日本の影の戦後史を描き初演、再演時に大きな反響を呼んだ
鄭義信 三部作『焼肉ドラゴン』『たとえば野に咲く花のように』『パーマ屋スミレ』が2016年3月より、新国立劇場にて連続上演!
宮田慶子演劇芸術監督、作・演出(2作)の鄭義信さん、3作それぞれのキャストのみなさんがご登壇し、
作品への想い・意欲、そして強い愛を感じるひととき。今年上半期の超おススメのシリーズにふさわしい作品たちのエネルギーをあらためて体感!の合同制作発表レポート、スタート!
鄭義信三部作とは…
朝鮮戦争が始まった1950年代を描いた『たとえば野に咲く花のように』では九州のとある港町を舞台に、4人の男女の、切ないまでの究極の「愛」の形を描き、義信さんは、この作品を書いたことで、作家として「記録する演劇」を書くことを再認識。以後の執筆へとつながりました。
そして、1960年代半ば、とある炭鉱で炭鉱事故に巻き込まれた在日コリアンの家族を描いた『パーマ屋スミレ』では、逆境にめげず力強く生き抜く庶民の姿を、笑いあり涙ありの喜怒哀楽の中に描き、万博開催、高度経済成長に踊る70年代の日本の焼肉屋を舞台に、ある在日コリアンの家族を通して、日韓の現在、過去、未来を、音楽入り芝居でおかしく、そして哀しく切なく描いた『焼肉ドラゴン』。
いずれも観客からの熱狂的支持を集めた新国立劇場のために義信さんが書き下ろした作品、劇場の宝です。
鄭義信三部作についてたっぷりとお話を伺った
おけぴ鄭義信さんインタビューはこちら!
それではさっそく義信さんのご挨拶から!

鄭義信さん
「この三部作を新国立劇場で一挙に上演できることをたいへん光栄に思います。今日集まってくれた俳優のみなさんを見て、いよいよ始まるんだな。錚々たるみなさんと新しく三部作を作り上げることの悦び、不安、期待でいっぱいです。ご覧いただくみなさんにとりまして、幸福な芝居となりますよう頑張ります」初演に続き『たとえば野に咲く花のように』の演出の鈴木裕美さん。

鈴木裕美さん
「義信さんの作品は、演劇の力、俳優の力を信じている脚本、俳優に「イキイキと演じてほしい」という祈りを感じるところが魅力です。
なんていうか、役者に「あなたは素敵になれる」と言ってくれているような戯曲なんです。
平たく言うと、やりどころ満載(笑)!
品のない言い方になりましたが(笑)、俳優にとって、ここもあそこも葛藤できる、悩めるんです。
すごくくだらない発言をした人が、その後、非常に潔い、高潔ともいえるような行動をとったり、たいがいどの人も美しいところと頭悪っ!というところの両方が描かれていたり。俳優にとってとてもやりがいのある作品です。
新しいキャストも含め素晴らしい俳優が集りました。みんなと一緒に冒険の旅に出るのが楽しみです! 」続いてはキャストのみなさんのコメントをご紹介いたします。
【パッションあふれる『焼肉ドラゴン』チーム】

ナム・ミジョンさん
「はじめまして、ナム・ミジョンです。(日本語)
鄭義信先生の作品に韓国の俳優として出演させていただくことを光栄に思います」
ハ・ソングァンさん
「はじめまして、ハ・ソングァンです。(日本語)
鄭義信先生の作品に韓国の俳優として出演させていただくことを光栄に思います。
昨日から稽古が始まりましたが、いい役者さんと舞台を作っていく過程に、胸がいっぱいです。興奮しています」
馬渕英里何さん
「『焼肉ドラゴン』初演を客席でいち観客として拝見しました。その時の感動が今でも思い出されます。体中が打ち震え、血沸き肉躍り、嗚咽が止まらなくて、そして立ち上がれなくなるような感動でした。今回このお話をいただいたことが本当にうれしくて。今とても、今日ここに立っているだけで感無量です。この作品の一部となれる幸せをかみしめながら稽古重ねたいと思います」
中村ゆりさん
「今、この時代を勉強しているところです。今よりも貧しく過酷な中でも、バイタリティと明るさで生きぬいたこの時代の人々を演じることは、自分の中に大きなものを残してくれると思います。精一杯演じたいと思います」
高橋努さん
「新国立劇場で、鄭さんの『焼肉ドラゴン』という素晴らしい作品に出演できることを光栄に思います。鄭さんの想いを体現できるように頑張ります」【フレッシュな『たとえば野に咲く花のように』チーム(またの名を呑ミニケーション抜群チーム?!)】

