11年ぶりに“東吾”と“るい”を演じる、中村橋之助さんと高島礼子さん
昭和48年から43年にわたって連載され続けている、平岩弓枝さん作の時代小説
『御宿かわせみ』。
幕末の江戸を舞台に、由緒ある武家の次男坊“神林東吾”と、「旅籠かわせみ」を切り盛りする女主人“庄司るい”が、周囲で起こるさまざまな事件を解決していく人情捕物帖は、ふたりの
“想い合っているのになかなか進まない恋模様”も相まって、多くの読者から愛されてきました。
今回上演が決定した
明治座5月公演『御宿かわせみ』では、NHKのテレビドラマシリーズ(2003年-2005年)で両役を演じた中村橋之助さんと高島礼子さんが11年ぶりに共演。脚本演出を手がけるG2さんとともに意気込みを語った制作発表会の模様をお届けいたします。
中村芝翫襲名を控え、“橋之助”として最後の歌舞伎以外の舞台出演となる中村橋之助さんと、
「舞台で“るい”役に挑戦するには今が最高の時期」と語る高島礼子さん。
【原作の5つのエピソードを取り入れたオリジナルストーリー】「人と人とのふれあい、絆を大事に描きたい。
そういった温かい空気感を共有できるのが舞台の魅力」(G2さん)
G2: 平岩弓枝先生の原作舞台は、これまでご本人の脚本以外で上演されたことがないそうで、もう大変なプレッシャーです。先生がこのシリーズを書き出すときに“グランド ホテル方式”
(ひとつの場所に集まるさまざまな人物を描く群像劇)を意識されたと知り、“それで行こう!”と読者の人気投票で上位に入っている5つの短編をひとつのオリジナルストーリーにすることにしました。息がピッタリの主演おふたりに、人気投票上位のエピソードで、これはもうおもしろくならないはずがない。江戸情緒や人情が描かれている作品ですが、同時に1本のストーリーとして、サスペンスの部分も楽しんでいただければと思います。登場人物たちと一緒に事件にハラハラしたり、やったー! と喜んだりと、楽しんでいただける作品になればと思います。
【不思議な縁のある明治座に、“橋之助”として最後の出演】橋之助: 小学生の頃に松緑のおじさんが『赤ひげ』をやっているのを観たり、橋之助を襲名した30数年前に澤瀉屋のお兄さんにスーツ姿のまま舞台に上げられ口上を言っていただいたり、といった思い出がある明治座に、橋之助として最後の(歌舞伎以外の)作品で出演することができて嬉しいです。高島さんとふたりで恒例の明治座興行にできるよう、精一杯努力させていただきます。ドラマ版で初めて顔を合わせたときに、このふたりならではの雰囲気を醸しだす『御宿かわせみ』を作ろうではないかとお話しました。立廻りがたくさんあるような、いわゆる“痛快な時代劇”ではなく、ふたりの会話、ちょっとした動きだとか、眼の奥にある温かさや怒り…そういったものを醸しだす、それがテーマだったと思います。最近は嫌な事件もたくさんありますが、日本人が本来持っている魂の優しさや、つながり、助けあい…そんなものを、お客さまの心に伝えられれば、と思っております。
【今だからこそ舞台で演じられる“るい”】高島: 実は、11年前にドラマ版に出演していたときから、何度も舞台化のお話はいただいていました。でもその頃は(舞台の)経験があまりなく、この作品に挑戦するのはあまりにも恐ろしかった。ここ数年、舞台の経験を積ませていただき、テレビとは違うライブ感、お客さまが自由に感じたいように感じていただける舞台の素晴らしさを発見できた今が、この作品に挑戦する最高の時期かなと思っております。“るい”という役は気が強くて頑固なところもありますが、さりげない優しさ、頭の良さを持っている人。東吾さまを深く愛しながらも、身分の違いをちゃんとわかっているところも、丁寧にきっちり演じたいとドラマのときから思っていました。今回それを舞台でどれだけおみせできるか。自分自身でも楽しみにしています。
【この顔合わせならではの『御宿かわせみ』】「11年前に舞台化の話があったとき、
この人が“えー、私いやだー”と言ったことを良く覚えております(笑)」(橋之助さん)
橋之助: ほんとうに何度も舞台化のお話をいただいていて(笑)。でもあれから11年たって、高島さんが舞台をお好きになられたというのは、とてもありがたいことですね。高島さんは気心の知れた“男友達”のような(笑)、女優さんというよりも“女方”的なかたですからね。相手役としてはとにかくやりやすいんです。なんといっても、さっぱりしていて面倒くさくない! いち時代劇ファンとしても、高島さんが舞台で時代劇をどんどんやってくださるのは、とても嬉しいこと。今回の舞台をスタートとしまして、このふたりならではの舞台作品をG2さんにたくさん書いていただきたいなと思っております。
高島: 橋之助さんはこのとおり、舞台経験抱負な大ベテラン。ドラマのときも、所作事からセリフの言いまわしで、たくさん教えていただきました。もう私としては得るものばかりです。 (ドラマの)ゲストで時代劇経験のない若い方がいらしたときも、私は自分のことで精一杯でしたが、橋之助さんはとにかく惜しみなくいろいろなことを教えてあげるんです。現場でトラブルがあっても、最初に解決に乗り出すのはいつも橋之助さん。ほんとうに頼もしいです。きっと今回の稽古でも橋之助さんを中心にいろんなことが起きるんじゃないかなと楽しみです。
橋之助: 原作のエピソードが5つも含まれていて、しかもG2さんが演出で、ほんとうに贅沢な作品ですよ。台本を読みながら“ああこの場面、ドラマ版でもあったな”なんて自分の卒業アルバムを見ているような気持ちになります。それから、11年たって、ますますお綺麗になられた高島さんの“美”を見にくるのもひとつの楽しみ、テーマではないでしょうか。
「橋之助さんもぜんぜん変わらない」
「変わりましたよ(笑)!」
橋之助: テレビや映画、歌舞伎以外の舞台で“橋之助”は育てられましたから、その橋之助最後の舞台で高島さんとご一緒できるのがとても嬉しい。橋之助として、まだやるべきものがある、やっておくべきもの、今だからこそ演じておくべきものを見出さなくてはならないと感じています。それが今回の高島さんとの共演であり、G2さんとの稽古なのかな、と思っております。
300以上もある原作エピソードから、特に人気の高い
「江戸の子守唄」「美男の医者」「お吉の茶碗」などを中心に物語を構成、市井に生きる人々を温かな眼差しで描く、
明治座5月公演『御宿かわせみ』。
共演はほかに西村雅彦さん、紺野美沙子さん、高橋和也さん、柳下大さん、朝海ひかるさん…と、豪華かつその芝居力が楽しみな面々。橋之助さんの次男・中村宗生さんもご出演です。
江戸情緒と人情あふれる、舞台『御宿かわせみ』。お見逃しなく!
おけぴ取材班:hase(撮影) mamiko(文) 監修:おけぴ管理人