ミュージカル『ラディアント・ベイビー』柿澤勇人さん&松下洸平さんインタビュー

NY発の話題作が2016年6月、日本に初上陸!
 1980年代アメリカを代表する芸術家キース・へリングの生涯を、心揺さぶるロック&ポップミュージックで綴る『ラディアント・ベイビー』にご出演の柿澤勇人さん松下洸平さんにお話をうかがいました。

“無限の夢”と“限られた時間”の狭間で、それぞれの胸に、去来した想いとは―。公演HPで詳細あらすじやキース・ヘリング年表がUPされております!


写真左より)柿澤勇人さん、松下洸平さん

故郷のペンシルベニアからニューヨークに出てくるも、初めての都会での生活に翻弄されるキースだったが、さまざまな人間に囲まれてアートに没頭していく。
31歳の若さでこの世を去ったキースが、追い求め続けたものとは。
<ラディアント(燦然と光り輝く)・ベイビー>はヒースの代表的なモチーフ。(HPより)


 『ラディアント・ベイビー』で主人公のキース・ヘリング役、キースの恋人カルロス役で共演される柿澤さんと松下さんですが、お二人の共演と聞くとやはり思い出されるのは『スリル・ミー』(2011、12,13年)です。※『スリル・ミー』ご紹介(記事ラスト参照)


──『スリル・ミー』で出会ったお二人、お互いの第一印象はどのようなものでしたか。


松下)
 実は、僕は共演する前から一方的に知っていたんですよ。勇人が出ていた劇団四季の『春のめざめ』を見て、「うわぁ、スゲー役者だな、この人」と思っていたんです。だから、初めて会ったときは「うわぁ、本物だ!」って(笑)。


柿澤)
 うそっ…、そうだったの?
 僕は共演すると決まってから洸平について情報を集めました。初対面の時はシンガー・ソングライターで絵も描くということしか知らなかったのですが、実際に仕事をしたら芝居もすごく巧くて。表現者としてとても多才なんだなというのが第一印象です。


松下)
 そうそう、初めて会ったのは『スリル・ミー』のポスター撮りだったよね。そのときが本当に初めましてだったのに、その30分後には顔と顔がくっ付いていて…(笑)。なんかメチャクチャ気まずかったよね。


柿澤)
 気まずかったね、あれはさすがに(笑)。


松下)
 さらに、次々にいろんなポーズを要求されて「はい、じゃあ後ろからハグしてみようか」みたいな。いやいや、さっき会ったばかりの人なのにって(笑)。でも、撮影をしているうちに、同い年だし、気を使わないで大丈夫そうな人だなという印象になっていきました。



──『スリル・ミー』は初演の2011年から3年連続で上演されました。その間の変化は。


柿澤)
 お互い芝居をするのが楽しくなっていきましたし、より安心感が増していきましたね。1年のスパンを経て『スリル・ミー』で再会した時に、その間の舞台や映像での活動によって洸平の芝居も進化して“洸平、こんな芝居をするんだ”と新鮮だったり。
 その後も、彼がいい作品、いい役と出会えていることには刺激を受けています。いい意味でライバルというか、すごくいい関係になっていると思いますし、それはこれからもずっと変わらないんじゃないかな。


松下)
 本当に、今、勇人が言ったとおりだと思います。あとは変化で言うと、年々、勇人のおっさん度が増して…(笑)。


柿澤)
 おいっ!


松下)
 あれっ?こんなにおっさんだった?って思うんですよ(笑)。


柿澤)
 まぁ、確かにね。どんどん堕落していくのは俺かも(笑)。


松下)
 堕落って(笑)


柿澤)
 出会った時は、割と僕もストイックだったんですよ。


松下)
 いやいや、今でもストイックですよ、あなたは(笑)。でもね…。


柿澤)
 以前は、僕のほうがジムに行ってトレーニングをするのが欠かせない人だったんです。それがだんだん逆になって、今では洸平のほうがトレーニングにのめり込んでいて(笑)。僕は全然行っていない。おもしろいね。


松下)
 なんかこう、勇人に追いつけるようにって…。


柿澤)
 なにそれ!



松下)一瞬重なって、追い抜く予定なので(笑)


松下)今は、もうひと息で追いつきそうな、このぐらいです(笑)。


──(笑)そうやって互いに切磋琢磨しているお二人が、『ラディアント・ベイビー』で再びご共演されることになりました。

柿澤)
 またこうして全然違う作品で一緒にやれるとは思っていませんでした。同じように恋人役ではあるけれど、『スリル・ミー』とは確実に違う関係性になるので、どんな芝居になるのか楽しみです。そして、この信頼感が稽古前にあるのはありがたいですね。