ともさかりえさん
「新国立劇場、義信さん作品、鈴木さん演出、初めて尽くしの環境の中で自分自身どんな景色が見られるのか楽しみ半分、恐ろしさ半分です。キャストスタッフのみなさんと良いものを創っていけるように努力していきたいと思います」
山口馬木也さん
「義信さんの作品、心待ちにしている方がたくさんいらっしゃると思います。
僕もそんなファンの一人です。僕にとっても大事に思える作品に参加できることを光栄に思います。そしてその素晴らしい作品で、呑み屋でしかお会いしたことのない鈴木(裕美)さんとの「いつか一緒に」という思いも叶いました(笑)。みなさんに感動をお持ち帰りいただけるように、精一杯演じたいと思います」
村川絵梨さん
「私も呑みの場でしか裕美さんとお会いしたことがなかったのですが(笑)、初めてご一緒できることがすごくうれしいです。素晴らしい脚本で今から楽しみで仕方ないのですが、一方通行の恋に狂っていく女にエネルギーを注ぎたいと思います」
鈴木さん、小っちゃくなっちゃいました!!

石田卓也さん
「約2年ぶりに新国立劇場の舞台に立てることを今から楽しみにしています。精一杯務めます」【個性派、濃厚な『パーマ屋スミレ』チーム】

南果歩さん
「四年前の初演から、誰よりもこの作品の再演を熱望して熱望して熱望して(笑)、四年後ここにやってくることができました。それほど素晴らしい作品であり、本当に義信さんはアジアで2番目にしつこい演出家だとおっしゃっていますが、私は北半球一だと思っています(笑)。それぐらい稽古場はとても過酷で、開幕してからも本番前に稽古することもありますが、それも大好き!
自分の人生かける、ぶつかりがいのある高い山にまた臨めるのは役者として最高の幸せであり試練です。
今後、こういう役には出会ないかもしれないと思っています。頑張ります」
根岸季衣さん
「今日という日を心底待ち望んでいました。あとは、無事是名馬(笑)、60歳越えした身としては体力との闘いを痛切に感じております。鄭さんは役者が100%だしても、その上を望み続ける方なので、その気合に負けないように乗り切りたいと思います」
村上淳さん
「そうですね。ちょっと、今聞いていると…そんなに稽古場過酷なのか。どうしようか。
いや、このお話をいただいて、やると決めてからというもの知人友達から「パーマ屋…やるんだ!すごいね」といろんなプレッシャーをかけられましてね。
あと、今日思ったのは、役者になるなら呑み屋に行けと、鈴木裕美がいるぞと(笑)。そういうことで。頑張りますんで、よろしくお願いします」
あ、また、鈴木さんが!

千葉哲也さん
「義信さんの稽古場は『焼肉…』で知っているのですが、今回は『パーマ屋…』。村上君と二人だけ新参者ですので、チャレンジャーとして足を引っ張らないように楽しみたいと思っています。よろしくお願いします」いやいや、漂う余裕すら感じさせる千葉さんは新国立劇場2016/2017シーズン『怒りをこめてふり返れ』(2017年7月)では演出を務められます。まだ先のお話ですけどね!
キャストのコメントを聞いて…
「そんなにしつこかったのかなとしみじみと思いました(笑)。でも、またゼロからのスタート、よし頑張ろうと、みんなが嫌がるような決意に燃えてきました(笑)」最後に宮田監督のコメントをどうぞ。
「どの作品も義信さんが新国立劇場に向けて書き下ろしてくれた作品です。
こうして書下ろしのオリジナルの作品を新国立劇場で上演できるということは何よりの悦び、誇りです。
また、これまでの上演では、3つの作品それぞれに熱いご支持をいただき、多くの方に足をお運びいただきました。いっぱい過ぎてご覧いただけなかったかたもいらっしゃるくらい。前回観られなかったから、今回は見たい!という声もたくさんいただいています。
私どもも、1950、60、70年代、戦後の庶民を描いた作品を、今、やらせていただくことに意義を見いだしております。
戦後70年を過ぎた時期に、もう一度、お客様とともに楽しみ、悦び、泣き、そしてたくさんのことを考えるような作品にしたいと思います」ぜひ、3作通して見たいと思う素敵なシリーズ企画ですね!!

囲み取材でも「初めて尽くしで…」と緊張を口にするともさかさんに…
「りえちゃんはやるときはやる!ものすごいことをやる!恐ろしい女優ですよ」
南果歩さんの太鼓判!!
おけぴ取材班:chiaki(文・撮影) 監修:おけぴ管理人