祝!オフ・ウエストエンド・シアター・アワード
最優秀ミュージカル作品賞&最優秀振付賞ダブル受賞「ようこそ、グランドホテルへ」 そんな、演出家トム・サザーランドさんの言葉で始まったミュージカル『グランドホテル』公開稽古取材会。
トムさんの作品解説、GREEN/REDそれぞれのオットー役、中川晃教さんと成河さんのコメントと、楽曲披露の様子をレポートいたします。
【introduction】
1920年代の活気あふれるベルリン。様々な人間のドラマが交差する豪華ホテルの一夜を描いたミュージカル『グランドホテル』。偶然にもグランドホテルで出会い、それぞれの人生が変わるような一夜を過ごす。
【ふたつの結末】
この日発表されたビッグニュースは…ふたつの結末が
「ハッピーエンディング」と
「悲劇的エンディング」であるということ。
ただし!トムさん) 「これは、ひと言でご説明できるものではありません。また、どちらかがよりドラマティックということでもございません。
それぞれのバージョンに合わせたドラマ性を追求してまいります。今、申し上げられることは『グランドホテル』をこれまで見たことのある方が抱いている作品へのイメージ、どちらのバージョンも、それを超えるものになるだろうということです」
成河さん)
「便宜的にふたつの言葉で結末を表していますが、当然ながらそんなに簡単なことではありません。トムに代わって申し上げますが、“何かを成し遂げようとして、なんとか成し遂げられた人たち”、“それが届かずに、あるいは届いた瞬間にそれを奪われた人たち”そういった違いを描きたいということです」中川さん)
「今の段階では、演者の個性をなくすことも、逆に強く前面に出すことも要求されず、いろいろと探りつつ、それぞれのアプローチで稽古をしているところです。そこからトムが方向性を決めてふたつのバージョンを作っていくことになります。ですので、僕たちもまだその結末というものは明確にはわかっていないんです。つまり、見に来ないとわからないということです(笑)」 三者三様の表現で、
「両バージョン見に行かない理由はない!」というゴールへ誘うコメント…参りました。表現力だけでなく、コメント力も高いふたりのオットーなのでした。
【同じ素材で異なるショウを…】
トムさん) 「本作のふたつのバージョンをお見せするにあたって、持てる者と持たざる者、それがキーワードとなるでしょう。
同じ音楽、同じ台本を用いて、それぞれのチームで全く異なるショウをお見せするのです。日々、白熱した稽古が行われていますが、それぞれの演じ手によってそれぞれのキャラクターが生まれつつあります。当初は自分にとって夢のようなアイデアだったものが、こうして実現し、さらに
その手ごたえは“ここまで違うのか”と自分自身でも驚嘆しているほどです。 数週間後には皆様に誰も見たことのない『グランドホテル』をお目にかけます。
作品が持つ壮大な力、キャストが持つ素晴らしい力を、ぜひ劇場でご覧ください」
【革新性、それが『グランドホテル』が歩んできた道】
トムさん) 「原作小説を書いたヴィッキィ・バウムは、この小説の執筆により小説を書く技法を革新したことで知られています。それまでは一人ないしは二人の主人公がいて、その主人公を巡るストーリーを展開させるのが小説でした。『グランドホテル』には、とてもたくさんの登場人物がいて、場合によっては作品の中で出会うことすらない人々もいます。ただひとつの共通項は彼らがグランドホテルにいるということ。
そんなストーリーのなかで、それぞれの登場人物の人生があぶりだされるのです。
ヴィッキィが小説を書いた1929年のドイツは“dancing through the war”、踊り狂ったその先に戦争がある、そんな時代でした。その小説の舞台もそのころ、ストーリーの中には確かにそれが描写されています。
ユダヤ系の彼女は、小説を書いた年にベルリンを離れ、アメリカへと渡ります。そして、グレタ・ガルボ主演のあの有名な映画『グランドホテル』が誕生するのです。
その後、1989年に、その映画から着想を得たミュージカル『グランドホテル』が誕生するのですが、トニー賞に輝いたそのミュージカルもまた、原作小説同様に非常に革新的なものでありました。
そして、今、ここ日本で『グランドホテル』はリバイバル上演されます。そこでは、劇場にいらした皆様が舞台作品というのはおそらくこういうものだろうという、その限界を超えた革新的な作品を見せることを目標としています。
作品の革新性、それは『グランドホテル』というものが常に歩んできた道なのです」
そんなグランドホテルのお稽古風景が公開!!
お待たせいたしました!ここからはパフォーマンスレポートをお届けいたします♪
(※REDチーム男爵役の伊礼彼方さんは公演中につきご不在、代役はGREENチームの宮原浩暢さんとなります)【The Grand Parade】
この日披露されたのはこの作品のオープニングを飾るナンバー「The Grand Parade」。RED、GREENの順にそれぞれバージョンで披露されました。このナンバーについては…
トムさん)「実はこの♪The Grand Paradeはふたつのバージョンが一番似ているシーン、彼らに何が待ち受けているのかを示唆するナンバーです。」
めくるめくという言葉がぴったりな、流れるようなステージング、くるくると回るように展開するさまは、決して止まることのない時の流れと、どこか急き立てられているようなそれぞれの人生を印象付けます。その中で一瞬の接点が生まれ…、さあ、どんなドラマが生まれるのか!心をつかむオープニングです。

雄弁な後ろ姿!
※okepiキャプションの色がチームカラーです
キャラクターをご紹介!★はGREEN/RED 注目ポイント(この日の印象なので、これから変わるかもしれませんが…)
【重い病を患う会計士、
オットー・グリンゲラインは、これまでの貯金を全て使って、人生の最期の日々を豪華なホテルで過ごそうとしていた】
★完全アウェイのグランドホテルでオットーはどう振舞う★

オットー・クリンゲライン役:中川晃教さん (ちょっとはしゃぎ気味のおのぼりさん風?)