松下)
 僕の中には、勇人がやるならやるという気持ちがありましたね。今回の作品を勇人と一緒にやりたいと思ったんです。
 ミュージカル作品にも数多く出演しているけれど、いい意味でそこに染まっていない彼のスタイルをめちゃくちゃリスペクトしていますし、勇人はやっぱり芝居の人なんだと思うんです。僕もそういうタイプですし。『ラディアント・ベイビー』はおそらくノリのいい作品にはなると思いますが、勇人だったら、それをただのエンターテイメントショーとして終わらせないだろうと思って。そこをどう作っていくのかを見るのが楽しみですし、それによって僕もどう変わっていくのか、すごく楽しみなんです。



柿澤)
 そう言ってもらって、本当にありがたいです。


──(と言いつつ、どこか笑いをこらえている様子の柿澤さん)どうされましたか。

柿澤)
 いや、なんかすみません。
 洸平と普段はこんな話をしないから、恥ずかしいんですよ。ただの飲み仲間だからね(笑)。


松下)
 そうなんだよね、ただのね(笑)。


──そういう時にお芝居のお話はされないんですか。

柿澤)
 面白い芝居を見たとか、映画を見たとか、そんな話もしますけど…。


松下)
 それは開始10分くらいで、まだ、酔っていない間だけですね。あとは、ここでお話してもほぼ使えないような話です(笑)。



──では、ここからは作品についてうかがいます。
 柿澤さんはキース・ヘリング役、“絵”といえば松下さんですが、柿澤さんは“絵”のほうは。



柿澤)
 絵、めっちゃ下手なんですけど(笑)。


松下)
 笑!!


──劇中でササッと描かれたりはしないんですかね。

柿澤)
 どうなんですかね。
 (スタッフの方に確認し)本国では描いていたみたいですが…、日本版はまた新しい演出になりますからね。


松下)
 それはもう勇人の力量次第でしょ(笑)。


柿澤)
 でも、僕が書いたら、とんでもないことになっちゃうかも(笑)。


松下)
 だからさ、もし、日本版で描くシーンがなかったら…「あ、ダメだったんだな」と察していただくということで。



柿澤)
 えー、洸平に教えてもらおうかな。


松下)
 こういうのって、教えてもらうものじゃないからね(笑)。



──開幕までの楽しみが一つ増えました(笑)。
 そして、この作品の中でキースの人生は“絵を描くこと”や“NYという街”に出会うことで大きく動き出しています。ご自身の人生が動き出したなと感じた瞬間、出来事はありますか。


柿澤)
 僕の場合は、やはりこの世界に入るきっかけにもなった舞台を見た瞬間ですね。それまではサッカーしかしていなくて、サッカー選手になりたかったけどそれがダメになったとき、舞台を見て、「こんな世界があるんだ」と衝撃を受けました。
 そこからは、もう、それだけになっちゃうんですよ。舞台に立つためなら何でも!って。18歳くらいでしたが、その時のエネルギーは我ながらすごかったなと思います。怖いもの知らずで、根拠のない自信。あのエネルギーを、キースの人生においてのアートへの情熱に変換できたらいいなと思います。


松下)
 僕も似たような感じですね。ずっと美術をやっていて、絵の仕事ができたらいいなと思っていたのですが、18歳の時に音楽の楽しさを知ったんです。
 これだ!と思ったときに、自分の中でなにかが爆発したんですよね。今、勇人が言ったように、本当にどこからわいてくるのか、その自信は!みたいな(笑)。歌手になると信じて、周りにもそう言いふらしていましたし。今思うと、だいぶ痛い奴だったと思うんですけど(笑)。
 でも、なんかその瞬間のひらめきはすごかったんですよね。僕らだけじゃなくて、ひとりひとりにそういった人生の転機があると思うので、誰が見ても共感できるところはあると思いますよ。



──お二人のお話をうかがって、ロック&ポップな音楽で綴られる楽しみに加えて、そのドラマ性に対する楽しみも膨らみました。では、最後にこの作品を楽しみにされているみなさんへメッセージをお願いします。


柿澤)
 ミュージカルナンバーはロック調でノリの良い曲ぞろい、陽な印象です。そこは純粋に楽しんでいただきたいです。
 ただそれだけでなく、キースの絵はみんな知っていると思いますが、あの絵を描いた彼が何を思って生きてきたのか、人生の描写も見ごたえのあるものにしなくてはいけないなと思っています。そしてゲイカルチャー、同性愛者の話も出てきますし、キース自身がHIV陽性者です。日本ではあまりフィーチャーされませんが、事実、その数は増えてきていたり、決して他人事ではないんですよね。
 誰もが楽しめる作品にもしたいですし、同時にマイノリティにも共感できる、なにかメッセージを提示できる作品にしたいなと思っています。



松下)
 この作品は、いわゆるミュージカルというのを見たことのない人が持っている先入観を払しょくしてくれると思うんです。
 楽曲がすごくポップでカッコよくて、ダンサブルなナンバーが続き、しかも演出は岸谷五朗さんです。ショーとしての魅力が興味の入り口になりうる作品なんです。
 演じる僕らは演劇的なアプローチを忘れてはいけないのだけど、HIVとかマイノリティへの強いメッセージももちながら、踊れるミュージカル、お客様もリズムを刻めるようなミュージカルにしたいなと思うんです。ダンサーや子供たちもたくさん出て賑やかになりそうですし。普段あまりミュージカルをご覧にならない方にも気楽に見ていただきたいですね。


──ありがとうございました。


【柿澤さんお絵描きタイム】


松下)
 ちょっとここに描いてみなよ。


柿澤)
 本当にやばいよ。



松下)
 いいんじゃない!いけるいける!
 いいよ、いいよ、すごいいいよ。


柿澤)
 あれ、あれ。



松下)
 え、うそでしょ、うそでしょ。勇人、正気か?お尻が(笑)!


