<観劇速報>本を読み進めているように、じっくりとものがたりやキャラクターと向き合うことのできる魅力。
演劇だからこそのダイナミックな展開や緩急織り交ぜて届けられる出会いと別れ。
青木豪さんの作劇の仕掛け、
笠松泰洋さんの音楽の多様性(こころにはもちろん、身体にしみ込むような名曲揃い!)に唸る!
原作&舞台の魅力が掛け合わされた素敵な作品が誕生しました!
まるで本から飛び出てきたような
昆夏美さんの“星の王子さま”!王子さまの可愛らしさの中に、どこかさみしさを感じさせる奥行きのある芝居に引き込まれます。そして、のびやかな歌声は耳福~♪
伊礼彼方さん演じる飛行士は王子さまとの出会いや旅、ものがたりの中で“変化する人”、セリフや歌のシーン以外でも舞台にたたずむ飛行士から目が離せません。
廣川三憲さんは、まず、そのお声!昆さんの声は天から降り注ぎ、伊礼さんの声は地に足ついた等身大、そこに廣川さんの足元から響いてくるような力強い声は芝居を支え、ものがたりをぐんぐん推進させます。
あのメッセージも廣川さんのお芝居、声で届けられ…今も余韻に浸っています。
歌、芝居、そして声と三人三様だからこその絶妙ハーモニーで舞台に立ちあがった
音楽劇『星の王子さま』。
幸せで、深くて、チクリと痛くて…それぞれのこころにさまざまに作用する素敵な作品です。
公演はこれより埼玉、福井、東京、兵庫とめぐります。
東京公演はチケット残りわずかとのこと!東京近郊の方は12/19,20の埼玉公演が狙い目ですよ!<座談会レポート>12月12日に水戸芸術館にて開幕、その後、埼玉、福井、東京、兵庫で上演される
音楽劇『星の王子さま』。
脚本・演出の青木豪さん、メインキャスト
星の王子さま役の昆夏美さん、
飛行士役の伊礼彼方さん、
飛行士の親友レオン役の廣川三憲さんにお話をうかがいました。
写真左より)青木豪さん(脚本・演出)、伊礼彼方さん、昆夏美さん、廣川三憲さん
チームワークバッチリなみなさま♪
【これぞオリジナル音楽劇】
── まずは青木さんにうかがいます。今回の音楽劇『星の王子さま』、飛行士の親友レオンが登場するところがユニークですね。青木)子供のころに原作の『星の王子さま』を読んだ時、正直言うとよくわからなかったんです。それが、大人になった今、改めて読み返してみると「大切な人をあんまり大切にできていなくてごめんね」という話なのかなと思ったというのが、今回の創作の出発点です。
そして、それを教えてくれるのは大切な友達だったりするなと。
もちろん『星の王子さま』は様々な解釈のできる物語です。その余地は残しつつ、要所要所で、そういった僕の思った“星の王子さま像”を軸に据えて作っています。というわけで、レオンが出てくるんです。
──台本を読んでいても、レオンという視点がとてもしっくりきました。
また、ここは歌、ここは台詞というのはどうやって決めていかれたのですか。というのも、歌と台詞の自然な移行がとても印象的でしたので。青木)それは作曲の笠松(泰洋)さんとじっくりと相談しながら作っていった成果だと思います。
笠松さんから、星からやって来た王子さまの声は歌にしたいというお話があって、それいいですね!って感じで始まりました。その上で、この場面はちょっと…と感じたらそこは台詞になど、本当に密に連絡を取り合いましたね。一週間に一回会って、来週までにこのページを何とかしよう!と作り上げました。
──まさに二人三脚!オリジナル作品ならではの丁寧な創作作業ですね。
続いては、そうして作り上げられた脚本、音楽を演じ、歌うキャストのみなさんにうかがいます。実際にお稽古されて、いかがですか。昆)豪さん(青木さん)がおっしゃったように、お芝居から歌、歌からお芝居の流れがとてもきれいで心地よい作品です。
ただ、歌稽古の段階では今までやってきた中で一番手ごわかったんです。
王子さまの複雑な心境や飛行士に対する疑問、そういった揺れ動く感情がうまく音階になっているナンバーなので、感情ができていないまま音を取るのがすごく難しく、大丈夫かな…と一瞬不安になりました。
それが、実際にお稽古に入り、役として立って動いてみると、楽譜を見ているだけではわからなかったところがストンと落ちてくるんです!
