
今も多民族(多言語)国家の複雑さと争い。他の言語を押し付けられた人々の怒りと怨みは続いています。
劇中で度々唄われる小学唱歌の日本語のなんと美しく清涼感に溢れていることか。
今の日本語の乱れを嘆くとき、虎三郎の手紙は心に滲みました」
◆「清之輔がたどり着いた「文明開化語」には大笑いしながらも、
「なるほどこうくるか」と感心。笑わせただけ結末はいっそう悲しいものでした。
「むつかしいこと」を「やさしく」て「おもしろく」そのうえ「ふかく」を追求する井上作品炸裂でした」
◆「タイトルこそ「國語元年」とややいかめしいですが、誰もが日々使っている「言葉」についての物語で、楽しく観られるお芝居です。特にいろいろなお国言葉が出てきてわかったりわからなかったりがまた面白い(わからないからこその面白さも!)。
笑って観ながら、いつの間にか「言葉」って何だろう、自分とどう結びついてるんだろうと考えさせられました」
◆「皆さんよかったのですが、八嶋さんの生真面目っぷりと、たかおさんのバカ殿っぷり(元お公家だけど)が素晴らしい(笑)褒めてます!」
◆「なんと言っても俳優さん達が繰り広げる「お国訛り!」
機関銃のように発せられる、訛りの台詞!すごいです。聞き取れないこともしばしば。
でもリズミカルな抑揚に、内容ははっきり分からないのだが、心地良い。全国統一話し言葉が必要だったのか!?と、考えさせれる舞台でした。
笑いの中に政府への批判をのぞかせる、井上ひさし節を堪能できます」
◆「いくつものお国言葉が飛び交い、セリフの意味がよくわからなかった。
でも、南郷家の皆が感じているのはまさにこの状態!!一員になった気分だ。
出演者皆さんのチームワークの良さが出て、見ていて吹き出したり、ツボにはまったり。特に久保さんの薩摩人のチェストォー、朝海さんの意外にたおやかな薩摩弁、たかおさんの公家言葉、山本さんの二割しか聞き取れない会津弁、聞き所が満載」
◆「出演者の皆さんがとても達者で、お国訛りも上手すぎるので時々何を言っているのかわからなくなるくらいでした。
朝海ひかるさんのおっとりした奥様ぶりと女中頭の那須佐代子さんとのコンビが良かったです」
◆「ふるさとを持つ全ての人が、それぞれにふるさとを思い出したり懐かしくなったりすると思います。標準語に慣れた生活でも、やっぱり、より感情が伝わる言葉は生まれ育った所の言葉ですね。
お芝居を見ていて、こんなにおもしろいのに感情を揺さぶられて涙を流したのは久しぶりでした」【稽古場レポート】
言葉を、日本語を、そして市井の人々を愛した井上ひさしさんの抱腹絶倒のお芝居が10年ぶりにこまつ座で上演されます!
明治七年、東西の話し言葉がテンデンバラバラだった頃。文部省官吏の南郷清之輔に「全国統一の話し言葉を制定せよ」という命令が下った。そこからはじまるあれやこれやの大騒動を幻の小学唱歌を織り交ぜながら描く『國語元年』の衣裳つき通し稽古にお邪魔してまいりました。
近代国家として西欧諸国に肩を並べるため、まず体裁を整えることに躍起になる政府のもと、「話し言葉の全国統一!」の命を受け、実直に職務に励む役人と彼を支える家族のおかしくて、楽しくて、やがて悲しき人間模様。
「お国ことば」の見本市のような南郷家の人々をご紹介いたします。
主人の清之輔(八嶋さん)は長州弁、妻の光(朝海さん)と妻の父の重左衛門(久保さん)は薩摩弁という家族
こまつ座初登場となる八嶋さんが演じる清之輔は真面目で一生懸命、こうと思ったら猪突猛進!失敗したら思い切りへこんで、でも家族の励ましで復活!
クルクルと変わる状況ごとに見せる八嶋さんのリズミカルなお芝居が心地よいです。
心の中で清之輔がんばれ!と応援しつつ、姿を見せることなき上司の田中なる人物に振り回される勤め人の悲哀も透けて見えたり…。
ふわ~っとした魅力で夫を支える美人妻には朝海ひかるさん。おうちでこんなかわいい奥様が待っていたら、清之輔ならずとも頑張っちゃいますよね!!
そして、久保酎吉さん演じる義父の重左衛門は誇り高き薩摩の隼人健児!変わりゆく世の中でも譲れないものは譲れないご隠居さんです。
奉公人も色とりどり!三人の女中は江戸下町のべらんめえ調、江戸山の手言葉に羽前米沢のズーズー弁。おまけに車夫は南部遠野弁で書生さんは名古屋弁…そこに大阪河内弁で怒鳴りこんできたお女郎さん、国学者を名乗る京言葉のお公家さんも居候。
そりゃもう全国統一以前に、家庭内大騒動が巻き起こるわけです!
それにしても、竹内さん演じるちよさんは登場からインパクト抜群!
ちよさんがぐいぐい迫るものですから…奥様…
でも、ちよさんは旦那様をどうこうというわけでなく、心づくしのおもてなし?!
そしてそして、素敵なのはそんな風に怒鳴り込んできたお女郎さんも、気がついたら女中さんとして同居しているような、温かい“和”のある南郷家の懐の深さ。
そんな南郷家を冷静に支える加津さん(那須佐代子さん)はじめ、ひとりひとりのバックグラウンドもしっかりと描かれています。
それぞれの来し方と話し言葉の密接な結びつきにじーん。
写真中央はお公家さん裏辻芝亭公民を演じるたかお鷹さん。出オチか?!というような独特な風貌ですが、出オチにとどまらない一挙手一投足があつかましいという、井上作品の中でもかなりのくせ者です(笑)。
さらにさらに、物語のキーパーソンともいえる会津の士族、若林虎三郎(山本龍二さん)がやってきて…。
果たして清之輔はどのような「全国統一話し言葉」に辿りつくのか。
山本さん演じる会津の虎こと虎三郎の終盤での台詞に思いを寄せる帰り道。
ぜひ劇場で頭と心で受け取っていただきたい、素敵な台詞です!
こうして賑やかで個性的な面々が織りなす、群像劇というかホームドラマというか…。その芝居のアンサンブルを創り上げるのは演出の栗山民也さん。
すごく密なエネルギーのある、くさびのように心に突き刺さる台詞が飛んで来たかと思ったら、しみじみ心にしみわたる小学唱歌(架空ながら懐かしさを感じる!ピアノ演奏はもちろん後藤浩明さん)が届けられたりと舞台からたくさんの贈り物をもらえるような作品に仕上がっています。
ことばって何だろう、日本語ってなんだろう、そして国ってなんだろう。お芝居の楽しさと、今上演されることの意味が両輪となって突き進む『國語元年』。
ぜひこの機会をお見逃しなく!
井上ひさしさん×栗山民也さんの劇世界を生きる八嶋智人さん、必見です!!
【おまけ】
井上作品の中でも『黙阿弥オペラ』好きなおけぴスタッフとしては、同時代を舞台とする『國語元年』もずっと見たかった作品のひとつです。その国に生きる人の心をないがしろにしてはいけない。それを改めて気づかされる、好きな作品がまたひとつ増えました。
おけぴ取材班:chiaki 監修:おけぴ管理人