オットー・クリンゲライン役:成河さん(慣れない雰囲気に戸惑い、警戒心高め?)
お互いのバージョンを見て…
中川さん)
「オープニングシーンは、お客様が作品の世界に引き込まれる瞬間ですよね。REDチームには、僕自身の中でジェラっと(嫉妬)するほど自分とは違う色がそこにあって、思わず“成河さんのRED、いい!”とツイートしちゃいました(笑)」成河さん)
「アッキーの歌声と僕のとでは、大学生と小学生ほどの開きがあります。でも、それをいいチャンスと受け止めて、アッキーの背中を見て学び、その先に自分自身の個性が出てくればいいと思っています」 流れていくシーンの中で、目、耳、心を惹きつける両オットー。
中川さんのオットーはキラッと光るエネルギーと歌声で惹きつけ目が離せない存在、成河さんのオットーは喧噪、狂騒の中の静けさのような存在感で心が吸い寄せられます。
これからご紹介するそれぞれのダブルキャストもどのように異なる色をみせるのか、楽しみです。
【若く美しく、だが貧しい
フェリックス・フォン・ガイゲルン男爵は、ギャングによる借金の取り立てから逃げている】

フェリックス・フォン・ガイゲルン男爵役:宮原浩暢さん

オッテンシュラッグ医師から辛辣な言葉が…「この世で一番使えないものは文無しの色男だ」
【傾きかけた織物工場の
娘婿社長プライジングは、会社を立て直す会合のためにホテルへ】

プライジング社長:戸井勝海さん

プライジング社長:吉原光夫さん
【ハリウッドでスターになることを夢に見るタイピストの
フレムシェンはプライジング社長の私設秘書に誘われる】

フレムシェン役:昆夏美さん

フレムシェン役:真野恵里菜さん
★オットーとフレムシェンの距離感★
【グランドホテルに行き交う人々を皮肉な目で見る厭世家の
オッテンシュラッグ医師】

オッテンシュラッグ医師役:光枝明彦さん

オッテンシュラッグ医師役:佐山陽規さん
【帝政ロシアで一世を風靡したバレリーナ、
グルシンスカヤは座員を養う引退興行のためにベルリンへ。彼女に献身的に仕えるのはグルシンスカヤの親友であり、秘書であり、時にはドレッサーである
ラファエラ】

グルシンスカヤ役:安寿ミラさん、ラファエラ役:樹里咲穂さん、オッテンシュラッグ医師役:光枝明彦さん

写真左)ウィット役:杉尾真さん

グルシンスカヤ役:草刈民代さん

写真左より)草刈さん、杉尾さん、オッテンシュラッグ医師役:佐山陽規さん、ラファエラ役:土居裕子さん
ここからは、忙しく働きまわるホテル従業員たちや、宿泊客にさまざまな形でかかわっていく人々をご紹介。(このシーンでは本役と異なる役を務められている方もいらっしゃいます)
ホテル従業員、彼らにとっての“グランドホテル”は、滞在し、やがて帰っていくゲストとはまた違う…“日常”の場所なのです。そんなゲストチームと迎える従業員チーム、通り過ぎていくものと居続けるもの、“居方”の違いも面白いですよね。それもまた、それぞれの人生です。ゲストを演じるキャストが変わることによる彼らの変化も注目!
【出産中の妻が心配でたまらない、知性溢れる若きアシスタントコンシェルジュの
エリック】

写真中央)エリック役:藤岡正明さん

個人的にエリックはカギになるキャラクターという印象を抱いています。
両チームで藤岡さんがどんなエリックを見せるのか、楽しみです。

敏腕弁護士ズィノヴィッツ役:大山真志さん

アメリカ人エンターテイナージミーズのメンバー役:味方良介さん

アメリカ人エンターテイナージミーズのメンバー役:木内健人さん

グルシンスカヤの引退興行を主催する劇場プロデューサーサンドー役:金すんらさん
【愛と死の化身スペシャルダンサー】

日本オリジナルとなるスペシャルダンサーには湖月わたるさん
トムさん) 「今、ふたつのチームは同じスタート地点います。それはまるで交差点のど真ん中にいるような感じです。
つまりここから、ひとつは右に、もうひとつは左にハンドルを切り、全く違う道筋をたどり始めるのです」
さぁ、それぞれのチームがどんな結末へ導いてくれるのか、
トム・サザーランド新演出版『グランドホテル』の開幕が待ち遠しいですね。
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おけぴ取材班:chiaki(文・撮影) 監修:おけぴ管理人