まだまだ掴みきれていないところもありますが、そこはこれからのお稽古で仕上げていきたいと思います。
伊礼)この作品の中には、美しいデュエットや歌い上げ、ロックなどさまざまな歌がありますが、それはあくまでも表現のひとつ、芝居の延長なんですよね。こういうタイプの作品、すごく好きです。
そして、笠松さんが僕たちのキーに合わせて作曲してくださっているので、芝居をしていても自然な流れで歌に入れるんです。さらには、廣川さんと僕は複数役を演じるのですが、それぞれの役のキャラクターを反映したキーの曲になっているんです。同じ人間が同じようなキーの歌を歌うと、本質的な声は変えられないのでどうしても似たような歌声になってしまうんですよね。そこがこの作品では…非常によく考えられているんです。
今は稽古をしながら微調整をしている段階ですが、歌いつつも「これはお芝居だな」と感じています。これぞ音楽劇だなと。
廣川)僕はミュージカルの経験はありませんが、お芝居の中で歌われる歌は力がありますね。
王子さまという謎めいた存在、その人が発する言葉は、台詞より歌うほうがすんなり心に届いてくるんです。
王子さまのもっている透明感にピッタリな昆ちゃんのきれいな声で届けられるというのも大きいと思いますが、言葉の説得力が増すんです。
王子さまの言葉が歌で表現されるのは効果的で、作品が豊かになっている、稽古でそれを実感しています。
──廣川さんも歌われるんですよね!廣川)僕はオモシロ歌のみの担当で(笑)。
昆ちゃんとのハーモニーとかやってみたかったですけど(笑)、昆ちゃんと伊礼くんのお二人がキレイ歌担当、僕はコミックソング担当ということで!
伊礼)廣川さんのロックナンバー、すごくいいですよ。
青木)いや、昆ちゃんとのデュエットを入れようとも思ったんですよ。
実際、ここならというところもありましたしね。実現はしませんでしたが(笑)。
廣川)ハモってみたいなと思ったものの、あとあと考えたらあそこでデュエットはなしだなと自分でも思いました…。
青木)じゃあ、ぜひ、打ち上げで昆ちゃんと歌って思い出作りをしましょう(笑)。
昆)ぜひ!!
一同)笑!!
【公演各地の地元アンサンブルも大活躍】
──この公演は水戸を皮切りに、埼玉、福井、東京、兵庫で上演され、各地の地元アンサンブルのみなさんが参加されることも特色のひとつです。今日も水戸、埼玉、東京の子どもたちがお稽古に参加されていますが、どのような役割を担うのでしょうか。青木)脚本を書いていたら楽しくなってきてどんどん増えちゃったというのもあるのですが、みなさん大活躍ですよ!
その分、振付の井手(茂太)さんのお仕事が増えています(笑)。
井手さんが各地で、それぞれの子に合わせてちょっとずつちがう振りをつけてくれているんですよ。年齢層も兵庫はアダルトだったりしますし、各地の色にもご期待ください。
今日も子どもたちが奮闘していると思いますよ!
──ひとりひとりが大切な役割を担うのですね!伊礼)そうそう、その他大勢というのではなく、それぞれの個性が炸裂していますよ。
この子は、あの子はとついつい目が行っちゃいます、心配も含め(笑)。
──稽古場の雰囲気も変わりそうですね。昆)アンサンブルのみなさんが参加される日はお稽古場が学校みたいです。
若い活気があふれているんです。
廣川)昆ちゃんも十分若いけどね(笑)。
でも、本当にその通りで、逆に彼らがいない日との温度差が(笑)。
いつもは少人数でじっくりやっているからね。
青木)(アンサンブル参加日は)気のせいか、徐々に室内の酸素も薄くなっていくような(笑)。
一同)そうそう!
──そのエネルギーが本番で作品を盛り上げることを期待しています。【『星の王子さま』と私】
──キャストのみなさんは、原作の『星の王子さま』にはじめて触れたときのことを覚えていますか。伊礼)子供のころに読んだのですが、途中から絵だけ見ていた記憶があります。よくわからなかったんでしょうね。
青木)実は僕も一緒、最初のウワバミのところで寝ちゃったんだよね。
伊礼)それが久しぶりに読んでみると、意外に大人向けなんだなと感じました。
そして、飛行士の気持ちがすごくよくわかったんです。
子供のころに、「これは何か変だ」と思い、大人に意見したのにうやむやにされたことがあるんです。今になってみると何があったかは思い出せないのですが、でも、その時の気持ちはずっと残っているんですよね。間違っているのに、大人の事情でもみ消すみたいな。
飛行士もそういった思いを抱えながら大人になったのかなと感じるんです。
大人になって『星の王子さま』を読み、やっぱり間違っていなかったんだ!とあの頃の自分を肯定し、受け入れられるようになったんです。
はい、次は、昆ちゃんどうぞ(笑)。
昆)私は小学生のころに読書感想文を書くために読みました。
そのときは、王子さまが星を巡っていろんな人と出会うお話、そこで終わってしまいました。たぶん、ふ~んって読んでいた気がします。
どうしてそう感じたのか考えてみると、この本に書いてあることは、こどもには当たり前のことなんじゃないかなと。私は小さい頃はみんな純粋だと信じていて、そこからいろいろと経験することで純粋さを失ったり、屈折していくことがあると思うんです。
だからこそ、大人になって気づくことが多かったり、胸に突き刺さるお話だと感じています。
なので、この舞台をご覧になっても親世代と子どもたちでは受け取り方が違ってくると思います。お子さんには純粋に王子さまの星めぐりを楽しんでいただき、大人には人の愚かさを感じたり、大切な人をいつくしむ気持ちを改めて感じていただけたらうれしいです。
では、廣川さんお願いします!
