【舞台写真掲載】 鄭義信×観月ありさ×近松門左衛門 『GS近松商店』観劇レポ


(※舞台写真は、掲載期間を終えました)


鄭義信×観月ありさ×近松門左衛門

10月14日まで、大阪の新歌舞伎座にて上演中の『GS近松商店』。
関西の片田舎にあるガソリンスタンドを舞台に、愚かで、生々しく、ジメッと残酷な人間たちが絡みあう、けれどもどこかエンターテイメント(!?)舞台の模様を、おけぴに寄せられた感想コメントとともにお届けいたします!


(◆青字は寄せられた感想コメント)



◆いくつかの近松戯曲をベースにしていますが、ストーリーを知らなくても大丈夫!
知っている人は元ネタとの比較も面白いかも。

◆歌舞伎をヒントにしてあるので歌舞伎を観たことがあるなら二倍楽しめると思います。


近松門左衛門『女殺油地獄』『曽根崎心中』をもとに、ガソリンスタンド「近松商店」を経営する家族、そして周囲の人々との愛憎を描くこの作品。

作演出は『ザ・寺山』で岸田國士戯曲賞受賞後も『焼肉ドラゴン』『しゃばけ』、映画『血と骨』『愛を乞うひと』などで、生きていく人間の姿を描き続けている鄭義信さん

そして主演はテレビでみせる元気で明るいキャラクターでお馴染みの観月ありささん

…なのですが、今回の舞台では「寂れたGS(ガソリンスタンド)を切り盛りする、足が不自由な人妻・菊子(夫は浮気中)」という、いつもとは180度ちがう印象の役柄に挑戦です。

金と情に縛られ、身動きが取れなくなり、殺人、心中へと突き進む二作をモチーフにしているだけに、物語はやるせなく凄惨な結末へと向かいますが…けっして重くて暗い、わけではございません!


◆破滅に向かって行くストーリーなのに、これでもか! と笑わせてくれる。
スピード感があって、面白かった。



胸が苦しくなるような展開、かと思いきや、舞台の空気が重くなりすぎる前にガラリとテンションを変えるユーモラスさ。
鄭義信さんらしく、随所に、しつこいほどの(!)笑いを盛り込み、観客のハートをつかみます♪

(ほっしゃん、こと星田英利さんのボケ炸裂♪)
(升毅さんも前半、笑いのアクセルを踏み込みますよー!)
(謎の旅芸人を演じる山崎銀之丞さんの前説も楽しい!)



◆少々強引な話の展開も、出演者の方々の熱演で見ごたえのある作品でした。

◆登場人物の誰にも共感できるところがなかったのもある意味すごいなぁ



そう、観月ありささん演じる菊子の周囲の人々。
これがまた全員、情けなくて、弱くて、でも愛おしくなるような人間、なのでございます!

“共感できない”=カッコつけていない、リアルな人間たち。
愛と勇気! とか、正義! 仲間! 絆! 的なキーワードは全く登場いたしません。


◆観月さん小島さん朴さんの美しさが救いであり、それぞれが求めた幸せの先が切ない。

◆石田えりさんの早着替えもさる事ながら、対極の役を瞬時に演じわける姿は本当に圧巻。

◆渡部豪太さんの鬼気迫る演技は胸に痛かった。



疎外感を抱えながら生きてきた吃音の青年・光を演じる渡部豪太さん
偶然、菊子に優しくされたことから、まるで子犬のように彼女にまとわりつき、瞳をキラキラさせて愛を語る姿が…可愛すぎます!
しかしそのスイートなテンションのまま、ラストの衝撃に突き進む狂気…渡部さんの熱演、ぜひ劇場で。

小島聖さんが演じる菊子の姉・百合子は、片田舎で美貌を持て余している様子が絶妙。
彼女とくっついたり、離れたりを繰り返す元恋人役のみのすけさん、「少年の心を持つおっさん」ぶりは必見。うまいっ!

タイミング悪く不幸が重なり、追いつめられていく菊子の兄を演じる升毅さん。朝ドラ(「あさが来た」)のお父ちゃん役とは全くちがう、負の色気、情熱を感じさせる役柄です。
過去と金、情に縛られる彼と朴ロ美さん演じる中国人ホステスの道行に胸がつまります。
※朴ロ美さんのロの字は正しくは“王へんに路”

このほか、こだわりのヘアスタイルで笑いをさらう津村知与支さん(モダンスイマーズ)、健気だけどどこか怖い新妻役の平田敦子さんら個性派俳優のみなさまが舞台の上で大暴れ。
(かと思いきや、ふとしたときに繊細な演技も。このギャップがニクイ!)

「現実」と「芝居」を繋ぐような、不思議な立ち位置の役柄を、確かな技術でビシっとみせてくれる山崎銀之丞さん
そして「毅然とした、だらしなさ」と「優しい、残酷さ」、相反するキャラクターの二役を演じる石田えりさんの奮闘にも客席から大きな拍手が!


物語のクライマックス、油まみれになって“どこか遠いところ”へ旅立つ菊子=観月ありささんは、まるで人形のような美しさ
(真っ白い足が、油で汚れていく様子の色っぽさも格別です)

“人形”、そうまさしく人形浄瑠璃のように、硬質な存在感の中に凄絶な生の美しさを感じる瞬間、これは舞台でしか味わえない贅沢です。

“ユルイ笑い”に油断していると、ズブズブズブっと暗いところに引きずり込まれそうになる、鄭義信版・近松ワールド

花道を自転車が爆走! 軽トラのエンジン音が鳴り響く(!)大阪新歌舞伎座で、10月14日までの上演です。

お見逃しなく!



【公演情報】
新歌舞伎座新開場5周年記念
『GS近松商店』
近松門左衛門 原作「女殺油地獄」「曽根崎心中」より

平成27年9月27日(日)~10月14日(水)
大阪 新歌舞伎座

<出演>
観月ありさ/渡部豪太/小島聖/姜暢雄/朴ロ美※/みのすけ
今井咲貴/荒谷清水/平田敦子/星野園美/津村知与支
水谷悟/丸山英彦/山村涼子/松下太亮/チョウヨンホ
中山雅志/吉井基師/丹野未結/露木一博/星田英利
山崎銀之丞/升毅/石田えり
※朴ロ美さんのロの字は正しくは“王へんに路”です

<スタッフ>
作・演出:鄭義信
振付:広崎うらん
オリジナル音楽:久米大作

<概要>
近松門左衛門の名作「女殺油地獄」と「曽根崎心中」をモチーフに 現代人の孤独と心の闇を鋭く描く!
寂れたガソリンスタンド(GS)で巻き起こる愛憎劇。
じっとりとした閉塞感がぬぐえない、そんな暑い夏
県道脇にある寂れたガソリンスタンド(GS)を切り盛りしている人妻とその家族、
ある事件をきっかけに人妻の元に通うようになった若者。
関西地方のとある田舎町に巻き起こる愛憎劇。

大阪新歌舞伎座公式サイト
公演情報

写真提供:新歌舞伎座
おけぴ取材班:mamiko  監修:おけぴ管理人

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