柿澤)
 ほら、やばいでしょ。


松下)
 うん、やばいね。
 この周りの(放射状の)線も描いてみたら?



柿澤)こう?こんな感じ?

松下)
 あれ、なんかいいよ、俺は好きだな。


柿澤)
 本当にどうしよう…、絵。
 でもね、一回美術で5を取ったことあるんだよ!…木彫りで(笑)。


松下)
 そうか、木彫りなのかな。才能的には(笑)。



──では、お持ちいただいてお写真を!


柿澤)なんかいいかも!! 松下)勇人、すごい“どや顔”だし(笑)


松下)僕はこっち持つね!!


柿澤)何で一緒に持ってくれないの…


 舞台や映像でのご活躍、近年では柿澤さんは『海辺のカフカ』、松下さんは『アドルフに告ぐ』などストレートプレイでの存在感が印象的なお二人がロック&ポップなミュージカルをどう魅せるのかますます楽しみになりました。
 演出の岸谷五朗さんのもと立ち上がる日本版『ラディアント・ベイビー』は2016年6月6日シアタークリエで開幕です!

公演HPで詳細あらすじやキース・ヘリング年表がUPされております!






※『スリル・ミー』ご紹介
 1924年、アメリカ・シカゴで実際におきた事件をもとにしたミュージカル。日本では2011年9月に初演、「私」と「彼」そして第3のキャストともいうべきピアニストが奏でる情熱的で官能的、そして狂気のドラマの虜になるファン続出の人気ミュージカルとなりました。

 頭脳明晰で幼なじみでもある二人、「私」と「彼」。
 ニーチェを崇拝し、自らを特別な人だと語る「彼」は、『犯罪』をすることでしか自分を満たすことができない。
「私」はそんな「彼」を愛するがゆえに、求められるままに犯罪に手を貸して行く。

 柿澤さんは「彼」、松下さんは「私」を日本初演から演じています。


(『スリル・ミー』初演 おけぴ公開稽古レポート)




<柿澤>ヘアメイク:KAZUOMI(メーキャップルーム) スタイリスト:大石 裕介(DerGLANZ)
<松下>ヘアメイク:五十嵐将寿 スタイリスト:渡邉圭祐

【衣裳協力】
<柿澤>
・ショップコート、パンツ:banal chic bizarre
上記2点共に、ADD・・・渋谷区神宮前3-20-1-201 TEL 03-3405-5090
・中に着たプルオーバーベスト:TROVE・・・03-3476-0787(TROVE)
・シューズ:Paraboot・・・03-5766-6688(Paraboot青山店)
<松下>
HEAD PORTER PLUS(問HEAD PORTER TEL03-5771-2621)


【公演情報】
『ラディアント・ベイビー』
2016年6月6日(月)~22日(水)@シアタークリエ

<スタッフ>
脚本・歌詞:スチュアート・ロス
音楽・歌詞:デボラ・バーシャ
歌詞:アイラ・ガスマン
演出:岸谷五朗
訳詞:小林香
振付:大村俊介(SHUN)、原田薫

<出演>
柿澤勇人/平間壮一/知念里奈/松下洸平
Spi/Miz/大村俊介(SHUN) 汐美真帆/エリアンナ/香取新一
加藤真央/MARU/戸室政勝/おごせいくこ
大西由馬/設楽銀河/永田 春/朝熊美羽/伊東佑真
漆原志優/新井夢乃/小林百合香/ミア
(子役は交互出演)

<あらすじ>
キース(柿澤勇人)は、自分の居場所を求めて
故郷のペンシルベニアからNYに出てくるも、初めての都会での生活に翻弄される。
友人のツェン・クワン・チー(平間壮一)、アシスタントのアマンダ(知念里奈)、
恋人のカルロス(松下洸平)、そして自身が美術を教える3人の子供たちに囲まれて
アートに没頭する彼は、名声を得てもなお自分が信じる世界を探求し苦悩の日々を送る。
病に冒され、31歳の若さでこの世を去ったキースが、
全速力で駆け回り、追い求め続けたものとは。

楽曲紹介はこちらから
公演HPはこちらから

おけぴ取材班:chiaki(インタビュー・文) おけぴ管理人(撮影)

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