廣川)はい(笑)。
はじめて読んだのは中学生の時、不思議なお話だなぁという印象でした。
いろんな人が謎な状態で、詳しく説明することなく次々に展開していくんですよね。
でも、その引っかかりがあるからこそ、心に残るお話なんでしょうね。
その引っかかりに関して、今回、豪さんが紐解いたやり方は、僕にはすごくしっくりきているんです。人間って100%いい人もいなければ、100%悪い人もいない。その揺れる部分が感じられる、素敵な脚本なんです!
僕がメインで演じるレオンは実在の人物で、長く幽閉されたユダヤ人です。
この作品で表現される不遇の親友と作家サンテグジュペリという視点をもって原作を読むと、また違う感じ方になると思いますよ。
──原作の物語に、もう一つ別の視点が加わることでより深みを増した舞台になりそうですね。青木)とはいえ、作品としては相当ゆかいなことになっていますので、お気軽にお楽しみください!
【こぼれ話その1】
──伊礼さん、廣川さんがメインの飛行士、レオン以外にも複数役を演じるところも楽しみです。伊礼)最初は、こんなに!と思いました。これは廣川さんがやったほうが…とか(笑)。
でも、稽古してみたらバランスよく作られていることがわかりました。
廣川)僕も正直、意外だった役もあるんです。
お客様の中には、これはきっと伊礼さんが!という期待感を持っているんじゃないかな、でも、僕でごめんなさいという(笑)。
伊礼)そんなことないですよ!!
──ちなみに、昆さんが王子さま以外で一番やってみたい役は?昆)えー、なんだろう!!
王子さまを演じている中で一番心を動かされるのがキツネの場面なので、受け側から伝える側という意味で、演じてみたいのはキツネですかね。
お芝居の弾けっぷりではうぬぼれ男です(笑)。
青木)舞台なので、物理的な制約ももちろんありましたが、あて書きに近い形で書いているので、それぞれのキャラクターをどちらが演じるのか、お楽しみに!
【こぼれ話その2】
稽古の様子を拝見すると、音楽はもちろん、井手さんの振付、ステージングもとてもユニーク!
井手さんの振付について…。伊礼)まさかこの作品の稽古で自分が筋肉痛になるとは(笑)。
井手さんの振付は不思議な動きをするじゃないですか。
青木)それも飛行機の修理でね。あのシーンに限らず、井手さん独特の不思議だからこその魅力があって、見ているとすごく面白いんだよね(笑)。
【稽古場レポート】
稽古場は水戸、埼玉、東京の3チームのアンサンブルのみなさんのお稽古が進められていました。座談会でのお話どおり、ひとりひとりの役割が明確で、振付の井手さん、歌唱指導の満田恵子さんの熱い指導の真っ只中!!
小学生から高校生まで年齢も演技経験もバラバラの子どもたち、休憩時間にはチームごとに輪を作り教え合う光景も。
ものづくりの現場の楽しさと厳しさを肌で感じ、それを分かち合えるのはチームならではですよね。
ほかのチームの指導を見つめる視線も
真剣そのもの、他チームについて尋ねると、
「負けたくない!一番を目指す!」と頼もしい言葉が聞かれました。それと同時に先陣を切る水戸チームから
「トップバッターとして弾みをつけて、それ以降の公演につなぎたい」という『星の王子さま』チームとしての絆も感じられる稽古場です。ライバルであり同志でもある!アンサンブルの活躍も楽しみですね。
第一線で活躍するプロの俳優陣との共演にも大いに刺激を受けて、ゴールの兵庫公演までバトンを繋ぎましょう!!
アンサンブルが作り出す、せわしない動きから感じる滑稽さ、バオバブの木の生命力など素敵な仕上がりになっていますよ。
公共劇場が連携して創作する新規プロジェクト、今後の展開も注目です!!
【チケット好評発売中】
音楽劇『星の王子さま』特設サイトで各公演情報発信中!!
舞台写真提供:水戸芸術館
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文) 監修:おけぴ管理人